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【ちょっとふしぎな日常のカタチ】イラストレーター Masakiさんの代表作『着ぐるみ家族』の魅力に迫る!【後編】展示振り返り&Masakiさんの原点インタビュースペシャル!

着ぐるみを着た家族の日常を描く漫画シリーズ「着ぐるみ家族」。
イラストレーター・Masakiさんの代表作として、SNSを中心に多くの読者に親しまれています。
本記事では、Masaki 個展「日常の中の非日常」の振り返りインタビューをはじめ、
クリエイターとしての発想の出し方、キャラクターについての想いなどを語っていただきました。
▶前回の記事はこちらから

今回の展示「日常の中の非日常 身近なモノに焦点を当てる」の展示タイトルや作品テーマについて教えてください。

「日常の中の非日常」というタイトルにしたのは、
普段僕がイラストレーターとして活動する中で軸にしている
「いつもの暮らしをちょっぴり面白く」というコンセプトを、
展示の中にも入れ込みたいと思ったのが大きいです。

「着ぐるみ家族」の作品自体、日常の中にある家族との会話とか、
そういったものをエッセンスにしながら物語を作ったり、イラストを展開していて。
だから今回もその作品をベースに展示を考えていきました。

そこから「どうしたら“いつもの暮らしをちょっぴり面白く”って伝わるかな?」って考えたときに、
身近にあるものをじっくり観察して作品にしようと思いました。

それって普段の制作スタイルでもあるし、
「着ぐるみ家族」を作る上でも大事にしてきたテーマなので、
これは展示タイトルとしても、作品全体のテーマとしてもいいなと思いました。

――Masakiさんの活動コンセプトと作品、展示が、全部つながっている感じなんですね。

そうですね。もちろんそのテーマじゃない作品づくりをすることもあるんですけど、
そもそもこの「いつもの暮らしをちょっぴり面白く」っていう自分のコンセプト自体が、大学時代の卒業設計がきっかけで。

大学院まで建築学科で、空間認知や空間心理の研究をしていて、
「いままで当たり前だったり目新しさがないなと思っていた日常のモノが、
ちょっと違って見えるときに、急に新鮮に見えてくるときに楽しさが出てきて。
それは空間に落とし込んだらすごく面白くなるんじゃないか」と。

建築の分野の話だったんですけれど、絵を描いていくうちにそれをベースにアイディアを出していたなと思いました。

ーー建築分野の研究、Masakiさんならではのスタート地点ですね。

 

編集者さんの赤ペン指示を公開する珍しい手法ですが、どのようなご発想でこの展示方法を採用したのでしょうか。

今回の展示の企画段階では、もともとは下書きとか、制作のプロセスを見せられたら面白いかな、という話をしてました。

大きい美術館などでマンガ家さんの展示を見たことがあったので、
自分としてもやってみたいポイントではあったんです。
ただ、赤ペン指示に関しては確かに珍しいですね(笑)

僕の編集者さんとのやり取りは、ネームづくりの段階だと通常2〜3回ラリーすることはあるんですけど、
1回目でしっかり赤字を入れてくださってるので、展示物として選びやすかったです。

日常生活をテーマにした作品づくりって、
やっぱりあくまで僕から見た日常でしかないんですよね。
なので、他の人からどう見えているのか、他の人にとっても日常の風景なのか、というのは、
作品やマンガにするうえでちゃんと意識しなきゃいけないポイントだと思っています。

実際に編集者さんから
「もう少しこうしたら伝わるかもしれないですね」
って言われることもあって。
自分の中の「面白い」に囚われすぎると、
物語の世界観からズレているかどうかを自分自身で判断しづらくなることもあるんですよね。

その点、前後の話の流れとか、物語としてどうか、キャラクターの設定も含めて、
編集者さんはかなり広い視野で見てくれてます。

以前までは、マンガはマンガ家さんがお話から作画まで一人で全てやる、
というイメージがあったんですけど、
主観と客観のバランスの大切さは、マンガを描き始めてから学びました。
面白いものやマンガをつくるうえで、大事な制作プロセスだと思っています。

今回の展示は、日本デザイナー学院さんという場所での展示でもあったので、
マンガ学科の学生さんや、マンガを学んでいる方にとって、
少しでも制作の役に立つものは入れたくて。

担当編集の方がつく前だと、
なかなかリアルなやり取りを感じる機会って少ないと思うので、
編集者さんとの生のやり取りをそのまま見せられたらいいなと。
一人ではなくて、いろんな人の協力があって作られている、
というところは見せたかったですね。

――マンガを学ぶ学生がいる学校ならではですね。

そうですね。
展示会場が学校じゃなかったら、
この見せ方はやらなかっただろうなと思います。
編集者さんの赤字を読んで楽しんでもらえるだろう、という前提があったので。
この展示方法をやってみてよかったです。

 

着ぐるみを着た家族を描いてみようと考えたきっかけはありますか。

 

2020年に緊急事態宣言で外に出られないってことが続いていたので、
僕だけじゃなくて、色んなクリエイターとかアーティストの方が
「家でも楽しめるものを制作しよう」って率先的にSNSやメディアを通じて発信してくれていて。
自分でも何かできることはないかなと思ったのがまず最初にありました。

じゃあ何をつくろうかな?と考えたときに
「忙しい朝なのに、着ぐるみに着替えて朝のあいさつをしてきたら面白いだろうな」
っていうのが最初に描き始めたきっかけです。

着ぐるみって、家の中にあるだけでちょっと異質というか、
日常の中にあるのに、非日常感がすごく出てくるんですよね。

その時期は、人も動物も、それこそドラゴンみたいな想像上のものも含めて描きたい気持ちがあって。
でも、着ぐるみを着せてしまえば、人も動物も架空の存在も、
自分が描きたいものを全部一緒に描けるな、と思ったんです。

家での掃除とか、何気ない会話も、
着ぐるみと組み合わせるだけでちょっと面白く見える。
そこから、小さいころのアイディアとか、子どもの頃に親に言われたことを思い出しながら描いてみたのが、
「着ぐるみ家族」の始まりでした。

 

単行本として出版されるお話をいただいたとき、どのように感じましたか。

 

2年弱くらい働いていたデザイン事務所を辞めて、
フリーのイラストレーターになろうかなと思った時に、
今の担当編集者さんからSNSでメッセージが届いて、
マンガ本にしませんか?っていう話をいただきました。

そもそもイラストしか描いていなかったので、実は嬉しさ半分・不安半分だったんですよ。
ほとんどマンガを描いたことがなかったので、出版までいけるかなって。

でも、編集者さんが手取り足取りすごく丁寧に教えてくださって。
マンガの知識がほぼない状態で始めたんですけど、
「フリウケ」とか「めくり」のような専門的なところもその都度教えてもらったり、
参考書籍をいただいたりして、
本当に手厚いサポートをしてもらいました。

担当編集さんからは、
マンガのノウハウ自体は教えてもらったんですけど、
「こうするべき」とか「こうしなきゃいけない」
みたいな教え方はされていなくて。
けっこう自由にやらせてもらいながら、
「ここはもう少しこうした方がいいかもしれないですね」
っていう感じで調整してもらっていました。

――担当者さん、クリエイターをすごく尊重されている印象ですね。

そうなんですよ。
本を売ることが第一、というよりも、
作品の良さを引き出そうとしてくれているな、という感覚がありましたね。

(画像をタップするとAmazonページが開きます)

 

パパさん、ママさん、ムスメちゃんについて、想いを語っていただきたいです。

 

パパさん、ママさん、ムスメちゃんはマンガになる前から描いていたキャラクターなので、思い入れは強いですね。
イラストを描いているときは大体自分の家族、父親、母親、弟の思い出で構成されているので、
それぞれのキャラクターはどこか自分の中のものとか、家族のエッセンスが入っています。

特にパパさんに関しては、自分を反映させているなと感じますね。
基本的には普段家で怒られたりしている自分とか、ちょっとしたしぐさとか、ですね。
こどもいるわけじゃないんですけど(笑)
近しい存在がパパさんだと思いますね。

ーー優しくて柔らかい雰囲気はMasakiさんと一緒ですね。

ええ、そうですかね!?恐縮です(笑)
マンガで「パパさんコップ洗ってない」とか厳しいコメントをいただくと、
パパさんに投影している分、自分も傷ついたりします…(笑)

一方でママさんは、しっかりしている人のイメージがありますね。
こどもの頃、母親から言われたこととかを使ってるので、
自分の母親をキャラクターのモデルとして、無意識に入り込んでいる気がするんです。
その他にも厳しいだけじゃなくて、喋っていて面白いなと思う人や、
お子さんがいらっしゃる友人・知人など、
周囲のしっかりした人たちのイメージが入っている感じです。

ムスメちゃんに関しては、自分のちっちゃい頃の思い出だったり、
弟が小さい頃のことを思い出しながら描いています。
ムスメちゃんと同じくらいの年齢の、子どもならではの無邪気さとか、
ちょっとした面白さみたいなところが可愛いなって思っていて。
ほっぺのフォルムとかも含めて、可愛さ担当ですね。

この3人のバランスは、ぼくの中でもすごく取れているなと思っています。
パパさんとママさんの2人だけだと、場面によっては少しピリついて見えてしまうこともあるんですけど、
そこにムスメちゃんがいるだけで、空気が一気に和らぐというか。
パパさんと一緒に遊んでいたり、着ぐるみを着ているだけで、
自然と楽しそうな雰囲気になりますし、
ムスメちゃんの可愛さが、ちょっとしたピリピリ感を面白さに変えてくれていると思っています。

それぞれ個性や性格の違う3人がいることで、
場として、空間としての面白さが生まれていて。
そこが描いていて楽しいですし、
今でも描き続けられている理由なのかなと思っています。

以前の仕事を辞めるときに、この先どうしようかな、とか、
いろいろ考えた時期もあったんですけど、
「着ぐるみ家族」があったことで、
なんだか大丈夫なんじゃないか、っていう安心感というか、
自分の中での信頼みたいなものがありました。

感謝しているんですよ、この3人には。
この3人がいたから、イラストレーターとしても、
マンガを描かせてもらっている、という気持ちがすごくあって。
自分でつくっているはずなんですけど、
「どこかにいるんじゃないか」って思えるような、
キャラクターが生きているように感じています。

 

Masaki様発想の源やアイディアはどんな時に湧いてくるのでしょうか。思いつくためにどんなことをしていますか。

 

そろそろ6周年になるので、正直アイディアを出すのは一苦労していて。
たとえば「掃除」ひとつ取っても、
床拭きなのか、棚の埃取りなのか、風呂掃除なのか、
同じくくりでも解像度を上げて、細かく分けて作ることを今は意識しています。
今まで通りにやるとどうしても同じネタになっちゃうので、そこは苦労してますね(笑)

僕の中では、アイディアの出し方って大きく2種類あると思っていて、
ひとつは「作品そのもののアイディア」、
もうひとつは「マンガとして面白くするためのアイディア」です。

「こんな話にしよう」とか「こういうテーマにしよう」といった
作品そのもののアイディアについては、普段からかなりメモを取っています。
スーパーに行って日用品を見ていると
「これ、まだネタにしてないな」とか
「このお惣菜、着ぐるみに合いそうだな」とか、
そういうことを思ったら、とりあえず全部メモしていて。
会話とか、怒られたこととかも含めて、
一度文字ベースでためていく、というのが発想の出し方ですね。

一方で、「マンガとして面白くするためのアイディア」は、
マンガを読んでいるときや実際に描いているときに浮かぶことが多いです。
ネームの段階でも、清書の段階でも
「こっちの方が面白いかも」って思ったら編集者さんに送って、
手を動かしながら考えています。

マンガだけを読んだり描いたりしていると、
どこかで見たことのある作品になってしまうので、
作品そのもののアイディアは、あえてマンガ以外のところから集めるようにしています。
買い物だったり、映画だったり、掃除やゲーム、
それこそ漫才の動画を見たりとか。
マンガとは直接関係ないところでテーマのアイディアを集めて、
マンガとしての面白さは、マンガを読んだり描いたりして抽出する、
というふうに分けていますね。

――そのアイディアの考え方、あまり聞かないですね。ハッとしました。

そうですね。
この考え方は、どちらかというと建築に近い感覚かなと思っています。

建築では建物を建てる際に「基本設計」と「実施設計」の大きく二つの設計があるんですけど、
その感覚に近いなと思っています。

大まかですが基本設計は、建築物の規模や設計コンセプトを決める段階で、
実施設計は、実際の工事に向けて詳細な図面を作る段階をいいます。

マンガでいうと、
お話づくりやページ数を考えるネームづくりがまさに基本設計で、
コマの表現やキャラクターの表情、拝啓などの技術的な作業は実施設計、
というところでしょうか。

――マンガと建築、一見すると全然違うように思えますが、
Masakiさんの考え方の礎になっているんですね。

そうですね。
自分の中では、意外と近い感覚でつながっていると思っています。

 

最後に、応援しているファンの方々やPicoN!読者へメッセージをお願いします。

 

まず、応援してくださっているファンの方々へ。
普段から作品を見てくださって、本当にありがとうございます。

コメントだったり、作品を見てくれている方の声は、すごく励みになっています。
しんどいなって思ったときに、メッセージやファンレターを読み返して、
見てくれている人がいるんだな、って心の支えになるんですよね。

なので、応援してくださっているファンの方々も、
作品づくりのチームメイトみたいな気持ちで、普段から制作しています。
今後ともよろしくお願いします。

そして、PicoN!の読者の方やこの記事を読んでくださっている方へ。
普段の日常生活で見ているものや景色の中にも、
少し細かく見て意識してみると、
「これとこれを組み合わせたら面白いかも」って思えるものが
実はたくさんあると思っています。

サービスや広告、エンターテインメントって、
結局は日常生活がベースにあって生まれているものだと思うので、
アイディアの源泉は、身の回りのものに共感するところにあることが多いんじゃないかな、と。

そういうところに意識を向けるきっかけとして、
ぼくの「着ぐるみ家族」や、この記事が、
少しでも何かの助けになったら嬉しいです。

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