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「和モダン」デザインの魅力って何?
近年、「和モダン」というデザインスタイルが注目を集めています。皆さん、この単語を聞いたことがありますか? 伝統的な日本の美意識と現代的なデザインの融合によって、和モダンは国内外で多くの人々に支持され続けています。コロナ禍後にインバウンド需要も少しづつ回復を見せる今日。今回の記事では、和モダンデザインの魅力、その人気が上昇している背景、そして実際の応用例についてご紹介をしたいと思います。 そもそも和モダンって? 和モダンは、日本の伝統的なデザイン要素(和風)と、現代的なミニマルデザインや国際的な美意識を組み合わせたスタイルのことを呼びます。特徴としては、以下4つのポイントがあげられます。 ①素材感の活用 木、和紙、石、竹など自然素材を使用。これらの素材は、それぞれ独自の温かみや質感を持ち、空間やプロダクトに深みを与えることができます。たとえば、木材はその自然な木目の美しさが際立ちますし、和紙は柔らかい光を透過する特性が高く評価されています。 ②シンプルな美 無駄を省いたシンプルな形状や色使いが特徴です。直線的で整ったデザインは、視覚的な静けさと心地よさを生み出します。また、シンプルでありながら機能性を損なわない工夫が、和モダンの重要な要素の1つとなっています。 ③伝統的要素の再解釈 障子や畳、格子柄など、伝統的な要素を現代風にアレンジして取り入れるのが和モダンの醍醐味となっています。たとえば、障子をガラスやメタルフレームと組み合わせたり、畳をフローリングに埋め込むようなデザインにもその特徴が見られます。これにより、伝統的な雰囲気を損なわず現代のライフスタイルにも適合したデザインに仕上がります。 ④調和とバランス 空間やプロダクトの静けさと洗練されたデザインが特徴です。和モダンでは、空間全体のバランスを重視し、自然光や陰影の使い方を工夫することで、落ち着いた雰囲気を作り出します。この調和が、心地よさと美しさを感じさせる要因となっています。 和モダンの人気が上昇している背景 和モダンの人気が高まってきた理由には、いくつかの社会的・文化的要因が関係していると考えることができます。 ①サステナビリティへの関心の高まり 自然素材や環境に優しいデザインを取り入れる和モダンは、近年のサステナビリティへの注目と相性が良いと言えるのではないでしょうか。特に木材や竹を使ったデザインは、エコロジカルであると同時に視覚的な心地よさも提供します。 ※サスティナビリティ/環境や資源を保護しながら、持続可能な未来を築くための取り組みや考え方のこと。 ②ミニマリズムの流行 世界的なミニマリズムのトレンドにおいて、和モダンのシンプルで洗練されたデザインが共鳴しています。「少ないものから最大の効果を引き出す」という哲学が、多くの人に受け入れられています。私はミニマリストではないんですが。 ③インバウンド需要の影響 最初にも書いたように、訪日外国人の増加に伴い、日本文化への興味が高まりました。特に建築やインテリアにおける和モダンの美しさが海外でも評価されています。例えば、京都の高級ホテルや料亭のインテリアはその代表例ですね。確かに、筆者は福岡に住んでいますが、海外からの旅行者の皆さんは、こぞって洗礼された日本っぽいものや建築物を撮影しているような気がしますね。 ④デジタル時代の反動 テクノロジーが進化する一方で、心の安らぎや自然とのつながりを求める傾向が強まってきています。和モダンはそのニーズを満たすスタイルとしても注目をされているようです。 和モダンの実例 それでは、和モダンはどのようなデザイン分野でみられるのでしょうか?以下は和モダンデザインが実際に応用されている例です。 建築とインテリア ・住空間:和室をモダンなリビングに取り入れた設計。たとえば、畳スペースをリビングの一部に組み込み、木材や障子を使用した空間設計が人気です。 ・商業施設:京都や東京のホテル、レストランが和モダンのデザインを採用。静かで洗練された空間が旅行者に高い評価を得ています。 プロダクトデザイン ・和紙を使用した照明器具や、木材を使った家具など、和モダンプロダクトが注目されています。例えば、彫刻家であるイサム・ノグチの「AKARI」シリーズはその代表例とも言えると思います。 参考:https://akari-ozeki.com/ ファッションとアクセサリー ・伝統的な和柄をモダンなファッションに落とし込む動きも広がっています。特に、着物の帯柄をリデザインしたスカーフやバッグが人気を集めています。皆さんが気になるブランドでも、もしかしたら使われているかもしれないですよ。 和モダンをデザインに取り入れるには 和モダンはさまざまなデザインに簡単に取り入れることができます。 家具やインテリア小物 木目調の家具や、和紙を使った照明を選ぶことで、空間全体に和モダンの雰囲気を加えることができます。 色の選択 ベージュ、ブラウン、グレー、黒など、落ち着いたトーンを基調とすることで、調和のとれたデザインを実現します。 伝統工芸品 地域の伝統工芸品をモダンな空間に配置し、アクセントとして活用することで、デザインに深みと個性を与えます。 和モダンは、日本の伝統と現代的なデザインを融合させた魅力的なスタイルです。その人気の背景には、サステナビリティやミニマリズム、自然との調和を求める現代人の価値観が反映されているように思われます。日本国内に住む方に向けたデザインとしては言うまでもなく。今後、和モダンは日本国内だけでなく、国際的なデザインの場でも注目され続けると考えても自然ではないでしょうか。 和モダンを取り入れた空間やプロダクトは、私たちのデザインに安らぎと美しさを与えてくれるはずです。ぜひこの魅力的なスタイルを、皆さんのデザインのエッセンスとして取り入れてみてはいかがでしょうか。 PicoN!編集部 九州校佐藤 ↓PicoN!アプリインストールはこちら
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「NFLスーパーボウル ハーフタイムショー」Kendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)― クリエイティブ圏外漢のクリエイティビティを感じる何か…〈vol.36〉
おはようございます。こんにちは。こんばんは。 2月はバレンタインデーなんかがあったりしますが 皆様浮足立ったりしているんでしょうか? バレンタインデーというイベントが 令和以降の空気やコロナなどもあって イベント自体の株価が下がっている印象があるのですが 今年はチョコにグリーティングカードなどを添え、 手書きのメッセージを贈ることが見直されているそうです。 (Shopifyの調査によると前年比300%越え!) まぁバレンタインにソワソワもしなくなった 自分としては2月で楽しみなイベントといえば NFLのスーパーボウルのハーフタイムショーです。 NFLハーフタイムショーとは 言わずもがなだとは思いますが スーパーボウルとは米国のNFLのリーグ決勝戦です。 米国内だけでなく全世界注目のイベントで、 試合と同様、国内外の視聴者獲得に 一翼を担っているのがハーフタイムショーです。 今年で59回目になるハーフタイムショーは 初回こそ大学のマーチングバンドが出演していたが 1993年のマイケル・ジャクソンの出演以来 有名ミュージシャンがショーケースをするのが慣例化。 世界的企業が公式スポンサーになり ポール・マッカートニーをして 「スーパーボウルの出演依頼ほどの名誉はない」 と言わしめるほどアーティストにとっても権威ある場です。 ちなみにハーフタイムショーに関しては、 「ハーフタイムに視聴者が一斉にトイレを行くので 上下水道に一気に負荷がかかり、水道管破裂等の問題が 起きるのを防ぐために行われている」 という話がありますが都市伝説で因果関係はないとのこと。 ■ハーフタイムショーの出演者リストはコチラ 1回~46回までのハーフタイムショー出演者リスト 2000年代以降のハーフタイムショー出演者リスト そして今年はというと 今年もグラミーの年間最優秀楽曲賞、 年間最優秀レコード含む5部門受賞を果たした 現行HIPHOP界のキングKendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)が出演! 第59回ハーフタイムショーの恐るべき完成度 Kendrick Lamarの説明を置いておいて 彼を知っている人もそうでない人も まずはハーフタイムショーの様子を観てほしい。 ▼YouTube Kendrick Lamar's Apple Music Super Bowl Halftime Show どうでしょう? 滅茶苦茶カッコよくないですか? 途轍もなくラップうまいし、 マスゲーム的なバックダンサーもカッコイイし、 始まりから終わりまで演出・展開もクール… Kendrick Lamarの存在を知らなくても 初見でカッコイイと思えるショーかと思います。 観ていない人は是非もう一度観てください。 Kendrick Lamar初見&英語ネイティブでない方だったら ダンサーがマスゲームで星条旗作ったり、 サミュエル・L・ジャクソン演じる アンクル・サムのような狂言回しは Make America great again的なことを言っているし、 「トランプ再就任以降の揺り戻しみたいな愛国感か?」 と思ってしまうかもしれない。 *実際にトランプはスーパーボウルの会場にいた。 今年のハーフタイムショーの真価 しかし今回のハーフタイムショーは単純ではない。 ラッパーとして初のピューリッツァー賞を受賞した 反骨精神あふれるリリシストであるKendrick Lamarが 資本主義、人種問題などのマクロな社会問題を 最高峰のエンタメの舞台で提起しているのだ。 それだけでなく、 ビーフをしていたラッパーDrakeへのDis、 地元とコミュニティへの愛の表示、 後輩SZAのフックアップ、 自身のBoast(自慢すること)… ラッパーとしてミクロなHIPHOPマナーも織り込み済み。 いやぁ、グゥの音も出ない。 あまりに良すぎて何度観ても発見がある… まさにクリエイティビティの塊! 話題が話題を呼び、ハーフタイムショーのYouTube動画は 日本の人口を超える視聴者数を1週間足らずで記録。 また初見ではただカッコイイだけで終わるが 重奏的に意味が含まれているので、国内外で 解説動画や記事が乱立しているのも驚異的です。 ▼海外の解説動画 Kai Cenat Reacts to Kendrick Lamar Halftime Performance! ▼日本の解説動画 視聴者の9割が理解できないKendrick Lamarのハーフタイムショーを解説 こちらの解説記事もオススメ。 Kendrick Lamarの“驚異的な1週間” Kendrick Lamarを初見な人にはあえて情報を入れず ハーフタイムショーとその意味について驚いてほしかったので 彼についての説明を省いていたが、 数々の偉業を語りだすと長いのでWikiなどをご参照を。 ただ皆様にはグラミー賞があった2/2から ハーフタイムショーがあった2/9までの驚異の1週間での 驚くべき数字を共有したい。 5 – グラミー受賞数 第67回グラミー賞はKendrick Lamarのものだった。 彼は年間最優秀レコード、年間最優秀楽曲、最優秀ミュージックビデオ、最優秀ラップ楽曲、最優秀ラップパフォーマンスの5部門を制覇し、この年の最多受賞者となった。… pic.twitter.com/HRq2532RNp — (@Mizaistom_7) February 14, 2025 1億3,350万人 – スーパーボウル・ハーフタイムショーの視聴者数 Kendrick Lamarはスーパーボウル・ハーフタイムショーのヘッドライナーを務めた初のソロラッパーとして、新たな歴史を刻んだ。… pic.twitter.com/iqQzzITLQj — (@Mizaistom_7) February 14, 2025 9,110万人 – Spotifyの月間リスナー数 スーパーボウルの圧巻のパフォーマンスを経て、Kendrick LamarのSpotifyの月間リスナー数が急上昇。 その結果、彼はDrakeを抜き、Spotifyで最も月間リスナー数の多いラッパーとなった。 pic.twitter.com/NBJNaImCiA — (@Mizaistom_7) February 14, 2025 154% – ストリーミング再生の急増 スーパーボウルでのパフォーマンスをきっかけに、Kendrick Lamarの楽曲が爆発的に再生されている。 Billboardの報道によると、スーパーボウル以降、彼のストリーミング再生数は154%増加。リスナーが一斉にKendrickの音楽を再生している状況だ。 pic.twitter.com/otfFZ6ztGK — (@Mizaistom_7) February 14, 2025 4,500万回 – YouTubeでのスーパーボウル・パフォーマンス再生回数 Kendrick Lamarのスーパーボウル・ハーフタイムショーの映像は、YouTubeで4,500万回以上再生されている(2月12日時点)。… pic.twitter.com/MkbzAQmHeX — (@Mizaistom_7) February 14, 2025 Kendrick Lamarについてもっと興味をもったら 彼の本格評伝『バタフライエフェクト』がオススメ! Kendrick Lamarの経歴や各作品制作の姿勢を 彼に会わずにここまで立体的に描いたのは見事の一言。 誠実な若者の作品が黒人社会、アメリカ、ひいては世界に バタフライエフェクトを起こしていることがわかる一冊です。 またHIPHOP自体に興味を持った方は Kendrick Lamarも出演したHIPHOPのメモリアルイヤーである 3年前のハーフタイムショーもオススメです!! ▼YouTube Dr. Dre, Snoop Dogg, Eminem, Mary J. Blige, Kendrick Lamar & 50 Cent FULL Pepsi SB LVI Halftime Show 文・写真 北米のエボ・テイラー ↓PicoN!アプリインストールはこちら
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2月22日は猫の日。猫専門イラストレーター・Coony(クーニー)さんにインタビュー
もうすぐ「猫の日」。 SNSでは猫の動画がバズり、「猫ミーム」が話題を集めるなど、最近は特に猫が大人気ですね。 今回は、猫専門イラストレーター・Coony(クーニー)さんにインタビュー!作品作りのこだわりや戦略についてお話を伺いました。 Coony(クーニー) 猫専門イラストレーター 福島県生まれ、多摩美術大学卒業。 2019年よりイラストレーターとして活動を開始し、現在は3匹の猫と暮らしています。 イラストを始めたきっかけはなんですか? 以前の職場に猫好きの先輩がいて、その先輩と仲良くなりたいと思い、誕生日に猫のイラストを描いてプレゼントしました。とても喜んでくれて、「絶対何かやったほうが良いよ!」という言葉をもらったことがイラストを描き始めたきっかけです。 また、保護猫のミノを迎えたことは、イラスト活動を本格的に始めるきっかけとなりました。ミノを迎える際に、動物の引き取りや保護を行っている団体があるということを初めて知りました。 私も何か貢献できないかと思い、空いている時間に猫のイラストを描いてInstagramにアップしてみました。すると、フォロワーが一気に増え、「お金を払うので描いてほしい」というDMがたくさん届きました。そこで、「イラストを描いた利益の一部を保護団体に寄付する」という形で、自分なりの保護猫活動を始めました。 [caption id="attachment_23390" align="aligncenter" width="750"] ミノ[/caption] Instagramを始めて1年も経たないうちに、数々の猫スイーツを手がけるお菓子メーカー『オールハーツカンパニー』の、『ねこねこチーズケーキ』からパッケージデザインの依頼を受けました。 3~4年ほど日中はインハウスデザイナーとして働き、夜は遅くまでイラストを描くというダブルワークを続けていましたが、昨年1月からフリーランスとして活動を開始しました。 [caption id="attachment_22921" align="aligncenter" width="750"] 2025年2月3日(月)より全国発売 「にゃんともおいしいチーズケーキ クッキー&クリーム」257円[/caption] どんなツールを使って描いていますか? 基本的にはillustratorです。iPadにApple Pencilで描き、最後の仕上げはマウスで行っています。マウスを使うと予期しないラインが出ることが個人的に気に入っていて、この部分はかなりのこだわりです。こだわらないと、作風が少し変わってしまうかもしれないくらい大切な作業だと感じています。 最近は「猫+食べ物」を描くことも多くなってきたので、Photoshopも使っています。 Illustratorでは食べ物のシズル感(購買意欲を掻き立てるような瑞々しさ)を表現するのに限界があるため、ベースはillustratorで描き、最後の仕上げはPhotoshopで行っています。 作品制作の流れを教えてください 私が描いているのは基本的に猫のバストアップ(照明写真のような)アングルです。そのため、そういったアングルでこちらを見ている写真を送ってもらいます。他にもいくつか写真をいただき、「この子はおっとりしているんだろうな」「あざとい系かな」など、どういう子なのかを感じとって、なるべく個性が表れるように描いています。 背景の色は、基本的にお家に飾るため、インテリアの写真をもらって提案したりします。希望の色を指定していただくこともありますし、「猫ちゃんに合う色にしてください」と要望いただくこともあるので、その都度対応しています。 猫を描くときにこだわっているポイントはありますか? 「目」にこだわっています。 猫は目がとても綺麗で、他の部分がモコモコしている姿が可愛いと思うので、そのバランスがうまく出るように心がけています。 また、見る人と目が合うように意識し、他の体毛よりも線を太くして少しうるうるした感じにしたり、透明感が出るように工夫したりしています。 今の課題はなんですか? やっぱり描く時間―効率化が課題です。結局、描くのにかかる時間が収入に直結するので、できるだけ早く描けるようにしたいと考えています。どうやったら筆が乗りやすくなるのか、下書きをもっと早く進める方法はないか、生産性をあげる手段はないか、などを考えています。 見ている人に伝えたいことはありますか? 良い意味で特にないんです(笑) 「猫かわいいな〜」と思ってもらえたら、それが一番最高です。 というのも、「収益の一部を保護猫に寄付します」と言っているものの、受け取る側に圧力を感じさせてしまう感じがして、保護活動を前面に出しすぎたくないんです。”可愛いから”という理由でグッズやイラストを買ってもらい、実は保護猫への寄付につながっていたと知る人もいるかもしれない、そういう循環を作っていきたいと思っています。 だから、「猫かわいい」と思ってもらえたら、それが一番嬉しいです。 フリーランスとして働くうえで意識していることはありますか? イラストが上手い方はたくさんいらっしゃいますが、フリーランスとして活動するには「マーケティング」の要素がとても重要だと考えています。 特に、自分が「どんなイラストレーターなのか」を一言で伝えられることが大切だと感じています。 私の場合、SNSには意図的に【猫ちゃんのバストアップ+正面を向いたイラスト】を多く投稿しています。それは、絵を見た方に「自社のパッケージに使えそう」とか「うちの猫の似顔絵も描いてほしい」と具体的なイメージを持ってもらいやすくするためです。 現在、ほとんどの仕事はInstagram経由でご依頼をいただいています。 [caption id="attachment_23145" align="aligncenter" width="750"] ハローキティとにゃんともおいしいチーズケーキ~つぶつぶストロベリー~(現在は販売終了しています)[/caption] クライアントが求めることと自分の色の出し方は、どのようにバランスをとっていますか? 特に企業がクライアントのときは、基本的に企業の意向に従っています。絶対に譲れない点は守りますが、それ以外の部分については、新しい一面として受け入れています。 もし少し違うと感じる場合は、相手の要望を理解した上で、別の方向で提案することもあります。インハウスデザイナーを10年ほどやっていたので、社内の状況や事情はある程度理解できます。おそらく、いきなりフリーランスになっていたら分からなかったことだと思います。会社で働いていた経験は、大きな強みになっていますね。 また、納期やプロジェクトの内容にもよりますが、自分なりのアイデアを1案加えることも多いです。 最初のミーティングでは、企画の意図や求める成果・イメージをヒアリングし、その認識をすり合わせるためのA案を作成します。そして、A案に追加要素を加えたB案や、さらに解釈を広げたC案、ちょっと方向性の違うD案を提案します。 基本的にInstagramを見てご依頼いただくため、テイストを変えてほしいという要望はありません。 今年度から美術大学の講師もやられているCoonyさん。イラストを学ぶ学生にメッセージをください。 お仕事がたくさんもらえて忙しくなってくると、嬉しい反面、時間や体力の限界を感じることもあるかと思います。そんな忙しい時やピンチの時に「なんで私はイラストやりたかったんだっけ…?」という原点がしっかりしていると、それを振り返ることで、ピンチも乗り越えられますし、軸もぶれないと思います。会社でいうミッション、ビジョンあたりが近いと思います。 私の場合、深夜に睡魔と闘いながら描くことも時々ありますが、「これで猫が何匹助かるのかな」と思うと頑張れるので、そういった原点があるとやっぱり強いなと感じます。 これからの目標を教えてください。 今はお菓子や食品のパッケージが多いので、今年は新しい分野の製品やパッケージにも積極的にチャレンジしていきたいと思っています。また、動画や3Dなどイラストを元に派生させて進化させることにも挑戦してみたいです。見てくれる人を楽しませるような内容にするのが目標です。 Coonyさん、ありがとうございました! 人懐っこくて可愛い3匹の猫ちゃんたちに囲まれて、とても幸せな取材時間を過ごしました。 Coonyさんはたくさんの商品パッケージを担当されています。 ▼コラボ商品とイベントのお知らせをご紹介いたします▼ ねこねこチーズケーキ/ねこねこウィンターホリデー開催中! サイトはこちら>>NEKO NEKO WINTER HOLIDAYS 2024-2025/ALL HEARTS COMPANY PAPABUBBLE(パパブブレ)×ねこねこ コラボレーション商品が期間限定で発売中! 詳細はこちら>>【「PAPABUBBLE」と初コラボ!】『ねこねこキャンディBAG』などコラボ商品を1月30日より新発売🍬🌟 【保護猫支援】焼きチョコ缶 発売中! 販売ページはこちら>>焼きチョコ缶/patisserie un.fleur(パティスリーアンフルール) FamilyMart「ファミリ~にゃ~ト大作戦!」にて、Coonyさん監修商品発売開始! 詳細はこちら>>毎年恒例!「ファミリ〜にゃ〜ト大作戦!」2月18日(火)から開催にゃ〜 HARAKADO CAT’S GALLERY ★参加&メインビジュアルを担当★ 期間:2025年2月17日(月)~2月27日(金) 11:00-20:00 場所:東急プラザ原宿『ハラカド』3階 ハラカドギャラリーby匿名希望画廊 @tokumei_kibogaro 内容:9名のアーティストによる猫アート作品の展示・販売、グッズ販売、オーダーイラスト抽選会、その他イベント 寄付:こちらのイベントの収益の一部は東京キャットガーディアンに寄付されます🐾 @tokyocatguardian また、CoonyさんのSNSには素敵な作品がたくさん載せられています。こちらもぜひご覧ください☟ Instagram @coony_illust X(Twitter)@Coony_illust TikTok @coony_illust PicoN!編集部 そん ↓PicoN!アプリインストールはこちら
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これが写真家の名人芸。ハービー・山口が写す、写真学校の “光” – 日本写真芸術専門学校・新パンフ撮影の舞台裏
NEWメイキング動画 書籍の顔である表紙の撮影は、写真家のセンスと技術が必要とされるフィールドのひとつ。撮影現場はどのような流れで動き、そして写真家はどのような想いや思考をもって仕事に取り組むのでしょうか? 写真家の仕事現場をのぞき見れる、貴重なムービーが到着しました。 日本写真芸術専門学校(NPI)の学校パンフレット。2026年度入学者向けの表紙と裏表紙は、キャリア50年、第一線を走る写真家でNPI校長のハービー・山口先生が撮影しました。 撮影当日、スタッフ一同は朝9時に集合。モデルがヘアメイク、スタイリングをしている間、ハービー校長はNPI校内をロケハンし、10時半より撮影がスタート。 ライカM10-PとM10 モノクローム 、レンズはノクティルックス M50㎜、ズミクロンM35㎜、エルマリート90mm F2.8を使用して、いい光を探しながら校内を巡りました。 ハービー・山口 HERBIE YAMAGUCHI 1950年東京都出身。23歳でロンドンに渡り10年間在住、劇団の役者を経て写真家になる。折からのパンクロックのムーブメントの中、ミュージシャンのポートレートが高く評価された。幼年期に患った病歴の末、写真のテーマを「生きる希望」とし人物を撮り続けている。エッセイの執筆、ラジオのパーソナリティー、ギタリスト布袋寅泰には歌詞を提供している。テレビ番組「徹子の部屋」にも出演するなど幅広い年代層から支持されている。2011年度日本写真協会賞作家賞受賞。個展・著作多数。 Instagram:@herbieyamaguchi X:@herbieyamaguchi 「写真は光と影が作り出すドラマです。その場その場で最大限に光を活用して、いかにドラマチックに撮るかということを考えました。廊下にいい光があれば床に座ってもらったり、窓のブラインドからもれる細い光で遊んだり。またモデルさんと出身地や好きな食べ物の話をするなかで打ち解けて、後半は光よりも表情に注目して撮影しました。学校でもこんな写真が撮れるのかと、みなさんの刺激になったら嬉しいです。」 ハービー・山口 パンフレットに載せきれなかったアザーカットをコチラでご紹介! [caption id="attachment_22973" align="aligncenter" width="562"] ©HERBIE YAMAGUCHI[/caption] [caption id="attachment_22974" align="aligncenter" width="850"] ©HERBIE YAMAGUCHI[/caption] [caption id="attachment_22975" align="aligncenter" width="850"] ©HERBIE YAMAGUCHI[/caption] [caption id="attachment_22976" align="aligncenter" width="850"] ©HERBIE YAMAGUCHI[/caption] [caption id="attachment_22977" align="aligncenter" width="850"] ©HERBIE YAMAGUCHI[/caption] [caption id="attachment_22978" align="aligncenter" width="562"] ©HERBIE YAMAGUCHI[/caption] [caption id="attachment_22979" align="aligncenter" width="562"] ©HERBIE YAMAGUCHI[/caption] [caption id="attachment_22980" align="aligncenter" width="850"] ©HERBIE YAMAGUCHI[/caption] [caption id="attachment_22981" align="aligncenter" width="567"] ©HERBIE YAMAGUCHI[/caption] [caption id="attachment_22982" align="aligncenter" width="567"] ©HERBIE YAMAGUCHI[/caption] [caption id="attachment_22983" align="aligncenter" width="567"] ©HERBIE YAMAGUCHI[/caption] [caption id="attachment_22984" align="aligncenter" width="567"] ©HERBIE YAMAGUCHI[/caption] [caption id="attachment_22985" align="aligncenter" width="567"] ©HERBIE YAMAGUCHI[/caption] モデル:内野七星 ヘアメイク:COCO スタイリスト:荒谷至 学校パンフレットにはハービー・山口校長の撮影後のインタビューを掲載。 こちらもぜひご覧ください! 2025年4月以降に学校ホームページから資料請求をお願いいたします。 学校HPはこちら 資料請求はこちら ↓PicoN!アプリインストールはこちら
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ゴディバ・パッケージデザインのひみつを開発者に聞いてみた。~チョコレートの魔法ができるまで~
クリスマスやバレンタインデーのシーズンになると、デパートでは魅力的な包装のチョコレートやお菓子のギフトセットを目にします。その中でも、ゴディバは他のお菓子会社の中でも常に傑出していると感じます。また、常に目を離せないさまざまなテーマやスタイルを生み出しています。まるで、ゴディバはクリスマスの魔法を作り出し、心と魂にクリスマスの “村” をもたらしてくれるようです。 今回は、六本木にあるゴディバ ジャパン株式会社を訪問し、素晴らしい製品とパッケージの背後にいる商品開発の担当の方にお話を伺い、ゴディバがどのように「チョコレートの魔法」をつくり出しているかを垣間見る素晴らしい機会を得ました。 取材協力/ゴディバ ジャパン株式会社 取材・文/サイ・フォン・キッドマン (専門学校日本デザイナー学院・グラフィックデザイン科) [word_balloon id="unset" src="https://picon.fun/wp-content/uploads/2025/02/キッドマンアイコン-1.jpg" size="M" position="L" name_position="under_avatar" radius="true" name="キッドマン" balloon="talk" balloon_shadow="true"]まずは、ひとつの商品が完成するまでのプロジェクトの流れを教えてください。[/word_balloon] [word_balloon id="unset" src="https://picon.fun/wp-content/uploads/2025/02/ゴディバさまサムネ-300x298.jpg" size="M" position="L" name_position="under_avatar" radius="true" name="GODIVA 橋田さん" balloon="talk" balloon_shadow="true"]新商品の準備は、だいたい1年半ぐらい前からスタートします。チョコレートを生産するのにとても時間がかかるので、それぐらい前から始める必要があるんですね。一番最初に決めるのは「コンセプト」です。たとえば今回のホリデーシーズン(2024年のクリスマス向け商品)は「ウィンターワンダーズ」と言って、 ゴディバの発祥の地であるベルギー・ブリュッセルで行われているクリスマスマーケットをテーマにしたものになっています。この世界の中を散歩したり、歩いて回っていただいているような情景をパッケージに描いているんです。そういったコンセプトに基づいて、パッケージデザインだけではなく、チョコレートのビジュアルやお味も考えます。今回の商品で言えば、一個一個のチョコレートをキラキラしたクリスマスマーケットやクリスマスのオーナメントのような雰囲気になるよう、デザインしました。その時々の世の中の ムードというか、世の中の皆さんが感じてらっしゃることも商品に反映することもあります。[/word_balloon] [word_balloon id="unset" src="https://picon.fun/wp-content/uploads/2025/02/キッドマンアイコン-1.jpg" size="M" position="L" name_position="under_avatar" radius="true" name="キッドマン" balloon="talk" balloon_shadow="true"]パッケージをデザインするうえで大切にしていることは何ですか?[/word_balloon] [word_balloon id="unset" src="https://picon.fun/wp-content/uploads/2025/02/ゴディバさまサムネ-300x298.jpg" size="M" position="L" name_position="under_avatar" radius="true" name="GODIVA 橋田さん" balloon="talk" balloon_shadow="true"] 「どんなお客様がどんな目的でその商品を買いにいらっしゃるのか」そして「その後どんな場面でそれを召し上がってくださるのか」を考えることを大切にしています。クリスマスに発売する商品ならクリスマスギフトとして使われるお客様が多いかと思うんですけども、その皆様がより楽しいクリスマスを過ごせますように、という気持ちでしたり、持ち帰ったパッケージをおうちに飾ってクリスマス気分を味わっていただいたり……など、そのお客様のことをどこまで想像できるか。また商品は「デザインして終わり」ということではないんです。デザインした後も、パッケージがお店に並ぶまでに壊れないかとか、 そういったところも細かくテストをします。売り場のスタッフはもちろん、倉庫で詰め合わせるスタッフも含め、全てのメンバーが「よりいい状態で商品を届けたい」という思いで取り組んでいます。[/word_balloon] [word_balloon id="unset" src="https://picon.fun/wp-content/uploads/2025/02/キッドマンアイコン-1.jpg" size="M" position="L" name_position="under_avatar" radius="true" name="キッドマン" balloon="talk" balloon_shadow="true"]そういうスタッフの皆さんの “想い” がこもっているからか、GODIVAのチョコレートを開けた時って、本当にキラキラと輝いて見える感じがしますよね。[/word_balloon] [word_balloon id="unset" src="https://picon.fun/wp-content/uploads/2025/02/ゴディバさまサムネ-300x298.jpg" size="M" position="L" name_position="under_avatar" radius="true" name="GODIVA 橋田さん" balloon="talk" balloon_shadow="true"]ありがとうございます。[/word_balloon] [word_balloon id="unset" src="https://picon.fun/wp-content/uploads/2025/02/キッドマンアイコン-1.jpg" size="M" position="L" name_position="under_avatar" radius="true" name="キッドマン" balloon="talk" balloon_shadow="true"]お仕事の中で一番楽しいことはなんですか?[/word_balloon] [word_balloon id="unset" src="https://picon.fun/wp-content/uploads/2025/02/ゴディバさまサムネ-300x298.jpg" size="M" position="L" name_position="under_avatar" radius="true" name="GODIVA 橋田さん" balloon="talk" balloon_shadow="true"]コンセプトやテーマを作ることももちろんですが、それをビジュアル化していく過程がやはりすごく楽しいと思います。イメージ通りにならないこともやっぱりあって、そういう時はメンバー同士で何度も相談や話し合いをして、 1つのものに作り上げていきます。そういうコミュニケーションも含めて、デザインをつくっていく過程はやっぱり楽しいです。[/word_balloon] [word_balloon id="unset" src="https://picon.fun/wp-content/uploads/2025/02/キッドマンアイコン-1.jpg" size="M" position="L" name_position="under_avatar" radius="true" name="キッドマン" balloon="talk" balloon_shadow="true"]日本と他の国では、パッケージデザインに何か違いはありますか?[/word_balloon] [word_balloon id="unset" src="https://picon.fun/wp-content/uploads/2025/02/ゴディバさまサムネ-300x298.jpg" size="M" position="L" name_position="under_avatar" radius="true" name="GODIVA 橋田さん" balloon="talk" balloon_shadow="true"]日本で販売する商品に関しては、ゴディバ ジャパンが主体となって国内のマーケットに合わせた商品を開発しています。日本でオリジナルに企画をして、日本の皆さまに受け入れられやすいデザインであったり、チョコレートのお味を考えているんです。チョコレートの製造についてはフランス人のシェフの存在とベルギーに生産チームがありまして、「ベルギーチョコレート」という軸にはこだわりをもっています。ゴディバ ジャパンで企画した商品は、韓国や中国などからも「自分の国でも展開したい」とご要望をいただいたりしてます。日本のGODIVAがグローバルに評価されているのは嬉しいですね。[/word_balloon] [word_balloon id="unset" src="https://picon.fun/wp-content/uploads/2025/02/キッドマンアイコン-1.jpg" size="M" position="L" name_position="under_avatar" radius="true" name="キッドマン" balloon="talk" balloon_shadow="true"]今後のプランやビジョンを教えてください。[/word_balloon] [word_balloon id="unset" src="https://picon.fun/wp-content/uploads/2025/02/ゴディバさまサムネ-300x298.jpg" size="M" position="L" name_position="under_avatar" radius="true" name="GODIVA 橋田さん" balloon="talk" balloon_shadow="true"]GODIVAは歴史あるブランドで、2026年に100周年を迎えます。もともとは家族経営のチョコレート屋さんから始まったブランドで、創業者は「一粒のチョコレートで、世界に幸せを届けたい」という想いを大切にしていました。そういった創業者の気持ちが、今も私たちの会社の理念というか、 ものづくりの核になっています。もうすぐ100周年を迎えるゴディバですので、改めて「ベルギーらしいチョコレート」をお客様にお届けしたい、感じていただきたいという想いで商品開発に取り組んでおります。[/word_balloon] 取材後記 今回のインタビューを通して、私は多くのことを学びました。パッケージデザインにとって最も重要なことは、魅力的に見せることだけではなく、クリエイターと企業の本質の両方を伝えることなのですね。ゴディバの魔法は、開発チームが常に製品に心血を注ぎ、ゴディバの精神と誇りを忘れず、さらにそこから一歩踏み出すことで生み出されていることがわかりました。 キッドマン 取材協力: ゴディバ(GODIVA)プレミアムチョコレート【ベルギー王室御用達】 ↓PicoN!アプリインストールはこちら
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【連載】時代を写した写真家100人の肖像 No.35 アジアのコスモロジーを描き出す 管洋志『魔界・天界・不思議界・バリ』 鳥原学
インドネシアのバリ島は世界有数のリゾート地として知られる。だが、1979年に管洋志がそこを訪れたとき、観光化の波はまだ押し寄せてはいなかった。彼は日々の暮らしに浸透している通過儀礼や芸能文化に魅せられ、その撮影にのめり込んでいった。それは独自でありながら、どこか“日本の祈り”の原型にも通じる世界だったのである。 博多とバリ 一年に一度の地元の祭りには、何をおいても駆けつけるという人を、私は何人か知っている。なかには、そのために仕事を辞めてしまうという猛者もいるようである。たった数日の「ハレ」の日のために、残りの三百数十日の日常を懸けるという“祭り狂い”の生き方は、どこか羨ましくもある。 管洋志が生まれ育った博多では、そんな男たちは「山のぼせ」と呼ばれている。「山」とは毎年7月1日から2週間にわたり開催さる「博多祇園山笠」と、このとき使われる山車(だし)のことである。「流(ながれ)」と呼ばれる地区ごとに分かれた男たちは、頭に鉢巻き、白い水法被に締め込み、足元は黒い地下足袋で身を固める。その揃い装束でおよそ1トンもの山笠を曳き、博多の街を練り歩く。 この祭りのハイライトはなんといっても、博多の総鎮守である櫛田神社へ山を奉納する最終日の「追い山」である。奉納とは言っても、山は猛スピードで街を駆け抜け、すさまじい勢いで境内へと流れ込んでいく。その通りに面した家の人々が、曳手の熱を冷ますためバケツで「勢い水」をかけ、街が一体となって高揚するのである。 そんな祭りの様子を嬉々として語ってくれた管もまた、まぎれもない山のぼせのひとりだった。だから遠いバリ島の祭礼についても、頭ではなく身体で理解できたに違いない。1983年の写真集『魔界・天界・不思議界・バリ』と、その4年後の続編である『バリ・超夢幻界』の2冊を見ていると、そう思われてならない。なにしろページを開くたびに、祭りにかけるバリ島の人々の熱狂と陶酔とが波のように押し寄せてくるのだから。とくに後者の印象は鮮烈である。色とりどりの衣装と仮面、トランス状態になった人々の表情がグロテスクなまでに凝視されていて、まるで幻覚を見ているような気分におちいる。写真家はその詳細を克明に、まるで凝視するように捉えているのである。 管がテーマとしたバリ島は、インドネシアのジャワ島の東に位置する火山の島である。広さは日本の三重県や愛媛県とほぼ同じで、人口は約400万人に満たない。稲作が盛んで、よく耕された棚田の風景などは日本によく似ている。主要な産業は観光で、毎年海外から数百万人もの人々が訪れている。彼らの目当ては熱帯の濃密な自然と宗教文化が生んだ、圧倒的な芸能なのである。 もともとバリ・ヒンドゥーはインドのヒンドゥー教と島独自のアニミズムが融合した信仰であり、現地には祭礼や芸能が日常に深く根付いている。そのため、バリは「劇場国家」とも呼ばれ、神々に奉納される舞踊や影絵芝居が発展した。特に、魔女ランダと聖獣バロンの戦いを演じるバロンダンスや、ヒンドゥー叙事詩『マハーバーラタ』の影絵芝居ワヤン・クリは、今も島の伝統として続いているのである。 カメラマンと写真家の間で 管洋志が初めてこのバリを訪れたのは1979年、34歳のときである。当時はまだ観光開発もまるで進んでおらず、その魅力はとくに日本人でほとんど知られていなかった。だが、それまでアジアを取材してきた管は、 ほかにはない濃縮された空気をすでに感じていた。なんとなく相性が良かったこの島が、写真家として自らを再生させるには、最もふさわしい場所のように思われたのである。 バリに来るまで、管は多忙な日々を送っていた。週刊誌や月刊誌で連載を持ち、グラビア特集の撮影もこなす人気カメラマン。しかし、どれだけ仕事が充実しても、心の奥には鬱屈が巣食っていた。「カメラマンではなく、写真家になりたい」——その思いが、彼をバリへと駆り立てた。 管はカメラマンと写真家とをはっきり区別していた。カメラマンとは読者に事実を伝えることを生業とする職業人だが、写真家は自分の感じたことを表現する自立した創作者だと定義していた。だから依頼仕事をいくら器用にこなしていけても、けして自分の表現にはいらず、かえって不満が募っていたのである。今も昔も写真業界には、こうした感情を抱く人はけして少なくはない。 菅の写真家願望は、ドキュメンタリー写真家を目指し日本大学の写真学科で学んでいたときから始まっている。きっかけは3年生の夏休みに、打ち捨てられた海上の廃炭鉱である長崎県の端島、通称「軍艦島」を撮りに出かけたことだった。現地で奈良原一高の1956年のデビュー作、おそらく戦後の写真史の分岐点となった『人間の土地』の写真を見て、ひどく衝撃を受けたのである。奈良原は隔絶された環境のなかで、採炭のために徹底的に近代化されて軍艦島の風景を、現代人が生きる状況を象徴的に表現していた。魔術的とも評されるその圧倒的な映像感覚を前に、管は自分の写真が全否定されたように感じたという。と同時に、写真家になるという目標も定まったのである。 その最初の挑戦は、1970年に銀座ニコンサロンで開催した初個展「チベット難民」 である。一年半をかけてインドからネパールを旅した際に出会った、中国の支配下にあるチベットからの難民キャンプを撮影した写真をまとめたものである。だが期待に反して、観客の入りは少なく専門家筋の評価も聞こえてこなかった。管の失望は大きかった。 いやじっさいは評価の俎上にのぼってはいたのだ。作品の一部が翌年の『カメラ毎日』4月号に掲載された際、写真の教育者としてもよく知られる大辻清司がこう評している。 「個展を見たときでもそうでしたが、少しもどかしい思いがしますね。つまり見たい写真がまだあるんじゃないかというもどかしさです。 (中略)ぼくは、人間というもののもとにさかのぼるような感じがすれば満足するんですけれど」 見たいのは「人間というもののもと」という大辻の指摘はさすがというべきである。この作品で人間が撮りきれていないことは、作者自身も感じていたのである。 その後も、菅はなんとか仕事と作品を両立させようと奮闘していく。資金が貯まるとアジアを旅して写真を撮り、ついには戦争中のベトナムにもでかけているのだが、ものにはならなかった。26歳のときには全国のストリップ劇場をまわって踊り子たちを撮り、「花のヴィーナス86人衆」を雑誌で発表した。このとき、これで初めての写真集を出版したいという希望もあったという。だが劇場を舞台とした人間模様を描きたいと意図したのに、性風俗的な話題だけが先行してしまい、断念をしている。 こうして過ぎていった20代を、管は「暗黒時代」と振り返る。やっと転機が訪れたのは、三十路を迎えたときだった。きっかけは妻の放った次の一言である。 「あなたは誰のために撮っているの?」 創作的な写真家であるには雑誌や読者のためにではなく、ただひたすら自分が求める撮らなければならない。そう気付かされた管は、自分が没頭できる対象は若いころから旅してきたアジアにあると思った。彼は次のように書いている。 「アジア各地を旅して歩くのではなく、そこに居とどまり、文化を知り、人の生活を体にしみつかせ、一冊の写真集を創り上げることだ」 そしてついにつかみ取った主題が、バリ島の祭礼だったのである。 アジアのコスモロジーへ 管は多くの仕事を整理して時間を捻出し、東京とバリを頻繁に行き来して、ひたすら写真を撮るという生活を送った。 滞在中は、現地の人と同じものを着て同じものを食べた。文字どおり「人の生活を体にしみつかせ」ていったのである。撮影に没頭するあまり、自宅の電話番号さえ思え出せなくなったこともあった。もっとも、当時のバリには電話はまだ数本しか設置されていなかったという。 こうして現地に密着するうちに、管はひとつのことに気づいていった。それはバリと日本の意外な類似生だ。たとえば一般に寺院と訳される「プラ」という聖域が、じつは祭祀のありかたも雰囲気も、寺院よりは神社のそれに近いこと。米作りの折々に捧げられる祈りも、よく似ていた。バリ・ヒンドゥーの根底にある古いアニミズムは、日本の神道のあり方と近いもののように感じられた。 それをはっきり見たのは、世界中でこの島だけに許された公開の火葬儀礼のプロセスを見たときだった。バリの人にとって死は終わりではなく、新しい生の始まりとされている。それゆえ王族や高位のカーストに属する者が亡くなると、来世への門出を祝うため、明るく盛大な葬儀が営まれる。華やかに装飾された高さ20メートルにもなる「バデ」といわれる葬儀塔を中心とする大行列が、ガムランの金属的な音色にのって火葬場に向かってにぎやかに進む。そして、最後にバデは遺体もろとも燃やし尽くされるのである。 華やかな装束をまとった男たちによって担ぎ上げられ、動き出したバデにレンズを向けたそのときだった。バデと男たちに沿道から水が浴びせられ、どっと歓声が沸いたのである。菅の眼の前にある光景は「追い山」のそれとはっきりと重なった。火葬儀礼と山笠が、いやバリと日本とはどこか深い所で繋がっている。そうはっきりと直観されたのだった。 文化人類学において、コスモロジー(宇宙論)とは、神話や祭礼を通じて形成される世界観や宗教観の体系を指す。管がバリ島で撮影したのは、単なる祭礼の記録ではない。それは「死と再生」「人と神の交わり」といった、アジアに広く共通する精神的な構造——すなわち、アジア的コスモロジーの視覚化だったのである。 その後も撮影を重ねた管は、ついに写真集をまとめるさいに、レイアウトを杉浦康平に依頼することに決めた。杉浦は菅が尊敬する奈良原一高をはじめ、東松照明、川田喜久治らの代表的な写真集を手がけており、国際的にも高い評価を得ていた。しかも管がバリに魂を奪われていたまさにそのころ、杉浦もまたインドでの体験からアジアに注目し、アジア的な図像をデザインの中に採り入れ始めていたのである。 その杉浦であったからこそ、管の意図を最も理解し、より理想的な形を与えることができたと言えよう。ことに最初の『魔界・天界・不思議界・バリ』には、死から生へと向かうバリの生命観が、はっきりと反映されている。まず棺の中にある死者の手のアップから始まり、新生児の写真で締めくくられているのだ。その間に島の祭りやさまざまな暮らしの営みが効果的に配された構造は、どこか曼荼羅を思わせる。さらに、2冊目の『バリ・超夢幻界』では、その構造の最も核にある、バリ人の魂の生々しさに迫っている。 本書の出版後、1980年代後半から菅のアジアへの旅はさらに広がっていった。ベトナム、タイ、ラオス、ビルマ、さらに日本の八重山列島や奄美大島などにも積極的に通った。「どこに行っても懐かしい感覚が湧いてくる」と管は私に語ってくてた。 一見して異なる地域であり文化のなかに、共通するコスモロジーが潜んでいる。管が写真家として表現してきたことのなかには、グローバル化するこの世界で、互いを理解し合うための知恵が潜んでいるように思われる。 管洋志(すが・ひろし) 1945年福岡県博多生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、フリーに。週刊誌で活躍する一方、ライフワークとして人物や東南アジアをテーマにしたドキュメンタリーを発表。写真集は『バリ・超夢幻界』『博多祗園山笠』『メコン4525㎞ 』など多数。講談社出版文化賞写真賞、土門拳賞、東川賞国内作家賞受賞。料理写真のカメラマンとしても著名で、『すきやばし次郎』など著書多数。2013年死去。 参考文献 管洋志『メコン4525㎞ 』(実業之日本社 2002年) 管洋志『一瞬のアジア』(新潮社 2014年) 『玄光社MOOK12 アジア夢幻行 管洋志作品集』(玄光社 1987年) 『写真工業』 (写真工業出版社) 2007年9月号 管洋志「私とカメラ(2)カメラマンと写真家」 関連記事 [clink url="https://picon.fun/photo/20241207/"] [clink url="https://picon.fun/photo/250107/"] 文・写真評論家 鳥原学 NPI講師。1965年大阪府生まれ。近畿大学卒業。フリーの執筆者・写真評論家。写真雑誌や美術史に寄稿するほか、ワークショップや展示の企画などを手掛ける。2017年日本写真協会学芸賞受賞。著書に『時代を写した写真家100人の肖像』、『写真のなかの「わたし」:ポートレイトの歴史を読む』、『日本写真史』など多数。 鳥原学 時代を写した写真家100人の肖像 上・下巻(玄光社/定価2500円+税)より ↓PicoN!アプリインストールはこちら
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