町の景色がプラモデルに変身、静岡市の地域創生プロジェクト
全国には、クリエイティブな面からのアプローチや斬新なアイデアで課題解決に取り組んでいる地域がたくさんあります。
今回は、静岡市で行われているプラスチックの部品を組み立てて作る“プラモデル”をシティプロモーションに活用している「静岡市プラモデル化計画」について取材してきました!とってもユニークなプロジェクトでぜひとも記事にしたいと思い、、静岡市役所の産業振興課プラモデル振興係・宮澤さんにお話をお伺いしました。
プロジェクトの始まりから、今後の展望など、、、さっそく見ていきましょう!
「静岡市プラモデル化計画」とはどういったプロジェクトになりますか?
静岡市プラモデル化計画とは、まちの賑わいや地域への愛着等を育み「プラモデルのまち」を体感できる地方創生プロジェクトです。プラモデルを活用したシティプロモーション及びまちの活性化、古来より本市に根付く「ものづくり精神」を継承する人材育成など総合的なまちづくりの施策を展開し、将来にわたって活力ある静岡市を維持していくものです。
本計画では、プラモニュメントに代表されるプラモデルのまちを体感できる「環境づくり」、他業種とのコラボレーションによる新たな「コンテンツづくり」に加え、プラモデルを活用したまちづくりを担う人の育成や、子どもたちへのものづくり教育など、関わる人を財産と捉える「人財づくり」を3つの柱に据え、事業を展開しています。
プラモデル化計画のプロジェクトが発足したきっかけは?
静岡市のプラモデルは、戦前の木製模型の時代まで遡り、半世紀以上の歴史があります。静岡市には模型メーカーが集積しており、今や静岡市の模型の出荷額は全国NO.1でそのシェアは、86%※に至っています。(※令和2年「工業統計調査(経済産業省)」をもとに算出)その歴史の長さと圧倒的なシェアから静岡は「模型の世界首都」として世界中の模型ファンが集まるまちへと成長してきました。こうした流れをさらに加速させるため、静岡市では模型産業を基軸とした地方創生プロジェクト「静岡市プラモデル化計画」を令和2年2月18日に発表し、その契機として「プラモニュメント」4基を令和3年3月19日に披露しました。
なぜプラモデルがモニュメントとして起用されたのでしょうか?
これまで、プラモデルの活用は、静岡ホビーショーの開催などのプラモデルユーザー向けが中心となっていました。世界に誇れる静岡市のプラモデルをコアなファン向けだけでなく、もっと老若男女に楽しんでもらうにはどうしたらよいのか?と模索していました。また、一方で、静岡市といえばコレ!という“まちのシンボル”が中心市街地に少ないことも静岡市の課題の一つでした。そこで、もし、このまちの景色をプラモデルのようにできたら、まちのシンボルとなり、プラモデルの持つドキドキやワクワクをもっと広くオープン化させられるのではないか。そんな思いに至り、まちの中にあるものを「組み立て前」のパーツに分解してプラモデルの特徴であるランナーにはめ込んだモニュメントを基本コンセプトとする「プラモニュメント」が誕生しました。
実際にアイデアから形にするまで困難な点はありましたか?
プラモデルらしさ、モニュメントとしての美しさ、ポストや電話としての機能の保持に配慮したバランスの取れたデザインを構築することに苦心しました。プラモデルらしさを追求するが故に、パーツを細かくしすぎてしまうと、見る人がポストとしてモニュメントを認識するのが難しくなるし、ポストとしての機能の維持にばかり気を配ると、パーツ化されずプラモデルらしさを実感できないといった感じです。また、プラモニュメントを設置するには、屋外広告物法や道路法などの規制がかかることもあり設置には苦心しました。
今後どのようなプラモニュメントを増やしていきたいなどはありますか?
自動販売機や公園のベンチ、通りに立つ街灯など、まちの中にある様々なものをプラモデル化したいです。皆様の中で「まちにあるこんなものがプラモデル化されたら面白いのにな」ということがあれば、ぜひ聞かせてもらいたいです!街中にあるものをプラモニュメント化していくためには、行政だけの取組では広がりが期待できません。今後は民間企業等の皆様にもご協力を賜り、民間企業様が所有するものをプラモニュメント化していくことも促していきたいと考えています。
イラストレーターの島村英二さんとのコラボのきっかけは?
島村英二さんは、静岡市出身で、イラストレーターとしてプラモデルメーカーのタミヤに在籍し、数多くのプラモデルのボックスアート(箱絵)を手掛けるなど、長年にわたりプラモデル業界の第一線でご活躍している方です。そこで、「模型の世界首都・静岡」の案内板のプラモニュメントを設置するに当たって是非、島村英二さんにそのデザインをお願いしたいと思い制作を依頼しました。
今後もプラモデルを通じて沢山の方とコラボし新しいコンテンツが出来れば良いなと考えています!
宮澤さんおススメのプラモニュメントを教えてほしいです。こだわりのポイント、ここだけは見てほしいなどあればお伺いしたいです!
私のおすすめのプラモニュメントはNTT西日本静岡支店様が設置した民間企業第1号の公衆電話のプラモニュメントです。このモニュメントは、令和4年3月13日に静岡駅構内に設置されています。プラモデルファンも唸るアンダーゲートやナンバータグなど細かなディティールを再現し、遊び心にあふれながらも実際に使用できる機能性も兼ね備えている。今後も民間の賛同事業者を募り、官民連携で市の魅力を発信していきたいです。
プラモニュメントを初めて見た人の反応はいかがですか?
「粋なことするね」「こんなのまちで見かけたらワクワクする」「静岡行きたくなった」「面白い!こういうのはドンドンやって欲しい」など。その中には「思わずニッパーやヤスリを持って行きたくなる」という声も…!プロジェクトは大きな反響を呼び、全国的なメディアにも多数取り上げられました。SNSでは本来プラモデルに興味のなかった若年層などの投稿も続々と生まれ、何万件もの「いいね」数を獲得しています。そして、日本を代表する賞(グッドデザイン賞、日本サインデザイン賞、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS)を続々と獲得しています。
プラモニュメントを観た人がこのように活用してほしいなどあればお伺いしたいです。
観た人には、是非、その時感じたワクワク・ドキドキを周りに発信してもらいたいです。そして、プラモデルのデザインはこういうところでも活かせるのでは?というのを想像して、さらにワクワク・ドキドキして欲しいです。そんなワクワク・ドキドキを支援するため、静岡市では「プラモデルデザイン活用シティプロモーション事業補助金」を用意しております。ぜひ、皆様にはこの補助金を活用して、さらにプラモデルの魅力を発信してくれたら嬉しいです。
宮澤さんが考える、プラモデルのよさ、魅力、おもしろさは?
静岡市では「プラモデル化計画」の一環として「ものづくりキャリア教育推進事業」を実施しています。これは、市内の小学校でプラモデルの授業を開催し、「プラモデルのまち静岡」の精神を育んでいくものです。
その中で、これまでプラモデルに触れたこともなかった子供たちが、苦労しながらも、諦めず、自分で一生懸命完成させたプラモデルを、高く掲げ大喜びしている姿を見ることができます。このように、ものを作り上げる達成感を味わえることがプラモデルの大きな魅力ではないかと思います!テレビゲームやスマホゲームが人気の昨今において、こういった機会はますます貴重なものとなっているのではと感じます。
プラモデル化計画の目指すゴールとは?
古から培われた先人の「ものづくり精神」が、この「模型の世界首都・静岡」を築き上げ、今日のものづくり産業の発展につながっています。「静岡市プラモデル化計画」では、そのものづくり精神をさらに磨き上げ、より一層、求心力のある「模型の世界首都・静岡」を実現し、街を活性化させ、次世代につなげていくことを目指しています。
かつては国際競争力でも優位に立ち、日本経済をけん引してきたものづくり産業は成熟期を迎え、今では若者のものづくり離れ、人材不足、後継者不足等が顕在化しています。そのような中、プラモデルを通して、我が国を支える若者に対し、ものづくりの楽しさ・素晴らしさ・魅力を伝えるとともに将来のキャリア即ち「生き方」の一つとして考えていただく、きっかけを提供していきます。
そして、静岡市プラモデル化計画を推進することにより、本市のものづくりの象徴であるプラモデル産業を核として、様々なものづくり産業の活性化につなげていきたいです。それに向け、まずは、市内外の皆様が「静岡ってプラモデルのまちでしょ」と連想できるよう「静岡市=プラモデル」の意識を醸成していきます。この取り組みは、行政だけでは到底成り立つものではありません。住民、企業、教育など市内外の皆様の協力なしには進むことのできない事業です。
この記事が、プラモデルを通じた、静岡市と皆様と新たな関係の始まりになるきっかけに少しでもなれば幸いです。ぜひ一緒に「静岡市プラモデル化計画」を進めていきましょう!
宮澤さん貴重なお話ありがとうございました!筆者はこれまでプラモデルに触ってきたことはありませんでしたがお話を伺う内にどんどんと興味が湧いていき、今度実際にプラモデルを作ってみようと思いました!また私たち市民もプロジェクトに参加して一緒に街を作り上げていくというシティプロモーション面白いですね。これからどんなモニュメントが出来て、コラボがあるのかとても楽しみです!静岡市を訪れた際はプラモニュメントを見て、ワクワク、ドキドキしてみてくださいね!