心躍る「発見」と「ひらめき」を
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最新記事一覧【イマーシブ体験の流行で再注目!】映像演出の先駆者に聞く、 ディズニーの映像演出の魅力とは?【前編】
最近注目を集めている五感を刺激し没入感を得る「イマーシブ体験」。プロジェクションマッピング、映像による演出など、皆さんも一度は見たことがあるのではないでしょうか? 今回は、空間映像演出の先駆者的存在としてご活躍されている専門学校日本デザイナー学院講師の土井昌徳先生に、これまでのご自身の経験や、空間映像演出の歴史をお話していただくとともに、ディズニーシーで現在行われているプロジェクションマッピングショー「ビリーヴ シー・オブ・ドリームス」の解説をインタビューを通じてお話いただきます。 前編となる今回は、土井先生と空間映像演出との出会いや、空間映像演出を職業にしようと考えたきっかけなどを中心にお話お伺いしました!これから映像を学びたい方や映像演出に興味がある方は必見です! 総合デザイン科ビジュアルデザイン専攻 土井昌徳先生プロフィール [caption id="attachment_22225" align="aligncenter" width="780"] (https://here-we-are.jp/people/masanori-doi/より引用)[/caption] 空間の体験価値を“アップデート”する映像空間演出を手がける。学生時代に、映像演出を即興で行うVJ(Visual Jockey)としてデビューし、米国留学、CGプロダクションのVFXデザイナーをへて独立。国内でいち早くプロジェクションマッピングの手法を取り入れた。NHK紅白歌合戦でのステージ演出やコニカミノルタプラネタリウムのプラネタリウム制作、海外でのアート空間演出など、これまでに手がけたプロジェクトは2,000以上。クリエイティブディレクターとしての豊富な経験をいかし、専門学校日本デザイナー学院 総合デザイン科ビジュアルデザイン専攻講師も務めている。 \ 土井先生がVJを行ったプラネタリウム×イマーシブ体験の様子が分かる動画はこちら / VEGA “Planetarium Dance Party” HERE. × コニカミノルタプラネタリウム 映像に興味を持ち始めたのはいつ頃ですか? 中学生の頃です。特撮やアニメが好きで「AKIRA」というアニメの作品を取り巻く音楽やカルチャーに惹かれました。作者のルーツなどを深堀りしていった結果、サブカルチャーに興味を持ったのが始まりだったように感じます。 0時以降の深夜帯にテレビで放映されていたサブカルチャーを扱った番組や、当時の新宿や六本木でかかっていた様なディープな音楽を紹介している音楽番組を見始めていき…。そこから、アニメカルチャーと近い存在であるテクノミュージックが好きになっていきましたね。今も大好きです。 サブカルチャーやテクノミュージックとの出会いが「映像」という分野に興味を持ったきっかけでした。 そこからどのように「空間映像演出」に出会ったのですか? サブカルチャーやテクノミュージックが好きになってから、自然な流れでライブハウスとかクラブみたいな音楽がかかってる場所に興味を持ちました。即興で映像をつけて流す「VJ(ビジュアルジョッキー)」を知ったのが空間映像演出との出会いだったのかなと思っています。 あとは、学生時代に放送部みたいなものに所属していて、校内放送で自分の好きな曲を流すDJのような活動や、学校イベントの時に自分の作ったオープニング映像などをプロジェクターなど使いながら大きな映像と大きな音で全校生徒へ発表していた経験もあったので、そのあたりがきっかけになりますね。 [caption id="attachment_22226" align="aligncenter" width="800"] https://here-we-are.jp/people/masanori-doi/より引用[/caption] 空間映像演出を職業にしようと思ったきっかけを教えてください やはりVJ(ビジュアルジョッキー)を始めたのが大きなきっかけですね。僕が大学生だった頃は、今よりも雑誌が世間的に強い時代でした。雑誌でVJが取り上げられていたのを目にして興味を持っていたのですが、なかなか現場に行ける機会が無く、歯痒い思いをしていた時期もありました。 そんな時にアメリカに短期留学する機会がありました。生活していた寮の中で出し物をしようという事で全体の演出みたいな形でVJをやった時があったんです。それがすごく楽しくて。日本に帰ってきてからも更にやりたい気持ちが強くなっていました。 そこからどのように仕事に繋がっていったのですか? アメリカの短期留学から帰国した後も、新宿とかで仲間とイベントをするようになっていきました。VJの楽しさを更に知っていき、もっとVJを仕事として追及していきたいという気持ちが強くなりましたね。当時メールマガジンで情報発信していたVJチームに自分からコンタクトをして、一緒にお仕事させてもらえるようになっていきました。 チームの一員としてVJをする中で、六本木ヒルズの4面スクリーンのあるバーでVJを毎週金曜日に担当する機会があって。そこに集まる人たちから少しずつお仕事を貰えるようになっていきました。特に印象に残っているお仕事だと、そこのバーで扱っているビールのブランド映像を作らせていただいたことですね。徐々に仕事が増え、自分自身もは楽しみながらのめり込んでいった感じです。 土井先生、ありがとうございました!空間映像演出のお仕事をスタートするまでのご自身の体験談をお話しいただきました。 次回!後編では本題である“ディズニーのプロジェクションマッピング”について土井先生に解説していただきます!お楽しみに。 \\ 後編を見逃したくない人は本サイトのアプリをダウンロードがおすすめです◎ // ↓PicoN!アプリインストールはこちら
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池田幸穂 個展「音色をときほぐす」PicoN!インタビュー
専門学校日本デザイナー学院のイラスト講師・池田幸穂先生の個展「音色をときほぐす」が両国・GALLERY MoMoにて開催中です。今回は本展示について、たくさんの動物たちが登場する作品について、テーマや制作のエピソードを交え、池田先生の言葉でお話いただきました。 今回の展示について作品テーマや展示タイトル「音色をときほぐす」について教えてください 「音」をテーマにしようと思ったきっかけは、コロナ禍の私自身の経験です。当時、専門学校の授業でもオンライン授業や、zoomでオンライン飲み会とかがコミュニケーションの手段でしたよね。直接会えない、話せない。そういった期間が続き、その時になんだか心が本当の意味で通っていないような感覚があって、気付いたらとても疲れちゃっている自分がいて。 その後、自分の中で「音」についていろいろ意識するようになりました。例えばコロナが明けて旅行へでかけた際に、鳥の鳴き声がものすごく美しく感じたり、動物園に訪れた時、一斉に動物たちが声を出したり鳴いたりしたりして、まるで喋っているみたいだな、って感じたり。職場でも直接会って顔を見ながらお話しすることがやっぱ1番大事だな、というのを改めて痛感しました。そういった経験を自分の絵で表現できないかな、って思ったのがきっかけです。 「ときほぐす」というのは、さまざまな音の重なりを分解する、ほぐしていく、 という意味と、心を解きほぐすという意味を持っています。心がほっとする、みたいな。 作品を見た人が、どこかほっとするような 絵を描きたいっていうことと、絵の中からいろんな音が聞こえてくるようにして。絵を見る人自身が、ほぐしていく、分解していく、みたいな意味合いを重ねました。 池田先生ならではの独創的な明るく楽しい色使い、自然や生物をモチーフにした描写がとても魅力的です。発想の源やアイディアはどんな時に湧いてくるのでしょうか 今回は、あえて現実的な色を使わない、ということを作品に取り入れてみました。クマとかゴリラの本来持っている色味をそのまま使っていますが、ファンタジーのような、自分の中で色をあえて全く違う色にしたいっていうのを、両方掛け合わせようと思って。絵の中に「理想」のような、こうなったらいいなという願望も含めて、鮮やかにしてみました。自分が持っている色を全部使ってみたいという気持ちもあったりして。 この投稿をInstagramで見る Sachiho IKEDA // 池田幸穂(@sachiho_ikeda)がシェアした投稿 特に今回はナマケモノをピンクにしたのですが、ナマケモノって本来茶色いですよね。どうやら彼らは自然の中で生き残っていくためにカモフラージュで茶色という色らしいのですが、絵の中には敵もいないし、もう真逆の色にしてみたいな、と思って。絵の中でナマケモノは動かないですが、カラフルにすることで元気が出てくるようないまにも動いたり喋りだしたりしそうな、そんなイメージです。でも同じ絵の中でも、トラさんは逆にちょっとグリーンぽい、静かな色。白と黒の怖い感じではなくて、どこか柔らかくて優しい。そういった「色で遊ぶ」感覚がとても楽しかったです。 今回の作品たちにはナマケモノやたくさんの動物、虫、生き物が描かれています。池田先生と動物たちとの出会い、関係性を聞いてみたいです 元々、鳥がとても好きでした。もう学生時代から、東京の川や海、公園、とにかく水辺を訪れてたくさん鳥を探してきました。トキを見るためだけに、佐渡島に一人で行ったこともあります。 これまでの作品にも動物たちはたくさん描いてきました。動物園にも足を運んで、彼らの動きや仕草、表情もじっくり観察しましたね。今回の作品を描く前にも動物園を訪れていて。なんとも可愛いナマケモノに出会ったその日に、私の足元に、もう、びっくりするくらい大きな立派なカタツムリがいて。「ああ、あなたも描いてほしいのね。」みたいな。運命的な出会いでした。 この投稿をInstagramで見る Sachiho IKEDA // 池田幸穂(@sachiho_ikeda)がシェアした投稿 最近、クマたちが山から下りてきて人間や住居を襲った、なんてニュース耳にしますよね。海外でも、人間が森を侵略してしまい寝床を失ったゴリラたちが住処を追われてしまって、コウモリと接触して疫病にかかってしまって…とか。そういったことって、他人事ではなく私たちが生きている同じ地球上で起きている出来事だと感じています。共感をすることも大事だし、どこか自分たち人間と同じ地球上にいる仲間みたいに感じています。 以前の作品と比べると、今回の作品たちには虫たちもたくさん登場しています。実は、昔は虫ってすごく苦手だったのですが、私が講師をしているこども絵画教室に、昆虫好きな少年がいるんです。「先生!虫みつけたー!」って写真を見せてくれたり、図鑑で教えてくれたりするんですよね。いっぱいお話を聞いて、お互いに次の週はまた見つけた昆虫の話をする。「これ見つけたよ」「へえー珍しいね」とか報告しあっているうちに、いろんな種類の虫を知ったり、季節を感じたり。そんな経験から、虫も動物も、分け隔てなく描いてみたいなっていう気持ちが大きくなり始め、今回の作品にもたくさん虫たちを描きました。 これまでの展示でも「コロナ禍」「震災」「食糧」「移動」など自分たちと社会や自然、世界とのつながりや影響を感じさせるテーマや背景があったのかなと思います。作品テーマをみつけるうえで池田先生が大事にしていることがあったら教えてください 私が考える「現代アート」は “今この瞬間に生きている証” のようなもの。例えば、想定外の災害やパンデミックなどから生まれる不安や恐れみたいな感情も含めて、この瞬間しか感じられないことだから記しておこう、という感覚です。加えて、もっとこうだったら良いな、こうなりたいな、という希望も描いていきたいなと思っています。 この投稿をInstagramで見る GALLERY MoMo(@gallery_momo)がシェアした投稿 作品のテーマをみつける上で大切にしていることは、とにかく自分で様々な場所に出かけたり、移動したりすること。旅がまさにそうですね。全てを作品に繋げよう、みたいな感じではなくても、気軽にあちこちへ出かけてみたり、冒険してみたり。カメラのファインダーを覗くのと一緒で、なんだか歩いてみると日常の風景も面白く感じたり、感動したり、悔しくなったり。自分の中で喜怒哀楽みたいな感情が膨らんでいきます。 昔、松尾芭蕉が旅しながら俳句つくったり、葛飾北斎がずっと移動しながら作品つくったりとか。そういうのにすごく近い気がします。 ▽2022年個展「虹を煮つめて、風景をつづる」 この投稿をInstagramで見る Sachiho IKEDA // 池田幸穂(@sachiho_ikeda)がシェアした投稿 国内、そして海外でも個展やグループ展などご経験のある池田先生。「展示会」をつくりあげる面白さを教えてください 展示をつくっていく面白さは2つあると思っています。 1つは、 展示をすることで新しい出会いがあること。作品の制作自体はずっとお家で作業することが多いのですが、展示をすることで、例えば個展に絵を見に来てくださった方と出会いがあって、お話ができたりする。新しい発見や出会いがある。もう本当にすごく大きな魅力だと思います。 2つ目は、ギャラリストさんと展示の「空間」を一緒に作り上げるという、本当に最高に贅沢で幸せなこと。壁面や台座を好きなように使わせてもらうこともそうですし、こうした方がもっと面白い絵になるんじゃないかとか、こんな作品の見せ方もあるんじゃないか、とか。一緒に考え構築していく過程がとても楽しく面白いです。自宅で制作した作品が、この空間でどう輝くか。インスタレーションといいますが、空間丸ごとを作り上げられることが、展示をする大きな魅力ですね。 この投稿をInstagramで見る Sachiho IKEDA // 池田幸穂(@sachiho_ikeda)がシェアした投稿 この陶芸作品も自分で作りました。今までは紙粘土を使用して自宅で作っていたのですが、今回は陶芸の先生に教わって、焼いてもらって、色も塗って。もう思う存分に自分でやりたいように制作した作品たちです。例えばこの陶芸作品たちも、台座の高さを変えるだけで見え方が変わってくるので、そこを考えながらギャラリストさんと調整、設置をしていきました。ここにある落ち葉も1時間くらいかけてあちこち探して拾って。こんなに葉っぱって種類があるんだなー、とか話しながら設置しました。自分ひとりで作り上げるというよりも、その空間、作品たちと一緒に作りあげていくのが大きな魅力的です。 池田先生自身が学生時代に「没頭」していたことはありますか。当時を振り返って、いまイラストや絵画を学ぶ学生たちにアドバイスなどあればぜひ教えてください。 美大に通っていた学生時代は、油絵を学んでいました。当時、学校が好きで、朝から晩までずっと学校で過ごしていた時期があって。そしたら先生が「いつもここにいるなあ。世の中には美しいものがいっぱいあるから見に行きなさい。」って言ってくれて。学校の中にずっといても社会に出ていけないよ、って。そのときに私自身、ハッとさせられて。「外に出ていいんだ!」みたいな。(笑) 今振り返ると、その先生の一言が今の自分の大きな財産になっていますね。 日本デザイナー学院の学生たちにもギャラリーや個展の情報を伝えたりしています。そういう場所に行ってみる、というのはまず第一歩。それをきっかけにちょっとずつ外へ踏み出してみて、どんどん自分の見ている世界を広げていってほしいです。 散歩をして、スケッチをしてみるのも良いと思います。きっとアイディアの源になると思います。旅行をした時や、何気なく日常のニュースを見た時とか、誰かと話をしたときとか。「面白いな」「なんか違和感あるな」とか、とにかく感じたことをメモする。描いてみる。そんな積み重ねやが、いつか自分自身の作品制作に繋がっていくと思います。 ▽池田幸穂先生のPicoN!記事はこちら [clink url="https://picon.fun/illustration/20220102/"] [clink url="https://picon.fun/illustration/20241108/"] [clink url="https://picon.fun/illustration/%e3%81%bf%e3%82%93%e3%81%aa%e3%81%ae%e3%83%8d%e3%82%bf%e5%b8%b3%e3%81%a8%e3%82%a2%e3%82%a4%e3%83%87%e3%82%a2%e3%83%8e%e3%83%bc%e3%83%88%e3%81%ae%e4%b8%ad%e3%82%92%e3%81%ae%e3%81%9e%e3%81%84%e3%81%a6/"] 池田幸穂 個展「音色をときほぐす」 2025年1月18日まで開催中 会 期: 2025年1月18日(土)まで 時 間:11:00 - 19:00 日曜・月曜・祝日休み 場 所:GALLERY MoMo GALLERY MoMo @sachiho_ikeda ↓PicoN!アプリインストールはこちら
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【展示レポ】Tristan Hollingsworth(トリスタン・ホリングワース) 世界初個展「COLOR WORKS」@渋谷DIESEL ART GALLERY
いま世界が注目する写真家・Tristan Hollingsworth(トリスタン・ホリングワース)の作品が上陸。渋谷・Dieselギャラリーで2025年1月13日まで開催中の初個展の模様を、美術家で日本写真芸術専門学校講師の遠藤麻衣先生がレポートしました。 文/遠藤麻衣(美術家) 私は、現代美術の現場でアーティストとして作品を発表している。身体を使った表現をするので、映像や写真の撮影をしてくれる人との協働は欠かせない。 彼ら彼女らと仕事をするたびに感じるのは、人間の身体、その運動や風景にどのように向き合っているのか、いつシャッターを切るのか、どのように構図におさめるのかは人によって異なり、たとえ同じ瞬間に立ち会ったとしても出来上がる映像や写真が全く違うということだ。選ぶ機材や撮影手法、編集するときの判断といった仕事全体を通して、その人の美学や倫理感、そして普段からどのような現場でカメラを手にしてきた人なのかが垣間見られる。技術や方法論は、その人自身に独自に身体化されていくものなのだなと感じる。 こういった経験から、展覧会で写真を観るときには、そのアーティストがどのような場所で写真を撮り続けてきたのかという背景へ自ずと関心がむく。それを知ることで、シャッターが切られたときの環境やそこにいたはずのアーティストの身体、そして、シャッターを切るまでの時間やその後の時間など、空間的にも時間的にも広がりをもって鑑賞できると思えるからだ。 そういう視点で、DIESEL ART GALLERYで初個展を開催しているTristan Hollingsworth(トリスタン・ホリングワース)の「COLOR WORKS」を見てみた。 ホリングワースの写真に写っているのは、青々とした山、花々の鮮やかさ、透明感のある水面、そしてヌードの人物。しかしそれらは、写真に近づいて見たとしてもはっきりとしない。写真の表面はノイズがかかっていて荒く、画(え)全体が大きくブレている。多重露光によって異なるイメージが重ね合わされている。 それらを眺めていると、ある記憶が夢で見たものか実際に見たものか区別がつかなくなっていくときのような不安に襲われる。同時に、何かが失われていく感触に心地良さを覚えた。 彼の写真の多くを、Instagramでも見ることができる。まるで、彼の私的なフォトアルバムを覗き見ているようだ。 ロサンゼルスで活動する彼にとって身近な風景、あるいは旅行したときに出会った風景。ときおり大地や植物に身を委ねて戯れているような人々が姿を現す。心やすい雰囲気で、撮影する人との距離感が近く、とても親密そうに見える。 ホリングワースは、日々の暮らしのなかでカメラを手にし、何気ない瞬間の煌めきを捉えてきた人なのだろう。 ■Tristan Hollingsworth 公式Instagram https://www.instagram.com/tristanhollingsworth/ 文/遠藤麻衣 1984年兵庫県生まれ。映像、写真、漫画、演劇などのメディアを横断し、おしゃべりや演技など自らの身体を通じたクィア/フェミニスト的な芸術を実践している。近年のグループ展に「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか? 」(国立西洋美術館、2024年)、「フェミニズムズ/FEMINISMS」(金沢21世紀美術館、2021年)など。演劇やパフォーマンス出演に第21回AAF戯曲賞受賞記念公演 「鮭なら死んでるひよこたち」(愛知県芸術劇場ほか、2023)や「Stilllive」(ゲーテ・インスティトゥート東京ほか、2019-)。2023年に「Scraps of Defending Reanimated Marilyn」(oarpress)刊行。2018年に丸山美佳と「Multiple Spirits(マルスピ)」を創刊。 ↓PicoN!アプリインストールはこちら
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おすすめ記事一覧【#彼女が僕の写真に落書きする】写真に落書きする2人組アーティスト・saraさんにインタビュー
「#彼女が僕の写真に落書きする」 写真に落書きする2人組アーティストのsaraさんは、 彼氏であるAraiさんが撮った写真に、彼女のsakoさんが落書きして一つの作品をつくっています。 ある日SNSでふと見かけた幻想的な作品に心を奪われた筆者が、 お二人の作品づくりのこだわりや今後の目標など、さまざまなお話を伺いました。 sara 写真に落書きする2人組アーティスト。彼氏であるAraiが撮った写真に、彼女のsakoが落書きしている。 2021年10月にSNSで落書き作品「if」を発表し、大きな反響を得る。 国内外の若者から多くの支持を得ており、2023年10月時点の総フォロワーは約55万人を超える。 いつから写真・イラストを始めましたか? Arai:大学2年生の時にCanonのEOS Kiss X7を買い、旅行に出かけたときには写真を撮っていました。 大学院卒業前に本格的に写真始めようとEOS Rを買い、毎日撮るようになりました。 sako:幼い頃から絵を描くのが好きでした。本格的にイラストを始めようと思ったのは、Araiさんと出会ってからです。 [caption id="attachment_22439" align="aligncenter" width="500"] 作品タイトル:春満開行き[/caption] 2人で作品づくりをするようになったきっかけはなんですか? sako:Araiさんが撮った写真を見たとき、「ここに絵を描いてみたい!」と思い、落書きをしました。 それを見たAraiさんが気に入ってくれて、SNSに載せたらすごい反響をいただきました。 そのときの作品が『線香花火』です。2人で作品を作ったら楽しいのかなと思いました。 Arai:「自分の人生は何のためにあるんだろう」とふと考えたとき、会社にしか自分という存在がないのは嫌だと思いました。 自分にとってすごく大切な彼女と「2人でアーティストとして活動して世界に何か残したい」、 「2人で活動していく時間を大切にしたい」と思い、線香花火の反響があった1年後に活動を始めました。 [caption id="attachment_22428" align="aligncenter" width="750"] 作品タイトル:線香花火[/caption] 作品制作にはどれくらいの時間がかかりますか? Arai:作品によるので、すぐにできるときもあればその季節来るまで待つこともあります。 僕が好きに撮った写真にsakoが自由に描く場合は、発想があれば描くのは30分もかからなかったりします。 しっかり練り込んで作品を作り上げる場合は、かなり時間がかかります。 撮る場所や天候、光の入り方、季節など色々な条件があるので、なかなか撮れないときもあります。 例えば『エスカレーター』という作品は後者で、しっかり練って撮りに行きました。 [caption id="attachment_22429" align="aligncenter" width="499"] 作品タイトル:エスカレーター[/caption] 『紫陽花ドレス』はその場でできた作品です。 紫陽花を撮りに行って、どんな落書きできるかなって2人で考えていたら 「紫陽花をドレスにする」という案が思い浮かんだので、その場で構図を考えました。 [caption id="attachment_22488" align="aligncenter" width="500"] 作品タイトル:紫陽花ドレス[/caption] 撮影場所はどうやって決めているのですか? 基本的にはinstagramを見て行きたいところに行っていますが、 写真を撮りに行くまでの過程で出会える、“偶然撮れた写真”にも期待しています。 『おやすみ』や『ボクだけの特等席』は、神奈川県の城ヶ島公園に撮り行こうとした途中でたまたま撮れました。 たまたますごく夕焼けがきれいで、なんとなく街灯もいい感じで、周りに建物がなくて空が広かった。 街灯だけ切り抜いたら面白そうだなって思い、たまたま撮った写真です。 [caption id="attachment_22430" align="aligncenter" width="750"] 作品タイトル:おやすみ[/caption] [caption id="attachment_22431" align="aligncenter" width="500"] 作品タイトル:ボクだけの特等席[/caption] 撮影するときに心がけていることはありますか? Arai:基本的には自由に撮っていますが、白線で描くので背景の色に気をつけたり、 落書きができる余白を残したり、被写体以外の要素がなるべく入らないよう気を付けたりしています。 広角で撮ると見せたいものがわからなくなる場合も多いので、少しだけ望遠で撮る意識をしたりもしています。 sako:イラストは写真いっぱいに描くのではなく“添えるだけ”を意識して描いています。 ちょこんとある、日常に溶け込んでいる、気づいたらいるみたいな。 お気に入りの作品が知りたいです。 『線香花火』と『月が綺麗ですね』です。 『線香花火』は、活動のきっかけになった作品。 2人でアーティスト活動をやろうと思って作った作品ではなく、たまたま生まれて、たまたまバズりました。 ただ、すごく思い入れはあるのですが、その後『線香花火』を超えられた作品がなかなかなくて…。 実力以上のものが偶然できてしまったっていうような、正直そういった感じではありました。 [caption id="attachment_22432" align="aligncenter" width="500"] 作品タイトル:「月が綺麗ですね」[/caption] 『月が綺麗ですね』は、「月を指輪に見立てた作品を作ろう」と構想してからずっと温め続けました。 どうやったら多くの人に見てもらえる素敵な作品が出来るんだろうって、1年くらい温め続けた作品なんです。 月が綺麗に見えるような指輪のはめ方ってなんだろう、 どうやったら綺麗に見えてかつ自然なんだろうっていうのを何回も考えて描き直しました。 その上で「月が綺麗ですね」というぴったりなタイトルをつけました。 すごく自信があった作品で、SNSでも皆さんに受け入れてもらえました。 言い方悪いですけど、自分たちの思惑通りというか(笑)。 やっと『線香花火』と同じぐらいのものを自分たちの実力で出せたと思える作品になります。 ある意味成長の証とも言えるような作品です。 これから撮りたい作品を教えてください。 Arai:テーブルフォトを撮ってそれに落書きしたいと考えています。 風景だと太陽や天候に任せてしまう部分がありますが、テーブルフォトは室内で光を作りあげられます。 自分でライティングして撮るというスキルを高めたいですし、いつでも写真を撮れるような環境を作りたいです。 作品を通してどんなことを伝えたいですか? sako:作品のテーマには、「もし世界がこんな風だったら」という想像が表現されています。 その延長で、「何気ない風景の魅力を伝えたい」という想いもあります。 私は田舎出身なのですが、「田舎はなにもない」「私の地元は魅力がない」って思っている方って多いと思うんです。 私たちが何気ない一瞬を切り取って作品にすることで 「今日の空きれいだったな」とか「近くの公園の桜かわいいな」とか 「自分の地元ってこんな素敵な場所があったんだ」って思うきっかけになれば嬉しいと思っています。 [caption id="attachment_22435" align="aligncenter" width="499"] 作品タイトル:とまれみよ[/caption] SNSなどで発信していくことで得られたやりがいはありますか? Arai:すぐに周りからの反応、フィードバックがもらえることが1番大きいです。 そこで一喜一憂しすぎると良くないですが、上手くできた作品が良い反応をもらえたらすごく自信になります。 反省点や次の作品に活かせることを検証したりもしています。 また、写真やイラストレーター仲間との繋がりも増えました。 私たちは一般企業で働いているので、写真やイラストを趣味や仕事にしている方々と繋がる機会が得られるのも SNSの良いところだと思います。 [caption id="attachment_22433" align="aligncenter" width="750"] 作品タイトル:いるかと月[/caption] これからの目標を教えてください。 「人生においてなにを大事にしたいのか」を考えた結果のアーティスト活動なので、 やっぱりまずは「2人で楽しく過ごす」ということがベースにあります。 その上で多くの方々の記憶や心にいつまでも残り続けるような作品をつくっていきたいです。 [caption id="attachment_22436" align="aligncenter" width="500"] 作品タイトル:口実[/caption] saraさん、ありがとうございました! とても温かくて素敵な雰囲気のお二人。一ファンとして、裏話を含めた色々なお話が聞けて本当に嬉しかったです。 saraさんは、卓上カレンダー『2025年 sara レターカレンダー』を販売しています。 発売価格:¥1,320 販売店舗:LOFTの一部店舗 オンラインでは完売してしまっていますが、一部店頭ではまだ販売中のところも…!ぜひ探してみてください。 また、SNSには素敵な作品がたくさん載せられています。こちらもぜひご覧ください☟ Instagram @sara2626_if X(Twitter)@sara2626_if TikTok @sara2626_if YouTube @sara2626_if note @sara2626_if PicoN!編集部 そん ↓PicoN!アプリインストールはこちら
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吉本芸人のステッカーを描く人「ちたまロケッツ」 魅力的な似顔絵の描き方とは?
年の瀬、盛り上がってくるのがM-1グランプリ。 今年も出場組が過去最多を更新し、YouTubeやTverなど様々な媒体で盛り上がりをみせていますね。 かくいう筆者も実はお笑い好きでして、仕事終わりや休みの日に劇場へ足を運んでいます。 特に吉本お笑い劇場に行けば誰もが一度見たことあるのがこのステッカー。 その特徴を捉えた可愛らしいイラストは一体どんな人が描いているのか、、いちお笑いファンとしてずっと気になっていたんです。 調べたところ、ちたまロケッツさんというイラストレーターの方が描かれているんだとか。 なんと今回はご縁があって、ちたまさんにお話しを聞くことが出来ました。 快く引き受けていただきましたちたまさん、ありがとうございます!! ちたまロケッツさんの描く絵が好きな方はもちろん、イラストレーターになりたい方にとってもぜひ「魅力的な似顔絵の描き方」について知っていただける内容となっています! ◆ちたまロケッツさん プロフィール 西原キヨシ 1977年生まれ 東京都在住 武蔵野美術短期大学部 デザイン科卒 吉本興業のグッズ制作・販売会社を経て、2007年よりフリーで活動。 似顔絵・キャラクター制作を中心とし、グラフィックデザイン全般の業務を行う。 吉本芸人のイラストは、オフィシャルグッズとして採用され、のべ1000人以上を制作。 HP:https://chitamar.com/ Instagram:@chitama_rockets X:@CHITAMA_ROCKETS ちたまさんの自己紹介と改めてお仕事の内容を教えていただけますか? 武蔵野美術短期大学卒業後は吉本興業の子会社でグラフィックデザイナーとして、商品企画などに携わっていました。現在はフリーのイラストレーターとして似顔絵を描いています。メインの仕事は吉本興業の似顔絵ステッカーの制作です。その他にもテレビ番組のタイトルロゴの制作などといったデザイン関係の仕事も行なっています。 吉本芸人さんのイラストを描くきっかけを教えてください! 吉本の子会社で働いていた時に吉本芸人のイラストを使ったグッズを制作したいという話になり「やってみない?」と声をかけていただきました。大学でデザインを学んでいましたが、子供の頃から絵を描くことも好きだったので、得意なことが仕事に繋がったという感じです。当時は「はねるのトビラ」というバラエティ番組が人気だったので、キングコングさんやロバートさんなどのイラストを描いていました。 吉本芸人さんのイラストを描く際に意識しているポイントはありますか? シンプルに描くことを意識しています。なので、極力描く線を少なくして、どこまでシンプルにしても似せられるように工夫しています。あとは描く前にその人の資料や動画を集めてそれらを観ながら、こう描いたら似てる、似てないというような判断基準を自分の中で作るようにしています。 私の場合、こう描きたいというイメージが頭の中で出来上がっていて、それを描き出していきます。最終的に頭の中と目の前の絵に違和感がないかどうかチェックしています。 あとは資料集めの延長線ではないですが、吉本芸人さんを描く仕事をしているので常に日頃の活躍は観るようにしています。今だとM-1の時期なので決勝だけではなく、予選から色んな芸人の方を観てますね。この人次来そうだなとか、そうすると自分の中である程度イメージのベースが出来上がるので。 似せるためのこだわりを教えてください! 描くときには全体的なシルエットとパーツの位置が重要だと思っています。 両目と口を線で結んで3角形にしたらどんな形になるのかなど考えながら描いたりしています。例えば、目が離れている方だと線で結ぶと、潰れた逆三角形になりますよね。そんな風にパーツの位置が少し違うだけで、雰囲気も変わってくるので、パーツの位置は常に微調整しながら描いています。割と福笑いみたいな感覚で描いてるかもしれません(笑) 私の場合、シンプルに描くからこそ、パーツの位置が重要だったりしますね。 こういう仕事をしていると描けば描くほど、似ているのか分からなくなってしまうこともあるので、そういう時は時間を置いて違うことをして、冷静になるようにしています。そうするとイラストを見る目がフラットになり、客観的に描けるようになるんです。 ちなみに描きやすい人の特徴ってあるのでしょうか? メガネがあると描きやすかったりしますね。でも私の場合、特徴のない人を描く方が得意かもしれません。特徴がありすぎる人だと似顔絵だとそれを超えられないといいますか、8割くらいは描けるんですけど、「なんか足りないなあ」っていうもどかしさを感じたりもします(笑) ちなみに描きやすい人はすぐ描けちゃうんですけど、人によっては1週間くらいかけて描く場合もあります。基本的には1週間を目処に制作するといった感じです。 イラストレーターとしてのやりがいってなんでしょうか? 自分が描いたイラストに対して、お客さんから良い反応がもらえた時は嬉しいですね。描き始めた当初は実際に店舗に行ってお客さんの反応を見たり、感想を盗み聞きしたりしていました。覆面調査です(笑) でもやっぱり、初めてこの仕事をした時が1番やりがいを感じた瞬間だったかもしれません。初めて描いたのはキングコングさんなんですけど、やっと自分の居場所を作れたような感覚にはなりました。 あと似顔絵って普通の人が見ても、専門知識や感性など関係なく楽しめるものですよね。誰でも似てないって判断できるので、ごまかしがききません。 逆に言えば、似てればより多くの人に共感してもらえたり喜んでもらえる。だから手を抜けないし、やりがいを感じる瞬間も多いのかもしれません。 イラストレーターに求められるスキルって何だと思いますか? 相手を理解することは大切だと感じますね。イラストレーターも相手がいる仕事なので、この仕事も吉本興業側がどういう絵を求めているのか、自分の中で噛み砕いて理解した上で提案しています。相手との認識がずれているとどんなに良い絵を描いてもO Kが出ないのでそこは難しいですね。 最後にイラストレーターを目指している方々に向けてメッセージをお願いします! もう既にこの分野のことを学んでいる方々は、今の同世代の人が集まってそれぞれが作品を作っていく環境を大切にして欲しいです。身近な人から受ける様々な刺激はむしろ今しか体験出来ないことだと思うので、色んなエネルギーを吸収してたくさん好きな絵を描いてください! なんと今回は実際に作業風景も見させていただきました。 こんな機会滅多にないので筆者感動しております...! イラスト制作の様子がわかる動画はコチラ!↓ https://youtu.be/50oyuWVw7t8 ちたまロケッツさんありがとうございました! シンプルに描くという要素が少ない状態で、あそこまで愛着の湧く似顔絵が描けるのはちたまさんの日頃の観察力と、芸人さんへの愛があるからこそだと思いました。 似顔絵のコツはイラストレーターを目指す方だけではなく、どなたでも参考になるポイントでしたね。描き方を知った後だと、ステッカーを見る視点も変わりそうな気がします。 皆さんもぜひ劇場へ足を運んだ際にはステッカーをチェックしてみてください! PicoN!編集部:河野 ↓PicoN!アプリインストールはこちら
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「美術のこもれび」Rayons de soleil dans l’art ⑳ ― 『モネ 睡蓮のとき』展 <国立西洋美術館・東京/上野> について
『モネ 睡蓮のとき』展 <国立西洋美術館・東京/上野> について 専門学校日本デザイナー学院東京校 講師の原 広信(はらひろのぶ)です。 今回は東京都、上野の国立西洋美術館で開催されている(2024年12月現在)『モネ 睡蓮のとき』展についてです。私自身が日本デザイナー学院東京校の「総合イラストレーション科」の3年生とともに見学に出かけましたので、その展覧会の展示作品からいくつかをご紹介します。 印象派の代表格であるクロード・モネ ( Claude Monet 1840~1926 ) についてはこのコラムでも何度も登場しています。第2話でもこの画家の紹介と『印象派』という呼称の由来等にも触れましたが、今回ご紹介するこの展覧会もフランス・パリの「マルモッタン モネ美術館」からの日本初公開となる重要作を多く含むおよそ50点に日本各地に所蔵される作品を加えた展示になります。 ※下線部展覧会リーフレットより引用 では、晩年の作品を中心にモネの描いた風景の世界を一緒に見ていきましょう~。 [caption id="attachment_22107" align="aligncenter" width="700"] 【クロード・モネ Claude Monet 『 睡蓮、夕暮れの効果 / Nymphéas effet du soir 』1897年 73x100cm カンヴァスに油彩 Musée Marmottan Monet マルモッタン モネ美術館蔵 / Paris,フランス】 ※画像引用元:国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』展 HP[/caption] ほの白い可憐な睡蓮の花と葉が池に浮かんでいます。水面は細やかな筆のタッチ(筆致)によって描かれていて、空の色や雲の明るさを反映している色調です。そして青や淡い紫色に織りなされた水面に次第に近づく日没『夕暮れ』の光量の翳りに、花弁の白さが一層明るさを増しているかのようです。こうした時間の経過によるモチーフの変化を画面に表現しようとするのはモネの絵画の特徴の一つだと思います。 続いては、 [caption id="attachment_22108" align="aligncenter" width="643"] 【クロード・モネ Claude Monet 『 睡蓮の池 / Le Bassin aux nénuphars 』1917- 1919年頃 130x120cm カンヴァスに油彩 Musée Marmottan Monet マルモッタン モネ美術館蔵 / Paris,フランス】※画像引用元:国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』展 HP[/caption] 縦長のカンヴァスに池の奥行きを感じます。池に落ちる木陰の濃い緑と空が映り込む水面に睡蓮の葉の明るい黄緑系と花の鮮やかな赤が印象的です。比較して近景(画面の下の方)には力強いタッチ(筆跡)に色彩にコントラストをもたせ、画面中央から上の遠景には柔らかく淡い色使いで描くことで、視覚的な遠近感をもたらしています。四角いカンヴァスに切り取られた光景ですが、池の広がりを感じる作品です。 [caption id="attachment_22109" align="aligncenter" width="696"] 【クロード・モネ Claude Monet 『 睡蓮、柳の反映 / Nymphéas, reflets de saule 』1916- 1919年頃 200x200cm カンヴァスに油彩 Musée Marmottan Monet マルモッタン モネ美術館蔵 / Paris,フランス】※画像引用元:国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』展 HP[/caption] 「 睡蓮、柳の反映 / Nymphéas, reflets de saule 」という画題の作品をモネは複数描いていて、今回の展覧会でも同名のタイトルの他の作品も鑑賞することができます。この作品は2メートル四方の正方形をしたカンヴァスに、睡蓮の浮かぶ池の水面に映り込んだ柳の枝葉が画面の上から下に大きくカーブをしている様子を主に青系の色調で描いています。それは睡蓮の葉と重なり合うことで、かろうじて水面であることと、柳の枝葉が風に揺れそよいでいることを表現しています。その荒々しいほどのタッチ(筆跡)は刻々と移り行くこの水面の表情を一刻も早く描き止めようとしているかのようです。この一瞬の光景ですがこれをほど3年かけてモネは描くのです。 そしてここには具体的な描写から離れた抽象性を感じます。「美術のこもれび」第5話でご紹介した現代アート作家「ゲルハルト・リヒター」の描く抽象作品の表現にも通じると感じています。 [caption id="attachment_22110" align="aligncenter" width="640"] 【クロード・モネ Claude Monet 『 睡蓮、柳の反映 / Nymphéas, reflets de saule 』1916-1919年頃 130x157cm カンヴァスに油彩 Musée Marmottan Monet マルモッタン モネ美術館蔵 / Paris,フランス】※筆者自身が撮影[/caption] こちらは展示室の中で撮影が認められている一室があり、そこで展示されていた作品を筆者が撮った作品です。 モネは1916年~1919年頃の時期に同名の作品を複数制作しました。深い緑系の色で描かれている水面には柳の枝葉がもはや判別が難しいほどに同系色で描かれています。こうした区別がしにくいほどに刻々と夕暮れが深まる池に二つの睡蓮の花が鮮やかさ放っていて印象的です。時間の経過を惜しむように画面の端は描こうとせず、モネはこうした時のうつろいをカンヴァスに刻もうとするかのように繰り返し描いていきます。 [caption id="attachment_22111" align="aligncenter" width="640"] 【クロード・モネ Claude Monet 『 睡蓮 / Nymphéas 』1914-1917年頃 130x150cm カンヴァスに油彩 Musée Marmottan Monet マルモッタン モネ美術館蔵 / Paris,フランス】※筆者自身が撮影[/caption] 睡蓮の白い花と点々と浮かぶ丸い葉に、水面に逆さに映り込んだ水生植物と青空、そして白い雲が明るい色調で描かれています。池を吹き渡たり水面を揺らすような風もない静寂さに、明るい雲だけがゆっくりと移動しているかのようです。晩年のモネがこの作品の画面に一つだけの白い花とこの静寂さを描く1914年から1917年頃とは、フランスはまさに大きな戦争(第一次世界大戦)に参戦の最中だったのです。 色々な思いを持ちながら、ゆっくりと鑑賞することができた展覧会でした。 最後に東京、上野公園内「国立西洋美術館」での『モネ 睡蓮のとき』展のエントランスの画像です。【筆者撮影】 この展覧会はJR上野駅【公園口改札】から出て徒歩1分。駅から最も近い美術館での開催です。銀杏も紅葉しています。 開館時間は17:30まで、基本的に月曜日が休館日(※日程はサイトで確認しましょう)。 日本デザイナー学院は国立美術館キャンパスメンバーズ加盟校ですから、学生証の提示で学生1,200円で観覧できます。 さあ芸術の秋にモネの描く『睡蓮のとき』を満喫しに出かけましょう! 展覧会情報 『モネ 睡蓮のとき』展 会 期:2024年10月5日(土)~2025年2月11日(火・祝) 場 所:国立西洋美術館(東京都・台東区上野公園内) 公式HP:https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2024monet.html [clink url="https://picon.fun/art/20241008/"] ↓PicoN!アプリインストールはこちら
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