心躍る「発見」と「ひらめき」を
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最新記事一覧【写真学校教師のひとりごと】vol.38 清野健人について
わたし菊池東太は写真家であると同時に、写真学校の教員でもあった。 そのわたしの目の前を通り過ぎていった若手写真家のタマゴやヒナたちをとりあげて、ここで紹介してみたい。 その人たちはわたしの担当するゼミの所属であったり、別のゼミであったり、また学校も別の学校であったりとさまざまである。 これを読んでいる写真を学ぶ学生も作品制作に励んでいるだろうが、時代は違えど彼らの作品や制作に向かう姿が少しでも参考になれば幸いだ。 久しぶりに清野健人に会って驚いた。 学生時代の清野は中肉中背というよりも、ちょっと細いイメージだったが、今はゆったりとした感じで、なかなか好感がもてる風体になっている。 なにも知らないで会うと、あの清野だと気がつかないのではないかと思ってしまいそうな変わり様だ。 太いもみあげと黒々としたあご髭、そして学生時代からは30キロ増えたという体躯。 別人のごとしである。 かれはかつて猿を撮っていた。 猿を撮るといっても、猿はどこにでもいるというものではない。 猿は集団で生活する生き物だ。特定の場所に出かけて行かなければ撮ることはできない。 清野が撮ろうと思った猿は、長野県山ノ内町にある地獄谷野猿公苑一帯に住む野生のニホンザルだ。 ここの猿は寒い冬には体を温めるために、人間のように天然の温泉に浸かるので、その様子を見に日本だけではなく海外からも人が集まってくる。 それを撮って、かれは2020年にニコンサロンで「地獄谷の日本猿」という写真展をやった。 地獄谷へ度々でかけてゆき、ひたすら猿を追いかけて撮った写真群だった。 いまかれは鹿を撮っている。 今回は撮影の度にわざわざ家から通ったりしないで、その撮影地、地獄谷の近くに住んでしまえばいいのではないだろうか。 そこでなんらかの仕事なりバイトの口を見つければいい。 いちいち出かけていく手間も費用も省けると思うのだが。 そこに住むことによって、余裕をもってじっくりと鹿を観察することができるのではないか。 落ち着いて観察できる、というのが肝心なのだが、受け入れられるかな? かれの鹿の写真は、猿の写真の頃に比べると情感がでてきた。 人間は環境を変えることによって、今までは見えなかったものが見えてきたり、感じるということが多々あるものだ。 以前は目の前にあるものをひたすら撮っていたのだが、鹿を目にして何かを感じ、それを映像化しようという意志というか、想いを感じる。 写真に想いを込めることにいたったようだ。 猿より鹿は進歩すると思うよ、きっと。 清野の精神、考え方はなかなか感受性に富んでいて、もともと創作には向いているのだ。 もっと自信を持って考え、自分が感じたことをそのままストレートに表現すればいいと思う。 そうすることによって、より清野らしい写真を撮ることができるのだ。 表面的な言葉ではなく、もっとデリケートなものごとに対する心のかまえや態度は、人間よりもこういった動物には伝わりやすいので、清野は動物撮影に向いているのではないだろうか。 ニコンでの展示を経験し、自分のしてきたことをある程度肯定され、自分の考えを少し前に進めることができたことは、かれにとって大きな進歩だったろう。 動物に対して様々な考えが、清野には多くある筈だ。 そんなことを考えながら、これからもシャッターを押してみよう。 限られたことにせよ、動物との意思の疎通は清野だからこそできているのだ。 もうひと頑張りすることで次の新しい人生が見えてくると思う。 菊池東太 1943年生まれ。出版社勤務の後、フリー。 著作 ヤタヘェ~ナバホインディアン保留地から(佼成出版社) ジェロニモ追跡(草思社) 大地とともに(小峰書店) パウワウ アメリカインディアンの世界(新潮社) 二千日回峰行(佼成出版社) ほか 個展 1981年 砂漠の人びと (ミノルタフォトスペース) 1987年 二千日回峰行 (そごうデパート) 1994年 木造モルタル二階建て (コニカプラザ) 1995年 アメリカンウエスト~ミシシッピの西 (コニカプラザ) 1997年 ヤタヘェ 北米最大の先住民、ナバホの20年 (コニカプラザ) 2004年 足尾 (ニコンサロン) 2004年 DESERTSCAPE (コニカミノルタ) 2006年 WATERSCAPE (コニカミノルタ) 2009年 白亜紀の海 (ニコンサロン) 2013年 DESERTSCAPE-2 (コニカミノルタ) 2013年 白亜紀の海2 (ニコンサロン) 2015年 日系アメリカ人強制収容所 (ニコンサロン) ほか ↓PicoN!アプリインストールはこちら
「美術のこもれび」Rayons de soleil dans l’art–No30:『 アルベール・マルケ Albert Marquet 』展 について
専門学校日本デザイナー学院東京校 講師の原 広信(はらひろのぶ)です。 今回は今年9月に開催される『 アルベール・マルケ展 』で展示公開される作品をいくつかご紹介します。 アルベール・マルケは1875年、フランスのブルドーに生まれて後にパリに住み、やがて画家マチスとも友好を結んで、フォーヴィスム( Fauvisme / 野獣派 )絵画を模索しています。しかしマチス、ヴラマンク、ドランといった画家たちの極彩色あふれるタッチとは一線を画していて、むしろグレー(灰色)を用いる穏やかな作風の絵画を志向しています。 ※下線部『美術のこもれび 第10話 アンリ・マチス』をご参照ください。 [clink url="https://picon.fun/art/20230411/"] では、作品を見ていきましょう。 [caption id="attachment_29747" align="aligncenter" width="370"] 【 アルベール・マルケ Albert Marquet(1875~1947)『 ル・アーヴル、船渠 / Le Havre, ie bassin 』1906年 61.4 × 50.3cm カンヴァスに油彩 Musée d'art moderne André Malraux 所蔵 Le Havre / フランス 】 ※ソース/画像引用元:https://www.muma-lehavre.fr/fr/expositions/marquet-en-normandie マルロー美術館公式HP[/caption] こちらは1906年にマルケが描いた作品です。画面の3分の2あたりになだらかな曲線で仕切られていて、下(手前)側は陸地、上(奥)側は港の光景が描かれています。奥の遠景は海岸に沿って並んだ建物が明るく描かれ、いくつかの船と共に海面にその姿を映しています。ル・アーブル港はフランス北西部ノルマンディー地方にあり、大西洋に面しています。その色彩と明るさに比べると、手前側はグレー(灰色)が支配しており、残雪の残る道を寒そうに足早に人々が往来しています。このグレーですが、いろんなニュアンスを含んだ色彩であるのがお分かりでしょう。 さらに別の作品を見ることにしましょう。 [caption id="attachment_29748" align="aligncenter" width="416"] 【 アルベール・マルケ Albert Marquet(1875~1947)『 ポン=ヌフとサマリテーヌ / Le Pont-Neuf et la Samaritaine 』1940年 65 × 81cm カンヴァスに油彩 ひろしま美術館 所蔵 広島市 / 日本 】 ※ソース/画像引用元:https://www.hiroshima-museum.jp/collection/eu/marquet.html ひろしま美術館公式HP[/caption] こちらは国内、広島市中心部にある美術館が収蔵する作品です。フランス、パリのセーヌ川にかかる橋「ポン=ヌフ」とその向こうドーム型に見える建物が「サマリテーヌ」という百貨店になります。こちらも冬の景色なのが分かりますね。全体がグレー(灰色)の画面ですが、その中でも微妙な色彩が使われています。ポン=ヌフを往来する車両は橋に応じた遠近法に従って描かれるとともに、近景(手前側)はコントラストを強く描き、橋を渡った向こう側の遠景は少し霞んで見える空気遠近法によって距離感を演出しています。 [caption id="attachment_29750" align="aligncenter" width="590"] 【 アルベール・マルケ Albert Marquet(1875~1947)『 ポン=ヌフ / The Pont Neuf 』1906年 カンヴァスに油彩 National Gallery of Art 所蔵 ワシントンDC / 米国 】 ※ソース/画像引用元:https://www.nga.gov/artworks/46639-pont-neuf National Gallery of Art公式HP[/caption] 同じ橋を描いています。『ポン=ヌフとサマリテーヌ』が描かれた1940年から34年も前、1906年の作品です。同じ橋ですが、渡る乗り物がやはりずいぶん違いますね。比較してみてください。こちらの橋には馬車のような乗り物が走っていますが、1940年の橋にはモータリゼーションが発達しています。またこちらの作品はタッチ(筆致)が荒く、まだフォーヴィスム( Fauvisme )の影響が見られます。 [caption id="attachment_29751" align="aligncenter" width="595"] 【 アルベール・マルケ Albert Marquet(1875~1947)『 トゥルヴィルのポスター / Poster at Trouville 』1906年 カンヴァスに油彩 National Gallery of Art 所蔵 ワシントンDC / 米国 】 ※ソース/画像引用元:https://www.nga.gov/artworks/106378-posters-trouville National Gallery of Art公式HP[/caption] さらにフォーヴィスム( Fauvisme / 野獣派 )的な作風の作品です。「トゥルヴィル」のいうのは港町の地名で、ノルマンディー地方の湾岸リゾート地。比較的にパリに近いため、バカンスシーズンには多くの行楽客で賑わいます。日傘をさしてそぞろ歩きをする人たちの後にいくつもの大きな看板があり、作品タイトルにある『ポスター』とはこれらの手描き看板をさしています。青い空にカラフルな色彩が映えていますね。 左に並んだテントに見えているのは、屋台のお店でしょう。お土産などを売っているのかもしれません。 それでは、最後にマルケの素描を見てください。 [caption id="attachment_29752" align="aligncenter" width="283"] 【 アルベール・マルケ Albert Marquet(1875~1947)『 幸福な男 / Un nomme heureux 』1904年 厚紙に裏打ちされた紙に、筆と墨で描画 Musée des Beaux-Arts de Bordeaux 所蔵 Bordeaux / フランス 】 ※ソース/画像引用元:https://musba-bordeaux.opacweb.fr/fr/notice/bx-1960-5-12-un-homme-heureux-ccf40fe6-b6df-444a-9627-24f657a3cbdd Musée des Beaux-Arts de Bordeaux公式HP[/caption] この素描はフランスのボルドー美術館に収蔵されています。大きな歩幅で颯爽と歩く男性を筆と墨を使って描いています。筆致に勢いがあって、手早く描いた感じが良いですね! 姿と顔の表情にタイトル(画題)を重ね合わせると、大変ユーモラスです。左下に画家のサインが見えています。 この『幸福な男』を含め、今回ご紹介した作品のいくつかを見ることができる展覧会が9月22日より東京、新宿駅西口徒歩5分にある美術館で開かれます。ぜひマルケの本物のグレーと筆遣いを体感しに出かけましょう! ※下線部:『ル・アーヴル、船渠』、『ポン=ヌフとサマリテーヌ』、『幸福な男』 … … … … … … … … … … … … … … … 【展覧会情報】 ■ 『 開館50周年記念 アルベール・マルケ展 』 2026年 9月22日(火)~2026年 12月13日(日) SOMPO美術館 (東京都・新宿区) https://www.sompo-museum.org/en/exhibitions/2025/albertmarquet/ ※月曜日は休業、詳細は公式HPでご確認ください。 [clink url="https://picon.fun/art/20260614/"] ↓PicoN!アプリインストールはこちら
【ポケコロツイン イラストコンテスト】最優秀賞受賞!コミックイラスト科1年・憂白さんにインタビュー
『ポケコロツイン』イラストコンテストで最優秀賞! 人気アプリ『ポケコロツイン』のイラストコンテストで、見事最優秀賞を受賞された、P.N.憂白さんにお話しを伺いました! 今回の受賞作品は、約1,500作品の応募の中から選ばれた作品で、「火と水の双子」をテーマに、恋をしたことで姿が変化していく二人のキャラクターを描いた作品となります。 お話しを伺った現在で、憂白さんは、福岡県博多区にある専門学校日本デザイナー学院九州校のコミックイラスト科の1年生。今回は、受賞の喜びや作品に込めたこだわり、制作の裏側、そして将来の夢について、じっくりとお話を伺いました。 ~最優秀賞作品「火と水の双子」~ ポケコロツインとは 『ポケコロツイン』は、ふたごのアバター「ココロン」の着せかえを楽しめる人気アプリです。 ふたりのココロンを自由にコーディネートし、ふたごコーデや恋人コーデ、親子コーデなど、さまざまなファッションを楽しむことができます。 《ポケコロツイン公式サイト》 憂白さんに直接インタビュー!!! ――最優秀賞を受賞したと知ったとき、率直な感想を教えてください。 「本当にびっくりしました!」 7月中旬頃に結果発表があることは知っていたものの、どこで発表されるのかは分からなかったという憂白さん。いつものように『ポケコロツイン』を開いたところ、突然、受賞のお知らせが画面に表示されたそうです。 「自分のイラストが出てきて、『えっ、私の絵!?』ってなって、変な声が出ました(笑)」 すぐにお母さんや先生にも電話で報告し、「おめでとう!」と祝福してもらったとのこと。今回のコンテストには約1,500作品が応募され、憂白さんの作品は一般投票の対象となる約50作品に選出。その後の審査を経て、見事最優秀賞に輝きました。 ――今回のコンテストに応募したきっかけは? もともと『ポケコロツイン』をプレイしていた憂白さん。以前にも同じコンテストに応募した経験があり、今回は「リベンジしたい」という気持ちもあったそうです。 「前回応募したときは、今の自分から見るとまだまだだなと思う作品だったので、もう一回挑戦したいと思っていました。そんなタイミングでXでコンテスト開催のお知らせを見つけて、『やってみよう!』と思いました」 普段から楽しんでいるゲームだったことも、挑戦への大きなきっかけとなりました。 ――受賞作品のテーマやコンセプトを教えてください。今回の公式テーマは「火と水の双子」。 憂白さんは「火と水は、本来まったく違う性質を持つものだけど、恋をしたことでお互いの状態が変化したら面白いのでは?」と考えました。 水のキャラクターは、沸騰して少し赤くなり、火のキャラクターは高温になって青くなるという設定。「誰が見ても分かりやすくて、ちょっとコミカルで、かわいいと思ってもらえるデザインを目指しました」双子らしさを表現するため、二人の衣装にはお揃いのリボンやポシェットなどを取り入れています。 中でもお気に入りなのが、水槽をモチーフにした「アクアリウムパーカー」と、火をイメージした「アルミホイルパーカー」。さらに、二人のキャラクターの周りには細かな遊び心も。 「水の子のところでは元気に泳いでいる魚が、火の子のところでは焼き魚になっているんです。そこが一番気に入っています(笑)」目元にもこだわりがあり、双子でありながら同じ顔になりすぎないよう、片方をつり目、もう片方をたれ目にしています。 制作途中のラフ画像はこんな感じ↓ ――制作で苦労したことはありますか? 「作品自体は好きなものを詰め込んだので、最高に楽しかったです!」という憂白さん。 一番大変だったのは、学校の課題とコンテスト制作を両立するためのスケジュール管理でした。当時は複数の課題が重なっており、授業を受けながら課題をこなしさらにコンテスト作品の制作も進めるという忙しい時期。 それでも「提出期限を守ることは絶対」と決め、どの課題もおろそかにせず、コンテスト作品も締切までに完成させました。 「大変でしたけど、好きなことなので楽しかったです!教科書を見て学ぶような勉強よりも、自分が好きなことに関する課題の方が頑張れるなと思います」 ――賞金50万円は、何に使いたいですか? 「ゲームが好きなので、まずはNintendo Switch 2を買おうかなと思っています(笑)」と、嬉しそうに話してくれました。 そのほか、イラスト制作に役立つ左手デバイスや、色彩検定の勉強に必要な教材など、今後の制作活動につながるものにも使いたいとのこと。 「せっかくなので、少しは自分のために使って、残りは将来のイラストに役立つものに使えたらいいなと思っています」好きなゲームを楽しみつつ、今後の制作活動への投資もしっかり考えているようです。 ――普段はどのようにイラストを制作していますか? キャラクターデザインは、まずアナログでラフ画を描くことが多いそうです。「こういう女の子を描きたい!」と頭に浮かんだアイデアをメモしておき、そこからキャラクターの形をつくっていきます。 この他にも、日頃の習慣として、「女の子・ロングヘア・花冠・満面の笑顔」など、思いついた要素をすぐにメモして残しておくことも。 普段のイラスト制作は、主にアイビスペイントとやCLIP STUDIO PAINTで制作し、文字入れのデザイン作業などにはAdobe Photoshopも活用しています。 ――イラストレーターを目指すようになったきっかけは? 憂白さんは、特定のイラストレーターに憧れたことがきっかけではなく、幼い頃からずっと「かわいい女の子を描くこと」が好きだったことが原点。 「ずっと描いてきたので、これからも続けたいと思いました。それなら、イラストレーターになるのが一番いいのかなって」「趣味だったことが仕事になったら、それ以上ありがたいことはない」と話します。現在は女の子のイラストだけでなく、男の子や背景、二点透視などにも挑戦中。将来仕事の幅を広げられるよう、苦手な分野にも積極的に取り組んでいます。 ――専門学校日本デザイナー学院九州校を選んだ理由は? 進路を考える際には、大学進学だけではなく専門学校という選択肢も調べ、資料請求をしたことがきっかけでした。オープンキャンパスに参加した学校は少なかったものの、実際に学校を訪れて「ここだ!」と感じたそう。「先生との距離が近くて、フランクに話してくれるところが良かったです。分からないことがあったら、すぐ先生に質問しに行けるのもいいところだと思います」 ――SNSで作品を発信する中で、感じることは? 普段からXなどのSNSにもイラストを投稿している憂白さん。投稿することで多くの人に作品を見てもらえるだけでなく、「どんなイラストが世間から評価されるのか」を知ることができるのもSNSの魅力だといいます。「自分ではすごく良く描けたと思った作品が、意外と伸びなかったりします。逆に、思っていなかった作品が反応されたりして面白いです」ファンアートは反応が集まりやすい一方、オリジナル作品を見てもらう難しさも感じているそう。それでも「キャラクターデザインが好きなので、オリジナル作品をメインに発信していきたい」と、自分の描きたいものを大切にしています。 《憂白さんのX(@Ushiro_shirou)はこちら》 ――今後の目標を教えてください。 学校では、周りに絵が上手な人がたくさんいる環境だからこそ、「周りに負けないように、自分もたくさん描き続けたい」と話します。プライベートでは、今回の受賞をきっかけに、さまざまなイラストコンテストにも挑戦したいとのこと。「自分が得意そうだなと思うコンテストを見つけて、いろいろな賞を取りたいです」初めての大きな受賞が最優秀賞という結果になったことで、大きな自信にもつながりました。 ――最後に、イラストレーターを目指す後輩へメッセージをお願いします。 「義務感を感じすぎずに、自分の絵をのびのび描いてほしいです。自分が描いていて楽しいものを描くのが一番だと思います。そしてもう一つ大事なのは、課題や制作物の提出期限を守ること!(笑)好きなものを楽しく描きながら、学校の課題もしっかり取り組んで、一緒に頑張っていきましょう!」 受賞をさらなる挑戦へのスタートに。「好きだから描く」という気持ちを大切にしながら、学校で新しい技術を学び、SNSで作品を発信し、さらにコンテストへ挑戦する。今回の受賞は、憂白さんにとってゴールではなく、イラストレーターという夢に向かう新たなスタートになっています。
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おすすめ記事一覧スクリーントーンが生み出す表現を、現役漫画家と探る「アイシースクリーン展2026」
影や質感、光、空気感――漫画の中でさまざまな表情を生み出してきたスクリーントーン。半透明のフィルムに印刷された柄や網点を貼り、重ね、時には削ることで、描き手の意図に合わせて多彩な表現をつくり出せる、漫画制作には欠かせない画材のひとつです。 デジタルでの漫画制作が当たり前になった今、改めて注目したいのが、手作業だからこそ生まれるアナログ画材ならではの表現力。 そんなスクリーントーンの魅力を「再発見」できるのが、現在開催されている「アイシースクリーン展2026」です。本展では、スクリーントーンそのものではなく、スクリーントーンを用いて制作されたアナログ作品を展示。さまざまなクリエイターが生み出した作品を通して、スクリーントーンが一枚の絵にどのような表情を与えているのかを間近で見ることができます。 今回は、現役漫画家の雲七紅先生と一緒に会場を巡りながら、展示作品に使われたスクリーントーンの表現をチェック。「この表現はどうやって生まれている?」「プロはスクリーントーンをどんなふうに使ってきた?」――作品を見ながら話を聞くことで、アナログ画材だからこそ生まれる表現の面白さを探ってみました。 雲七紅 マンガ家・イラストレーター。魔法使いやファンタジーもの、女の子を描くのが好き。主な作品は、『繰り返す夜会で、今夜もまた貴方から婚約破棄を』コミカライズ担当完結(ナナイロコミックス)『ミラクルきょうふ! 本当に怖いストーリー』『ミラクル相談室 ネット&スマホのトリセツ』シリーズ(西東社)など 夏休みの原宿を抜けて会場へ JR原宿駅の表参道口を出ると、まず目に飛び込んでくるのは、夏休み真っただ中の原宿らしいにぎわい。駅前にはたくさんの人が行き交い、友達同士で歩く学生や、ショッピングを楽しむ人たちでいっぱいです。原宿といえば竹下通りを思い浮かべる人も多いかもしれませんが、今回の会場へ向かうなら、表参道口から表参道方面へ。駅を出て表参道へ向かって歩いていくと、ほどなくしてラフォーレ原宿や東急プラザ表参道「オモカド」が見えてきます。ラフォーレ原宿は表参道と明治通りが交わる交差点に位置する、原宿を代表する商業施設のひとつです。ここまで来たら、ラフォーレ原宿のある交差点を目印に明治通りを渋谷方面へ。夏休みということもあって、道沿いにはお店をのぞきながら歩く人や、目的地へ向かう若者たちの姿が途切れません。 原宿らしい活気を感じながら歩いていると、今回の展示が待つ会場へと近づいてきました。 今回の会場は、原宿マリーエンケーファー 原宿駅から徒歩7分の隠れ家のようなギャラリーです。 階段を降りて左側がギャラリーです。 アナログ画材の表現力を再発見する「アイシースクリーン展2026」 そして、いよいよ「アイシースクリーン展2026」へ。原宿の街を行き交う人々の中を抜けてたどり着いた先には、スクリーントーンを使って生み出された、さまざまなアナログ作品が待っています。 本企画展は漫画制作に欠かせないキャラクターの感情や背景、影などを表現するための画材として長年親しまれてきたアイシースクリーン(トーン)に焦点を当て、その豊かな表現力や独特の質感を再発見する内容となっています。 アイシースクリーン(トーン)とは アイシースクリーン(トーン)は、半透明のフィルムにパターンやアミ点などを印刷したコミック制作の定番商品です。約700種類ものデザインを展開しており、多くのプロ漫画家にもご愛用いただいています。本製品を使用することで、濃淡や柄はもちろん、キャラクターの感情まで豊かに表現できます。 また、フィルムの裏面はワックスタイプの接着剤で、貼ったり剥がしたりといった作業を簡単に行うことが可能です。 アイシースクリーン製品ページ:https://www.icscr.jp/icscreen/ (引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000109.000138307.html) 出典作家さんは、漫画家のみならず、イラストレーター、グラフィックデザイナーなど様々な領域で活動されている方々で、漠然と【アイシースクリーンは、漫画を制作するときに使用するアイテム】と思っていた筆者は、展示されている作品を拝見して、もっと柔軟に色々な使い方をしていいアイテムなんだと感じました。グラフィックイラストとの相性も良く、漫画作品以外でも多くの作品に愛してもらえるアイテムである事が伝わってきました。多くの方は、漫画原稿用紙に描かれていましたが、中には、日々制作で用いている和紙で制作する作家さんもいらっしゃいました。 個性豊かな作品のキャプションには、使用画材のほか、アイシースクリーンの何番のものかが掲載されていたのも、アイシースクリーン展ならでは。 数ある中から厳選されたアイシースクリーンも販売されています。 漫画制作で実際に使用するアイテムの他、アイシースクリーンのクリアファイルや、漫画原稿用紙のメモなどユニークなアイテムもたくさん販売されていました。 小学生の頃からスクリーントーンに触れ、漫画制作を続けてきた雲七先生に、スクリーントーンとの出会いや、アナログならではの表現について聞きました。 小学6年生で出会ったスクリーントーン 市村 スクリーントーンを使い始めたのは、いつ頃だったのでしょうか? 雲七紅 小学6年生の頃ですね。 当時、応募したい漫画賞があったんです。でも、漫画用品を一つも持っていなくて。放課後通っていた学童に、偶然、漫画家を志していた先生がいたので、世界堂を紹介してもらい、買いに行きました。 市村 初めて自分でスクリーントーンを買ったときのことは覚えていますか? 雲七紅 最初に買ったものは、すごくベーシックなものだったと思います。 漫画家向けのセットも売られていて、その中に必要なものが一通り揃っているものがあったので、「これで間に合うんじゃない?」という感じで手に入れました。 当時は、先生から「これを買ったほうがいい」と教えてもらったというより、とりあえず売っているところを教えてもらって、実際に買ってみた感じですね。 [caption id="attachment_29894" align="alignnone" width="563"] 雲七先生のアイシースクリーンコレクション[/caption] 初めてのスクリーントーンは「とにかく使ってみる」 市村 最初からうまく使えましたか? 雲七紅 いや、最初は貼り方がよく分かっていなかったので、うまく貼れなかったですね。スクリーントーンって、学生からするとちょっと高価なアイテムだったんですよね。1枚でもそれなりの値段がするので、失敗すると「もったいない!」という気持ちもあって慎重に貼ってました。 何回も失敗して、破れちゃったり、原稿切っちゃったり そういう経験をしながら、少しずつ使い方を覚えていきました。 「貼る・重ねる・削る」ことで変わる表現 市村 スクリーントーンを貼る技術は、どのように身につけていったのでしょうか? 雲七紅 最初からうまく貼れたわけではないです。使っていくうちに、どこに貼るか、どう重ねるか、どう扱えばきれいに仕上がるかを覚えていきました。 スクリーントーンは、同じものでも使い方によって全然違って見えるんですよね。何を見せたいのか、どこに印象を残したいのかを考えて、トーンを使い分ける。そういうことを繰り返しながら覚えていったんだと思います。 [caption id="attachment_29894" align="alignnone" width="563"] 本記事のための雲七先生のスクリーントーンを使用した描き下ろしイラスト[/caption] [caption id="attachment_29894" align="alignnone" width="563"] 本記事のための雲七先生のスクリーントーンを使用した描き下ろしイラスト[/caption] 「何にどう使うか」を考えるのが面白い 市村 今回の展示作品を見ていて、改めてスクリーントーンの面白さを感じるところはありますか? 雲七紅 人によって使い方が全然違うところですね。 同じスクリーントーンでも、何にどう使うかで表現が変わる。どこを見せたいのか、何を印象として残したいのか。 そういう使い分けを考えるのが面白いと思います。 スクリーントーンって、ただ貼ればいいというものではなくて、作品の中でどう見せるかを考えるための画材なんですよね。 デジタルになっても、アナログの経験は生きている 市村 今はデジタルで作画することも増えていると思いますが、アナログとデジタルでは、トーンの表現は変わりますか? 雲七紅 変わると思います。 デジタルだと、印刷したり書き出したり、画面サイズを拡大・縮小したりすると、網点の掛け合わせが少しズレて見えることもあります。 だから、そういうところは気をつけています。 アナログの場合は、実際に紙に貼っていくので、トーン同士の重なり方や、削ったときの見え方など、手を動かして確認しながら作っていくことができます。 デジタルにはデジタルの良さがありますが、アナログならではの感覚もあると思います。 描かない事で描かれる表現 市村 本展で気になった作品を教えてください。 雲七紅 こちらの作品です。あえて右側の風鈴の主線を描かない事で、前ボケを演出していますね。 「できて当たり前」の技術が、失われつつある 市村 スクリーントーンを使える人や、アナログで作画できる人について、最近感じることはありますか? 雲七紅 昔は、漫画を描くうえで「できて当たり前」だったことが、今は少しずつ変わってきていると思います。デジタルで作画する人が増えているので、アナログでトーンを貼ったり、アシスタントとして作業したりできる人は、以前より少なくなっている印象があります。だからこそ、今後はアナログの技術を持っていること自体が、ひとつの強みになるんじゃないかなと思います。普段デジタルで制作する事が当たり前になっていますが、久しぶりにアナログで制作したいという気持ちになってきました! スクリーントーンを知ることは、表現の引き出しを増やすこと スクリーントーンは、漫画を描く人にとってはおなじみの画材かもしれません。 けれど、「知っている」ことと「どう使うかを知っている」ことは、少し違うのだと気づかされます。 どこに貼るのか。どのくらいの大きさで使うのか。重ねるのか、削るのか。そして、その表現で何を見せたいのか。 デジタルでの作画が主流になった今だからこそ、実際に紙の上でトーンを扱ってみることで、自分の表現について考えるきっかけになるのかもしれません。 展示された作品を見ながら語ってくれた雲七先生の言葉からは、スクリーントーンが単なる「漫画を仕上げるための道具」ではなく、作品の印象をつくり、描き手の意図を伝えるための表現手段であることが伝わってきました。 『アイシースクリーン展2026』は2026年8月30日(日)まで 《展覧会情報》 『アイシースクリーン展2026』 ⽇程:2026年8月14日(金)〜8月30日(日) 時間:12:00〜19:00 ※火曜日定休 会場:原宿マリーエンケーファー(〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6丁目28−4 シニック関根ビル 地下1階B) 観覧料:無料 取材・撮影/PicoN!編集部 市村 ↓PicoN!アプリインストールはこちら
青春の上に立つ。 ーーー憧れたカルチャーの中で働く。好きなものを追いかけ続けた先で見つけた、フォトグラファーという生き方。
高校生の頃、憧れのアーティストを観るために通っていたZepp。あの頃は客席から見上げていた場所に、今はフォトグラファーとして立っている。 友人から譲り受けた一台のカメラ。SNSに広がった写真。 学生時代に撮り続けていた仲間たちの活躍とともに、自分の仕事も少しずつ広がっていった。 「自分はラッキーマンなんです」 そう笑う新谷さんの言葉の裏には、好きなものを追いかけ、人との出会いを大切にしてきた時間がある。 今回は、音楽シーンを中心に活躍するフォトグラファー・新谷隼人さんに、これまでの歩みと、今もシャッターを切り続ける理由について話を聞いた。 好きだったものを撮り続けた先に、今がある ー現在のお仕事内容について教えてください。 現在はアーティスト写真やジャケット撮影、ライブ撮影、グッズのビジュアル撮影、ファッションブランドのEC撮影などをしています。仕事の約9割は音楽関係です。 [caption id="attachment_29323" align="alignnone" width="750"] Billyrrom 1st Album「WiND」(Photo by Hayato Niiya)[/caption] 専門学校時代の友人を通じて知り合ったバンドを2021年頃から撮り続けています。 [caption id="attachment_29324" align="alignnone" width="750"] Billyrrom Artist Photo(Photo by Hayato Niiya)[/caption] ここ1〜2年で、そのバンドをはじめ、自分が撮り続けてきたアーティストたちが注目されるようになって、自分自身の仕事も少しずつ広がってきました。好きだったものを撮り続けてきたことが、今につながっているんだと思います。 「なんか楽しそう」から始まった写真との出会い ー写真はいつから始められましたか? はじめてカメラを手にしたのはいつですか? 高校2年生の頃です。 通信制高校のサッカーコースに通っていて、小学1年生から続けてきたサッカーをやっていました。ただ、高校1年生の冬にはプレーヤーとして続けるイメージが持てなくなって、マネージャーになったんです。同じクラスにはサッカー以外の進路を考えている友達もいて、そのうちの一人がカメラにハマり始めました。その姿を見て、「なんか楽しそうだな」と思ったのが写真を始めたきっかけです。その友達から、オリンパスのカメラを譲ってもらって、本格的に撮影を始めました。その後、親にCanon EOS 80Dを買ってもらい、どんどん写真にのめり込んでいきました。 ーフォトグラファーを職業として意識したのはいつ頃ですか? 高校2年生の冬頃です。 当時はまだInstagramが今ほど普及していないような時代でしたが、自分が撮った写真を友達がSNSのアイコンに使ってくれたり、その写真を見た知らない人から撮影の依頼をいただいたりするようになりました。 「自分には才能があるのかもしれない」 そう思えた瞬間でした。 その頃からサッカーチームの試合や集合写真、クラブチームのホームページ用写真などの仕事も受けるようになりました。高校生のアルバイトよりも稼げたこともあって、「写真を仕事にできるんだ」という成功体験になりました。 海外への憧れが、進路先の決め手になった ー専門学校へ進学しようと思った理由を教えてください。 もともとは美大に進学したいと思っていました。でも出願時期を逃してしまっていて、浪人するか迷ったんです。そんな時に東京近辺にある写真の専門学校を何校か見学しました。僕は愛知県出身ですが、高校進学のタイミングで東京へ出てきました。中学時代はほとんど学校へ行っていなかったんですが、サッカーを続けたくて東京を選びました。高校時代から東京のファッションや音楽などのカルチャーに触れていて、専門学校を選ぶ決め手になったのは海外研修制度でした。 「海外へ行きたい」 その思いがすごく強かったんです。学校見学で教務課長の奥先生から海外研修について聞いて、「NPIに進学しよう」と決め、学校見学の翌日には願書を記入していました。 残念ながら、新型コロナの流行があり、海外研修には行けなかったのですが、現在、仕事で海外ツアーの撮影もよく入るので、1年の半分くらいは海外にいます。明日からチェコへ行く予定です。 [caption id="attachment_29320" align="alignnone" width="750"] Photo by Hayato Niiya[/caption] 音楽カルチャーが写真の原点 ー学生時代に影響を受けた写真家やクリエイターはいましたか? 写真家では奥山 由之さん、嶌村 吉祥丸さん、小見山 峻さんに影響を受けました。 実は写真だけではなくて、音楽から受けた影響もすごく大きいです。SuchmosやYogge New Waves、King Gnuなどの音楽をよく聴いていました。音楽だけではなく、その世界観をつくるファッションやグラフィック、アーティスト写真にも惹かれて、「この写真は誰が撮っているんだろう」と写真家を調べるようになりました。 写真だけじゃない。現場で学んだ「仕事」のこと ー学生時代に転機となった出来事はありますか? 『SHUKYU Magazine』との出会いです。高校生の頃、代官山 蔦屋書店によく通っていて、そこでロシアワールドカップ特集号を見つけました。 SHUKYU Magazine 12 FUN ISSUE サッカーの楽しみ方は一つではありません。プレーすること、観ること、着ること、読むこと、聴くこと、集めること、食べること、語ること…。そのどれもがサッカーの一部です。 12号目のテーマは「FUN」です。順次発売を開始しております。https://t.co/KpvWXddkp4 pic.twitter.com/SWVACa3hd2 — SHUKYU (@shukyumagazine) May 28, 2026 サッカー雑誌だと思って手に取ったら、試合写真が一枚も載っていなかったんです。代わりに載っていたのは、人や街、ファッション、カルチャーの写真ばかりでした。「サッカーをこんなふうに表現できるんだ」と衝撃を受けました。 当時はサッカーが好きだけれど、プレーヤーとして続ける未来は見えていませんでした。でも、サッカーを文化として伝える仕事があることを知って、「サッカーを別の形で表現する道もあるんだ」と感じたんです。 ちょうど求人が出ていたので、NPI1年生の冬休み明けからスタッフの一員として働き始めました。 ーSHUKYU Magazineでの経験は、現在のお仕事にもつながっていますか? すごくつながっています。撮影だけじゃなくて、商品の撮影やイベントの設営、物販、スタイリング、キャスティングなど、本当にいろいろなことを経験しました。一般的なスポーツメディアは試合や結果を伝えることが中心ですが、『SHUKYU Magazine』はその周りにあるカルチャーや人を大切にしていました。そこで学んだ「写真だけじゃ仕事は成り立たない」という考え方は、今でも自分の軸になっています。スタジオ勤務やカメラマンのアシスタント経験がないことにコンプレックスを感じていた時期もありましたが、今振り返ると、あの経験が自分にとってのアシスタント期間だったと思っています。 ー在学中にこれはやってよかった、逆にやっておけばよかった事はありますか? 写真集は本当にたくさん見た方がいいと思います。 新しいものを生み出すと言っても、過去の表現の積み重ねなんですよね。先生からも「写真集を読め。スクラップしろ」と言われていました。今になって、その意味がよく分かります。 ー学生のうちに身につけておいた方がいいことはありますか? 写真以外のことだと、例えば、確定申告やギャラ交渉、お金のこと。フリーランスになると、自分の仕事にどれくらい価値があるのかを自分で判断して、相手と話をしなければいけません。そういう知識は学生のうちに学べたらよかったなと思います。 遊びの延長線上に、仕事があった ーフォトグラファーという仕事の魅力を教えてください。 僕はずっと遊んでいる感覚なんです。 [caption id="attachment_29360" align="alignnone" width="750"] Photo by Hayato Niiya[/caption] もちろん仕事なので責任はあります。クライアントの要望に応えることや、いい写真を撮る責任もあります。でも、自分が好きだった音楽やカルチャー、人とのつながりの延長線上に今の仕事があります。 遊びの中で人と出会って、その出会いが仕事につながって、また新しい人とのつながりが生まれる。 [caption id="attachment_29361" align="alignnone" width="750"] Photo by Hayato Niiya[/caption] 振り返ると、自分は本当にラッキーマンだなと思います。 サッカーが好きじゃなかったら、『SHUKYU Magazine』にも出会っていなかったし、その経験が今の仕事につながることもなかったと思います。 ー10年後、どんなフォトグラファーになっていたいですか? レッドカーペットを歩いてみたいですね。 アーティスト、クリエイター、レコード会社スタッフ、コンサートプロモーター、音楽出版社、海外音楽賞審査員など、各分野の音楽関係者より構成される5,000名以上の投票メンバーにて厳正なる投票を行ない、受賞作品/アーティストを決定する音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN」には、アルバムのデジタルのアートワークを評価する「最優秀アートワーク賞( in association with 日本グラフィックデザイン協会)」という賞があるんです。 ━━🏆 #MAJ2026 受賞速報 🏆━━ 最優秀アートワーク賞 in association with 日本グラフィックデザイン協会 ━━━━━━━━━━━━━━━ 平林奈緒美 / Martin Holtkampの 「怪獣 | サカナクション」に決定!#MUSICAWARDSJAPAN pic.twitter.com/i1EaE4XDMb — MUSIC AWARDS JAPAN公式 (@MAJ_CEIPA) June 13, 2026 そういう場所で、自分の仕事が認められるようなフォトグラファーになりたいです。 青春の上に立つ。 ー今、大切にしていることや、これから先も変わらず持ち続けたい想いはありますか? 韓国のバンド・HYUKOH(ヒョゴ)の「一生青春」という言葉がすごく好きなんです。 最近、その言葉の意味が自分の中ですごく腑に落ちていて。 高校生の頃、憧れのアーティストのライブを観るために通っていたZeppで、今はフォトグラファーとして撮影をしています。当時、「いつかここで写真を撮れたらいいな」と思っていた場所に、自分が仕事で立っている。不思議な感覚ですよね。しかも、憧れていたSuchmosのメンバーや、その周りで活動していたアーティストたちも、今では仕事を通して身近な存在になりました。 [caption id="attachment_29362" align="alignnone" width="750"] Photo by Hayato Niiya[/caption] ライブ会場へプライベートで遊びに行ったとき、自分が撮影やデザインに携わったライブグッズのナップサックを背負っているファンの子を見かけたことがあるんです。あれは本当にうれしかったですね。 [caption id="attachment_29328" align="alignnone" width="600"] 新谷さんが撮影した写真が使用されているグッズ[/caption] 高校生だった頃の僕が、憧れのアーティストのグッズを身につけてライブへ行っていたように、今度は誰かにとって、そのグッズが特別なものになっている。「今の高校生にとっての憧れ」が、自分の仕事とつながっているんだと思うと、すごく不思議な気持ちになります。だからこそ、高校生だった頃の自分に恥ずかしくない大人でいたい。 あの頃の自分が見ても、「かっこいいな」と思える生き方を続けていきたいんです。遊ぶことも、人と出会うことも、写真を撮ることも、全部つながっています。 だから僕は、これからも遊び続けながら、シャッターを切り続けたい。 ーもし学生時代の自分に声をかけるとしたら? 実は、あまり声はかけないかもしれません。後悔していることがほとんどないんです。もちろん、「授業はもっと出ておけばよかったな」とか、「写真集はもっと読んでおけばよかった」と思うことはあります(笑)。 でも、あの頃に好きだったもの、夢中になっていたこと、人との出会いがあったから今があります。 だから、「そのまま楽しんでこい」くらいですかね。 PROFILE photographer 新谷 隼人 2000年愛知県生まれ。 17歳の時に写真を撮り始め、日本芸術専門学校を卒業後、東京を拠点に主にファッション・音楽の分野で写真家として活動中。 取材/PicoN!編集部 市村 撮影/内山慎也 ↓PicoN!アプリインストールはこちら
香りが導き、質感が語る。五感で体験する藤ちょこイラスト展『祝彩巡礼』展示レポート
繊細な色彩設計と、背景まで緻密に描き込まれた世界観が魅力の藤ちょこ先生。その作品群が一堂に会した展示「祝彩巡礼」が、東京・渋谷の西武渋谷モヴィーダ館にて開催され、先日その幕を閉じた。 個展「#祝彩巡礼」の開催が決定しました✨ 3rd画集収録作品を中心に描き下ろしやサイン会もあります!よろしくお願いします! 会期:2026/6/5~6/28 会場:西武渋谷店モヴィーダ館6F ▶ https://t.co/ZDxTNgxMOh pic.twitter.com/0LPcl7onUY — 藤ちょこ@個展6/5~ (@fuzichoco) April 10, 2026 本展示は、2025年に刊行された画集『祝彩巡礼』の発売を記念して企画されたものであり、単なるイラスト展示にとどまらず、「作品を体験する」というコンセプトのもと構成されている。 本稿では、現地での体験をもとに、展示空間の設計や作品の見せ方、そして特殊加工によって藤ちょこ作品がどのように“体験として拡張されていたか”について記録する。 《アーティスト情報》 ■藤ちょこ fuzichoco イラストレーター 透明感あふれる色彩と、圧倒的な情報量を誇る緻密な世界観で国内外から高い支持を集める。書籍やゲーム、トレーディングカード、VTuber関連など幅広い分野で活躍し、その幻想的で物語性豊かな作品は、多くのクリエイターにも影響を与え続けている。 胡蝶の夢 pic.twitter.com/ytpn4m57JZ — 藤ちょこ@個展6/5~ (@fuzichoco) February 23, 2025 喧騒を抜けて、世界の入り口へ 訪れたのは展示最終日だった。 前日に台風が通過したにもかかわらず、渋谷の街は変わらず人の流れに満ちていた。濡れた路面に光が反射し、都市の喧騒だけがいつも通りの速度で流れている。 会場となる西武渋谷モヴィーダ館は、無印良品が入るビルとして知られるが、その上階に広がる展示空間は、日常の延長線上にありながらも、どこか異なる静けさを持っていた。 時間まで待つようスタッフからアナウンスがあり、待機列は少しずつ進んでいく。入り口のモチーフや、最初に目に飛び込んでくる大迫力の一枚絵、展示タイトルが印字された壁面の横に添えられた直筆サインが視界に入り、まだ会場に入っていないはずなのに、すでに世界の入口に立っているような高揚感が生まれていた。 鮮やかな色彩と緻密な描き込み|藤ちょこ作品が愛される理由 多数のキャラクターデザインを手掛けたイラストレーターとしても有名な藤ちょこ先生ですが、作品の魅力は、緻密に設定された世界観に他ならない。建築物、植物、光、水、空気といった要素が等しく描き込まれ、それらが一枚の画面の中で有機的に結びつくことで、「ひとつの世界」として成立している。 [caption id="attachment_29242" align="aligncenter" width="750"] 藤ちょこ特殊印刷アート「祝彩巡礼」[/caption] そのため鑑賞者の視線は一点に留まらず、画面全体を巡りながら作品の中を歩くような感覚を得ることになる。 これは単なるイラスト鑑賞ではなく、“世界を読む体験”に近い。 香りから始まる没入体験|五感で切り替わる展示空間 会場に足を踏み入れた瞬間、まず感じたのは香りだった。 [caption id="attachment_29243" align="aligncenter" width="750"] 入り口を潜るとふわりと優美な香りが包み込んでくれる[/caption] 上品でありながら過剰ではない香りが空間全体に広がり、外の世界と展示空間の境界が明確に切り替わる。 イラスト展示において嗅覚までを設計に取り込む試みは多くない。本展は空間そのものを作品として成立させていた。 展示だからこそ体験できる、特殊加工が生み出す作品の魅力 SNSや画集を通して、藤ちょこ先生の作品に触れたことがある人も多いだろう。画面越しでも、その鮮やかな色彩や緻密な描き込み、幻想的な世界観は十分に伝わってくる。しかし、本展で作品を前にした瞬間、その考えは大きく覆された。本展では、複数の印刷会社による多彩な特殊加工が作品に施されており、光を受けて表情を変えるもの、見る角度によって印象が変化するもの、質感によって空気感や奥行きを際立たせるものなど、印刷そのものが表現の一部として機能していた。 [caption id="attachment_29261" align="aligncenter" width="562"] 藤ちょこオーロラポスター「さいはての空、彼方の教室」[/caption] スマートフォンやパソコンの画面では、イラストはそれぞれのデバイス環境や閲覧状況に左右されながら鑑賞される。一方、展示では、作品は物質として確かな存在感を持ち、同じイラストでありながら受け取る印象は大きく異なる。光の反射や素材の質感によって、画面越しでは感じ取れなかった空気や奥行きが作品に宿る。その変化は写真では決して再現しきれず、実際にその場に足を運び、一定の距離を保ちながら見つめることで初めて成立する体験だった。 そしてこのひと作品において特に印象的だったのは、アナログ着彩によって生まれる透明感と、その筆致そのものである。デジタルで構築されたイメージに対して、重ねられた色の層やにじみ、わずかな揺らぎが加わることで、画面では見えなかった質感が立ち上がってくる。 [caption id="attachment_29260" align="aligncenter" width="563"] 藤ちょこ自然紋「福の神」[/caption] 何より惹かれたのは、その筆さばきである。線の流れ、塗りの方向、絵の具の重なりといった“描く行為そのもの”が、そのまま作品の一部として残されている。それらは画面越しでは決して気づくことのできない情報であり、会場に足を運び、その作品と同じ距離で向き合うからこそ初めて見えてくるものだ。デジタル表現に施された加工とはまた異なる次元で、このアナログ着彩そのものが、このひと作品の“完成形”を成立させていた。そして何より重要なのは、この体験そのものが「現地に足を運んだからこそ成立している」という点である。画面越しでも作品は十分に鑑賞できる。しかし、光の揺らぎや素材の質感、筆致の細部といった情報は、実物と対峙したときにしか立ち上がらない。この作品が示していたのは、イラストは見る場所によって完成形が変わるという事実だった。だからこそ、展示という場に足を運ぶ意味がある。そこには、画面では得られない“もう一段階上の作品体験”が確かに存在していた。 特殊加工で作品は更に輝く イラストを描き上げたら、それで完成だと思っていないだろうか。もちろん、一枚のイラストとして完成させることは作品づくりの大きなゴールだ。しかし、その作品を「どう届けるか」まで考えたとき、表現の可能性はさらに大きく広がる。本展では、複数の印刷会社による多彩な特殊加工が作品に施されていた。箔を貼った作品は一層豪華な印象を受けた、時間の経過で変化する作品、見る角度によって印象が変わるもの、その表現は実にさまざまだ。 印象的だったのは、作品と額が複数のアクリルで制作された作品「水没都市」。 あらかじめ模様のついたカスミアクリルという素材に、青系グラデーションを印刷する事で水面をイメージしたアクリルフレームにしたとの事。(藤ちょこイラスト展「祝彩巡礼」パンフレットより引用) イラストを描く人にとって、作品は完成した瞬間がゴールではない。紙や素材を選び、印刷方法を選び、加工を選ぶ。その一つひとつの選択が、作品を「見るもの」から「体験するもの」へと拡張していく。もし、いつか自分の作品を展示する日が来たなら──。作品をどう飾るかだけでなく、「どう輝かせるか」という視点も、ぜひ持ってほしい。 鏡になる作品|鑑賞者が作品へ取り込まれる体験 筆者が本展で一番衝撃を受けたのは、入口すぐに展示されていた作品「胡蝶の夢」である。 額装の中にはキャラクターが描かれているが、角度や時間の経過によってその姿は消え、鏡へと変化する仕掛けになっていた。 [caption id="attachment_29245" align="aligncenter" width="563"] 藤ちょこチェンジングプリント「胡蝶の夢」[/caption] [caption id="attachment_29246" align="aligncenter" width="563"] 時間が経過すると、キャラクターが消え、ミラーに変化する。[/caption] そこに映るのは作品の続きではなく、自分自身の姿である。 この瞬間、鑑賞者は「見る側」から「作品の中にいる側」へと立場を変えることになる。 イラストと鑑賞者の境界が曖昧になる、非常に象徴的な体験だった。 触覚によるイラストの拡張 さらに本展では、刺繍によって表現された作品にも触れることができた。 イラスト展示において作品に触れることができる機会は極めて少ない。 しかし本展では、触覚を通じて作品を理解するという新しい鑑賞方法が提示されていた。 糸の立体感や質感は、視覚だけでは伝わらない情報を補完し、作品世界の解像度をさらに高めていた。 画集『祝彩巡礼』|展示体験の“種明かし” 展示を見終えたあと、グッズ販売エリアで藤ちょこイラスト展「祝彩巡礼」パンフレットを手に取った。 このパンフレットは単なる展示作品が羅列された画集ではなく、特殊加工や制作工程に関する解説を含んだ構成となっている。 展示で感じた「なぜこの表現なのか」という疑問が、ページをめくるごとに言語化されていく。 展示体験の延長線上に“理解”が用意されている構造であり、作品への理解が一段階深まる内容だった。 イラストは“体験”へと拡張できる イラストは本来、視覚によって鑑賞されるものだ。 しかし『祝彩巡礼』は、その前提そのものを静かに拡張していた。 香りによって世界へ導かれ、特殊加工によって視覚体験が変化し、刺繍によって触覚へと広がり、鏡の仕掛けによって鑑賞者自身が作品へと取り込まれる。 そのすべてが連続したひとつの体験として設計されていた。 そして何より印象的だったのは、この展示が「イラストはどこまで拡張できるのか」という問いを提示していたことである。 イラストは、描いた瞬間が完成ではない。 紙、印刷、加工、空間。 それらの選択によって、作品はさらに豊かな体験へと育っていく。 『祝彩巡礼』は、美しいイラストを鑑賞する展示であると同時に、「作品はここまで体験へ拡張できる」という可能性を示してくれる展示だった。 だからこそ私は、この展示をイラストが好きな人だけでなく、これから作品を生み出すすべてのクリエイターに届けたい。 あなたの作品も、きっと“体験”へ拡張できる。 『藤ちょこイラスト展 -祝彩巡礼-』は既に終了しています。 《展覧会情報》 『藤ちょこイラスト展 -祝彩巡礼-』 ⽇程:2026年6月5日(金) 〜 6月28日(日) 時間:11:00 〜 20:00(最終入場19:30) 会場:西武渋谷店モヴィーダ館 6F 料⾦:入場券:1,000円(税込) 取材・撮影/PicoN!編集部 市村・西山 [clink url="https://picon.fun/design/20260612/"] [clink url="https://picon.fun/design/20211004/"] [clink url="https://picon.fun/illustration/20240115/"] ↓PicoN!アプリインストールはこちら
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