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スーパーマクロで見る世界「電子基板編」

みなさんは”マクロ撮影”ってしてますか? 被写体に近づくことで、小さなものを大きく写真に写すことができる撮影方法です。 花の写真なんかを撮るときに使うことが多いんじゃないかなと思います。 [caption id="attachment_19291" align="aligncenter" width="750"] Canon MP-E65mm F2.8 1-5×マクロフォト[/caption] 手の指に乗るような小さなものも画面いっぱいに拡大して撮影することができる「マクロレンズ」。 そんなマクロレンズの中でも、より接写ができるスーパーマクロレンズ「Canon MP-E65mm F2.8 1-5×マクロフォト」を使って様々なものを撮影してみようと思います。 [clink url="https://picon.fun/photo/20220611/"] パソコンパーツを撮影 今回は家に転がっていたパソコンパーツの「マザーボード」を撮影してみようと思います。 大きな電子基板ですが、この中には様々な電子部品がぎっしり。 様々な角度からマクロ撮影することで、色々な写真が撮れそうです。   実写 目立ってたコイル状の部品。 まさに”機械”って感じのシルエットですね。 500円玉ほどの大きさですが、大きく写すことで存在感が出ます。   何かのチップやらなんやら。 基盤はこうした小さな部品の集まりでできているわけですが、こうしてみるとパーツそれぞれが建物みたいに見えてきて、それらが立ち並ぶ村みたいなものを俯瞰している気分になるのは私だけでしょうか。   さらに接写してみます。 ハンダ付けされている接点の曲面が綺麗に並んでいるのが見えます。 色んな部品に焦点を当てて撮影。 それぞれが何かしらの役割を担うパーツになっていて、この基盤も様々なパーツで構成されていることが解ります。 最後の写真なんかはまるで水とか油とかのタンクが並んでいるようにも見えます。 [caption id="attachment_19792" align="aligncenter" width="750"] ↑こういうやつ。[/caption]   さらに細部を拡大。 コネクタ部分をマクロ撮影で見ると、接点同士がこすれた跡まで確認できます。   電子回路を拡大して切り撮ることで面白い模様が浮かび上がります。 こうした発見ができるのも、肉眼と違う尺度で見ることができるマクロ撮影ならではです。   まとめ いかがでしたでしょうか。 小さな部品のそれぞれを拡大して撮影していくことで、私には基盤がだんだんと街のようなものに見えてきました。 [caption id="attachment_19294" align="aligncenter" width="855"] ライティング次第でもまた違った面白い写真が撮れそうです。[/caption] 電子基板一つでこれだけ撮影して遊べたので、マクロ撮影には大きな可能性を感じますね。 また思い付きで身近なものをマクロ撮影してみようかと思います! PicoN!編集部:黒田     ↓PicoN!アプリインストールはこちら

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【レポ】生成AIとの「コラボイラスト」に専門学生が初挑戦!

AI の時代は、テクノロジーの進化とともに避けることのできない現実として到来しました。AI は、産業革命やインターネットのように、さまざまな事柄のやり方を変える技術です。しかし、「革命」という言葉が示すように、新しいものが現れると、それに置き換えられるものが淘汰されるのは避けられません。そのため、さまざまな問題も生じてきます。著作権や創造の価値などの衝突に対して変化の交差点にいる現在、私たちはそれと真剣に向き合わなければなりません。 今回は、AI ができることをより深く理解し、これまでの私の創作方法とどのように組み合わせるかを試してみたいと思います。AI を使う理由の多くは作業時間の短縮のためですが、今回は時間を気にせず、今まで自分が得意でなかったことに、AI の力を借りて挑戦し、自分の能力の範囲を超えてみたいと思います。とはいえ、もしAI を使うことで、これまでできなかったことができるようになれば、⾧年の訓練を省くことも効率的だと考えられます。 文&制作/コミックイラスト専攻C・H アイデア出し~ラフまで。AIでどこまでできちゃうのか? アイデアの発想は、創作にとって欠かせない要素ですので、AI に任せてみようと思います。まず、この記事の目的や大まかな内容をCopilot(旧BingAI チャット)に伝えて、この記事に使用する一枚絵のテーマを考えさせてみた結果、いくつかのテーマが提案されました。 ■生成AIが考えた「一枚絵イラスト」のテーマ ・自然と技術の融合 自然の要素、例えば木々、山々、川などと、技術の要素、例えばロボット、都市の景観、未来派の建築物などを組み合わせて表示します。 ・超現実主義 浮遊する島々、巨大な時計、物理的に不可能な構造を含む超現実的な夢の世界を創造します。 ・文化の多様性 異なる文化の服装、儀式、建築などを描いて、世界の多様性と美しさを表現します。 ・抽象的な概念の視覚化 例えば、感情、音楽、哲学的な概念を視覚的なイメージに変換します。 この中から、私は「自然と技術の融合」をテーマに選びました。 次に、キャラクターがいる絵は目を引きやすいので、そのテーマに基づいてキャラクターを考えさせてみました。 ■生成AIが考えた「キャラクター」のアイデア ・未来の都市の守護者 彼は高度な技術の装甲を身に着けた戦士であり、彼の使命はデータツリーと都市の調和を守ることです。 ・スマートプラントの庭師 彼はスマートプラントとコミュニケーションを取る庭師であり、植物のニーズを理解し、成⾧をサポートします。 ・エネルギー探求者 彼は新しいエネルギー形式を探求する科学者であり、彼の研究室は発光する実験装置と浮遊するエネルギーボールで満たされています。 ・平和の使者 彼は遠い星からの外交官であり、平和と知識の贈り物をもたらし、地球の住民と共有します。 私は「平和の使者」を選びました。ちなみに、この使者は自然と技術が平和的に融合できる象徴という意味も込めているのですが、ほとんどは自分の好みによる選択です。 その後、Copilot(旧Bing AI チャット)とAdobe Firefly を使って、以上の情報に基づき、日本のアニメ風スタイルを指定して画像を生成しました。以下はその中から選んだ例です。 [caption id="attachment_19773" align="aligncenter" width="750"] AIの生成画像①[/caption] [caption id="attachment_19774" align="aligncenter" width="750"] AIの生成画像②[/caption] [caption id="attachment_19775" align="aligncenter" width="750"] AIの生成画像③[/caption] 生成画像に仕上げをして、イラスト作品完成 次に、私は一枚を選び(画像②)、自分なりに手を加えてみました。主に、メインキャラクターと中央部分を描き直しました。説明のために、部分的にだけ描いています。 メインキャラクターなので、服装のデザインをもっと工夫しました。明暗による形やしわなども調整しました。着彩の配色は、周りのさまざまな色を取り入れて使うことで、統一感を持たせました。 顔とその周りも描き直しました。元の画像のコンセプトに従いつつ、自分のアイデアも加えました。 背景にいる女神のようなキャラクターや、魔法陣のような模様も、認識しやすいように修正しました。 AIとの「コラボ制作」を経験してみて感じたこと というわけで、このような描き直しが時間を省けるかどうかはわかりませんが、ゼロから描くより簡単なのは間違いありません。私にとって、特に人間の部分は既に大体の形がありましたし、周りを参考にすれば、色の選択や試行錯誤も比較的簡単でした。 ゼロから描くと、アイデアやラフスケッチ、参考資料の検索など、何段階も必要になりますが、AI に任せると、カラーラフまでやってくれます。その段階から描き始めれば、画面の配置や色合いなどに全く気を使わないわけではありませんが、配慮することが減るので、特定の一つか二つの要素に集中できるため、作業が楽になります。そのように集中して描いた方が、様々なことに気を配って描くよりも、より良い結果が出るでしょう。良い練習にもなります。 さらに、創作には、通常3つ以上のアイデアが必要だと言われています。AI を使うと、多くのラフを描く手間を省くことができます。ラフとしてもかなりクオリティが高く、完成までのイメージをより具体的に想像することができます。今回は試していませんが、AI が生成した画像を、コンセプトアートのように色んな画像から切り抜いて再構成したり、そのまま参考資料として使ったりすることも可能です。 今回は、AI による発想、色使い、そして画面構成を活用しました。 使用するAI、スタイル、プロンプトによっては、今回生成した画像よりも完成度の高い作品を生成できるでしょう。そのまま手を加えずに使えるレベルの完成度だと言っても過言ではありません。しかし、著作権の問題や、自分で作品を創作する手応えが感じられなくなる可能性もあります。そのため、私はあえて完成度の低い作品を選び、手直しをしてみました。多くの議論がまだ落ち着いていない中、技術が後戻りできないという現実を踏まえ、新しいものを平和に受け入れることが重要です。 それゆえ、試してみる価値があります。今回はあくまでも私のスタイルや創作方法にAI を取り入れてみました。AI を使わなければならないというわけではありません。デジタルの時代になっても、アナログで創作している方は少なからずいます。しかし、技術を拒絶しない姿勢は大事です。創作方法は人それぞれですから、自分に合ったやり方を見つけるしかありません。もし私の方法が、あなたにわずかでもインスピレーションを与えられれば幸いです。 *** あとがき 留学生である私は、文章のアイデアや構成を考え、一度日本語で文章を書いた後、言葉遣いや文法をChatGPT に修正してもらいました。全てを任せたり、完全に翻訳してもらうより、ずるい感じが少なくなると思います。 ↓PicoN!アプリインストールはこちら

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Lines of Sight ーそれぞれのアジアへの視線ー vol.23

学校法人呉学園 日本写真芸術専門学校には、180日間でアジアを巡る海外フィールドワークを実施する、世界で唯一のカリキュラムを持つ「フォトフィールドワークゼミ」があります。 「少数民族」「貧困」「近代都市」「ポートレート」「アジアの子供たち」「壮大な自然」、、 《Lines of Sight ーそれぞれのアジアへの視線ー》では、多様な文化があふれるアジアの国々で、それぞれのテーマを持って旅をしてきた卒業生に、思い出に残るエピソードを伺い、紹介していきます。 象の頭 群衆の主 PFWゼミ9期生 本田 直之 この日は2014年9月8日、中秋の名月だった。10年近く経とうとする今この文章を書いているが、満月の日には遠い国の彼らを今でも思い出す。 定宿にしていたパハールガンジからは東の方向へ歩いていた。はじめて踏み入れた裏通りのひっそりとした道で、若い男が言う。 「マイフレンド、写真撮ってくれないか?」 インド旅行では数え切れないほど頻繁に発生するコミュニケーションで、男の隣には産まれて間もない子を抱く妻がいる。どうやら家族写真を撮ってほしいようで、若い夫婦がこれから築いていく明るい未来を思いながらシャッターを切った。 彼らの不思議なところは、撮影した写真が欲しいというのはほんの一部だけで、多くは撮ってもらったことに誇らしそうであったり、恥じらいを滲ませながらも満足そうにしていることだった。 この男も同様で、ディスプレイで写真を確認するとお気に召していただけたようだった。彼らの顔や衣服に付いていた見慣れない何かに引っ掛かりながらも、再び歩き始めた。大通りが近づいてくると、何事かけたたましい太鼓の音がまとまりを持たないまま大きくなってくる。目に飛び込んできたのは、狂乱だった。山車を曳く牛、赤や黄に染まった人々、色のついた粉塵が視界のあちこちで風に流れ、なにやらトラックに積んだスピーカーからの爆音に身体を揺らし、渋滞の合間を縫って踊り狂う。荷台には、許容を遥かに超えた人がこれでもかと詰め込まれていて、後続のトラックも同じように人で溢れていた。 目を疑うような光景が不意に立ち現れたとき、そうかここはインドだと、脳が処理できるまでどれくらいだっただろうか、立ち尽くした。 リズミカルな太鼓や人々の表情からは、ポジティブなエネルギーが発せられていて、楽しい催しであることはすぐに分かった。同じトラックに乗り合わせているグループの多くは家族やご近所、友人の集まりのようで地域単位でひとつのトラックや山車に乗り、ここまで運ばれてきたようだ。一体、目の前で繰り広げられるこの光景はなんだというのか。彼らはどこに辿り着くべく、この渋滞をつくるのか。 「ガンパティ*!チャトルティ!」「ガンパティ!ガネーシュ!!」「ガネーシュチャトルティ!!バースデー!」 目が合った彼らに尋ねると、日本人にも聞き馴染みのある神様、象の頭をしたガネーシャ神の生誕を祝うものだと分かった。どうやらガネーシャの呼び名はいくつかあるようで、この日最も多く聞いたのはガンパティという呼び名だった。 人を詰め込んだ荷台の一番奥に、ガネーシャがいた。大人よりも少し小さいか、少し大きいくらいのガネーシャ像がそれぞれの山車やトラックに、いかにも大切そうに鎮座させられている。歩いても着いていけそうな速さではあるが、まとまりを持たないまま大きさを増していくその群れに飲み込まれてみようと思った。 人口1300万を超えるデリーには当然のように様々な地域があり、各地からガネーシャを運んでくる彼らにはそれぞれの習わしがあるようだった。赤は血、黄色は尿、緑は田畑を表すという色粉を掛け合っては盛り上がりを増すトラックもあれば、比較的大人しく色を纏ったコミュニティもあり、カメラを持っていては選択肢は自ずと後者のみだった。 「君たち目立っていてとてもクールだね、乗せてもらえない?」 「ウェルカム!ウェルカムトゥインディア!ダンシング!ライクディス!」 大雑把に黄色で統一された彼らは、突然乗り込んできた東洋人に臆することもなく、狭い荷台で踊り迎えてくれる懐の深さを持っていた。自分と歳の近い若者も多く、男性だけのクルーだったことも影響してか、日本に彼女はいるのか、俺の彼女を見てくれ、など一通りの挨拶や自己紹介も済ませると、次第に居心地が良くなってきた。 この日は月曜日で、肌の深部を刺す太陽が傾いてきていた。渋滞に巻き込まれながらも溢れるエネルギーを前にして微笑みながら写真を撮るビジネスマンや、眉間に皺をつくった迷惑そうな大人など様々で、ガネーシャを担ぎあげた男達がその渋滞を縫うように流れ込んでくる様相はあまりにも不秩序で、無意識的に累積してきた常識の観念を押し広げてくれる光景だった。 一帯がガネーシャチャトルティの熱気だけに包まれた頃、どこかに到着した。それぞれが荷台からガネーシャ像を下ろし、数人で抱えて歩き始める。人混みのおかげで近付くまで見えなかった川が目の前に現れた。対岸はすぐそこのように見える。先をいくガネーシャ像たちがその川の中へ流され、沈んでいく様子が見えたときにようやく一連の終わりを理解した。 神様を送り出す最後に向けてヒートアップする太鼓隊に続き、黄色いクルーの我々も最高の音と踊りで辺りをいっぱいにする。直前には改めて祈りを捧げる時間があった。生活に根ざした彼らの敬虔な神事ということが感覚として分かり、その信仰心が胸を衝いた。 ガネーシャチャトルティは、8月末または9月初めの新月の日から4日目を皮切りに、満月までのおよそ10日間に渡って行われる。最終日には昼間から地域を練り歩き、人々が大きな祈りを捧げる中、ガネーシャは海や川へ帰っていく。その場にいる人の罪や障壁、病や悪運などをすべて持っていってくださると信じられている。 何体のガネーシャ神を見送っただろうか。気が付けば川岸から溢れていた人の波も散り散りになり、辺りはインドの怪しげな夜がいつものように始まりつつあった。パハールガンジの宿に戻ると、頭から足の先まで見事に赤く染まった自分が踊り場の全身鏡に映った。現実としての感触がようやく体内を駆け巡り、無事に帰ってきた安堵と、押し寄せてきた疲労を感じながらあの渦中にいた経験を噛み締めた。 ---------------------------------------------------------------------------------- *ガネーシャ(गणेश, gaṇeśa)は、ヒンドゥー教の神の一柱。その名はサンスクリットで「群衆(ガナ)の主(イーシャ)」を意味する。同じ意味でガナパティ(गणपित, gaṇapati)とも呼ばれる。また現代ヒンディー語では短母音の/a/が落ち、同じデーヴァナーガリー綴りでもガネーシュ、ガンパティ(ガンパチ)などと発音される。 ▼フォトフィールドワークゼミ 旅のブログサイト [clink url="https://pfw.npi.ac.jp/"]   ↓PicoN!アプリインストールはこちら

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Lines of Sight ーそれぞれのアジアへの視線ー vol.23

学校法人呉学園 日本写真芸術専門学校には、180日間でアジアを巡る海外フィールドワークを実施する、世界で唯一のカリキュラムを持つ「フォトフィールドワークゼミ」があります。 「少数民族」「貧困」「近代都市」「ポートレート」「アジアの子供たち」「壮大な自然」、、 《Lines of Sight ーそれぞれのアジアへの視線ー》では、多様な文化があふれるアジアの国々で、それぞれのテーマを持って旅をしてきた卒業生に、思い出に残るエピソードを伺い、紹介していきます。 象の頭 群衆の主 PFWゼミ9期生 本田 直之 この日は2014年9月8日、中秋の名月だった。10年近く経とうとする今この文章を書いているが、満月の日には遠い国の彼らを今でも思い出す。 定宿にしていたパハールガンジからは東の方向へ歩いていた。はじめて踏み入れた裏通りのひっそりとした道で、若い男が言う。 「マイフレンド、写真撮ってくれないか?」 インド旅行では数え切れないほど頻繁に発生するコミュニケーションで、男の隣には産まれて間もない子を抱く妻がいる。どうやら家族写真を撮ってほしいようで、若い夫婦がこれから築いていく明るい未来を思いながらシャッターを切った。 彼らの不思議なところは、撮影した写真が欲しいというのはほんの一部だけで、多くは撮ってもらったことに誇らしそうであったり、恥じらいを滲ませながらも満足そうにしていることだった。 この男も同様で、ディスプレイで写真を確認するとお気に召していただけたようだった。彼らの顔や衣服に付いていた見慣れない何かに引っ掛かりながらも、再び歩き始めた。大通りが近づいてくると、何事かけたたましい太鼓の音がまとまりを持たないまま大きくなってくる。目に飛び込んできたのは、狂乱だった。山車を曳く牛、赤や黄に染まった人々、色のついた粉塵が視界のあちこちで風に流れ、なにやらトラックに積んだスピーカーからの爆音に身体を揺らし、渋滞の合間を縫って踊り狂う。荷台には、許容を遥かに超えた人がこれでもかと詰め込まれていて、後続のトラックも同じように人で溢れていた。 目を疑うような光景が不意に立ち現れたとき、そうかここはインドだと、脳が処理できるまでどれくらいだっただろうか、立ち尽くした。 リズミカルな太鼓や人々の表情からは、ポジティブなエネルギーが発せられていて、楽しい催しであることはすぐに分かった。同じトラックに乗り合わせているグループの多くは家族やご近所、友人の集まりのようで地域単位でひとつのトラックや山車に乗り、ここまで運ばれてきたようだ。一体、目の前で繰り広げられるこの光景はなんだというのか。彼らはどこに辿り着くべく、この渋滞をつくるのか。 「ガンパティ*!チャトルティ!」「ガンパティ!ガネーシュ!!」「ガネーシュチャトルティ!!バースデー!」 目が合った彼らに尋ねると、日本人にも聞き馴染みのある神様、象の頭をしたガネーシャ神の生誕を祝うものだと分かった。どうやらガネーシャの呼び名はいくつかあるようで、この日最も多く聞いたのはガンパティという呼び名だった。 人を詰め込んだ荷台の一番奥に、ガネーシャがいた。大人よりも少し小さいか、少し大きいくらいのガネーシャ像がそれぞれの山車やトラックに、いかにも大切そうに鎮座させられている。歩いても着いていけそうな速さではあるが、まとまりを持たないまま大きさを増していくその群れに飲み込まれてみようと思った。 人口1300万を超えるデリーには当然のように様々な地域があり、各地からガネーシャを運んでくる彼らにはそれぞれの習わしがあるようだった。赤は血、黄色は尿、緑は田畑を表すという色粉を掛け合っては盛り上がりを増すトラックもあれば、比較的大人しく色を纏ったコミュニティもあり、カメラを持っていては選択肢は自ずと後者のみだった。 「君たち目立っていてとてもクールだね、乗せてもらえない?」 「ウェルカム!ウェルカムトゥインディア!ダンシング!ライクディス!」 大雑把に黄色で統一された彼らは、突然乗り込んできた東洋人に臆することもなく、狭い荷台で踊り迎えてくれる懐の深さを持っていた。自分と歳の近い若者も多く、男性だけのクルーだったことも影響してか、日本に彼女はいるのか、俺の彼女を見てくれ、など一通りの挨拶や自己紹介も済ませると、次第に居心地が良くなってきた。 この日は月曜日で、肌の深部を刺す太陽が傾いてきていた。渋滞に巻き込まれながらも溢れるエネルギーを前にして微笑みながら写真を撮るビジネスマンや、眉間に皺をつくった迷惑そうな大人など様々で、ガネーシャを担ぎあげた男達がその渋滞を縫うように流れ込んでくる様相はあまりにも不秩序で、無意識的に累積してきた常識の観念を押し広げてくれる光景だった。 一帯がガネーシャチャトルティの熱気だけに包まれた頃、どこかに到着した。それぞれが荷台からガネーシャ像を下ろし、数人で抱えて歩き始める。人混みのおかげで近付くまで見えなかった川が目の前に現れた。対岸はすぐそこのように見える。先をいくガネーシャ像たちがその川の中へ流され、沈んでいく様子が見えたときにようやく一連の終わりを理解した。 神様を送り出す最後に向けてヒートアップする太鼓隊に続き、黄色いクルーの我々も最高の音と踊りで辺りをいっぱいにする。直前には改めて祈りを捧げる時間があった。生活に根ざした彼らの敬虔な神事ということが感覚として分かり、その信仰心が胸を衝いた。 ガネーシャチャトルティは、8月末または9月初めの新月の日から4日目を皮切りに、満月までのおよそ10日間に渡って行われる。最終日には昼間から地域を練り歩き、人々が大きな祈りを捧げる中、ガネーシャは海や川へ帰っていく。その場にいる人の罪や障壁、病や悪運などをすべて持っていってくださると信じられている。 何体のガネーシャ神を見送っただろうか。気が付けば川岸から溢れていた人の波も散り散りになり、辺りはインドの怪しげな夜がいつものように始まりつつあった。パハールガンジの宿に戻ると、頭から足の先まで見事に赤く染まった自分が踊り場の全身鏡に映った。現実としての感触がようやく体内を駆け巡り、無事に帰ってきた安堵と、押し寄せてきた疲労を感じながらあの渦中にいた経験を噛み締めた。 ---------------------------------------------------------------------------------- *ガネーシャ(गणेश, gaṇeśa)は、ヒンドゥー教の神の一柱。その名はサンスクリットで「群衆(ガナ)の主(イーシャ)」を意味する。同じ意味でガナパティ(गणपित, gaṇapati)とも呼ばれる。また現代ヒンディー語では短母音の/a/が落ち、同じデーヴァナーガリー綴りでもガネーシュ、ガンパティ(ガンパチ)などと発音される。 ▼フォトフィールドワークゼミ 旅のブログサイト [clink url="https://pfw.npi.ac.jp/"]   ↓PicoN!アプリインストールはこちら

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写真学生が追う「ゴジラの上陸ルート」

日本写真芸術専門学校に通う学生は、日々さまざまなテーマと向き合いながら撮影をおこなっている。 そんな中、公開から70周年になる日本初の特撮怪獣映画『ゴジラ』をテーマに卒業作品を制作した学生がいた。 「一作品のテーマとしてゴジラの存在はあまりにも大きかった」と語る泉沢七海さん(2024年4月NPI卒業)に作品への想いを聞いた。 [caption id="attachment_19626" align="aligncenter" width="855"] -芝浦- 上陸。電流の走る鉄格子をものともせず、熱線を吐き、鉄塔を溶かし進んでいった。[/caption]   3年間写真を勉強してきて、“それが好きだから”で終わらせたくはない 小さい頃スーパー戦隊がきっかけで特撮にのめりこんで、ゴジラ好き歴は10年くらいになります。 [caption id="attachment_19625" align="aligncenter" width="563"] 集めたゴジラグッズの数々[/caption] はじめは趣味で写真を撮りながら4大特撮(スーパー戦隊、仮面ライダー、ウルトラマン、ゴジラ)の聖地巡礼をしていたんですけど、撮った写真をいざ並べたら、ゴジラだけ異質なことに気付いて。 スーパー戦隊、仮面ライダー、ウルトラマンにはヒューマンドラマのパートがあるので、ヒーローたちと同じ目線に立った時の写真が撮れるんですけど、どうしてもゴジラとは同じ目線で街を見た時の写真が撮れないことに気付いたんです。 やろうにも空撮になってしまうんですよね。 [caption id="attachment_19627" align="aligncenter" width="855"] -銀座 松坂屋- 「もうすぐおとうちゃまの所へ行くのよ」と子どもを抱きかかえる母親。ゴジラを前に、生を諦めていた。[/caption] ゴジラの目線で街を撮るのはどうしても難しいから、まずはゴジラの上陸ルートを辿ってみよう!辿ったらなんか見えるかもと思って。 いくつか撮った写真をゼミの先生に見せたら「まずは1周つづけてみろ」と。 それを繰り返していたらどんどん写真は溜まっていきました。   ゴジラをテーマにして撮り始めたのは、はじめは趣味の延長でしたが、撮影を重ねるうちに“写真作品”としてしっかりと終わらせたい気持ちが強くなっていきました。 [caption id="attachment_19628" align="aligncenter" width="855"] -銀座 和光ビル-  時計が気になったのか、何回か時計に向かって吠えた後、そのままかじって壊してしまった。[/caption] シャッターを押すだけで写真は撮れるから、だからこそ難しい 写真学校に入学する前は、将来写真を仕事にしたいから仕事に活かせるスキルが学べればいいなと思っていました。でもいざ本格的に勉強してみたら、写真の表現の広さには驚きましたね。 シャッターを押すだけで写真は撮れちゃうからこそ難しくて、“写真の表現”というものをいつも考えながら撮っています。 [caption id="attachment_19629" align="aligncenter" width="855"] -国会議事堂-  当時一番大きかった建物。壊すだけでは足りなかったのだろうか。その上を踏んで歩いていた。[/caption] ゴジラの上陸ルートを追うと見えてきたもの ゴジラの上陸ルートを歩きながら最初は気になるものを撮っていました。そうすると、だんだんカメラが上を向いてきたんです。その時に、「ゴジラが見えてきたな」と思いました。 この写真は、一連の写真を見せるうちに先生からはじめて「これいいじゃん。ここにゴジラいるよ」と言われた写真です。 [caption id="attachment_19633" align="aligncenter" width="641"] -神田~秋葉原間-[/caption] 正直撮り始めた頃は迷っていて。最初は上陸ルートを辿って、“なんでゴジラはこのルートを歩いたのか?”をテーマにしようと思ってましたが、あまりにも難しくて。歩いても分からないし。 学者のレポートも読んだんですけど、答えが見つからずに…。 そんな時に先生から「ここにゴジラいるよ」と言われたから、“なんでこのルートを歩いた?”という視点からではなく、実際にルートを歩きながら撮影を重ねたことで、やっと“ゴジラがそこにいた”という存在を感じられるようになりました。 [caption id="attachment_19630" align="aligncenter" width="641"] -テレビ塔-  テレビの中継陣などゴジラには関心なかった。 記者は破壊の直前「いよいよ最期です。さようなら皆さんさようなら」と言い残した。[/caption] 確かにそこにゴジラはいた。それは写真の力だと感じる 今回のテーマは私が特撮好きということから始まっています。レンズを向けながら上陸ルートを辿ることで、確かにゴジラの存在を感じました。 ゴジラは気の向くままに進み、気が済めば帰っていく。痛みを感じ、敵と見做したものを攻撃する…。私は彼こそが生命の塊、人間の写鏡ではないかと考えます。 [caption id="attachment_19631" align="aligncenter" width="855"] -勝鬨橋-  破壊の限りを尽くし、浅草方面から隅田川を南下したゴジラ。 海に帰るため只々邪魔だったのかもしれない。[/caption] 世界中の人に愛され続けているゴジラはすでに、それぞれの"ゴジラ観"が形成されています。戦争へのアンチテーゼと言われていたり、災害的なイメージがあったり…。 私はそれぞれが持つゴジラ観を否定するつもりはありません。ただ、今回の作品を通してゴジラを考えるきっかけのようなものになってくれたらと思います。 [caption id="attachment_19632" align="aligncenter" width="855"] -隅田川- 撮影ルートのゴールとなる隅田川でこのクラゲと靴が川に浮いている写真を撮ったとき、自分の撮影とゴジラのラストシーン(液体中酸素破壊剤[オキシジェンデストロイヤー]によって骨にされたシーン)とがリンクした感覚があった。[/caption]  泉沢七海 2002年 群馬県生まれ 2024年日本写真芸術専門学校総合写真研究ゼミ卒業 instagram X(Twitter) [caption id="attachment_19656" align="aligncenter" width="563"] NPI卒業作品展 2024での展示の様子。ゴジラが歩いたルートと作品を会場一大きなプリントで展示した。[/caption]   ↓PicoN!アプリインストールはこちら

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2024春のクリエイティブ採集@渋谷

なかなか暖かくならない3月でしたが、無事温かい春の気候になってきました。 今回は、過去「秋」「冬」と記事にしました、渋谷で季節のクリエイティブ採集「春バージョン」です。 [clink url="https://picon.fun/design/20231101/"] [clink url="https://picon.fun/design/20231209/"]   2024年春の渋谷は、どのようにクリエイティブで彩られているのでしょうか。   渋谷スクランブルスクエア フジフィルム/インタックスミニの壁面広告。大きなピンクの色面と、やわらかなカラーバリエーションのチェキが春のウキウキ感、なにか思い出を記録したくなるような気持ちを盛り上げてくれる。   秋、冬とカラーリングを変えてきたスクランブルスクエアのデジタルサイネージの時計が、なんとモノクロ。意外でした。   マルジェラのディスプレイ。造花で表現された淡いナチュラルなピンクと、LEDネオン管のビビッドなピンクの対比が面白い。ミスマッチを楽しんでいるような気がします。   ハンズの春イメージ。カタチを変えても、ピンクと青みどりの組み合わせが同じなのでイメージが統一されている。   渋谷ヒカリエ 黄色とブルーが目を引く飲食フロアの広告。力強いカラーが活動的になる季節にマッチ。   いつからいたんだろう?「春」だからなのかわからないが、フロアガイドに腰掛けるマネキンたち。表面の色味がおもしろくピンクの大理石のようなテクスチャになっている。   パターン化されたグリーンとお花が敷き詰められ、高級感が演出されている。同じ花のモチーフを大きく拡大し、飛び出すかたちでレイアウトされており、その遠近感が見ていて楽しい。   「春ロゼのススメ。」写真全体の色調がロゼ色に寄せてあり調和している。手書き文字もカチッとしすぎていないリラックス感が演出されている。   ピンクの背景と春のお花で装飾され撮影されたビジュアル。色味から食欲をそそるおいしそうな雰囲気が出ている。   ピンクとゴールドによるデザイン。気持ちの良いピンクにゴールドが入ることで格式がぐっと上がった雰囲気がする。   シンプルなラインや図形で描かれた春のお花見(?)のイラストビジュアル。シンプルなイラストなのにカワイイがギュッと詰まっていて見ていて飽きない。   無印良品 「春は、はじまり。」そうだよなーと思いながらも、はじめて読んだキャッチコピー。あたらしいスタートは無印良品で揃えたくなる広告。   ロフト 「みつける」「渋谷で新発見。」あたたかい春を待ち望んでいた動物たちが春をうれしそうに感じているイラストレーション。なんと日本デザイナー学院の卒業生「こなつ」さんのイラストレーションでした。こなつさんXリンク   GUCCI 黄緑色と深い赤色、白い背景でなんとなく春雰囲気は感じるように思います。   FENDI 違和感をすごく感じるのですが、FENDIの広告と思うとその違和感がセンスの高さなのかな?と感じてしまいます。均等に並ぶ真っ白な雲。ロゴの上でスパッと切られているモデルさんの足。   渋谷パルコ パルコの2024SSの広告。「Believe It or Not!」目の前に見えるのは現実か空想か。春シーズンは「“SMART HOME”彼らはロボット?それとも人間?」というコンセプトで様々なビジュアルで展開されています。詳しくは専用Webページへ   PicoN!編集部 横山   ↓PicoN!アプリインストールはこちら  

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