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映像表現の可能性をひらく。映像とアートの国際フェスティヴァル「恵比寿映像祭2026」【展示レポ】

映像文化とアートの現在を横断的に紹介する国際フェスティヴァル「恵比寿映像祭2026」が、2026年2月6日(金)からスタート!メディア向け内覧会にお邪魔し、その見どころをいち早くご紹介します。

『恵比寿映像祭2026 「あなたの音に|日花聲音|Polyphonic Voices Bathed in Sunlight」』展レポート

恵比寿映像祭は、2009年の第1回開催以来、年に一度恵比寿の地で、展示、上映、ライヴ・パフォーマンス、トーク・セッションなどを複合的に行ってきた映像とアートの国際フェスティヴァルです。映像分野における創造活動の活性化と、映像表現やメディアの発展をいかに育み、継承していくかという課題について広く共有する場となることを目指してきました。

恵比寿の街全体が映像祭一色になる16日間

メインの会場は、東京都写真美術館。

JR恵比寿駅東口から動く通路・恵比寿スカイウォークを進んでいくと、恵比寿ガーデンプレイスに到着します。風を受けて靡く恵比寿映像祭の中吊り広告が、徐々に映像祭の世界へと誘います。

今年のテーマは「あなたの音に|日花聲音| Polyphonic Voices Bathed in Sunlight 」

いま社会は多様性の尊重を重視しています。しかし、人、文化や言語などの間にはたとえ共通点があったとしても、誤解、誤読は生じます。そして、戦争は止まず、格差は埋まらず、さまざまな摩擦の終わりが見えません。私たちはアンバランスで複雑な社会状況に直面しています。

恵比寿映像祭2026の総合テーマは、メインキュレーター・邱于瑄(チィウ・ユーシュェン)氏による台湾語が起点です。

台湾語は口承で広がった言語で、19世紀に生まれた発音記号や、20世紀の漢字表記の展開を経て、多くの文献が編まれました(その中には1931年に出版された、台湾語–日本語の辞書『台日大辞典』なども含まれます)。日本語とも共通点が多く、いくつかの表記法が混在している言語です。

「日花聲音」と書いて、(ジッホエ・シアーイン)と読みます。さまざまな声や音が響く空間に、木々の間から洩れた光が差し込む様子を現されています。多様な文化、言語などが互いに影響し合うという意味が込められています。

一口に「映像祭」と言っても、受付でいただいた冊子によると、出展作品は、映像、写真、サウンド、立体アート、アプリなどのデバイスを活用した新しい表現方法、パフォーマンス、演劇など、その表現方法は多岐に渡ります。

各階をキュレーターの方に解説していきながら巡りました。東京都写真美術館の全フロアに展示があり、今回は、B1Fからスタートし、1F、2Fの順で進んで行きました。構成としても、この順で巡ってもらうのがオススメだと感じました。

重なり合う形と声:空間で触れる展示プログラム」 (会場:東京都写真美術館 B1F・1F・2F)

写真、映像、サウンド、パフォーマンスなど多様なメディアを横断し、人類学的な視点から「声」「環境」「記憶」「誤読」をテーマに展開する展示プログラム。長い歴史の中で交差してきた人や文化の往来を手がかりに、混ざり合う環境に潜む“聞こえにくい声”の広がりを可視化します。
B1Fでは“移動”を起点にしたサウンドスケープが広がります。

撮影:新井孝明

B1Fの入り口を入ると、台湾原住民族のルーツを持つ張恩滿氏(チャン・エンマン)による船形のインスタレーション作品《蝸牛樂園三部曲—啟航或終章》が迎えてくれます。カタツムリをモチーフに異なる土地を渡り定着してきた生き物の記憶と、変化し続ける環境のなかで未来へと受け継がれる姿を表現しています。

視覚障害のある人々への聞き取りを通して先入観や誤解というズレを手がかりに、「見ること」を問い直す鶴巻育子氏によるプロジェクト《ALT》の3部作の内、2部作が展示されています。

作家さん自ら展示作品をご紹介いただきました。

《ALT》は、オルタナイトの略で、「他の可能性」や、「代替の」と言った意味のあるタイトルなのですが、3部作になっていて、内、セクション1と2を展示しています。

セクション1のモニターに投影されているのは、31人の視覚障害の方のポートレートです。私自身、取材を始める前までは誤解をしていたのですが、視覚障害のある方は、自由に外を歩いたり、好きなことができないのではないかと、思い込んでしまっていたのです。しかし実際は決してそんなことはなく、違う方法を工夫したり、人の力を借りながら、本当に自由に生活されていることを知りました。この31名の方々には、ご自身で好きな場所を選んでいただき、その場所でを撮影し、お話を伺っています。撮影場所はさまざまですが、この作品を通して問いかけているのは、「自分のすぐ近くにも、知らないうちに視覚障害のある方や、別の障害を持つ方、自分とは違う条件の人がいるのではないか」ということです。セクション1のタイトルは、「隣りにいる人」。その存在に目を向けてもらうためのタイトルです。

壁面に展示してあるセクション2は、「※写真はイメージです」よくパッケージなどに記載してある文言で見慣れた文字かと思います。

視覚障害の方に、見え方を伺いました。

視覚障害というと、=全盲のイメージですが、決してそうではなく、見えづらさも人様々で、それを聞いて、作品にしました。写真の横に記載している文章が、視覚障害の方から伺った見え方をそのまま記載しています。すごく複雑な見え方をしているので、言葉では正確にできないんですね。その時点で、私が聞いてもやっぱり本当にその方が見えている状態ってわからないんですよね。恐らく一生分からないと思うんです。なのでこれは、正解ではないというのが前提で作った作品になります。

ここでは、相手を分かったつもりになったり、理解し合うとか、そうゆう事を考えがちですが、やっぱり人と人って理解し合えそうで、なかなかできない。理解し合うの前に、自分と違う人がいるってことを知るって言うこと。そこが大事という思いをこの作品に込めています。

 

フロアの移動は、ついついエレベーターを利用しがちだが、オススメは階段移動。

次の展示室を目指して階段を上がっていくと、今回の映像祭で特別に取り付けたであろうスピーカーから、サウンド作品の音が流れ、移動の階段すらも、楽しめる仕掛けになっています。

 

2F展示室では、言語や社会のルールを再考しながら「ズレ」や「誤解」から生まれる表現の可能性を探ります。展示室内外に響く形なき音が、視覚と聴覚のポリフォニーを立ち上げ、異なる文化や言語、身体のあいだに生まれる共鳴を体感させます。

侯怡亭氏(ホウ・イーティン)《所有的小姐 Sóo-ū -ê sió-tsiá》では、日本文化の影響を受けた台湾語の歌詞を刺繍として表現し、言語の背景にある歴史や社会の記憶を浮かび上がらせる内容になっています。

撮影:新井孝明

 

チョン・ソジョン氏の《シンコペ》は、音の新たな可能性を求めて長年活動してきたアジアの女性たちが国境を越えて移動する姿を追った作品。

本作に登場するデジタル植物をARで楽しめるアプリも、ステートメントに記載されているQRコードからダウンロードできるようになっています。

新しい才能と出会う「コミッション・プロジェクト」(会場:東京都写真美術館 3F展示室)

東京都写真美術館の継続事業として、2023年に始動した「コミッション・プロジェクト」。日本を拠点に活動するアーティストを選出し、制作委嘱した映像作品を“新たな恵比寿映像祭”の成果として発表します。

恵比寿映像祭2026では、第2回コミッション・プロジェクト特別賞受賞作家である小森はるかによる新作展示を、総合テーマと呼応させながら具現化。ドキュメンタリーの歴史を受け継ぎながら、見過ごされてしまう風景や人の営みに丁寧に目を向ける小森の、新作2作品を展示します。会期中には第3回コミッション・プロジェクトのファイナリスト4名を発表します。

東京都のコレクションを特別公開(会場:東京都写真美術館 3F展示室)

東京都コレクションから、総合テーマ「あなたの音に|日花聲音|Polyphonic Voices Bathed in Sunlight」を紐解く視点として、「現代と歴史」を切り口に作品をセレクト。東京都写真美術館をはじめ、東京都現代美術館、東京都庭園美術館、東京都江戸東京博物館が管理する収蔵品の中から、映像・写真・資料を展示し、漣(さざなみ)のように立ち上がる違和感をリレー形式であぶり出します。

東京都庭園美術館で撮影された、さわひらきによる映像作品《pilgrim》(2022)を、1933年竣工時の《朝香宮邸竣工写真》とともに展示。建築に重なる時間の層を浮かび上がらせます。

千房けん輔と赤岩やえによるアーティスト・デュオエキソニモの《Joiner》は、画面を指でなぞるだけで風景を切り取り、絵を描くような感覚でリアルタイムにコラージュ写真を生成できるカメラアプリとして制作された作品。角度や時間をずらしながら撮影したり、離れた場所を同一画面上に組み合わせたりすることで、工夫次第で多様な表情をもつコラージュ写真を制作・共有することができます。2012年に東京都写真美術館へiPhone 3GSの実機とともに収蔵されましたが、バッテリーの劣化により起動が困難な状態にありました。今回、エキソニモがプログラムと実機の再検証を行い、マイグレーションを実現しました。

街にひらかれるアート——オフサイト展示(会場:恵比寿ガーデンプレイス センター広場、恵比寿スカイウォーク)

デジタルとアナログの境界を横断する実験的プロジェクトを展開。インターネット・アートの先駆者 エキソニモ、個人と集団のアイデンティティに着目したFAMEMEが、都市空間に新しい映像表現をインストールします。屋外でしか体験できない“偶発的な出会い”を生み出す作品群が、訪れる人すべてに開かれた鑑賞体験を提示します。

FAMEMEによるドリアンと香水の融合した新感覚の新作《Duri-grance by FAMEME》が、恵比寿スカイウォークをジャック!実は、東京都写真美術館に向かう途中にも、作品を楽しむ事ができます。手元の画面から目を離し、FAMEMEのハッピーな世界観を見つけてください。

東京都写真美術館内:1F ロビー 撮影:新井孝明

恵比寿ガーデンプレイス センター広場では、目を閉じた人々の顔が映る二つのモニターが重なり合い、キスを交わしているかのように見えるエキソニモ《Kiss, or Dual Monitors》が登場。

2026年の新ヴァージョンでは、約4mに及ぶ巨大LEDウォールとして進化。東京都写真美術館2Fには、来場者が参加できる撮影ブースも設置されます。筆者も挑戦してみました!会期中にも使用する旨が記載された同意書にサインし、撮影ブースへ。

ブースには、イスとカメラが設置してあり、頭をヘッドレストにつけるよう指示があり、カメラマンの指示で撮影していきます。勝手にスチール撮影だと思ってしまったのですが、実際は、10秒程度の動画撮影です。

撮影後、QR画面を撮影しておくよう指示があります。

万が一、撮影した動画の削除を依頼する際に、このQR情報で問い合わせることによって削除の依頼が可能になるとのこと。この手の体験型のものは撮影して完結なので、その後考えが変わった際のケアまで、とても考えられています。QRを読み込むと、LEDウォールに自分の映像が流れるまでのカウントダウンが表示されます。この表示時間から約5分間、重なり合うモニターに交互に表示され、その後、会期中は、ランダムに表示されるとの事。

表示されるまで、10分程度だった為、エキソニモ《Kiss, or Dual Monitors》が展示されている場所へ行くことに。ブースを出てから、1Fへ戻り、正面玄関を出たらすぐに右に曲がり、通路を直進します。センター広場へ続く階段を降りて行きます。

時間になり、投影されたので、ワクワクしながら、向かいのモニターを見ると、真っ黒でした。

一人でキスしていたようです。きっと、期間中にたくさんの方が参加していただく事で、色々な方が画面に出てくるようになるはずです。ぜひ皆さんも参加してみてくださいね。

 

映像を“視る&聴く”——上映プログラム(会場:東京都写真美術館 1Fホール)

恵比寿映像祭のために編まれた特別上映プログラムを連日開催。劇映画から、実験映画をはじめ、日本初公開作品を含め多彩な作品が集まります。

河合健《みんな、おしゃべり!》

重なり合う声と身体——ライヴ・イヴェント(会場:東京都写真美術館 1Fホール、1Fスタジオ、展示室)

すべての来場者にひらかれたフェスティヴァルを目指し、映像文化の理解を深めるとともに、来場者が自ら考え、対話するきっかけをつくります。展示プログラムの各作品を起点にしつつ、様々な表現方法のプログラムが重なり合い、総合テーマのさらなる拡張を試みます。出品作家であるキュンチョメ鶴巻育子アンジェリカ・メシティによるアーティスト・トークをはじめ、日本大学名誉教授の原直久による写真技術に関する講義を行います。また、原住民文化を深く知ることができる関連ワークショップや、視覚障害のある方と作家による「見え方」についての作品鑑賞ツアーを実施します。さらに、形のないパフォーマンスや、美術館での音楽作品の特別演奏も開催。加えて劇団ゴツプロ!による演劇プログラムを取り入れ、映像の領域の拡張に挑みます。

ゴツプロ!×峸劇場 共同制作《敬啓者》(拝啓)

 

文化が響き合う都市ネットワーク——地域連携プログラム(会場:地域連携各所)

恵比寿映像祭2026では、地域連携の範囲をこれまで以上に拡大し、恵比寿近隣の文化施設が多数新たに参加します。日仏会館、CCBTをはじめとする18施設が、それぞれ独自の展覧会やイベントを開催し、街全体でフェスティヴァルを盛り上げます。さらに今年は、恵比寿屈指のディープスポット「恵比寿 地下 味の飲食街」や、恵比寿エリアの複数のバーとも連携し、昼から夜まで恵比寿の街全体を巡りながら、多様な作品と出会うことができます。日本写真芸術専門学校の卒業生達の自主ギャラリー「Koma gallery」も連動プログラムの展示を開催中!

恵比寿映像祭2026 地域プログラム Koma gallery Photo Exhibition

[前期]2026.2.6 (fri) – 2.14 (sat)
フジヤマヨシヒサ×山中南実×ハギワラヒカル
「the sameday,elsewhere」
@miku.0x0  @minamiyamanaka  @jr0330h

[後期]2026.2.15 (sun) – 2.23(mon)
フジモリメグミ×鈴木隼斗×張鈺
「aroundscape ×material object×復照青苔上」
@fujimorimegumi  @suzuki_hayato_  @the_zy

Koma gallery

Instagram
〒153-0062 東京都目黒区三田1丁目12 金子ビル 201
OPEN 12:00-19:00 ※会期中無休

 

 

また、シールラリーも実施し、シールを集めると映写機から生まれたキャラクター 「ye(b)izoちゃん」オリジナルグッズを先着でプレゼント。取材の日も、春分を過ぎたからか、心地よい春の訪れを感じる気候でした。アートを通して街を歩き、地域文化を再発見する体験をしてみてはいかがでしょうか。

少し難しそうで行くのを迷っている方は、この左のフリーペーパーを片手にぜひ展示を見ていただきたいです。

「東京都写真美術館ニュース 別冊ニャイズ」

かなりゆるめの猫ちゃんたちが、恵比寿映像祭2026をとても分かりやすく解説している1冊。

様々な表現方法を、目で、音で、感じてみませんか?

 

恵比寿映像祭2026 「あなたの音に|日花聲音|Polyphonic Voices Bathed in Sunlight」』は2月23日(月・祝)まで

《展覧会情報》
恵比寿映像祭2026 「あなたの音に|日花聲音|Polyphonic Voices Bathed in Sunlight」
会期:2026年2月6日(金)〜2月23日(月・祝)[16日間]※2月9日(月)および16日(月)は休館 ※3F展示室のみ3月22 日(日)まで
時間: 10:00–20:00(2月6日〜2月22日)※最終日(2月23日)は18:00まで※2月25日(水)から3月22 日(日)の3F展示室は10:00 から18:00 まで(木曜・金曜は20:00まで)
会場:東京都写真美術館、恵比寿ガーデンプレイス各所、地域連携各所ほか
料金:展示無料(上映と一部イベントのみ有料)主催  東京都/公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都写真美術館/日本経済新聞社
共催:サッポロ不動産開発株式会社/公益財団法人日仏会館
助成:ブリティッシュ・カウンシル
協力:在日オーストラリア大使館
後援:台北駐日経済文化代表処 台湾文化センター/J-WAVE 81.3FM
協賛:YEBISU BREWERY TOKYO/東京都写真美術館支援会員/ダイワロイネットホテル西新宿PREMIER
HP:https://www.yebizo.com

取材協力:エイベックス・クリエイター・エージェンシー株式会社

取材・撮影/PicoN!編集部 市村

 

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