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えかきー出張連載 厚塗り講座①「厚塗り」入門!

こんにちは!絵描き向けメディア「えかきー」のライター兼イラストレーターのニクスキーと申します。 突然ですが厚塗りって好きですか? 普段私はペイントソフト「メディバンペイント」を開発している株式会社メディバンペイントのイラストレーターとしても活動しておりまして、主に厚塗りを得意としております。 ▽イラストサンプル 今回は、そんな私が得意とする「厚塗り」を全3回に渡って解説していこうと思います!これを機にぜひ厚塗りにチャレンジしていただけたらと思います。※解説は私が普段使いしているPC版メディバンペイントで行いますが、他のペイントソフトでも実践可能かと思いますので試してみてくださいね。 前回の記事はこちら[clink url="https://picon.fun/illustration/20230402/"] 厚塗りってどんな塗り? 「厚塗り」とは油絵や不透明水彩などの不透明度の高い絵の具で筆跡を活かしながら描く着彩方法です。アニメ塗りが平面的/シンプル/ポップな塗りであるのとは逆に、厚塗りは塗り重ねるほどに深みのあるドラマチックな色の表現ができる塗り方となっています。また厚塗りは、使用するブラシによって表現のテイストを変えることができるため、塗り方次第でポップな表現も可能という幅の広さを秘めています。 ▽アニメ塗りと厚塗りの違い ちなみに一口に厚塗りといっても塗り方にはいくつかの方法があります。厚塗りはクリエイターの数だけ手法があると思っているのですべての解説は難しいですが、私が普段使う 手法は主に以下の3つです。 ①ベーシックな厚塗り ②グリザイユ画法 ③GtC塗り それぞれの説明は全3回の記事内で解説していきますのでお楽しみに! 厚塗りのメリット/デメリット ドラマチックな表現ができることが魅力の厚塗りですが、メリットの他にデメリットも存在します。 厚塗りのメリット ・塗りだけでインパクトのある絵に仕上げられる。・塗りだけで多彩な表現ができる。・デッサンの理解度が上がる。 厚塗りのデメリット ・色を塗り重ねるので画面が重くなりやすい。・色の塗り重ねが必要なのでアニメ塗りに比べると作業に時間がかかる。 ・物体の陰影を表現する必要があるため、クオリティの高いものを目指すほどデッサンの知識が必要となる。 ベーシックな厚塗りをやってみよう! 最後に、厚塗りの手法として最もベーシックな塗り方を解説します。ベーシックとは書きましたが、厚塗りには十人十色の考え方/塗り方が存在しますので、あくまで私なりの手法と捉えていただけたらと思います。 ▼ベーシックな厚塗りの完成形はこちら。 1.「ベーシックな厚塗り」の特徴 ベーシックな厚塗りはベースの色に対して影とハイライトを入れるというアニメ塗りと同じシンプルな作業工程が特徴です。アニメ塗りとの違いとしては筆跡を残しながら影を塗るという点が挙げられます。 2.工程を見てみよう! ベーシックな厚塗りの工程は以下となります。 1.ベースを塗る 2.パーツ毎に基本の色を塗る 3.主線の色を塗りに馴染ませる 4.パーツ毎に影を塗る 5.主線を一部描き起こす 6.ハイライトを入れる 3.実践してみよう! 3-1.ベースを塗る 3-1-1.線画を用意する。 まずはキャラクターの線画を用意します。 使用ブラシ:鉛筆ブラシ https://medibangpaint.com/material/mb010111/ 今回のイラストの線画がこちら。 ※皆さんもこの線画をダウンロードして色塗り練習用に使ってみてください! 3-1-2.色のベースをグレーで塗る 線画(主線)の下に新規レイヤーを追加し、キャラクターの部分のみをグレーで塗りつぶします。 この後の塗りの作業はこのグレーの部分にクリッピング(※)をしながら色を塗っていきます。 クリッピングとは 下のレイヤーを参照して、そのレイヤーに描かれている部分のみに線を引いたり色を塗ったりすることの出来るレイヤー機能です。ほとんどのペイントソフトにデフォルトで搭載されている。 3-2.パーツ毎のベースの色を塗る 次に先ほどのグレーのベースの上に新規レイヤーを作り、各パーツ毎にベースとなる色を塗っていきます。新規で作ったレイヤーは必ずクリッピングをしましょう。ベースはベタ塗りで問題ないので不透明度100%ペンブラシやバケツ塗りで行います。 まず最初に肌のベースを塗りました。 顔以外の部位も同様に、レイヤーをパーツ分けながら塗って色のベースが完成! パーツ毎に塗った色はレイヤーフォルダにまとめておきましょう。 ワンポイントアドバイス! - 色の選び方 - キャラクターの色選びが苦手という方のために、今回のイラストの配色のポイントをご紹介します。 ポイント1 キャラクターの顔周りに視線を集めたいので、赤と緑という補色(※)を使って、キャラクターの髪と服のコントラストを強調させています。 補色とは カラーサークルでみた時に正反対に位置する色同士のことを補色といいます。補色同士を組み合わせることでお互いの色を引き立てる効果があります。 ポイント2 キャラクターの目やジーンズに青を使うことで、キャラクターの清潔感や爽やかさを表現しています。 ポイント3 ジャケットのストライプに黄色を置くことで、キャラクターの明るさや元気さを表現しています。 ポイント4 パーカーのベースを中性色のグレーにすることで、他の色と調和させる役割を果たしています。 以上のように、配色を考える際は色彩の役割を考えながら色を置くことで、視線誘導/キャラクターの性格/雰囲気を表現しています。また配色を考える際は、絵を描く前に完成形を想定した「色ラフ」を作ると後々の作業がスムーズになるのでおすすめです。 ▼ちなみに今回はこんな感じの色ラフを作成しました。 事前に色ラフを作ることで、本作業の色塗りは色ラフからスポイトツールで色をとって塗るだけになるので色に悩む必要が無い分、効率がアップします。 3-3.主線の色を馴染ませる 先ほど塗ったベースの色に主線を馴染ませるために、主線の色を変更します。 3-3-1.色のベースを複製する。 3-3-2.複製した「色ベース」のフォルダを主線の一つ上に移動したのちにフォルダ統合する 3-3-3.統合した「色ベース」レイヤーを選択した状態でメニューバーの「フィルタ」から「ガウスぼかし」を選択して全体をぼかす ガウスぼかしの数値は「10」を設定。 3-3-4「色相・彩度・明度」で全体の色味を濃く調整する 彩度のみを「100」に設定する。 3-3-5.レイヤーブレンドを「スクリーン」にしてクリッピングを設定する レイヤー濃度は「40%」に設定しています。 3-3-6.線画の色変え完了! 線画の色を変える前(左)と比べてベースの色と馴染んだのが分かると思います。 3-4.パーツ毎に影を塗る 次に各パーツの色ベースレイヤー上に影を塗っていきます。影を塗る際は、レイヤー毎に「透明度の保護(※)」を設定して塗っていきます。 透明度の保護とは 透明度の保護を設定したレイヤーに描かれている部分のみに線を引いたり色を塗ったりすることの出来るレイヤー機能です。 まず最初に「肌ベース」レイヤーに肌の影を塗りました。 使用ブラシ:水彩(ハード)ブラシ ブラシ不透明度:20% https://medibangpaint.com/material/mb020113/ ワンポイントアドバイス! - 影の塗り方 - 影を塗る時は以下の4つの工程で塗っています。練習が必要な技術ではありますがぜひ参考にしてください! ①濃い暗めの影(今回は紫色)を塗る ②ベースの肌と紫色の間に肌よりも少し明るめの色(今回はピンク色)を乗せる ③ベースの肌色をスポイトでとって、ペンタブレットの筆圧を効かせながらベースの肌色とピンク色を混ぜるように優しく塗って馴染ませる ④③と同様に今度はピンクの色をスポイトでとって、紫の部分を馴染ませる。 紫色とピンク色はパーツ毎に馴染む色に変えて塗っていきましょう。 上記の塗り方ですべてのパーツを塗ったら完成!                                                                                            3-5.主線を一部描き起こす 次にレイヤーの1番上に新規レイヤーを作り、先ほどベースカラーと馴染ませた主線の一部を黒で描き起こしていきます。この描き起こしをすることでキャラクターの立体感を強調することができます。 使用ブラシ:鉛筆ブラシ 今回はこの位置を描き起こしてみました。 眉毛の一部分の不要な部分の塗りつぶしも行ってます。主線の一部が描き起こされたことによりキャラクターに立体感を出すことができました。 3-6.ハイライトを入れる 最後にレイヤーの1番上に新規レイヤーを作り、キャラクターにハイライトを入れます。ハイライトを効果的に入れることで絵を引き締めることができます。 今回はこの位置にの状態で入れてみました。 使用ブラシ:鉛筆ブラシ レイヤーブレンド:通常 ※どこに入れたかをわかりやすくするために赤色にしています。 ハイライトを入れたことにより、キャラクターが引き締まりより立体感が出ました。 ハイライトは入れすぎてしまうとハイライトにばかり視線が誘導されてしまうので控えめに入れています。ハイライトを入れ終わったら背景にグレーの枠を敷いて完成! 以上が私なりの「ベーシックな厚塗り」の解説となります。 ちなみに「アニメ塗りはできるけど厚塗りができない!」とお悩みの方には「一度アニメ塗りで仕上げてからさらに上から塗り足して厚塗り風にする」という手法もオススメですので挑戦してみてくださいね。 アニメ塗りで塗った影を伸ばしていく感じに塗ると厚塗りっぽくなる! 次回は「グリザイユ画法」を用いた厚塗りの解説です!お楽しみに! ライター:ミートポーク・ニクスキー 新し物好きなので新しい絵の技術やお絵描きグッズを見るとすぐ飛びついてしまう習性がある某企業勤めの副業絵描きライター。繊細さんなためか気圧の変動に弱い。好きな動物は猫。実は肉より魚派。 絵描き向けメディアサイト『えかきー』 「お絵描きに役立つアイテムレビュー」「すべての絵描きが共感できるあるある記事」「注目のお絵描き情報」etc... お絵描きに関する色々な情報を発信していきます。https://ekakey.com/ ↓PicoN!アプリインストールはこちら

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イラスト

白って本当に200色? 白いものたくさん集めてみた

とあるタレントが「白って200色あんねん」と冗談混じりに話しているのが話題になりましたね。そのコメントを見た時、筆者はこう思ったのです。 「ホンマに200色もあるん?ほな、白いものたくさん集めたるわ!」 ということで、家中の白いものをたくさん集めてみました! 色んな「白」を見比べてみよう。家中の「白いもの」ひたすら集めてみた こうして見比べてみると、一言に「白」と言っても微妙なニュアンスの違いがあることが分かりますね。「白は200色」説もあながち過言ではないのかも⁉ で、結局白は何色やねん? 「Adobe Color」で検証 流石に200種類は集めきれず…… なので、「Adobe Color」を使って改めて検証しました! 「Adobe Color」(https://color.adobe.com/ja/create/color-wheel) RGBを全て255にすると白になります。どこまでを白にするか悩みますが、今回は10引いた245までを白としてみます! そうすると、RGBそれぞれで10段階の調整が可能になりますね。ということは、10×10×10=1,000となるので、1000種類の白があるということになります! 今回はわかりやすく10で計算しましたが、200種類以上は確実にありそうですね。 Adobe Colorについてはこちら! https://picon.fun/design/20240126/ ↓PicoN!アプリインストールはこちら

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デザイン

【展示アイディア】作品や壁に穴をあけたくない!壁にポスターを貼るテクニック

お気に入りポスターや推しのポスター、はたまた作品展示など「壁」に作品を貼りたいときっていろいろありますよね。 だけど、 大切なポスターや作品に 穴を開けたり汚したりしたくない… コンクリート壁だと そもそも押しピンが刺せない…   そんなときに! 使えるアイディアの紹介です。   まず多くの人が経験あるであろう「テープを輪っかにして貼る方法」がありますよね。 これで貼れるのであればこの「テープ輪っか方法」でいいのですが、大きいサイズのポスターだとポスターの重たさに耐えられないケースが多くあります。 この方法だと、壁とポスターをつなぎとめる接合部がテープの折り返し部分だけで、そのほかは浮いて繋がっていないのが原因で強度が足りないんですよね。。。     方法1つめ 「クリップ&磁石」 コンクリート壁などだと磁石は使えませんが、ゼムクリップなど薄くて小さな金属のアイテムを壁に貼ってしまえば磁石を使用することができます。 [caption id="attachment_19921" align="aligncenter" width="850"] 壁にゼムクリップをマスキングテープで貼り付け、ポスターを重ねて磁石をクリップに作用するように張る[/caption]   ※ポイント「ネオジウム磁石」 普通の磁石だと磁力が弱く固定できません。なのでこの方法で使う磁石は磁力の強い「ネオジウム磁石」を使用してください。 ネオジウム磁石は100均のお店でもよく置いてあるので探してみてください。 [caption id="attachment_19931" align="aligncenter" width="850"] (商品イメージ:ダイソーHPより)[/caption]     方法2つめ 両面テープ×マスキングテープ いま両面テープの種類も多くあって、「貼ってはがせるタイプ」なんていうのも売ってますが、壁からはキレイにはがせるけど、作品にくっついた面は剥がせず作品を傷めてしまうことがあります、、、 そんなときには「両面テープ」と「マスキングテープ」を組み合わせて使いましょう。 ①ポスターの裏面に、壁に貼り付けたいポイントを決めてマスキングテープを貼ります。 [caption id="attachment_19924" align="aligncenter" width="850"] ポスターの裏面にマスキングテープ。ポスターが大きい場合はポイントを増やしましょう。[/caption]   ②壁にマスキングテープを貼り、上に両面テープ、そしてポスターの裏側のマスキングテープの場所を合わせるように貼り付けます。 [caption id="attachment_19923" align="aligncenter" width="850"] ポスター裏面のマスキングテープと壁の両面テープのポイントが合うように、テープの貼り付け位置は慎重に。[/caption]   ※ポイント:マスキングテープは、両面テープの幅より太い商品で せっかくマスキングテープで、壁と作品を保護しても、両面テープのポイントとズレると作品や壁を汚してしまうかもしれません。両面テープよりも、マスキングテープの幅は広めの商品、長めに使うのがいいでしょう。 マスキングテープの「輪っか」と両面テープを組み合わせるのもいいかもしれませんね。   番 外 編 壁や天井にフックなど「ひっかけるポイント」があるのであれば、 「ポスターハンガー」 もオススメです。 ネットショップで検索すればいろんなタイプの商品が出ています。 [caption id="attachment_19935" align="aligncenter" width="850"] ポスターハンガー(磁石固定ではない商品もあります)[/caption] ポスターの上下をバーで挟み込むように固定して吊り下げることができるアイテムです。 ある程度の重たさがあり、上から吊るす形式なのでポスターがピーンと張ってくれるのも良いポイントです。 (カンタンな構造なので、僕は学校の展示で数十本手作りしたこともあります)   ということで、壁にポスターや作品を飾るときのテクニックのアイディア紹介でした。 ほかにもいいテクニックがあれば ぜひ逆に教えてほしいです♪ では。   PicoN!編集部 横山   ↓PicoN!アプリインストールはこちら

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アート

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Lines of Sight ーそれぞれのアジアへの視線ー vol.23

学校法人呉学園 日本写真芸術専門学校には、180日間でアジアを巡る海外フィールドワークを実施する、世界で唯一のカリキュラムを持つ「フォトフィールドワークゼミ」があります。 「少数民族」「貧困」「近代都市」「ポートレート」「アジアの子供たち」「壮大な自然」、、 《Lines of Sight ーそれぞれのアジアへの視線ー》では、多様な文化があふれるアジアの国々で、それぞれのテーマを持って旅をしてきた卒業生に、思い出に残るエピソードを伺い、紹介していきます。 象の頭 群衆の主 PFWゼミ9期生 本田 直之 この日は2014年9月8日、中秋の名月だった。10年近く経とうとする今この文章を書いているが、満月の日には遠い国の彼らを今でも思い出す。 定宿にしていたパハールガンジからは東の方向へ歩いていた。はじめて踏み入れた裏通りのひっそりとした道で、若い男が言う。 「マイフレンド、写真撮ってくれないか?」 インド旅行では数え切れないほど頻繁に発生するコミュニケーションで、男の隣には産まれて間もない子を抱く妻がいる。どうやら家族写真を撮ってほしいようで、若い夫婦がこれから築いていく明るい未来を思いながらシャッターを切った。 彼らの不思議なところは、撮影した写真が欲しいというのはほんの一部だけで、多くは撮ってもらったことに誇らしそうであったり、恥じらいを滲ませながらも満足そうにしていることだった。 この男も同様で、ディスプレイで写真を確認するとお気に召していただけたようだった。彼らの顔や衣服に付いていた見慣れない何かに引っ掛かりながらも、再び歩き始めた。大通りが近づいてくると、何事かけたたましい太鼓の音がまとまりを持たないまま大きくなってくる。目に飛び込んできたのは、狂乱だった。山車を曳く牛、赤や黄に染まった人々、色のついた粉塵が視界のあちこちで風に流れ、なにやらトラックに積んだスピーカーからの爆音に身体を揺らし、渋滞の合間を縫って踊り狂う。荷台には、許容を遥かに超えた人がこれでもかと詰め込まれていて、後続のトラックも同じように人で溢れていた。 目を疑うような光景が不意に立ち現れたとき、そうかここはインドだと、脳が処理できるまでどれくらいだっただろうか、立ち尽くした。 リズミカルな太鼓や人々の表情からは、ポジティブなエネルギーが発せられていて、楽しい催しであることはすぐに分かった。同じトラックに乗り合わせているグループの多くは家族やご近所、友人の集まりのようで地域単位でひとつのトラックや山車に乗り、ここまで運ばれてきたようだ。一体、目の前で繰り広げられるこの光景はなんだというのか。彼らはどこに辿り着くべく、この渋滞をつくるのか。 「ガンパティ*!チャトルティ!」「ガンパティ!ガネーシュ!!」「ガネーシュチャトルティ!!バースデー!」 目が合った彼らに尋ねると、日本人にも聞き馴染みのある神様、象の頭をしたガネーシャ神の生誕を祝うものだと分かった。どうやらガネーシャの呼び名はいくつかあるようで、この日最も多く聞いたのはガンパティという呼び名だった。 人を詰め込んだ荷台の一番奥に、ガネーシャがいた。大人よりも少し小さいか、少し大きいくらいのガネーシャ像がそれぞれの山車やトラックに、いかにも大切そうに鎮座させられている。歩いても着いていけそうな速さではあるが、まとまりを持たないまま大きさを増していくその群れに飲み込まれてみようと思った。 人口1300万を超えるデリーには当然のように様々な地域があり、各地からガネーシャを運んでくる彼らにはそれぞれの習わしがあるようだった。赤は血、黄色は尿、緑は田畑を表すという色粉を掛け合っては盛り上がりを増すトラックもあれば、比較的大人しく色を纏ったコミュニティもあり、カメラを持っていては選択肢は自ずと後者のみだった。 「君たち目立っていてとてもクールだね、乗せてもらえない?」 「ウェルカム!ウェルカムトゥインディア!ダンシング!ライクディス!」 大雑把に黄色で統一された彼らは、突然乗り込んできた東洋人に臆することもなく、狭い荷台で踊り迎えてくれる懐の深さを持っていた。自分と歳の近い若者も多く、男性だけのクルーだったことも影響してか、日本に彼女はいるのか、俺の彼女を見てくれ、など一通りの挨拶や自己紹介も済ませると、次第に居心地が良くなってきた。 この日は月曜日で、肌の深部を刺す太陽が傾いてきていた。渋滞に巻き込まれながらも溢れるエネルギーを前にして微笑みながら写真を撮るビジネスマンや、眉間に皺をつくった迷惑そうな大人など様々で、ガネーシャを担ぎあげた男達がその渋滞を縫うように流れ込んでくる様相はあまりにも不秩序で、無意識的に累積してきた常識の観念を押し広げてくれる光景だった。 一帯がガネーシャチャトルティの熱気だけに包まれた頃、どこかに到着した。それぞれが荷台からガネーシャ像を下ろし、数人で抱えて歩き始める。人混みのおかげで近付くまで見えなかった川が目の前に現れた。対岸はすぐそこのように見える。先をいくガネーシャ像たちがその川の中へ流され、沈んでいく様子が見えたときにようやく一連の終わりを理解した。 神様を送り出す最後に向けてヒートアップする太鼓隊に続き、黄色いクルーの我々も最高の音と踊りで辺りをいっぱいにする。直前には改めて祈りを捧げる時間があった。生活に根ざした彼らの敬虔な神事ということが感覚として分かり、その信仰心が胸を衝いた。 ガネーシャチャトルティは、8月末または9月初めの新月の日から4日目を皮切りに、満月までのおよそ10日間に渡って行われる。最終日には昼間から地域を練り歩き、人々が大きな祈りを捧げる中、ガネーシャは海や川へ帰っていく。その場にいる人の罪や障壁、病や悪運などをすべて持っていってくださると信じられている。 何体のガネーシャ神を見送っただろうか。気が付けば川岸から溢れていた人の波も散り散りになり、辺りはインドの怪しげな夜がいつものように始まりつつあった。パハールガンジの宿に戻ると、頭から足の先まで見事に赤く染まった自分が踊り場の全身鏡に映った。現実としての感触がようやく体内を駆け巡り、無事に帰ってきた安堵と、押し寄せてきた疲労を感じながらあの渦中にいた経験を噛み締めた。 ---------------------------------------------------------------------------------- *ガネーシャ(गणेश, gaṇeśa)は、ヒンドゥー教の神の一柱。その名はサンスクリットで「群衆(ガナ)の主(イーシャ)」を意味する。同じ意味でガナパティ(गणपित, gaṇapati)とも呼ばれる。また現代ヒンディー語では短母音の/a/が落ち、同じデーヴァナーガリー綴りでもガネーシュ、ガンパティ(ガンパチ)などと発音される。 ▼フォトフィールドワークゼミ 旅のブログサイト [clink url="https://pfw.npi.ac.jp/"]   ↓PicoN!アプリインストールはこちら

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写真

写真学生が追う「ゴジラの上陸ルート」

日本写真芸術専門学校に通う学生は、日々さまざまなテーマと向き合いながら撮影をおこなっている。 そんな中、公開から70周年になる日本初の特撮怪獣映画『ゴジラ』をテーマに卒業作品を制作した学生がいた。 「一作品のテーマとしてゴジラの存在はあまりにも大きかった」と語る泉沢七海さん(2024年4月NPI卒業)に作品への想いを聞いた。 [caption id="attachment_19626" align="aligncenter" width="855"] -芝浦- 上陸。電流の走る鉄格子をものともせず、熱線を吐き、鉄塔を溶かし進んでいった。[/caption]   3年間写真を勉強してきて、“それが好きだから”で終わらせたくはない 小さい頃スーパー戦隊がきっかけで特撮にのめりこんで、ゴジラ好き歴は10年くらいになります。 [caption id="attachment_19625" align="aligncenter" width="563"] 集めたゴジラグッズの数々[/caption] はじめは趣味で写真を撮りながら4大特撮(スーパー戦隊、仮面ライダー、ウルトラマン、ゴジラ)の聖地巡礼をしていたんですけど、撮った写真をいざ並べたら、ゴジラだけ異質なことに気付いて。 スーパー戦隊、仮面ライダー、ウルトラマンにはヒューマンドラマのパートがあるので、ヒーローたちと同じ目線に立った時の写真が撮れるんですけど、どうしてもゴジラとは同じ目線で街を見た時の写真が撮れないことに気付いたんです。 やろうにも空撮になってしまうんですよね。 [caption id="attachment_19627" align="aligncenter" width="855"] -銀座 松坂屋- 「もうすぐおとうちゃまの所へ行くのよ」と子どもを抱きかかえる母親。ゴジラを前に、生を諦めていた。[/caption] ゴジラの目線で街を撮るのはどうしても難しいから、まずはゴジラの上陸ルートを辿ってみよう!辿ったらなんか見えるかもと思って。 いくつか撮った写真をゼミの先生に見せたら「まずは1周つづけてみろ」と。 それを繰り返していたらどんどん写真は溜まっていきました。   ゴジラをテーマにして撮り始めたのは、はじめは趣味の延長でしたが、撮影を重ねるうちに“写真作品”としてしっかりと終わらせたい気持ちが強くなっていきました。 [caption id="attachment_19628" align="aligncenter" width="855"] -銀座 和光ビル-  時計が気になったのか、何回か時計に向かって吠えた後、そのままかじって壊してしまった。[/caption] シャッターを押すだけで写真は撮れるから、だからこそ難しい 写真学校に入学する前は、将来写真を仕事にしたいから仕事に活かせるスキルが学べればいいなと思っていました。でもいざ本格的に勉強してみたら、写真の表現の広さには驚きましたね。 シャッターを押すだけで写真は撮れちゃうからこそ難しくて、“写真の表現”というものをいつも考えながら撮っています。 [caption id="attachment_19629" align="aligncenter" width="855"] -国会議事堂-  当時一番大きかった建物。壊すだけでは足りなかったのだろうか。その上を踏んで歩いていた。[/caption] ゴジラの上陸ルートを追うと見えてきたもの ゴジラの上陸ルートを歩きながら最初は気になるものを撮っていました。そうすると、だんだんカメラが上を向いてきたんです。その時に、「ゴジラが見えてきたな」と思いました。 この写真は、一連の写真を見せるうちに先生からはじめて「これいいじゃん。ここにゴジラいるよ」と言われた写真です。 [caption id="attachment_19633" align="aligncenter" width="641"] -神田~秋葉原間-[/caption] 正直撮り始めた頃は迷っていて。最初は上陸ルートを辿って、“なんでゴジラはこのルートを歩いたのか?”をテーマにしようと思ってましたが、あまりにも難しくて。歩いても分からないし。 学者のレポートも読んだんですけど、答えが見つからずに…。 そんな時に先生から「ここにゴジラいるよ」と言われたから、“なんでこのルートを歩いた?”という視点からではなく、実際にルートを歩きながら撮影を重ねたことで、やっと“ゴジラがそこにいた”という存在を感じられるようになりました。 [caption id="attachment_19630" align="aligncenter" width="641"] -テレビ塔-  テレビの中継陣などゴジラには関心なかった。 記者は破壊の直前「いよいよ最期です。さようなら皆さんさようなら」と言い残した。[/caption] 確かにそこにゴジラはいた。それは写真の力だと感じる 今回のテーマは私が特撮好きということから始まっています。レンズを向けながら上陸ルートを辿ることで、確かにゴジラの存在を感じました。 ゴジラは気の向くままに進み、気が済めば帰っていく。痛みを感じ、敵と見做したものを攻撃する…。私は彼こそが生命の塊、人間の写鏡ではないかと考えます。 [caption id="attachment_19631" align="aligncenter" width="855"] -勝鬨橋-  破壊の限りを尽くし、浅草方面から隅田川を南下したゴジラ。 海に帰るため只々邪魔だったのかもしれない。[/caption] 世界中の人に愛され続けているゴジラはすでに、それぞれの"ゴジラ観"が形成されています。戦争へのアンチテーゼと言われていたり、災害的なイメージがあったり…。 私はそれぞれが持つゴジラ観を否定するつもりはありません。ただ、今回の作品を通してゴジラを考えるきっかけのようなものになってくれたらと思います。 [caption id="attachment_19632" align="aligncenter" width="855"] -隅田川- 撮影ルートのゴールとなる隅田川でこのクラゲと靴が川に浮いている写真を撮ったとき、自分の撮影とゴジラのラストシーン(液体中酸素破壊剤[オキシジェンデストロイヤー]によって骨にされたシーン)とがリンクした感覚があった。[/caption]  泉沢七海 2002年 群馬県生まれ 2024年日本写真芸術専門学校総合写真研究ゼミ卒業 instagram X(Twitter) [caption id="attachment_19656" align="aligncenter" width="563"] NPI卒業作品展 2024での展示の様子。ゴジラが歩いたルートと作品を会場一大きなプリントで展示した。[/caption]   ↓PicoN!アプリインストールはこちら

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写真

2024春のクリエイティブ採集@渋谷

なかなか暖かくならない3月でしたが、無事温かい春の気候になってきました。 今回は、過去「秋」「冬」と記事にしました、渋谷で季節のクリエイティブ採集「春バージョン」です。 [clink url="https://picon.fun/design/20231101/"] [clink url="https://picon.fun/design/20231209/"]   2024年春の渋谷は、どのようにクリエイティブで彩られているのでしょうか。   渋谷スクランブルスクエア フジフィルム/インタックスミニの壁面広告。大きなピンクの色面と、やわらかなカラーバリエーションのチェキが春のウキウキ感、なにか思い出を記録したくなるような気持ちを盛り上げてくれる。   秋、冬とカラーリングを変えてきたスクランブルスクエアのデジタルサイネージの時計が、なんとモノクロ。意外でした。   マルジェラのディスプレイ。造花で表現された淡いナチュラルなピンクと、LEDネオン管のビビッドなピンクの対比が面白い。ミスマッチを楽しんでいるような気がします。   ハンズの春イメージ。カタチを変えても、ピンクと青みどりの組み合わせが同じなのでイメージが統一されている。   渋谷ヒカリエ 黄色とブルーが目を引く飲食フロアの広告。力強いカラーが活動的になる季節にマッチ。   いつからいたんだろう?「春」だからなのかわからないが、フロアガイドに腰掛けるマネキンたち。表面の色味がおもしろくピンクの大理石のようなテクスチャになっている。   パターン化されたグリーンとお花が敷き詰められ、高級感が演出されている。同じ花のモチーフを大きく拡大し、飛び出すかたちでレイアウトされており、その遠近感が見ていて楽しい。   「春ロゼのススメ。」写真全体の色調がロゼ色に寄せてあり調和している。手書き文字もカチッとしすぎていないリラックス感が演出されている。   ピンクの背景と春のお花で装飾され撮影されたビジュアル。色味から食欲をそそるおいしそうな雰囲気が出ている。   ピンクとゴールドによるデザイン。気持ちの良いピンクにゴールドが入ることで格式がぐっと上がった雰囲気がする。   シンプルなラインや図形で描かれた春のお花見(?)のイラストビジュアル。シンプルなイラストなのにカワイイがギュッと詰まっていて見ていて飽きない。   無印良品 「春は、はじまり。」そうだよなーと思いながらも、はじめて読んだキャッチコピー。あたらしいスタートは無印良品で揃えたくなる広告。   ロフト 「みつける」「渋谷で新発見。」あたたかい春を待ち望んでいた動物たちが春をうれしそうに感じているイラストレーション。なんと日本デザイナー学院の卒業生「こなつ」さんのイラストレーションでした。こなつさんXリンク   GUCCI 黄緑色と深い赤色、白い背景でなんとなく春雰囲気は感じるように思います。   FENDI 違和感をすごく感じるのですが、FENDIの広告と思うとその違和感がセンスの高さなのかな?と感じてしまいます。均等に並ぶ真っ白な雲。ロゴの上でスパッと切られているモデルさんの足。   渋谷パルコ パルコの2024SSの広告。「Believe It or Not!」目の前に見えるのは現実か空想か。春シーズンは「“SMART HOME”彼らはロボット?それとも人間?」というコンセプトで様々なビジュアルで展開されています。詳しくは専用Webページへ   PicoN!編集部 横山   ↓PicoN!アプリインストールはこちら  

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