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【写真学生によるワークショップレポート】澤田知子さんと参加者が紐解く『他者へのまなざしに映る自分自身』

ヒカリエホール(渋谷ヒカリエ9F)で開催中の展覧会『まなざしの奇跡 日本女性写真家の冒険』と日本写真芸術専門学校(NPI)の連携企画として、出展作家のひとりである澤田知子さんによるワークショップが開催されました。 今回、NPI在学生である私もワークショップに参加しました。当日の様子と作品を通じて得た気付きを、等身大の視点からレポートします! 澤田知子 Tomoko Sawada 兵庫県神戸市生まれ、在住。成安造形大学造形学部デザイン科写真クラス研究生修了。デビュー作《ID400》で2000年度キヤノン写真新世紀特別賞、2003年度木村伊兵衛写真賞、ニューヨーク国際写真センターのThe Twentieth Annual ICP Infinity Award for Young Photographer 受賞。2009年から文化庁新進芸術家海外研修制度により、2年間ニューヨークにて研修。世界各地で展覧会を開催するほか、写真集や絵本を出版。 30年間で2000回以上の変装 澤田知子さんが語る「セルフポートレイト」の原点 ワークショップは、澤田さん自身のこれまでの歩みと作品紹介から始まりました。写真や映像、絵画、グラフィックなど、学生時代は幅広い領域を学んでいた澤田さん。ある日、写真の授業で出された「セルフポートレイト」の課題で初めてその表現手法を知り、そこから30年間、実に2000回以上もの変装を重ねていくことになります。 森村泰昌氏の教え子であった担当講師が当時の授業で見せたのは、セルフポートレイトの先駆者であるシンディ・シャーマンのドキュメンタリービデオでした。その影響もあり、クラスメイトのほぼ全員が思い思いに変装して課題に挑んだといいます。その後4年制大学へ編入し、畑祥雄氏のもとで本格的にアートや写真を学び始めました。 デビュー作となった1998年の卒業制作<ID400>以来、一貫して「外見と内面の関係性を探る」をテーマに据え、これまでに20以上のシリーズを発表。社会の中で感じとった違和感を切り取り続けています。 「制作過程で私自身が考えていることが、このワークショップを通して体感としてわかると思う。」 澤田さんの言葉通り、今回のワークショップは単に作品を「鑑賞する」だけではなく、作品を通して澤田さんの、あるいは自分自身の視点を見つめ直すような、深い体験が待っていました。 ワークショップ実践 1枚の写真から広がる膨大なペルソナ 今回のワークショップでは、事前課題として、「Aさん・Bさん・Cさんそれぞれの写真を見た印象から、写っている人物がどのような人物であるかを、自分の知り合い(または友人)であると仮定し、自由に想像してワークシートへ記入してください。」という課題が出されました。 題材となったのは、澤田知子さんの作品<OMIAI♡>シリーズに登場するAさん・Bさん・Cさんの3名です。 会場では年齢もバックグラウンドも異なる参加者が4つのグループに分かれ、それぞれのシートを共有。最も面白いシートを書いた代表者が、全体に向けて発表するという形で進められました。 【Aさん】重なる現実と、作家の裏話 私のグループで特に印象的だったのは、Aさんに対して「高円寺の日本語学校に通いながら美大を目指している中国人留学生で、現在モーショングラフィックスを制作している。自分の作品が認められるか不安で、たまに内臓がキューッとなる感覚を覚える」という、克明なペルソナを描いた参加者のシートでした。聞けばその方は実際に日本語学校の先生をしており、かつての生徒の友人の面影を重ね合わせたのだといいます。現実の経験が、そのまま写真の人物像へと投影された瞬間でした。 全体発表では、別グループの代表者が「年齢は20歳、弟がいて神戸在住、おばあちゃんと同居している」というプロフィールを紹介。これには澤田さん本人も「撮影当時の私の境遇とほぼ同じ」と驚かれていました。また、初期作には友人があだ名をつけていたという裏話も明かされ、Aさんは当時「おはなちゃん」と呼ばれていたそうです。 【Bさん・Cさん】共通するイメージと、深まるドラマ Bさんに関しては、多くの参加者が「デパート勤務」「エレベーター嬢」といったファッション・サービス系の共通イメージを抱いていました。しかし、共通しているのは職業のイメージだけでなく、抱えている悩みが深いという点。澤田さん曰く、このように特定の写真に対して多くの人が共通のイメージを抱く現象はよく見られるそうです。 一方、Cさんになるとイメージは一変。「ヤクザ」「レディースの頭」「キャバクラ経営」など、総じて「ママ感」「姉御肌」の強いキャラクターが並びました。さらに、想像された過去のドラマも壮絶で、「父親が蒸発」「母親に刺されたことがある」「弟の失敗の後始末をした」など、1枚の写真からハードボイルドな物語が次々と紡ぎ出されました。ちなみにCさんの当時のあだ名は「姉御」。過去に実施された作品投票では、大阪での人気ナンバーワンはダントツで「姉御」だったそうです。ちなみにAさんは東京人気ナンバーワン、Bさんは全国で不動の人気を誇るという、興味深い地域性の違いも語られました。 客観的な視線の先に浮かび上がる、自分という存在 グループ発表を終え、澤田さんは「アートをどう見たらいいか分からないという人もいるが、まずは直感的に感じることが大切。たった1枚の写真からこれほど膨大な情報を読み取れる皆さんは、すでに素晴らしい想像力と才能を持っている」と振り返りました。私たちが普段、街中や電車の中、あるいはSNSのタイムラインで無自覚に行っている「この人なんか優しそうだな」「ちょっと苦手かも」という第一印象のジャッジ。現代はSNSの普及によって、1枚の視覚情報から背景を読み取る力がかつてないほど強くなっているのかもしれません。 しかし、澤田さんはこう釘を刺します。「見ているのは同じ人間なのに、外見によってこれほど背景や人生が違って見える。でも、それは外見だけ。実は中身は全く違うかもしれない」たった1枚の外見から、私たちはどうしてこれほど豊かな、あるいは偏ったストーリーを無自覚に作り上げてしまうのでしょうか。その理由を突きつけるかのように、本質的な気づきを言葉にしたのは、同じグループにいた同級生の吉川さんでした。 「人のことを書いているつもりが、自分自身が見透かされているようで、非常に怖かった。」 他者の人生を想像しているようで、実はそこに自分自身の経験や価値観が、鏡のように映し出されていたのです。 【質疑応答】400枚の先にある素顔と、広がる想像力 最後の質問タイムで、私は気になっていた疑問を澤田さんに投げかけました。<ID400>の撮影後、自身の髪を丸坊主にし、眉毛も全剃りした作品<SKIN HEAD>を発表した際の心境についてです。澤田さんからは「実は当初1000枚を目指していたけれど、400枚で一度終わりにした。でもそれだけでは物足りず、400回の変装を終えた後、もう『自分の素顔』を映すしかないと思った」という回答が返ってきました。実際に全てを剃ってみると嘘くさくなってしまったため、少し毛が伸びた状態で撮影したそうですが「あのタイミングで素顔を残しておいて本当に良かった」と語る表情が印象的でした。 また驚くべきことに、あれほど豊かな変身を繰り返す澤田さん自身は、普段は全く人間観察をしないといいます。無意識のうちに蓄積されたイメージが、制作を通じて自然と湧き出てくるのだそうです。 ワークショップの締めくくりには、ある参加者が書いたCさんのワークシートが紹介され、会場を沸かせました。「(Cさんは)国家安全情報局の直属スパイで、コードネームはK。表向きはバーを経営している。ある激しい雨の日、なおさん(Bさん)の父親の会社を取り調べていたKは、カウンター越しに、偶然来店したなおさんと短い会話を交わす…」。別々の写真として存在していた人物たちが、参加者の妄想の中で一つの緻密な推理小説のようにリンクしていく。これこそが、観る側によって無限に変容するアートの面白さそのものでした。 ワークショップを終えて:10年後の私がワークシートを書くなら 他の参加者のシートを覗き込む時間は、その人の人生や趣味の背景を旅するようなワクワク感に満ちていました。私がBさんに対して「大手企業の受付嬢」という設定を書いたのも、間違いなく自分自身の過去の社会人経験が地続きになっていたからです。もし、このワークシートを10年後の私が書いたとしたら、一体どんな人物を想像するのでしょうか。 これから先、さらに様々な経験を積み、人生の酸いも甘いも知った時、私のまなざしはもっと多様で、もっと優しいものに変わっているでしょうか。先の見えない不安に駆られることもありますが、このワークショップは、未来の自分の成長が少し楽しみになるような、不思議な希望を運んでくれました。 NPI在学生 深田 [clink url="https://picon.fun/photo/20260725/"] [clink url="https://picon.fun/photo/20260802/"] [clink url="https://picon.fun/design/20260618illustmap/"] ↓PicoN!アプリインストールはこちら  

写真

【新連載】デザインミッケ!第1話「フォントさんぽ」

「デザインの話って、何だか難しそう。」 令和のいま、「デザイン」はどんどん身近になり、誰でもパソコンを使えば「デザイン」ができる時代になりました。 だけど「デザインの話」となると、急に専門的な“カタカナ語” が出てきて、難しく感じる。そんな方も多いのではないでしょうか。 もったいない。デザインって実は、とても面白いんです! 私たちの日常は“デザイン” に溢れています。 街を歩けば、お店の看板だって、道路標識だって、信号機だって。家の中でも、家電や家具、ポストに入った広告チラシ、漫画やゲームにおもちゃまで。今見ている「PicoN!」のサイトやアプリも、もちろん「デザイン」されています。 この『デザインミッケ!』の連載では、生活のなかで身近な所に「デザイン」されたものを見つけて、作る人の創意工夫を想像し、その面白さや奥深さを紹介していきます。 第一回のテーマは、「フォントさんぽ」です。 最後まで楽しんで頂けたら幸いです! 第1話 「フォントさんぽ」 みなさんこんにちは!デザイナーのヤスムラシンです。そしてこちらが相棒の... シン みなさんこんにちは!デザイナーのヤスムラシンです。そしてこちらが相棒の... ミッケル わしは“ミッケル”じゃ! シン (なんか、すごいの出てきちゃったな…) 今回は、相棒の“ミッケル” と共に、渋谷の街を散歩していきたいと思います。 ミッケル 楽しみじゃのう! デザインその1:渋谷ヒカリエ シン さて、渋谷駅にやってきました。 ミッケル ヒエ~!とんでもない人の数じゃ! どうなっとるんじゃ、この街は! シン そうですね。 渋谷駅は、乗り降りする人の数が「世界第2位」なんだそうですよ。そりゃ多いわけです。 ミッケル すごいのう…! む、あのデカい建物はなんじゃ! シン あれは「渋谷ヒカリエ」ですね。 渋谷の象徴的なビルです。「グッドデザイン賞」というデザインの賞も受賞してるそうですよ。 ミッケル ムムッ!!! あの文字、カッコイイのう!!!!!!!   [caption id="attachment_29633" align="alignnone" width="750"] 渋谷ヒカリエのロゴ[/caption] シン いいですねぇ~~~。シンプルな文字だけで作られたロゴ。 図形がなくても、文字の色や形で「らしさ」が表現されているんですよね。 ミッケル ハテ? 図形がない? 文字だけ・・? シン 例を挙げると、こういう感じです。 「ミッケ!」だから虫眼鏡の図形をマークとしたら上のようになるし、 ヒカリエの例にならうと、下のほうに近くなりますね。 ミッケル オオー!! 虫眼鏡があると、イメージが分かりやすいぞい! シン 図形(マーク)はどんな形にもなれるので、表現できる幅も広いですね。 だからこそ、文字だけでイメージを表すのは、それよりずっと難易度が高いように感じます。 ミッケル ワシもそんなロゴが作ってみたいぞい!! シン いや~こんな素敵なロゴは、そう簡単には作れないですが・・ ひょっとしたら、ロゴを作る時のベースとなったフォントが見つかるかもしれません。 ちょっと探してみますね。 ミッケル なに!それは “ふぉんとう” かの!? シン ・・・・。 【フォント】とは… 全ての文字は、実は『デザイン』されています。同じ『あ』でも、明朝体とゴシック体では形が違います。そして同じゴシック体の中にも、丸みがあるもの、角ばったものなど、いろんな個性があります。その同じ個性で統一された文字セットがフォントです。いまあなたの読んでいる文字も、「ヒラギノ角ゴ」や「メイリオ」などの名前がついた「フォント」なのです。 シン うーん、一番近いので、これかなぁ。 ミッケル おお!!そっくりじゃの!! シン いやー。 「a」や「e」の形が正円に近いのが印象的だったので、「Century Gothic」(センチュリー ゴシック)というフォントが似ているかなと思ったんですが、細かい所が全然違いました。。 ミッケル なんと!? シン 分かりやすいところで行くと、まず「i」の点が、ヒカリエは四角い。 僕の選んだ「Century Gothic」は丸い、という差があります。「r」の形も、ヒカリエは綺麗な円を描いていて、縦棒が飛び出ていませんね。 ミッケル …たしかに!ほんとじゃの! シン さらによくみると、「e」はカーブの終わり方も違います。ヒカリエだと水平に近いけど、フォントは斜めに切れていますね。 実はもっと細かくみると、ヒカリエはe の上半分が少し縦に長かったり、下半分は逆に円が縦に短く、コンパクトにカーブしていたりします。 ミッケル ひょえー!こまかいのう! シン 「K」の角度もちょっと違っていたりして。他にもいろいろあるかもしれません。 系統はある程度、似ているとしても、全然キャラクターの違う文字だと言えそうです。 ミッケル すごいのう!奥が深いのう!センチュリーなんとかの文字もカッコイイと思ったが、こだわりが見えてくるとヒカリエの凄さが伝わってくる気がするぞい! シン ヒカリエのロゴは、「H i kar i e(光へ)」というネーミングから、文字「H i kar ie」に光を照らし、光が昇っていくイメージを表現しているそうです。 きっとだからこそ、文字が部分的に見えなくなっていたり、文字が上下してたりするのかもしれません。 ミッケル ほえ~~。これはいいデザイン、ミッケじゃ! デザインその2:サクラステージ シン もう少し渋谷を散歩してみましょうか。 ミッケル おや!なにやら大きな建物があるのう! シン あれはサクラステージですね。2024 年7 月にオープンしたとのことで、わりと最近に出来た施設です。 ミッケル いいデザインが見つかる予感じゃ! ミッケル おお!あれがサクラステージのロゴかの!こんどはマークもついてるのう! シン シンボルマークと、ロゴタイプ(文字部分)が一体になってるタイプのロゴですね。 ミッケル これも作りたいぞい!いけるかの?! シン うーんどうだろう。ちょっと触ってみますね! ミッケル おおっ!いい感じじゃのう!! シン いや~。「a」や「k」の形がFutura っぽいかなと思ったんですが、見比べてみると、全然違いますね。。 ミッケル なぬっ!? シン 「a」は左側の円形の印象が近いと思ったのですが、もっとキュッとしていて横幅がスマート。「Futura」では円形の内側が棒にめりこんでいますが、ロゴでは棒の垂直よりも左側に円形の内側が来ていたり… ミッケル ほう!? シン 「k」も、ロゴでは右側の「<」の部分がキュッとなっていたり、縦棒と接している部分も控えめだったりして、けっこう色々と違いがありますね。。 ミッケル なんとぉ!?言われてみれば、たしかにそんな気がしてきたのう!! シン 「Futura」はとても人気のフォントで、様々なブランドで使用されているんです。「ルイ・ヴィトン」や「Supreme」、「ナイキ」などにも使われているといいます。 ミッケル そうなのか!すごいのう~~~~!!サクラステージのことが、ますます気になって来たぞい!いいデザイン、ミッケじゃな!!! デザインその3:スターバックス ミッケル そろそろ疲れてきたのう!お茶でも飲んで一休みしたいぞい。あの店なんてどうじゃ? シン スターバックスでひと休みしますか。渋谷駅前の交差点は、人通りの多さが圧巻ですね~。 ミッケル おお!ずいぶんと黒いお茶じゃのう!しかしすごくいい香りじゃ! シン (コーヒー、知らないのかな・・・) ミッケル 店内もすごくオシャレじゃ!ロゴもクールじゃのう。こんなの作りたい、作りたい作りたい作りたいぞ~~~~い!!! シン スターバックスの場合は、オリジナルでブランドのフォントを作っていることが有名です。ロゴに使用されているのは「SoDo Sans」ですね。 [caption id="attachment_29661" align="alignnone" width="750"] SoDo Sans[/caption] 出典:https://lettermatic.com/custom/starbucks ミッケル おぉ~~なんと!? A からZ まで、全部がスターバックス・オリジナルかのぅ!太さもいっぱいあるぞい! シン いや~カッコイイですね。ブランドカラーである緑も印象的です。スタバは、自宅でも職場でもない、心地よく過ごせる“第三の居場所” という意味の「サードプレイス」という思想も広く知られています。その思想を軸に、ブランド全体が一貫して“デザイン” されているように感じますね。 ミッケル なにやらすごいのぅ!!色とか形とかは、その「サードプレイス」のために作られてるってことかの!これはデザイン、ミッッッケじゃ!! シン うんうん。そんなイメージです!デザインは、かっこいい・きれいといった「見た目」のことだと思われがちですが、実はその奥には「何を伝えたいのか」という意図が込められています。 ミッケル イトが・・!? シン ロゴも、ただ見た目が良ければいいわけじゃないんです。そのブランドらしさを最初に伝える「第一印象」であり、人に覚えてもらうための「顔」でもあります。そして、そのブランドとの思い出・体験が積み重なっていく“器” のような役割も担っているんです。 ミッケル これは試験に出そうじゃ!メモしとかなイト・・!!じゃの! シン (こりゃ、言いたいだけだな・・・) さて、はじめてのフォントさんぽ、お疲れ様でした!いかがでしたでしょうか。 私たちの日常はデザインに溢れています。街に出れば、デザインを見ない方が難しい。そしてその1つ1つが、なんらかの意図を持って作られています。そこで、「このデザインは、どんなことを伝えようとして、こんな顔をしているんだろう」なんて考えたりしながら日々を過ごしてみたら、いままで何の気なしに歩いていた道も、また違って見えてくるかもしれません。 もしデザインを作る側にまわる機会があれば、そのようにして見てきたものが生きてくる…なんてこともあるかもしれません。 この連載では、デザインを身近に感じられるような話題を取り上げていく予定です。 よかったら、次の記事もお楽しみにしていてくださいね! (おわり)   執筆/ヤスムラシン ↓PicoN!アプリインストールはこちら

デザイン

学生は17:00以降入場無料!サマーナイトミュージアム2026

夏の夜を美術館や博物館でゆったりと過ごしてみませんか。 東京都は、夏の夜に美術館や博物館を気軽に楽しめる人気イベント「サマーナイトミュージアム2026」を開催します。期間中は都立文化施設の開館時間が延長され、学生は17:00の入場が無料になるほか、一般・65歳以上の方も割引料金で入場できます。 学校帰りや仕事帰りにアートや文化に触れられる絶好の機会として、毎年多くの人が訪れるイベントです。 サマーナイトミュージアム2026とは? サマーナイトミュージアムは、東京都が実施する夏季限定の夜間開館イベントです。通常より遅い時間まで美術館や博物館を開館し、日中とは異なる落ち着いた雰囲気の中で展覧会を楽しめます。混雑が比較的少ない夕方以降にゆっくり鑑賞できることから、学生や社会人を中心に人気を集めています。 2026年は8月6日(木)から8月28日(金)まで開催され、毎週金曜日を中心に実施されます。東京都写真美術館では木曜日・金曜日に夜間開館を行い、施設によっては21:00まで開館するため、仕事や授業の後でも立ち寄りやすいのが魅力です。 学生は17:00以降無料!お得なキャンペーン  イベント期間中は、高校生・大学生・大学院生・専門学校生などの学生は17:00以降の入場が無料になります。入場時には学生証の提示が必要です。また、一般・65歳以上の方も17:00以降は特別割引料金で入場できるため、通常よりお得に展覧会を楽しめます。 夏休み期間中に友人同士で美術館巡りを楽しんだり、卒業制作や研究の参考として作品を鑑賞したりする機会にもおすすめです。 対象となる6つの都立文化施設 サマーナイトミュージアム2026の対象施設は以下の6施設です。 東京都江戸東京博物館 東京都美術館 東京都庭園美術館 東京都写真美術館 東京都現代美術館 東京都渋谷公園通りギャラリー それぞれ異なる展覧会を開催しているため、興味のあるジャンルに合わせて訪れる施設を選べます。企画展だけでなく、建築や庭園そのものを楽しめる施設もあり、何度訪れても新しい発見があります。 サマーナイトミュージアム2026で楽しめる注目の展覧会 東京都美術館では、「大英博物館 日本美術コレクション 百花繚乱―江戸絵画の花ひらく」を開催。 英国・大英博物館が所蔵する日本美術コレクションから、江戸時代の名品を紹介する話題の企画展です。 また、開館100周年を記念した展覧会も開催され、美術館の歩みや文化的な役割を振り返ることができます。 \\本日開幕‼️// 「#東京都美術館開館100周年記念 大英博物館日本美術コレクション 百花繚乱~海を越えた江戸絵画」 本日開幕です!🙌✨ 世界を代表するミュージアムのひとつ、イギリス・ロンドンの大英博物館から、応挙、北斎、歌麿・・・世界を魅了した傑作が大集結しました!… pic.twitter.com/IH5WaPwnxE — 東京都美術館 (@tobikan_jp) July 25, 2026 東京都江戸東京博物館では、リニューアルオープンを記念した特別展「洋館 明治の夢と挑戦」を開催。 明治時代の洋風建築や文明開化の歴史を、貴重な資料や模型とともに紹介しています。 🏛️本日開幕🏛️ 江戸東京博物館リニューアル記念特別展「洋館 明治の夢と挑戦」… pic.twitter.com/Tyx1fwUWzh — 江戸東京博物館 (@edotokyomuseum) June 23, 2026 東京都庭園美術館では、「ルーシー・リー展」を開催。 20世紀を代表する陶芸家ルーシー・リーの作品と、アール・デコ様式の歴史ある建物が織りなす空間を楽しめます。 ◤ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 夏の夜間開館 _______◢ 「ルーシー・リー展―東西をつなぐ優美のうつわ―」を開催中の8月7日、14日、21日、28日(金)は、#サマーナイトミュージアム のため21時まで開館いたします🌙 (入館は閉館の30分前まで)… pic.twitter.com/bOrkQ9FTy9 — 東京都庭園美術館 / Teien Art Museum (@teienartmuseum) August 5, 2026 このほか、東京都写真美術館では国内外の写真・映像作品、東京都現代美術館では現代アートの企画展、東京都渋谷公園通りギャラリーでは多様な表現を紹介する展覧会を開催予定です。訪れたい展覧会に合わせて施設を選べるのも、サマーナイトミュージアムならではの魅力です。 夜だけの特別イベントも開催 サマーナイトミュージアム期間中は、夜間開館に合わせた特別企画も予定されています。ミニコンサート「Museum × Music!」をはじめ、ギャラリートークやミュージアムショップ・カフェの営業時間延長など、夜ならではのイベントを楽しめます。 昼間とは異なる幻想的な雰囲気の中で作品を鑑賞できるため、普段美術館にあまり足を運ばない方でも気軽に参加できるでしょう。 この夏は夜のミュージアムへ出かけよう! 「サマーナイトミュージアム2026」は、学生にとってお得なだけでなく、東京都内で夏の夜を充実して過ごせる注目イベントです。17:00以降なら学生は無料で入場できるため、学校帰りやアルバイト帰りにも気軽に立ち寄ることができます。 夏休みのお出かけ先を探している方や、美術館・博物館巡りが好きな方は、この機会にぜひ都立文化施設を訪れ、夜ならではのアート体験を楽しんでみてはいかがでしょうか。 ↓PicoN!アプリインストールはこちら    

アート

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青春の上に立つ。 ーーー憧れたカルチャーの中で働く。好きなものを追いかけ続けた先で見つけた、フォトグラファーという生き方。

高校生の頃、憧れのアーティストを観るために通っていたZepp。あの頃は客席から見上げていた場所に、今はフォトグラファーとして立っている。 友人から譲り受けた一台のカメラ。SNSに広がった写真。 学生時代に撮り続けていた仲間たちの活躍とともに、自分の仕事も少しずつ広がっていった。 「自分はラッキーマンなんです」 そう笑う新谷さんの言葉の裏には、好きなものを追いかけ、人との出会いを大切にしてきた時間がある。 今回は、音楽シーンを中心に活躍するフォトグラファー・新谷隼人さんに、これまでの歩みと、今もシャッターを切り続ける理由について話を聞いた。 好きだったものを撮り続けた先に、今がある ー現在のお仕事内容について教えてください。 現在はアーティスト写真やジャケット撮影、ライブ撮影、グッズのビジュアル撮影、ファッションブランドのEC撮影などをしています。仕事の約9割は音楽関係です。 [caption id="attachment_29323" align="alignnone" width="750"] Billyrrom 1st Album「WiND」(Photo by Hayato Niiya)[/caption] 専門学校時代の友人を通じて知り合ったバンドを2021年頃から撮り続けています。 [caption id="attachment_29324" align="alignnone" width="750"] Billyrrom Artist Photo(Photo by Hayato Niiya)[/caption] ここ1〜2年で、そのバンドをはじめ、自分が撮り続けてきたアーティストたちが注目されるようになって、自分自身の仕事も少しずつ広がってきました。好きだったものを撮り続けてきたことが、今につながっているんだと思います。 「なんか楽しそう」から始まった写真との出会い ー写真はいつから始められましたか? はじめてカメラを手にしたのはいつですか? 高校2年生の頃です。 通信制高校のサッカーコースに通っていて、小学1年生から続けてきたサッカーをやっていました。ただ、高校1年生の冬にはプレーヤーとして続けるイメージが持てなくなって、マネージャーになったんです。同じクラスにはサッカー以外の進路を考えている友達もいて、そのうちの一人がカメラにハマり始めました。その姿を見て、「なんか楽しそうだな」と思ったのが写真を始めたきっかけです。その友達から、オリンパスのカメラを譲ってもらって、本格的に撮影を始めました。その後、親にCanon EOS 80Dを買ってもらい、どんどん写真にのめり込んでいきました。 ーフォトグラファーを職業として意識したのはいつ頃ですか? 高校2年生の冬頃です。 当時はまだInstagramが今ほど普及していないような時代でしたが、自分が撮った写真を友達がSNSのアイコンに使ってくれたり、その写真を見た知らない人から撮影の依頼をいただいたりするようになりました。 「自分には才能があるのかもしれない」 そう思えた瞬間でした。 その頃からサッカーチームの試合や集合写真、クラブチームのホームページ用写真などの仕事も受けるようになりました。高校生のアルバイトよりも稼げたこともあって、「写真を仕事にできるんだ」という成功体験になりました。 海外への憧れが、進路先の決め手になった ー専門学校へ進学しようと思った理由を教えてください。 もともとは美大に進学したいと思っていました。でも出願時期を逃してしまっていて、浪人するか迷ったんです。そんな時に東京近辺にある写真の専門学校を何校か見学しました。僕は愛知県出身ですが、高校進学のタイミングで東京へ出てきました。中学時代はほとんど学校へ行っていなかったんですが、サッカーを続けたくて東京を選びました。高校時代から東京のファッションや音楽などのカルチャーに触れていて、専門学校を選ぶ決め手になったのは海外研修制度でした。 「海外へ行きたい」 その思いがすごく強かったんです。学校見学で教務課長の奥先生から海外研修について聞いて、「NPIに進学しよう」と決め、学校見学の翌日には願書を記入していました。 残念ながら、新型コロナの流行があり、海外研修には行けなかったのですが、現在、仕事で海外ツアーの撮影もよく入るので、1年の半分くらいは海外にいます。明日からチェコへ行く予定です。 [caption id="attachment_29320" align="alignnone" width="750"] Photo by Hayato Niiya[/caption]   音楽カルチャーが写真の原点 ー学生時代に影響を受けた写真家やクリエイターはいましたか? 写真家では奥山 由之さん、嶌村 吉祥丸さん、小見山 峻さんに影響を受けました。 実は写真だけではなくて、音楽から受けた影響もすごく大きいです。SuchmosやYogge New Waves、King Gnuなどの音楽をよく聴いていました。音楽だけではなく、その世界観をつくるファッションやグラフィック、アーティスト写真にも惹かれて、「この写真は誰が撮っているんだろう」と写真家を調べるようになりました。 写真だけじゃない。現場で学んだ「仕事」のこと ー学生時代に転機となった出来事はありますか? 『SHUKYU Magazine』との出会いです。高校生の頃、代官山 蔦屋書店によく通っていて、そこでロシアワールドカップ特集号を見つけました。 SHUKYU Magazine 12 FUN ISSUE サッカーの楽しみ方は一つではありません。プレーすること、観ること、着ること、読むこと、聴くこと、集めること、食べること、語ること…。そのどれもがサッカーの一部です。 12号目のテーマは「FUN」です。順次発売を開始しております。https://t.co/KpvWXddkp4 pic.twitter.com/SWVACa3hd2 — SHUKYU (@shukyumagazine) May 28, 2026 サッカー雑誌だと思って手に取ったら、試合写真が一枚も載っていなかったんです。代わりに載っていたのは、人や街、ファッション、カルチャーの写真ばかりでした。「サッカーをこんなふうに表現できるんだ」と衝撃を受けました。 当時はサッカーが好きだけれど、プレーヤーとして続ける未来は見えていませんでした。でも、サッカーを文化として伝える仕事があることを知って、「サッカーを別の形で表現する道もあるんだ」と感じたんです。 ちょうど求人が出ていたので、NPI1年生の冬休み明けからスタッフの一員として働き始めました。   ーSHUKYU Magazineでの経験は、現在のお仕事にもつながっていますか? すごくつながっています。撮影だけじゃなくて、商品の撮影やイベントの設営、物販、スタイリング、キャスティングなど、本当にいろいろなことを経験しました。一般的なスポーツメディアは試合や結果を伝えることが中心ですが、『SHUKYU Magazine』はその周りにあるカルチャーや人を大切にしていました。そこで学んだ「写真だけじゃ仕事は成り立たない」という考え方は、今でも自分の軸になっています。スタジオ勤務やカメラマンのアシスタント経験がないことにコンプレックスを感じていた時期もありましたが、今振り返ると、あの経験が自分にとってのアシスタント期間だったと思っています。 ー在学中にこれはやってよかった、逆にやっておけばよかった事はありますか? 写真集は本当にたくさん見た方がいいと思います。 新しいものを生み出すと言っても、過去の表現の積み重ねなんですよね。先生からも「写真集を読め。スクラップしろ」と言われていました。今になって、その意味がよく分かります。   ー学生のうちに身につけておいた方がいいことはありますか? 写真以外のことだと、例えば、確定申告やギャラ交渉、お金のこと。フリーランスになると、自分の仕事にどれくらい価値があるのかを自分で判断して、相手と話をしなければいけません。そういう知識は学生のうちに学べたらよかったなと思います。   遊びの延長線上に、仕事があった ーフォトグラファーという仕事の魅力を教えてください。 僕はずっと遊んでいる感覚なんです。 [caption id="attachment_29360" align="alignnone" width="750"] Photo by Hayato Niiya[/caption] もちろん仕事なので責任はあります。クライアントの要望に応えることや、いい写真を撮る責任もあります。でも、自分が好きだった音楽やカルチャー、人とのつながりの延長線上に今の仕事があります。 遊びの中で人と出会って、その出会いが仕事につながって、また新しい人とのつながりが生まれる。 [caption id="attachment_29361" align="alignnone" width="750"] Photo by Hayato Niiya[/caption] 振り返ると、自分は本当にラッキーマンだなと思います。 サッカーが好きじゃなかったら、『SHUKYU Magazine』にも出会っていなかったし、その経験が今の仕事につながることもなかったと思います。   ー10年後、どんなフォトグラファーになっていたいですか? レッドカーペットを歩いてみたいですね。 アーティスト、クリエイター、レコード会社スタッフ、コンサートプロモーター、音楽出版社、海外音楽賞審査員など、各分野の音楽関係者より構成される5,000名以上の投票メンバーにて厳正なる投票を行ない、受賞作品/アーティストを決定する音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN」には、アルバムのデジタルのアートワークを評価する「最優秀アートワーク賞( in association with 日本グラフィックデザイン協会)」という賞があるんです。 ━━🏆 #MAJ2026 受賞速報 🏆━━ 最優秀アートワーク賞 in association with 日本グラフィックデザイン協会 ━━━━━━━━━━━━━━━ 平林奈緒美 / Martin Holtkampの 「怪獣 | サカナクション」に決定!#MUSICAWARDSJAPAN pic.twitter.com/i1EaE4XDMb — MUSIC AWARDS JAPAN公式 (@MAJ_CEIPA) June 13, 2026 そういう場所で、自分の仕事が認められるようなフォトグラファーになりたいです。 青春の上に立つ。 ー今、大切にしていることや、これから先も変わらず持ち続けたい想いはありますか? 韓国のバンド・HYUKOH(ヒョゴ)の「一生青春」という言葉がすごく好きなんです。 最近、その言葉の意味が自分の中ですごく腑に落ちていて。 高校生の頃、憧れのアーティストのライブを観るために通っていたZeppで、今はフォトグラファーとして撮影をしています。当時、「いつかここで写真を撮れたらいいな」と思っていた場所に、自分が仕事で立っている。不思議な感覚ですよね。しかも、憧れていたSuchmosのメンバーや、その周りで活動していたアーティストたちも、今では仕事を通して身近な存在になりました。 [caption id="attachment_29362" align="alignnone" width="750"] Photo by Hayato Niiya[/caption] ライブ会場へプライベートで遊びに行ったとき、自分が撮影やデザインに携わったライブグッズのナップサックを背負っているファンの子を見かけたことがあるんです。あれは本当にうれしかったですね。 [caption id="attachment_29328" align="alignnone" width="600"] 新谷さんが撮影した写真が使用されているグッズ[/caption] 高校生だった頃の僕が、憧れのアーティストのグッズを身につけてライブへ行っていたように、今度は誰かにとって、そのグッズが特別なものになっている。「今の高校生にとっての憧れ」が、自分の仕事とつながっているんだと思うと、すごく不思議な気持ちになります。だからこそ、高校生だった頃の自分に恥ずかしくない大人でいたい。 あの頃の自分が見ても、「かっこいいな」と思える生き方を続けていきたいんです。遊ぶことも、人と出会うことも、写真を撮ることも、全部つながっています。 だから僕は、これからも遊び続けながら、シャッターを切り続けたい。 ーもし学生時代の自分に声をかけるとしたら? 実は、あまり声はかけないかもしれません。後悔していることがほとんどないんです。もちろん、「授業はもっと出ておけばよかったな」とか、「写真集はもっと読んでおけばよかった」と思うことはあります(笑)。 でも、あの頃に好きだったもの、夢中になっていたこと、人との出会いがあったから今があります。 だから、「そのまま楽しんでこい」くらいですかね。   PROFILE photographer 新谷 隼人 2000年愛知県生まれ。 17歳の時に写真を撮り始め、日本芸術専門学校を卒業後、東京を拠点に主にファッション・音楽の分野で写真家として活動中。   取材/PicoN!編集部 市村 撮影/内山慎也   ↓PicoN!アプリインストールはこちら

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香りが導き、質感が語る。五感で体験する藤ちょこイラスト展『祝彩巡礼』展示レポート

繊細な色彩設計と、背景まで緻密に描き込まれた世界観が魅力の藤ちょこ先生。その作品群が一堂に会した展示「祝彩巡礼」が、東京・渋谷の西武渋谷モヴィーダ館にて開催され、先日その幕を閉じた。 個展「#祝彩巡礼」の開催が決定しました✨ 3rd画集収録作品を中心に描き下ろしやサイン会もあります!よろしくお願いします! 会期:2026/6/5~6/28 会場:西武渋谷店モヴィーダ館6F ▶ https://t.co/ZDxTNgxMOh pic.twitter.com/0LPcl7onUY — 藤ちょこ@個展6/5~ (@fuzichoco) April 10, 2026   本展示は、2025年に刊行された画集『祝彩巡礼』の発売を記念して企画されたものであり、単なるイラスト展示にとどまらず、「作品を体験する」というコンセプトのもと構成されている。 本稿では、現地での体験をもとに、展示空間の設計や作品の見せ方、そして特殊加工によって藤ちょこ作品がどのように“体験として拡張されていたか”について記録する。     《アーティスト情報》 ■藤ちょこ fuzichoco イラストレーター 透明感あふれる色彩と、圧倒的な情報量を誇る緻密な世界観で国内外から高い支持を集める。書籍やゲーム、トレーディングカード、VTuber関連など幅広い分野で活躍し、その幻想的で物語性豊かな作品は、多くのクリエイターにも影響を与え続けている。 胡蝶の夢 pic.twitter.com/ytpn4m57JZ — 藤ちょこ@個展6/5~ (@fuzichoco) February 23, 2025 喧騒を抜けて、世界の入り口へ 訪れたのは展示最終日だった。 前日に台風が通過したにもかかわらず、渋谷の街は変わらず人の流れに満ちていた。濡れた路面に光が反射し、都市の喧騒だけがいつも通りの速度で流れている。 会場となる西武渋谷モヴィーダ館は、無印良品が入るビルとして知られるが、その上階に広がる展示空間は、日常の延長線上にありながらも、どこか異なる静けさを持っていた。 時間まで待つようスタッフからアナウンスがあり、待機列は少しずつ進んでいく。入り口のモチーフや、最初に目に飛び込んでくる大迫力の一枚絵、展示タイトルが印字された壁面の横に添えられた直筆サインが視界に入り、まだ会場に入っていないはずなのに、すでに世界の入口に立っているような高揚感が生まれていた。   鮮やかな色彩と緻密な描き込み|藤ちょこ作品が愛される理由 多数のキャラクターデザインを手掛けたイラストレーターとしても有名な藤ちょこ先生ですが、作品の魅力は、緻密に設定された世界観に他ならない。建築物、植物、光、水、空気といった要素が等しく描き込まれ、それらが一枚の画面の中で有機的に結びつくことで、「ひとつの世界」として成立している。 [caption id="attachment_29242" align="aligncenter" width="750"] 藤ちょこ特殊印刷アート「祝彩巡礼」[/caption] そのため鑑賞者の視線は一点に留まらず、画面全体を巡りながら作品の中を歩くような感覚を得ることになる。 これは単なるイラスト鑑賞ではなく、“世界を読む体験”に近い。 香りから始まる没入体験|五感で切り替わる展示空間 会場に足を踏み入れた瞬間、まず感じたのは香りだった。 [caption id="attachment_29243" align="aligncenter" width="750"] 入り口を潜るとふわりと優美な香りが包み込んでくれる[/caption] 上品でありながら過剰ではない香りが空間全体に広がり、外の世界と展示空間の境界が明確に切り替わる。 イラスト展示において嗅覚までを設計に取り込む試みは多くない。本展は空間そのものを作品として成立させていた。 展示だからこそ体験できる、特殊加工が生み出す作品の魅力 SNSや画集を通して、藤ちょこ先生の作品に触れたことがある人も多いだろう。画面越しでも、その鮮やかな色彩や緻密な描き込み、幻想的な世界観は十分に伝わってくる。しかし、本展で作品を前にした瞬間、その考えは大きく覆された。本展では、複数の印刷会社による多彩な特殊加工が作品に施されており、光を受けて表情を変えるもの、見る角度によって印象が変化するもの、質感によって空気感や奥行きを際立たせるものなど、印刷そのものが表現の一部として機能していた。 [caption id="attachment_29261" align="aligncenter" width="562"] 藤ちょこオーロラポスター「さいはての空、彼方の教室」[/caption] スマートフォンやパソコンの画面では、イラストはそれぞれのデバイス環境や閲覧状況に左右されながら鑑賞される。一方、展示では、作品は物質として確かな存在感を持ち、同じイラストでありながら受け取る印象は大きく異なる。光の反射や素材の質感によって、画面越しでは感じ取れなかった空気や奥行きが作品に宿る。その変化は写真では決して再現しきれず、実際にその場に足を運び、一定の距離を保ちながら見つめることで初めて成立する体験だった。 そしてこのひと作品において特に印象的だったのは、アナログ着彩によって生まれる透明感と、その筆致そのものである。デジタルで構築されたイメージに対して、重ねられた色の層やにじみ、わずかな揺らぎが加わることで、画面では見えなかった質感が立ち上がってくる。 [caption id="attachment_29260" align="aligncenter" width="563"] 藤ちょこ自然紋「福の神」[/caption] 何より惹かれたのは、その筆さばきである。線の流れ、塗りの方向、絵の具の重なりといった“描く行為そのもの”が、そのまま作品の一部として残されている。それらは画面越しでは決して気づくことのできない情報であり、会場に足を運び、その作品と同じ距離で向き合うからこそ初めて見えてくるものだ。デジタル表現に施された加工とはまた異なる次元で、このアナログ着彩そのものが、このひと作品の“完成形”を成立させていた。そして何より重要なのは、この体験そのものが「現地に足を運んだからこそ成立している」という点である。画面越しでも作品は十分に鑑賞できる。しかし、光の揺らぎや素材の質感、筆致の細部といった情報は、実物と対峙したときにしか立ち上がらない。この作品が示していたのは、イラストは見る場所によって完成形が変わるという事実だった。だからこそ、展示という場に足を運ぶ意味がある。そこには、画面では得られない“もう一段階上の作品体験”が確かに存在していた。 特殊加工で作品は更に輝く イラストを描き上げたら、それで完成だと思っていないだろうか。もちろん、一枚のイラストとして完成させることは作品づくりの大きなゴールだ。しかし、その作品を「どう届けるか」まで考えたとき、表現の可能性はさらに大きく広がる。本展では、複数の印刷会社による多彩な特殊加工が作品に施されていた。箔を貼った作品は一層豪華な印象を受けた、時間の経過で変化する作品、見る角度によって印象が変わるもの、その表現は実にさまざまだ。 印象的だったのは、作品と額が複数のアクリルで制作された作品「水没都市」。 あらかじめ模様のついたカスミアクリルという素材に、青系グラデーションを印刷する事で水面をイメージしたアクリルフレームにしたとの事。(藤ちょこイラスト展「祝彩巡礼」パンフレットより引用) イラストを描く人にとって、作品は完成した瞬間がゴールではない。紙や素材を選び、印刷方法を選び、加工を選ぶ。その一つひとつの選択が、作品を「見るもの」から「体験するもの」へと拡張していく。もし、いつか自分の作品を展示する日が来たなら──。作品をどう飾るかだけでなく、「どう輝かせるか」という視点も、ぜひ持ってほしい。 鏡になる作品|鑑賞者が作品へ取り込まれる体験 筆者が本展で一番衝撃を受けたのは、入口すぐに展示されていた作品「胡蝶の夢」である。 額装の中にはキャラクターが描かれているが、角度や時間の経過によってその姿は消え、鏡へと変化する仕掛けになっていた。 [caption id="attachment_29245" align="aligncenter" width="563"] 藤ちょこチェンジングプリント「胡蝶の夢」[/caption] [caption id="attachment_29246" align="aligncenter" width="563"] 時間が経過すると、キャラクターが消え、ミラーに変化する。[/caption] そこに映るのは作品の続きではなく、自分自身の姿である。 この瞬間、鑑賞者は「見る側」から「作品の中にいる側」へと立場を変えることになる。 イラストと鑑賞者の境界が曖昧になる、非常に象徴的な体験だった。 触覚によるイラストの拡張 さらに本展では、刺繍によって表現された作品にも触れることができた。 イラスト展示において作品に触れることができる機会は極めて少ない。 しかし本展では、触覚を通じて作品を理解するという新しい鑑賞方法が提示されていた。 糸の立体感や質感は、視覚だけでは伝わらない情報を補完し、作品世界の解像度をさらに高めていた。 画集『祝彩巡礼』|展示体験の“種明かし” 展示を見終えたあと、グッズ販売エリアで藤ちょこイラスト展「祝彩巡礼」パンフレットを手に取った。 このパンフレットは単なる展示作品が羅列された画集ではなく、特殊加工や制作工程に関する解説を含んだ構成となっている。 展示で感じた「なぜこの表現なのか」という疑問が、ページをめくるごとに言語化されていく。 展示体験の延長線上に“理解”が用意されている構造であり、作品への理解が一段階深まる内容だった。 イラストは“体験”へと拡張できる イラストは本来、視覚によって鑑賞されるものだ。 しかし『祝彩巡礼』は、その前提そのものを静かに拡張していた。 香りによって世界へ導かれ、特殊加工によって視覚体験が変化し、刺繍によって触覚へと広がり、鏡の仕掛けによって鑑賞者自身が作品へと取り込まれる。 そのすべてが連続したひとつの体験として設計されていた。 そして何より印象的だったのは、この展示が「イラストはどこまで拡張できるのか」という問いを提示していたことである。 イラストは、描いた瞬間が完成ではない。 紙、印刷、加工、空間。 それらの選択によって、作品はさらに豊かな体験へと育っていく。 『祝彩巡礼』は、美しいイラストを鑑賞する展示であると同時に、「作品はここまで体験へ拡張できる」という可能性を示してくれる展示だった。 だからこそ私は、この展示をイラストが好きな人だけでなく、これから作品を生み出すすべてのクリエイターに届けたい。   あなたの作品も、きっと“体験”へ拡張できる。       『藤ちょこイラスト展 -祝彩巡礼-』は既に終了しています。 《展覧会情報》 『藤ちょこイラスト展 -祝彩巡礼-』 ⽇程:2026年6月5日(金) 〜 6月28日(日) 時間:11:00 〜 20:00(最終入場19:30) 会場:西武渋谷店モヴィーダ館 6F 料⾦:入場券:1,000円(税込) 取材・撮影/PicoN!編集部 市村 [clink url="https://picon.fun/design/20260612/"] [clink url="https://picon.fun/design/20211004/"] [clink url="https://picon.fun/illustration/20240115/"]   ↓PicoN!アプリインストールはこちら

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お気に入りの一匹を探そう。『アニマル&モンスター かわいい・怖い・ちょっと変』展ではじめる浮世絵入門

浮世絵にはさまざまな動物や妖怪が登場する。ペットとして親しまれたネコやイヌ、不気味な姿で人々を恐れさせた鬼や土蜘蛛。さらには、擬人化された動物たちや、思わず笑みがこぼれるユーモラスなキャラクターまで、その表現は実に多彩だ。 太田記念美術館で開催中の「アニマル&モンスター」展では、「かわいい」「怖い」「ちょっと変」をキーワードに、浮世絵に描かれた個性豊かな動物や怪物たちを紹介。人気作品から新収蔵品として初公開される作品まで、約140点が展示されている。 今回は内覧会に参加し、浮世絵初心者でも楽しめる本展の魅力を、PicoN!学生編集部とともにレポートする。 原宿の太田記念美術館では明日6/23(火)より「アニマル&モンスター かわいい・怖い・ちょっと変」を開催いたします。前後期合わせて140点(前後期で全点展示替え)を展示。人気の作品から初出品の作品までお楽しみいただけます。詳しくは→https://t.co/A6pe89Spos pic.twitter.com/GxUZLHyzRg — 太田記念美術館 Ota Memorial Museum of Art (@ukiyoeota) June 22, 2026     原宿の喧騒の先に佇む、浮世絵の時間 JR原宿駅の表参道口を出ると、多くの人々が行き交う原宿らしい賑わいが広がる。流行のショップには若者たちが集い、修学旅行で来たと思われる高校生や、国内外から訪れた観光客の姿も目立つ。次々と新しいトレンドが生まれるこの街は、今なおさまざまなカルチャーを発信し続ける場所のひとつだ。 そんな活気に満ちた駅前から数分歩き、表参道沿いの喧騒を離れて路地へ入ると、街の空気は少しずつ穏やかさを帯びていく。その先に静かに佇むのが太田記念美術館である。 1980年に開館した太田記念美術館は、東邦生命保険相互会社社長を務めた五代太田清藏が蒐集した浮世絵コレクションを基礎として設立された、国内でも数少ない浮世絵専門の美術館だ。現在は約15,000点のコレクションを有し、葛飾北斎や歌川広重、歌川国芳をはじめ、浮世絵の歴史を彩る数々の名品を所蔵している。 館内では収蔵作品を中心に多彩な企画展が開催されており、風景画や美人画、役者絵といった王道のテーマはもちろん、現代的な視点を取り入れたユニークな切り口の展示も人気を集めている。専門性の高い内容を扱いながらも、浮世絵に馴染みのない来館者でも楽しめる展示づくりが同館の大きな魅力だ。 現代カルチャーの発信地である原宿の一角で、江戸の人々が親しんだ大衆文化に触れる。時代こそ異なるものの、「流行」や「表現」を楽しむ人々の姿は今も昔も変わらない。そんな思いを胸に、今回の展示会場へと足を踏み入れた。   かわいい、怖い、ちょっと変。浮世絵のアニマル&モンスター大集合 浮世絵と聞いて、どんな作品を思い浮かべるだろうか。 葛飾北斎の《神奈川沖浪裏》や歌川広重の名所絵など、有名な作品の名前は知っていても、「なんだか難しそう」「美術の知識がないと楽しめない」と感じている人も少なくないかもしれない。 そんな人にこそおすすめしたいのが、太田記念美術館で開催されている『アニマル&モンスター かわいい・怖い・ちょっと変』展だ。 本展の主役は、猫や狐、蛙といった動物たち、そして妖怪や鬼、龍などの怪物たち。浮世絵の中に描かれた個性豊かなキャラクターたちにスポットを当てた展覧会である。 会場を歩いていると、思わず笑ってしまうような表情の猫や、どこか人間らしい仕草を見せる動物たち、迫力満点の妖怪たちが次々と現れる。作品ごとに異なる物語やユーモアが込められており、浮世絵の知識がなくても自然と引き込まれていく。   可愛さあふれる動物や妖怪たち PicoN!学生編集部:今回の展覧会テーマは、「動物と妖怪」。学芸員の方は、可愛い・怖いだけでなく、ユーモラスに描かれている作品を多く集めたと語っていました。 個人的に好きだったのは、歌川芳虎の『神功皇后三韓征伐之御時韓兵計飢虎追放官軍猛禽投撃亦生捕帝覧備(じんぐうこうごうさんかんせいばつのおんときかんひょうはかってうえたる とらをはなつ かんぐんもうきんをなげうちまたはいけどりてていらんにそなふ)』という作品です。 [caption id="attachment_29198" align="aligncenter" width="750"] 歌川芳虎「神功皇后三韓征伐之御時韓兵計飢虎追放官軍猛禽投撃亦生捕帝覧備」[/caption] 多くの虎たちと兵が戦っているという殺伐とした場面を描いた武者絵のはずですが、大きな虎たちのもふもふしたお腹や肉球など、まるで猫を連想させるような可愛らしいポーズとのギャップが新鮮でした。ぜひ実際に足を運んで、虎たちの愛らしい「にこげ(柔らかい毛)」の質感を感じてみてほしいです。   擬人化された「人まねアニマル」 PicoN!学生編集部:浮世絵では、ネコやウサギ、タコといった動物たち、さらにはホオズキやカボチャのような植物までもが、まるで人間のような姿かたちに大変身しています。 [caption id="attachment_29153" align="aligncenter" width="750"] 歌川国芳「ほふづきづくし 八そふとび」[/caption]   なかでもネコは蕎麦屋やウナギ屋、 銭湯など、さまざまなお店でくつろいでいる姿がたくさん描かれています。 この章では、様々な動物が擬人化されて描かれている浮世絵を見ることができます。 歌川芳藤の「しん板猫のあきんどづくし」では、猫たちが人間さながらの姿になって、町でさまざまな商品を売り歩いています。 [caption id="attachment_29201" align="aligncenter" width="750"] 歌川芳藤『しん板猫のあきんどづくし』[/caption] 特に、シャボン玉売りに走り寄っていく子供の猫たちの姿は、可愛らしくて印象的でした。 小さな画面の中にたくさんの猫たちが描かれているので、よーく目を凝らしてみると新しい発見があったりします。ぜひ、お気に入りの一匹を見つけてみてください。 思わず「これなに?」と言いたくなる「ちょっと変」なキャラクター 浮世絵に描かれるのは誰もが知る動物や妖怪ばかりではありません。石から虎の手足と尻尾が生えた空想上の生き物である「虎子石」や、人間の顔をした人面魚、十二支が一つに合体した動物、 さらには、病気や薬、お金が人間の姿になったものなど、ヘンテコで不可解なキャラクターたちがさまざまに登場する。 [caption id="attachment_29157" align="aligncenter" width="519"] 落合芳幾「見立似たかきん魚」(前期)[/caption] 浮世絵師たちの豊かなイマジネーションが満載。 約5分の1が新収蔵品 太田記念美術館ではこれまで「浮世絵お化け屋敷」や「江戸にゃんこ 浮世絵ネコづくし」、「浮世絵動物園」など、動物や妖怪をテーマに展覧会を開催してきた。今回の展覧会では、これまで人気の高かった作品はもちろん、まだ紹介していない初お披露目の作品も多数展示されている。 [caption id="attachment_29158" align="aligncenter" width="504"] 歌川国芳「木曽街道六十九次之内 京都 鵺 大尾」※新収蔵品[/caption]   PicoN!学生編集部:「浮世絵」と聞くと少し難しそうなイメージがあり、あまり興味が湧かない学生も多いかと思います。しかし、カラフルで賑やかな錦絵には、現代の私たちにも通じるユーモアがたくさん散りばめられていました。今のアニメやゲーム作品でお馴染みの「擬人化」の手法や、イラスト・グラフィックデザインの参考になる秀逸な構図など、クリエイティブを学ぶ学生にとって刺激になる要素が盛りだくさんです。展示会場はコンパクトな造りで、気軽に鑑賞できるのも魅力です。しかし、一枚一枚の浮世絵に目を向けると、愛らしい動物やどこか憎めない妖怪など、個性豊かなキャラクターたちが画面のあちこちに描き込まれています。細部までじっくり眺めながらお気に入りの一匹、一体を探していると、気がつけば時間を忘れて見入ってしまいました。前期と後期で全点展示替えが予定されている本展覧会。後期にはどのような作品が並ぶのか、今からとても楽しみです。   『アニマル&モンスター かわいい・怖い・ちょっと変』は8月23日(日)まで 《展覧会情報》 『アニマル&モンスター かわいい・怖い・ちょっと変』 ⽇程:2026年6月23日(火)~8月23日(日)前期 6月23日(火)~7月20日(月・祝)後期 7月25日(土)~8月23日(日)※前後期で全点展示替え 時間:午前10時30分 ~ 午後5時30分(入館5時まで) 会場:太田記念美術館(〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1-10-10) 料⾦:一般 1200円 大高生 800円 中学生(15歳)以下無料 取材協力:太田記念美術館 取材/PicoN!学生編集部 中澤 撮影/PicoN!編集部 市村   ↓PicoN!アプリインストールはこちら

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