切手のデザインって誰がしているの? Vol.2

前回に引き続き、星山さんにお話を聞かせて頂いた。
今回は作品に関して、色々と教えてもらうことができた。

 

子どもの頃からイラストやデザインに興味があったんですか?

絵を描くのは好きでしたね。
小学生の頃までは獣医になりたいと思ってました。中学に入って、獣医になるには理数系に進まなければいけないという事実を知って、あ、私には無理だって気づきました。
その瞬間からイラストレーターになろうって切り替えたんです(笑)
最初は漫画家も選択肢にあったんですけど、話が書けないなって(笑)
現実を見て、とりあえず美大に行ってみよう、美大に行ってイラストレーターになろうって感じです。

星山さんの作品

就職はどのように考えられてたんですか?

はじめからどこかの企業に就職しようって考えていて、個人でやろうとは考えてなかったんです。
就職活動中に、たまたま切手デザイナーの募集があったんです。大学の掲示板に募集要項が貼ってあるのを見かけて、こんな仕事あったんだーって。半信半疑で受けたのがきっかけでした。なので、偶然です(笑)
大学から推薦枠をもらうために、ポートフォリオを提出して推薦枠をもらいました。
ポートフォリオを作っておいたのが役に立ったので、何かしらの形で作品はまとめておくと良いですね。

キャリアを築き上げられ、入社を希望されるクリエイターの作品を見られる機会もあると思いますが、作品を見ているポイントを教えて頂けますか?

ありふれたものだと目に留まりにくいですね。
作品はたくさん豊かにあった方が印象に残りやすいです。
たまに、すごく個性的なものもあったりしますけど、そういうのは逆の意味で印象に残りますね(笑)
作品の豊富さだけでなくページのレイアウトなどにセンスは感じ取れます。
ただし、小綺麗なだけで内容が薄いな、物足りないな、もっと見たいなっていうのはあったりしますね。
ある程度いろんな面が見られる、こんなことができますっていうのが良いですね。

切手デザイナーを目指そうと思うと、色々できた方が良いのでしょうか?
それとも、何か1つのことを徹底してやっている方が良いでしょうか?

両方ですね。
何か一つ得意なことがあるというのは、すごい強みになると思います。
私はこういうことが得意っていうキャラクターや個性があると印象に残りやすい。
なんでもできますというのも、それは個性でアリだと思います。
私はどちらかというと、手広くやっている人間なので、それはそれで、『そういう人』という感じで見られるようになってきました。
いつもおかしなことやっている変人というキャラクターは後からついてきましたね(笑)

星山さんの作品

作品について、教えていただけますか?

好きなのは、写実的に描くことなんです。
アクリル絵の具を使って描くことが多いですね。
でも、間に合わない時はPC上で描いています。

星山さんの作業スペース。

入社したときはPCは全然使えなかったんですけど、必要に迫られて覚えましたね。
Illustratorもイチから独学で覚えたんですけど、今では自由に描けるようになりました。
人は追い込まれて必死になった時に成長しますね。
シリーズを立ち上げるときは、監修者を探して、教えてもらいながらやることがほとんどです。
なので、外部とのやりとりも学ぶし、新しい知識も頂く。大変ですが、すごく有難くて楽しいことですね。
研究者や専門家ですと、普通ではお会いすることも講義を受けることもないので、全てが自分の肥やしになっていきます。

東京駅の近くにある商業施設KITTEでは、デザイナーたちが手がけた切手を購入できる。

貴重な作品とお話、ありがとうございました。
最後に、クリエイターを目指している皆さんへメッセージをお願いできますか。

やはり作品を作ること、ポートフォリオを作ることは将来的に役に立つと思います。
そして、いろんなジャンルを知る、勉強って大事ですね。
何がきっかけで世界が広がるか分からないので、興味を持ったことをどんどん調べて、行動すること。
頭で知った気になってることって、結構分かってないんですよ。
行ってみて、本物を見てみて、全然違うことがあるんで、ぜひ行動してみてください。

 

数年前、お寿司の切手を描いたことがあります。
お寿司なんて見慣れているし、普通に描いたつもりだったんですが、君は本物のお寿司を食べたことないんじゃないかって笑われて・・・。その時に汗が出ましたね。
そうだ、ネットで調べて、自分はお寿司を知っている、分かっているつもりになっていたけど、どうしてこの作品のために自分でお金を払って、寿司屋に行ってお寿司を確認しなかったんだろうって、すごく恥ずかしくなって・・・
この切手を寿司職人に見せたらすごく恥ずかしい。何でこんな恥ずかしいと思う作品をつくっちゃったんだろうと、思い知ったことあります。
知った気になってはダメ。
行動して気づくことはあるんですね。また気づく目を持たなきゃいけないと思います。

 

星山理佳(ほしやま あやか)
東京造形大学卒業後、郵政省(現・日本郵便株式会社)に入社。
和の食文化シリーズ・星座シリーズ・世界遺産シリーズなど、数多くの切手のデザインを手掛ける。
年賀はがきの切手部分に描かれている干支のイラストは、粋な演出として大きな反響を呼んだ。

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