心躍る「発見」と「ひらめき」を
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最新記事一覧【写真学校教師のひとりごと】vol.34 横幕雅大について
わたし菊池東太は写真家であると同時に、写真学校の教員でもあった。 そのわたしの目の前を通り過ぎていった若手写真家のタマゴやヒナたちをとりあげて、ここで紹介してみたい。その人たちはわたしの担当するゼミの所属であったり、別のゼミであったり、また学校も別の学校であったりとさまざまである。 これを読んでいる写真を学ぶ学生も作品制作に励んでいるだろうが、時代は違えど彼らの作品や制作に向かう姿が少しでも参考になれば幸いだ。 あるとき卒業生の篠田美穂から突然電話がかかってきた。 わたしのクラスの女子では初めて個展をやったヤツだ。 「ヨコマクがJRAのカメラマンやってるんだって!」横幕というのは久しぶりに聞く名前だった。 だがすぐに思い出すことができた。決して口数が多くはない、地味で比較的目立たない男だった。 だが不思議におぼえている。実直なヤツだ。 あの横幕がJRAのカメラマンか。 JRAというのは日本競馬会のことだ。 人の見ていないところで、こつこつとまじめに努力を積み重ねているようだ。 昔の記憶と記録をたどってみた。 卒業後の志望について、「馬が撮れたらなんでもいい」とあった。 よほど馬が好きなのだ、間違いなく。 志望通りの仕事だ。いいね。 JRAに写真撮影部門はない。JRA出入りの写真撮影をやる組織に所属しているのだ。 普通競馬というとギャンブルを連想するが、横幕はそっちの方面にはあまり興味がないようだ。 とにかく走っている馬がひたすらかっこよくて、この世界に入ったのだ。 同期にもう一人、わたしのクラスでは初の個展をやった小島昇がいる。 この男も以前このシリーズに登場したことがある。 この二人(篠田と小島)も横幕と一緒に会うことにした。同期会みたいなもんだ。 (左から、篠田美穂、横幕雄大、小島昇) 競馬場にはわたしはスタッフ・カメラマン時代に数回仕事で行っただけで、その後足を踏み入れたことがない。 さまざまな写真を見せられた。 数多くの写真の中の一枚、皐月賞での馬の疾走シーンがあった。 この世界では当たり前のことだが、時速60キロあまりで疾駆する馬の筋肉や体毛一本一本が克明に写っている。 シャッタースピードは1600分の1秒だったそうだ。 プロだから当たり前のことだけど、なかなかキッチリやっている。 連日、疾駆する馬の写真を撮った。 来る日も来る日も。 毎回やっているとそのうちにできるようになる。 当たり前のことかもしれないが。 するとそこに憧れた馬の美しい姿、躍動感が見えてくる。 これこそが横幕の求めていたものだろう。 かつては若さ特有の熱意で馬の美を求めて、写真を撮っていた。 そんな日々の積み重ねだった。 最近はそんな熱情もおさまり、割に平穏な日々のようだ。これも当たり前のことだ。 昔はほとんど酒を飲めなかった男だが、飲んで人と話をするようになってきた。 話すことの悦びにも目覚めたようでもある。 世界には、馬が走る素晴らしい写真がたくさんあるに違いない。 今までの努力を考えてみたら、もっと素晴らしいものを頭の中に作りだすことも、そんなに難しいことではないだろう。 やってみようよ。写真家としてはこれからだよ。 時速80キロのときの、その瞬間の馬の目は、筋肉の躍動感は? 最新の機材だからこそ、今までは不可能だったショットというのもあるんじゃないのかな? これからが本番だよ。 人生最後ににっこり笑えたらいい 菊池東太 1943年生まれ。出版社勤務の後、フリー。 著作 ヤタヘェ~ナバホインディアン保留地から(佼成出版社) ジェロニモ追跡(草思社) 大地とともに(小峰書店) パウワウ アメリカインディアンの世界(新潮社) 二千日回峰行(佼成出版社) ほか 個展 1981年 砂漠の人びと (ミノルタフォトスペース) 1987年 二千日回峰行 (そごうデパート) 1994年 木造モルタル二階建て (コニカプラザ) 1995年 アメリカンウエスト~ミシシッピの西 (コニカプラザ) 1997年 ヤタヘェ 北米最大の先住民、ナバホの20年 (コニカプラザ) 2004年 足尾 (ニコンサロン) 2004年 DESERTSCAPE (コニカミノルタ) 2006年 WATERSCAPE (コニカミノルタ) 2009年 白亜紀の海 (ニコンサロン) 2013年 DESERTSCAPE-2 (コニカミノルタ) 2013年 白亜紀の海2 (ニコンサロン) 2015年 日系アメリカ人強制収容所 (ニコンサロン) ほか ↓PicoN!アプリインストールはこちら
【展示レポ】種村有菜・30周年記念展が東京・池袋で開幕。誰もが憧れた少女たちの物語を生原画で巡る、あの頃のときめき。
ページをめくるたびに胸が高鳴った、あの頃。 そのきらめきは、時間が経っても消えることはなかった。 種村有菜・30周年記念展は、そんな記憶をそっと呼び起こす場所だ。生原画の一枚一枚に宿る線や色を追いながら、少女たちの物語を巡る体験は、ただの展示鑑賞にとどまらない。 種村有菜先生の画業30周年を記念した原画展は、東京・大阪・京都の3都市を巡る。「種村有菜 30周年記念展 きらめく少女たちの夢物語」東京会場が、4月17日(金)〜5月18日(月)の期間中、アニメイト池袋本店8階「Space Galleria」にて開催中。 [caption id="attachment_28678" align="aligncenter" width="530"] 種村有菜先生描きおろしビジュアル ©種村有菜/集英社 ©種村有菜/白泉社[/caption] 漫画家・種村有菜先生は、1996年少女漫画雑誌「りぼん」でデビュー。1998年に連載開始の『神風怪盗ジャンヌ』は累計発行部数600万部を突破する大ヒットとなり、テレビアニメ化。その後も『満月をさがして』、『紳士同盟✞』(しんしどうめいくろす)、『桜姫華伝』など人気作品を多く送り出してきた。 繊細な画風と、少女たちの強さと儚さを描く物語で、多くの読者の心を掴んできた。 筆者もまた種村有菜先生の作品に魅了された1人。『神風怪盗ジャンヌ』で、主人公・まろんの寂しさと向き合いながらも気丈に振る舞う姿に憧れた。『時空異邦人KYOKO』のファンタジーな世界観に惹かれ、誕生から眠り続ける妹・憂の秘密と、主人公・響古に隠された真実に、胸を高鳴らせながらページをめくった。『満月をさがして』は、難病を抱える主人公・満月が寿命というタイムリミットが迫る中、歌手になれるのか、英知くんと再会する事は叶うのか、と期待をしつつ、こども向けとは思えないとても重い現実も描かれており、幼いながらにショックを受けたが、種村先生のその優しい描写でハッピーエンドを迎えたのを今でも覚えている。 東京会場は、アニメイト池袋本店にある〈Space Galleria〉 会場は、東京・池袋駅から徒歩5分、アニメイト池袋本店8階の〈Space Galleria(スペース ガレリア)〉。 アニメ、マンガ、小説、ゲーム、演劇、アーティスト等、あらゆるジャンルからセレクトした作品世界を表現する、展示会専門のスペース。 アニメイトの店内に入って左手のエレベーターを上がり、左手に進むと、ギャラリーの入り口に辿り着く。 きらめく装飾がありなっちワールドの入り口 本展のメインビジュアルがお出迎えしてくれる。 カーテンをくぐると目に飛び込んでくるウェルカムムービーが、一気にあの頃の記憶を呼び起こしてくれる。 映像内には、種村先生からの挨拶も。最後までじっくり見てから次のブースに行こう。もうここで来て良かったと思ってしまう。 生原画で辿る少女たちの物語 ウェルカムムービーの後は、種村先生の生原画が各作品ごとに展示されていた。 『神風怪盗ジャンヌ』『満月をさがして』『紳士同盟✞』『桜姫華伝』『猫と私の金曜日』と順路を進んでいく。 各作品の世界観を踏襲した空間装飾も見所。 繊細な線、トーン技術、ホワイト処理、美しい原画を間近で見る事ができる。 本誌やコミックスでは見る事のできない細かな印刷指示がそのままの状態で展示されている。 どんな事が書き込んであるかは、ぜひ足を運んで確認してほしい。 コスチュームエリア 『猫と私の金曜日』の先には、コスチュームエリアが広がる。 [caption id="attachment_28687" align="aligncenter" width="750"] 衣装制作:chioriya[/caption] 灰音、ジャンヌ、桜、タクト、めろこの衣装をリアルに再現している。 制作者のchioriyaさんによると、コスチュームの後ろにもスペースを確保しているので、360度ほぼゼロ距離で見られます。との事。細部へのこだわりをぜひ会場でご覧いただきたい。 圧巻のカラー原稿が一堂に会する 今ではデジタル着彩が一般的だが、ここに飾られているのは、コピックなどの画材を使用したアナログ着彩のカラー原稿。種村先生の緻密な着彩を目に焼き付けて欲しい。 筆者が特に注目したのは、種村先生が高校生時代に描いた『時空異邦人KYOKO』のカラー原稿。隣には、連載時に作成された同じ構図の『時空異邦人KYOKO』のカラー原稿が並んでいる。 高校時代に描いた一つの物語を原点に、技術を磨き続け、プロの漫画家として連載作品へと昇華させた点に大きな価値がある。高校生時代の発想や情熱を一過性のものにせず、時間をかけて育て上げ、より多くの読者に届ける作品へと進化させたその歩みは、創作に対する強い信念と継続力の証と言えるだろう。 あなたの家にもまだあるかもしれない、あの懐かしの付録が勢ぞろい カラー原稿を見た後は、これまでの種村先生の執筆された作品を年代とともに振り返る年表とともに、「りぼん」に毎号ついてきた種村先生作品の付録や、応募者全員サービスのアイテムが展示されていた。 りぼんっこであれば、一度は申し込んだであろう「応募者全員サービス」 応募した方全員にアイテムがプレゼントされるサービスで、応募券とともに未使用の切手を指定金額分同封して申込む。 他誌が定額小為替という小学生としては、購入方法が分からないものを同封する指定だったのに比べ、切手を購入するという小学生でも分かりやすいアイテムで申し込みができた為、母に切手をねだって応募したのをとても覚えている。 ステーショナリーセットは、届けばすぐに学校に持ち込み、友達に自慢した。 持っていなかったバッグを友達が持ってきた時には、羨ましく思った。 付録を見ていると、小学生の時の記憶が鮮明に思い出された。 種村先生描きおろしの各作品のキャラクターたちのフォトスポット 最後のエリアはフォトスポット。 種村先生が描きおろした各作品のキャラクターたちの等身パネルが迎えてくれる。 満月とフルムーンの身長差に心躍る。 こちらもファンにはたまらない距離まで近づいて撮影する事ができる。 本当にファン想いの展示だった。 最後は、物販ブース。ファンにとってはたまらない複製原稿や、物語に登場するキャラクターのぬいぐるみや、アクリルスタンド、ふろく風便箋などお金がいくらあっても足りないラインナップが陳列されていた。 [caption id="attachment_28694" align="aligncenter" width="600"] ©種村有菜/集英社©種村有菜/白泉社[/caption] [caption id="attachment_28693" align="aligncenter" width="600"] ©種村有菜/集英社©種村有菜/白泉社[/caption] その中でも筆者がときめいたのは、キャラクターのアイテムをモチーフにしたチャーム! [caption id="attachment_28695" align="aligncenter" width="600"] ©種村有菜/集英社©種村有菜/白泉社[/caption] 杖ちょんがなんとグッズに!怪盗シンドバッドの剣も、逆滝のクリスタルソードも、桜の血桜もどれも物語から出てきたような造りにまじまじと見惚れてしまう。 ジャンヌのロザリオは新旧どちらにしようか迷ってしまう、、、。 本展開催を記念したトークショーや、コラボカフェも展開されている。 少女から、大人になり、そして、母になり、ときめきには、そっと蓋を閉じてきた。 きらめく少女たちの世界があなたを優しくあの頃に連れて行ってくれるだろう。 『種村有菜 30周年記念展 きらめく少女たちの夢物語』東京会場は5月18日(月)まで 《展覧会情報》 『種村有菜 30周年記念展 きらめく少女たちの夢物語』 【開催期間】2026年4月17日(金)~2026年5月18日(月) 【開催時間】10:00~21:00 【開催場所】Space Galleria 〒170-0013 東京都豊島区東池袋1-20-7 アニメイト池袋本店8F ※最終入場は閉場の30分前まで ※最終日5月18日(月)は17:00閉場(16:30最終入場) 【チケット】前売券:2,000円(税込)・当日券:2,200円(税込) 【大阪会場】 【開催期間】2026年6月19日(金)~2026年7月20日(月・祝) 【開催時間】月~金 11:00~20:00 土・日・祝 10:00~20:00 【開催場所】Space Gratus 〒556-0005 大阪府大阪市浪速区日本橋4-15-17 アニメイト大阪日本橋別館3F ※最終入場は閉場の30分前まで ※最終日7月20日(月・祝)は17:00閉場(16:30最終入場) 【チケット】前売券:2,000円(税込)・当日券:2,200円(税込) 取材協力:株式会社ムービック 取材/PicoN!編集部 市村 撮影/学生サークルSHATO 宮田 ↓PicoN!アプリインストールはこちら
挑戦と羞恥の先に、世界があった。 ——ブランド広告を撮るフォトグラファーの原点
「日本で写真を学びたい」「世界で活躍したい」——そんな夢を抱く人へ。留学生として日本で写真を学び、多くの挑戦と立ちはだかる壁を乗り越えて歩み続けてきた1人のフォトグラファー・陳明剣さん。 いまではNIKEをはじめとするブランドのメインビジュアルを手がけています。 学生時代の葛藤や努力、そして背中を押した恩師の言葉とともに、その原点をたどります。 挑戦を重ねて築いたキャリアと、現在のフィールド ー簡単に経歴を教えてください 母国の中国の大学では、グラフィックデザインを専攻していました。大学で写真を撮り始め、大学卒業後、2016年に来日しました。JCLI日本語学校(現:早稲田EDU日本語学校 王子校)で日本語を学び、2018年から2020年まで日本写真芸術専門学校に通っていました。 卒業後は、母国である中国に帰国して、カメラマンとして働き始めました。 2022年に自分のスタジオを立ち上げて、今は中国で広告写真などの商業写真を撮影しています。 ー現在の仕事内容について教えてください コマーシャルフォトグラファーをしています。 主に、広告のメインビジュアル(KV)や芸能人のイメージビジュアル、ブランドのlookbook、それから雑誌などの撮影をしています。 ー世界の現場で感じる、写真の醍醐味は? 街を歩いている時やショッピングモールを訪れた時に、ふと自分が手がけた作品を見かける瞬間があります。そのたびにとても嬉しい気持ちになりますし、多くの人が行き交う場所で、自分の撮影したビジュアルが実際に使われているのを見ると、大きな達成感と、この仕事を続けてきて良かったという実感が湧いてきます。 挑戦の現場で培った、プロとしての視点 ークライアントワークで意識していることがあれば教えてください 仕事をする上では、誠実さが一番大切だと思っています。 商業カメラマンなので、お金を稼ぐことも大事ですが、それ以上に、クライアント一人ひとりに100%の真心で向き合いたいと考えています。おかげさまで、「いつ連絡しても回答が早いし、すぐに問題を解決してくれてとても助かる。」とお褒めの言葉をいただく機会が多いです。 ー写真のお仕事に携わっているからこそ得られたスキルや技術があれば教えてください 写真という仕事を通じて、私は完全に計画を重んじる「J人」タイプになりました。 「J人(J型人格)」とは、MBTI性格診断において「Judging(判断)」タイプを指し、計画性、組織力、結果志向を重視する人々のことです。突発的な変化よりも整理された状況を好み、期限を守ることを大切にする傾向があります。 物事を前もって計画する習慣がつき、プライベートの旅行でも詳細なスケジュールを作成し、1日の流れをしっかり管理するようになりました。 ー仕事で大変だったと感じたことはありますか? ロケーション撮影では、天候に左右される事が多く、なかなか計画通りに撮影が進まない事が多く発生しますね。 一見華やかに見える撮影の現場ですが、体力的にも精神的にもハードな面があります。 体力面で言うと、標高5,000メートルの雪山で高山病と戦いながら雨に打たれてシャッターを切ったり、45度の夏日に熱中症で倒れそうになりながらカメラを回したり。忙しい時は、1日の睡眠が3時間なんてこともよくあります。 精神面では、クリエイティブな仕事だからこその葛藤があります。[自分の写真最高!]→[満足]→[壁にぶつかる]→ [自分への疑い]→[どん底]→ [変化と成長]→[再び、自己肯定]というサイクルを、だいたい1年周期で繰り返しながら進んでいます。 恩師との出会いが導いた、フォトグラファーへの道 ー日本で写真を学ぼうと思った理由を教えてください 日本の美学に惹かれて、日本を選びました。 大学時代にグラフィックデザインを専攻していた為、多くの日本のデザインに触れる中で、日本独特の美意識に強く惹かれていきました。中でも影響を受けたのが、グラフィックデザイナーの原研哉氏の思想でした。 愛読書の一つが、『Designing Design(デザインのデザイン)』です。同書は、デザインを単なる見た目の美しさではなく、「物事の見方そのものを設計する行為」として捉え直した一冊で、日本の美意識や“余白”の考え方などにも触れながら、日常の中に新しい価値を見出す視点の大切さを説いています。 ー進学先をNPIに決めた理由を教えてください 留学生向けの進学相談会でNPIの存在を知り、体験授業を申し込みました。NPIのオープンキャンパスで、詳しくお話を聞いて、その場ですぐに「ここだ!」と決断しました。 ーNPIでは、どんなことを学んでいましたか? 写真に関するあらゆる知識を学び、この2年間の学生生活を通して、ようやく自分なりの表現の軸を構築することができました。 ー学生時代はどんな作品を作られていたんですか? スナップ、風景、ファッションなど幅広く撮影してきましたが、メインは、ファッションポートレートゼミを専攻していた為、モデルを起用したファッションポートレートの作品を制作していました。 ー印象に残っている授業や先生はいますか? 一番印象に残っているのは、大野隼男先生の授業です。 [caption id="attachment_28531" align="aligncenter" width="750"] (写真)大野隼男先生プロフィール写真[/caption] 先生はいつも多くの機材を教室に持ち込んで見せてくださり、ライティングの技術を丁寧に教えてくださいました。写真に対する先生の真摯な姿勢に心を打たれ、「自分も将来フォトグラファーとして、100%の誠実さで仕事に向き合おう」と決心しました。 卒業して中国へ帰国する際、空港で待機していた時に、大野先生から中国語でメッセージが届きました。 「年轻时要面对很多挑战和羞耻感。这样你就可以成为一个很好的摄影师」 その言葉は、仕事でスランプになったり、壁にぶつかるたびに、今でも私の背中を押してくれます。 ー学生時代に力を入れていた活動はありますか? 自主制作の作品には、多大なエネルギーを注いできました。 ー在学中にこれはやってよかった、逆にやっておけばよかった事はありますか? 在学中に有志で参加した文化服装学院ファッション流通科スタイリストコースの学生たちとの作品制作です。スタイリストを目指す学生さんの好みをヒアリングし、どのような作品を制作するかを話し合い、撮影に挑みました。非常に学びの多い経験となりました。 [caption id="attachment_28535" align="alignleft" width="1024"] (写真)NPIのホールで行われた文化服装学院の学生さんとの顔合わせの様子[/caption] [caption id="attachment_28532" align="alignleft" width="500"] (写真)実際に撮影された作品[/caption] 隔離期間から始まった、フォトグラファーとしての挑戦 ー陳さんは、卒業後、すぐに母国の中国へ帰国していましたね。就職活動について教えください 卒業した2020年3月は新型コロナウイルスが流行し始めた時期で、卒業後はすぐに帰国しました。 3月中旬に帰国し、ホテルでの2週間の隔離期間中、ずっと履歴書を送り続けました。4月から面接を受け始めたのですが、 ある会社のディレクターから「新卒ならまずはアシスタントから始めるべきだ」と言われました。私はこう答えました。 「私のポートフォリオをご覧いただければ、撮影経験が十分にあることは理解いただけるはずです。ただ、商業撮影の機会が欠けているだけです。今の私はいわば『真っ白な紙』のような状態ですが、それは大きな利点でもあります。既存のカメラマンのようにスタイルが固まっておらず、非常に高い可塑性を持っていますから。」 この言葉が決め手となり、無事に初めてのフォトグラファーとしての仕事が決まりました。 ー新卒1年目から2年目の間にどのような経験をされたのか教えてください 会社の先輩方と一緒に参加する撮影は、そのすべてが学びの連続でした。 商業撮影の現場は、学校の教室よりもはるかに直感的です。撮影プランの企画、スタッフとの調整、現場のディレクション、そしてレタッチの管理まで、これらはすべて時間をかけて積み重ねていくべき経験だと実感しています。 ー学生時代の経験が今に活きているなと感じることはありますか? 学生時代に数多くのフィルム撮影に触れ、それぞれのフィルムが持つ特性を深く理解しました。 その経験が、現在のレタッチに非常に大きな助けとなっています。 ーこれから挑戦するあなたへ 年轻时要面对很多挑战和羞耻感。这样你就可以成为一个很好的摄影师 若い時はたくさんの挑戦と恥ずかしさに直面しなさい。 そうすれば、きっと良いカメラマンになれます。 取材/PicoN!編集部 市村 ↓PicoN!アプリインストールはこちら
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おすすめ記事一覧【展示レポ】種村有菜・30周年記念展が東京・池袋で開幕。誰もが憧れた少女たちの物語を生原画で巡る、あの頃のときめき。
ページをめくるたびに胸が高鳴った、あの頃。 そのきらめきは、時間が経っても消えることはなかった。 種村有菜・30周年記念展は、そんな記憶をそっと呼び起こす場所だ。生原画の一枚一枚に宿る線や色を追いながら、少女たちの物語を巡る体験は、ただの展示鑑賞にとどまらない。 種村有菜先生の画業30周年を記念した原画展は、東京・大阪・京都の3都市を巡る。「種村有菜 30周年記念展 きらめく少女たちの夢物語」東京会場が、4月17日(金)〜5月18日(月)の期間中、アニメイト池袋本店8階「Space Galleria」にて開催中。 [caption id="attachment_28678" align="aligncenter" width="530"] 種村有菜先生描きおろしビジュアル ©種村有菜/集英社 ©種村有菜/白泉社[/caption] 漫画家・種村有菜先生は、1996年少女漫画雑誌「りぼん」でデビュー。1998年に連載開始の『神風怪盗ジャンヌ』は累計発行部数600万部を突破する大ヒットとなり、テレビアニメ化。その後も『満月をさがして』、『紳士同盟✞』(しんしどうめいくろす)、『桜姫華伝』など人気作品を多く送り出してきた。 繊細な画風と、少女たちの強さと儚さを描く物語で、多くの読者の心を掴んできた。 筆者もまた種村有菜先生の作品に魅了された1人。『神風怪盗ジャンヌ』で、主人公・まろんの寂しさと向き合いながらも気丈に振る舞う姿に憧れた。『時空異邦人KYOKO』のファンタジーな世界観に惹かれ、誕生から眠り続ける妹・憂の秘密と、主人公・響古に隠された真実に、胸を高鳴らせながらページをめくった。『満月をさがして』は、難病を抱える主人公・満月が寿命というタイムリミットが迫る中、歌手になれるのか、英知くんと再会する事は叶うのか、と期待をしつつ、こども向けとは思えないとても重い現実も描かれており、幼いながらにショックを受けたが、種村先生のその優しい描写でハッピーエンドを迎えたのを今でも覚えている。 東京会場は、アニメイト池袋本店にある〈Space Galleria〉 会場は、東京・池袋駅から徒歩5分、アニメイト池袋本店8階の〈Space Galleria(スペース ガレリア)〉。 アニメ、マンガ、小説、ゲーム、演劇、アーティスト等、あらゆるジャンルからセレクトした作品世界を表現する、展示会専門のスペース。 アニメイトの店内に入って左手のエレベーターを上がり、左手に進むと、ギャラリーの入り口に辿り着く。 きらめく装飾がありなっちワールドの入り口 本展のメインビジュアルがお出迎えしてくれる。 カーテンをくぐると目に飛び込んでくるウェルカムムービーが、一気にあの頃の記憶を呼び起こしてくれる。 映像内には、種村先生からの挨拶も。最後までじっくり見てから次のブースに行こう。もうここで来て良かったと思ってしまう。 生原画で辿る少女たちの物語 ウェルカムムービーの後は、種村先生の生原画が各作品ごとに展示されていた。 『神風怪盗ジャンヌ』『満月をさがして』『紳士同盟✞』『桜姫華伝』『猫と私の金曜日』と順路を進んでいく。 各作品の世界観を踏襲した空間装飾も見所。 繊細な線、トーン技術、ホワイト処理、美しい原画を間近で見る事ができる。 本誌やコミックスでは見る事のできない細かな印刷指示がそのままの状態で展示されている。 どんな事が書き込んであるかは、ぜひ足を運んで確認してほしい。 コスチュームエリア 『猫と私の金曜日』の先には、コスチュームエリアが広がる。 [caption id="attachment_28687" align="aligncenter" width="750"] 衣装制作:chioriya[/caption] 灰音、ジャンヌ、桜、タクト、めろこの衣装をリアルに再現している。 制作者のchioriyaさんによると、コスチュームの後ろにもスペースを確保しているので、360度ほぼゼロ距離で見られます。との事。細部へのこだわりをぜひ会場でご覧いただきたい。 圧巻のカラー原稿が一堂に会する 今ではデジタル着彩が一般的だが、ここに飾られているのは、コピックなどの画材を使用したアナログ着彩のカラー原稿。種村先生の緻密な着彩を目に焼き付けて欲しい。 筆者が特に注目したのは、種村先生が高校生時代に描いた『時空異邦人KYOKO』のカラー原稿。隣には、連載時に作成された同じ構図の『時空異邦人KYOKO』のカラー原稿が並んでいる。 高校時代に描いた一つの物語を原点に、技術を磨き続け、プロの漫画家として連載作品へと昇華させた点に大きな価値がある。高校生時代の発想や情熱を一過性のものにせず、時間をかけて育て上げ、より多くの読者に届ける作品へと進化させたその歩みは、創作に対する強い信念と継続力の証と言えるだろう。 あなたの家にもまだあるかもしれない、あの懐かしの付録が勢ぞろい カラー原稿を見た後は、これまでの種村先生の執筆された作品を年代とともに振り返る年表とともに、「りぼん」に毎号ついてきた種村先生作品の付録や、応募者全員サービスのアイテムが展示されていた。 りぼんっこであれば、一度は申し込んだであろう「応募者全員サービス」 応募した方全員にアイテムがプレゼントされるサービスで、応募券とともに未使用の切手を指定金額分同封して申込む。 他誌が定額小為替という小学生としては、購入方法が分からないものを同封する指定だったのに比べ、切手を購入するという小学生でも分かりやすいアイテムで申し込みができた為、母に切手をねだって応募したのをとても覚えている。 ステーショナリーセットは、届けばすぐに学校に持ち込み、友達に自慢した。 持っていなかったバッグを友達が持ってきた時には、羨ましく思った。 付録を見ていると、小学生の時の記憶が鮮明に思い出された。 種村先生描きおろしの各作品のキャラクターたちのフォトスポット 最後のエリアはフォトスポット。 種村先生が描きおろした各作品のキャラクターたちの等身パネルが迎えてくれる。 満月とフルムーンの身長差に心躍る。 こちらもファンにはたまらない距離まで近づいて撮影する事ができる。 本当にファン想いの展示だった。 最後は、物販ブース。ファンにとってはたまらない複製原稿や、物語に登場するキャラクターのぬいぐるみや、アクリルスタンド、ふろく風便箋などお金がいくらあっても足りないラインナップが陳列されていた。 [caption id="attachment_28694" align="aligncenter" width="600"] ©種村有菜/集英社©種村有菜/白泉社[/caption] [caption id="attachment_28693" align="aligncenter" width="600"] ©種村有菜/集英社©種村有菜/白泉社[/caption] その中でも筆者がときめいたのは、キャラクターのアイテムをモチーフにしたチャーム! [caption id="attachment_28695" align="aligncenter" width="600"] ©種村有菜/集英社©種村有菜/白泉社[/caption] 杖ちょんがなんとグッズに!怪盗シンドバッドの剣も、逆滝のクリスタルソードも、桜の血桜もどれも物語から出てきたような造りにまじまじと見惚れてしまう。 ジャンヌのロザリオは新旧どちらにしようか迷ってしまう、、、。 本展開催を記念したトークショーや、コラボカフェも展開されている。 少女から、大人になり、そして、母になり、ときめきには、そっと蓋を閉じてきた。 きらめく少女たちの世界があなたを優しくあの頃に連れて行ってくれるだろう。 『種村有菜 30周年記念展 きらめく少女たちの夢物語』東京会場は5月18日(月)まで 《展覧会情報》 『種村有菜 30周年記念展 きらめく少女たちの夢物語』 【開催期間】2026年4月17日(金)~2026年5月18日(月) 【開催時間】10:00~21:00 【開催場所】Space Galleria 〒170-0013 東京都豊島区東池袋1-20-7 アニメイト池袋本店8F ※最終入場は閉場の30分前まで ※最終日5月18日(月)は17:00閉場(16:30最終入場) 【チケット】前売券:2,000円(税込)・当日券:2,200円(税込) 【大阪会場】 【開催期間】2026年6月19日(金)~2026年7月20日(月・祝) 【開催時間】月~金 11:00~20:00 土・日・祝 10:00~20:00 【開催場所】Space Gratus 〒556-0005 大阪府大阪市浪速区日本橋4-15-17 アニメイト大阪日本橋別館3F ※最終入場は閉場の30分前まで ※最終日7月20日(月・祝)は17:00閉場(16:30最終入場) 【チケット】前売券:2,000円(税込)・当日券:2,200円(税込) 取材協力:株式会社ムービック 取材/PicoN!編集部 市村 撮影/学生サークルSHATO 宮田 ↓PicoN!アプリインストールはこちら
挑戦と羞恥の先に、世界があった。 ——ブランド広告を撮るフォトグラファーの原点
「日本で写真を学びたい」「世界で活躍したい」——そんな夢を抱く人へ。留学生として日本で写真を学び、多くの挑戦と立ちはだかる壁を乗り越えて歩み続けてきた1人のフォトグラファー・陳明剣さん。 いまではNIKEをはじめとするブランドのメインビジュアルを手がけています。 学生時代の葛藤や努力、そして背中を押した恩師の言葉とともに、その原点をたどります。 挑戦を重ねて築いたキャリアと、現在のフィールド ー簡単に経歴を教えてください 母国の中国の大学では、グラフィックデザインを専攻していました。大学で写真を撮り始め、大学卒業後、2016年に来日しました。JCLI日本語学校(現:早稲田EDU日本語学校 王子校)で日本語を学び、2018年から2020年まで日本写真芸術専門学校に通っていました。 卒業後は、母国である中国に帰国して、カメラマンとして働き始めました。 2022年に自分のスタジオを立ち上げて、今は中国で広告写真などの商業写真を撮影しています。 ー現在の仕事内容について教えてください コマーシャルフォトグラファーをしています。 主に、広告のメインビジュアル(KV)や芸能人のイメージビジュアル、ブランドのlookbook、それから雑誌などの撮影をしています。 ー世界の現場で感じる、写真の醍醐味は? 街を歩いている時やショッピングモールを訪れた時に、ふと自分が手がけた作品を見かける瞬間があります。そのたびにとても嬉しい気持ちになりますし、多くの人が行き交う場所で、自分の撮影したビジュアルが実際に使われているのを見ると、大きな達成感と、この仕事を続けてきて良かったという実感が湧いてきます。 挑戦の現場で培った、プロとしての視点 ークライアントワークで意識していることがあれば教えてください 仕事をする上では、誠実さが一番大切だと思っています。 商業カメラマンなので、お金を稼ぐことも大事ですが、それ以上に、クライアント一人ひとりに100%の真心で向き合いたいと考えています。おかげさまで、「いつ連絡しても回答が早いし、すぐに問題を解決してくれてとても助かる。」とお褒めの言葉をいただく機会が多いです。 ー写真のお仕事に携わっているからこそ得られたスキルや技術があれば教えてください 写真という仕事を通じて、私は完全に計画を重んじる「J人」タイプになりました。 「J人(J型人格)」とは、MBTI性格診断において「Judging(判断)」タイプを指し、計画性、組織力、結果志向を重視する人々のことです。突発的な変化よりも整理された状況を好み、期限を守ることを大切にする傾向があります。 物事を前もって計画する習慣がつき、プライベートの旅行でも詳細なスケジュールを作成し、1日の流れをしっかり管理するようになりました。 ー仕事で大変だったと感じたことはありますか? ロケーション撮影では、天候に左右される事が多く、なかなか計画通りに撮影が進まない事が多く発生しますね。 一見華やかに見える撮影の現場ですが、体力的にも精神的にもハードな面があります。 体力面で言うと、標高5,000メートルの雪山で高山病と戦いながら雨に打たれてシャッターを切ったり、45度の夏日に熱中症で倒れそうになりながらカメラを回したり。忙しい時は、1日の睡眠が3時間なんてこともよくあります。 精神面では、クリエイティブな仕事だからこその葛藤があります。[自分の写真最高!]→[満足]→[壁にぶつかる]→ [自分への疑い]→[どん底]→ [変化と成長]→[再び、自己肯定]というサイクルを、だいたい1年周期で繰り返しながら進んでいます。 恩師との出会いが導いた、フォトグラファーへの道 ー日本で写真を学ぼうと思った理由を教えてください 日本の美学に惹かれて、日本を選びました。 大学時代にグラフィックデザインを専攻していた為、多くの日本のデザインに触れる中で、日本独特の美意識に強く惹かれていきました。中でも影響を受けたのが、グラフィックデザイナーの原研哉氏の思想でした。 愛読書の一つが、『Designing Design(デザインのデザイン)』です。同書は、デザインを単なる見た目の美しさではなく、「物事の見方そのものを設計する行為」として捉え直した一冊で、日本の美意識や“余白”の考え方などにも触れながら、日常の中に新しい価値を見出す視点の大切さを説いています。 ー進学先をNPIに決めた理由を教えてください 留学生向けの進学相談会でNPIの存在を知り、体験授業を申し込みました。NPIのオープンキャンパスで、詳しくお話を聞いて、その場ですぐに「ここだ!」と決断しました。 ーNPIでは、どんなことを学んでいましたか? 写真に関するあらゆる知識を学び、この2年間の学生生活を通して、ようやく自分なりの表現の軸を構築することができました。 ー学生時代はどんな作品を作られていたんですか? スナップ、風景、ファッションなど幅広く撮影してきましたが、メインは、ファッションポートレートゼミを専攻していた為、モデルを起用したファッションポートレートの作品を制作していました。 ー印象に残っている授業や先生はいますか? 一番印象に残っているのは、大野隼男先生の授業です。 [caption id="attachment_28531" align="aligncenter" width="750"] (写真)大野隼男先生プロフィール写真[/caption] 先生はいつも多くの機材を教室に持ち込んで見せてくださり、ライティングの技術を丁寧に教えてくださいました。写真に対する先生の真摯な姿勢に心を打たれ、「自分も将来フォトグラファーとして、100%の誠実さで仕事に向き合おう」と決心しました。 卒業して中国へ帰国する際、空港で待機していた時に、大野先生から中国語でメッセージが届きました。 「年轻时要面对很多挑战和羞耻感。这样你就可以成为一个很好的摄影师」 その言葉は、仕事でスランプになったり、壁にぶつかるたびに、今でも私の背中を押してくれます。 ー学生時代に力を入れていた活動はありますか? 自主制作の作品には、多大なエネルギーを注いできました。 ー在学中にこれはやってよかった、逆にやっておけばよかった事はありますか? 在学中に有志で参加した文化服装学院ファッション流通科スタイリストコースの学生たちとの作品制作です。スタイリストを目指す学生さんの好みをヒアリングし、どのような作品を制作するかを話し合い、撮影に挑みました。非常に学びの多い経験となりました。 [caption id="attachment_28535" align="alignleft" width="1024"] (写真)NPIのホールで行われた文化服装学院の学生さんとの顔合わせの様子[/caption] [caption id="attachment_28532" align="alignleft" width="500"] (写真)実際に撮影された作品[/caption] 隔離期間から始まった、フォトグラファーとしての挑戦 ー陳さんは、卒業後、すぐに母国の中国へ帰国していましたね。就職活動について教えください 卒業した2020年3月は新型コロナウイルスが流行し始めた時期で、卒業後はすぐに帰国しました。 3月中旬に帰国し、ホテルでの2週間の隔離期間中、ずっと履歴書を送り続けました。4月から面接を受け始めたのですが、 ある会社のディレクターから「新卒ならまずはアシスタントから始めるべきだ」と言われました。私はこう答えました。 「私のポートフォリオをご覧いただければ、撮影経験が十分にあることは理解いただけるはずです。ただ、商業撮影の機会が欠けているだけです。今の私はいわば『真っ白な紙』のような状態ですが、それは大きな利点でもあります。既存のカメラマンのようにスタイルが固まっておらず、非常に高い可塑性を持っていますから。」 この言葉が決め手となり、無事に初めてのフォトグラファーとしての仕事が決まりました。 ー新卒1年目から2年目の間にどのような経験をされたのか教えてください 会社の先輩方と一緒に参加する撮影は、そのすべてが学びの連続でした。 商業撮影の現場は、学校の教室よりもはるかに直感的です。撮影プランの企画、スタッフとの調整、現場のディレクション、そしてレタッチの管理まで、これらはすべて時間をかけて積み重ねていくべき経験だと実感しています。 ー学生時代の経験が今に活きているなと感じることはありますか? 学生時代に数多くのフィルム撮影に触れ、それぞれのフィルムが持つ特性を深く理解しました。 その経験が、現在のレタッチに非常に大きな助けとなっています。 ーこれから挑戦するあなたへ 年轻时要面对很多挑战和羞耻感。这样你就可以成为一个很好的摄影师 若い時はたくさんの挑戦と恥ずかしさに直面しなさい。 そうすれば、きっと良いカメラマンになれます。 取材/PicoN!編集部 市村 ↓PicoN!アプリインストールはこちら
展示ひとつに5~6年 ー美術品の「輸送」を支える壮絶なこだわりー
美術館や博物館では、国内外の有名な博物館・美術館・寺院などから出展された歴史的に有名な絵画や彫刻、仏像、工芸品など様々な美術品が企画に合わせて展示されています。この美術品たちはどうやって所蔵場所から運ばれたのでしょうか。美術品輸送の大手、日本通運株式会社の吉仲さんに取材させていただきました。 安全に運ぶこと。それ以上に“安心して任せてもらうこと”が大事。 ー美術品輸送とはどのような仕事ですか? 美術品輸送とは、絵画や彫刻、文化財などの繊細な作品を専門の知識と技術で運ぶ仕事です。専用の資材や機材を使い、梱包から輸送、そして展示設営までを担います。一般的な物流と大きく違うのは、扱うものが全て一点ものだということです。振動や湿度、温度などの影響を受けやすいため、作品ごとに最適な方法を考えながら作業を進めます。 依頼は主に美術館や博物館の学芸員、作家、コレクターなどから寄せられます。「作品を運んでほしい」という依頼から仕事が始まるケースが多いことが特徴です。安全に運ぶことはもちろん、主催者と所蔵者が“安心して任せてもらえる作業を心がけること”が我々、美術品輸送のメインだと考えます。 大きな展覧会では5~6年前から話が始まる ー展覧会の輸送準備はいつ頃から始まるのでしょうか? 展覧会の規模によって準備期間は大きく異なります。初出しの仏像などの文化財を扱う大型展では、5〜6年前から相談が始まることもあります。一方、一般的な企画展では半年前から1年前ほど、遅い場合には3か月前に依頼が来ることもあります。輸送準備の段階で、作品を所蔵する寺院や所蔵者、作家個人の理解を得ることが欠かせません。そのため、美術館の担当者と一緒に所蔵先を訪れ、梱包や輸送方法を説明することもあります。 作品を安全に運ぶ技術を示し、「安心して貸し出せる」と思ってもらうことも重要な役割です。海外輸送では航空機を使用するため、余裕を持ったスケジュールが組まれています。基本的に出展側が輸送スケジュールを決めますが、多少トラブルがあって遅れても展覧会に到着が間に合うようにスケジュール組むように輸送のプロとしてアドバイスをします。 「効率」<「無理をしないこと」。ひと手間かかっても確実な方法を選ぶ。 ー 梱包や輸送で特に重要なことは何ですか? 梱包で最も重要なのは、作品の素材を理解することです。絵画、彫刻、土器など素材はさまざまで、それぞれに適した資材を選ぶ必要があります。作品のサイズに合わせた箱をオーダーメイドで作り、内部には緩衝材を配置します。輸送には振動を抑えるサスペンション付きの専用車両を使うなど、細かな配慮が求められます。何よりも大切なのは「無理をしないこと」。効率よりも安全を優先し、一手間二手間かかっても確実な方法を選ぶことが基本です。 美術品輸送は輸送だけではなく展示作業にも関わっています。学芸員の指示をもとに、作品の高さや間隔を調整しながら展示を完成させていきます。大きな展覧会では、輸送・展示に関わる人数が延べ300人以上になることもあります。多くの人が関わりながら、一つの展覧会が形になっていきます。 10年で一人前と言われるような業界 ー美術品輸送の技術はどのように身につくのでしょうか? 社内では研修制度があり、熟練スタッフの指導を受けながら実践的に技術を身につけていきます。 現場では経験の浅いスタッフが一人で作品を扱うことはありません。必ず先輩とチームを組み、作業をしながら学びます。美術品の梱包自体は熟練スタッフが行い、若手のスタッフは資材や梱包材の用意など後方支援を行います。美術品輸送は「10年で一人前」と言われるような業界です。習練の職柄なので、コツコツ粘り強い方が向いている仕事です。長く経験を積んだスタッフでも「日々、学び続ける。」と感じながら仕事を続けています。 美術品は失敗が許されない仕事です。どの案件でも神経を使いますが、縄文土器や弥生土器、修復歴のある彫刻などの古い文化財や初めて運び出される作品などは、どこが弱く、どこに力をかけてはいけないのかを慎重に見極めなければなりません。作品は一つとして同じものがないため、経験と知識をもとに判断していく必要があります。 現代アートを運ぶ難しさ ー輸送が特に難しい美術品などはありますか? 現代アートの輸送には独特の難しさがあります。新しい素材や複雑な構造の作品も多く、強度が分かりにくい場合があるためです。特に個人作家の場合、「簡単に運べる」と思われている作品でも、実際には非常に壊れやすいことがあります。我々の経験や技術と作家の考え方の違いをどう埋めるかが難しく重要な点になります。「どんな作品でも運びます。」でも、壊れないとは言っていません。だからこそ作り手には、輸送も想定した「壊れにくい作品」を作って欲しいという思いがあります。 傾きや吊り方が気になる ー美術品輸送ならではの“職業病”はありますか? 出張でビジネスホテルに行った時に、壁にかかっている絵の傾きは気になってしまいます。どういう吊り具を使ってるのか気になって、壁と絵の間を見てしまいます。 私たちが目にする美術館・博物館の作品は、背後にはこうした見えないプロの仕事で支えらています。熟練の技術と経験、知識で美術品を安全に運んでいます。海外から日本に有名な作品が貸し出されるのは、こうした安全に運ばれる美術品輸送のみなさんの仕事が信用を積み重ねて繋がっています。展覧会を支えるもう一つの専門職――それが美術品輸送の世界です。ぜひ、展示を見る際には「この作品はどうやって運ばれたのだろう」と想像してみてください。展示を見る視点が増えることで、きっと充実した鑑賞になりますよ。 取材協力:日本通運株式会社 日本通運株式会社公式HP PicoN!編集部 文:武田 ↓PicoN!アプリインストールはこちら
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