RAW現像のポイント・24のキーワード〈第3回〉

カラーマネージメントと並んで、多くのフォトグラファーから「難しい」「苦手」「自信がない」という声を聞くRAW現像について考えてみます。
なるべくわかりやすくするために、24のキーワードをもとに進めていくことにします。一度通して読んでみても良いですし、実際にRAW現像を進めながら読んでも良いと思います。
皆様のRAW現像にとって何かのヒントになれば嬉しいです。

今回は第3回になります。第1回からご覧ください。


 

13. 全体的なコントラストと部分的なコントラスト

コントラストは、全体的なものと部分的なものを分けて考えましょう。まずは全体のコントラストを決めて、後から部分的なコントラストを決めます。

例えば、天気の良い日の屋外の写真で、明暗をはっきりさせて硬調にしたいけれど、日陰になっている部分のディテールは見せたいという場合。暗部のディテールを基準に全体のコントラストを決めると(左下)、どうしても軟調になってしまいます。そこで、全体は硬調にしておき、暗部のみ露出を高めてディテールを出します(右上)。これが部分的なコントラストのコントロールです。

部分的なコントラストから調整を始めると、全体のバランスが取りにくくなって、何箇所も部分的な調整をすることになり、収拾がつかなくなってしまいます。

14. ホワイトバランスとは何か

ホワイトバランスとは、画面内にあるグレーをグレーだと覚え込ませる設定、無彩色の被写体が無彩色になるように設定するもの、という理解が一般的でしょうか。正確に言うとすれば、撮影時の照明特性をセットすることで、求める色味を表現できるようにする機能です。

仕組みとしてはこの図(xy色度図)のようになっていて、アンバー~ブルーと、マゼンタ~グリーンの2軸の組み合わせで、撮影時の照明がどんな色をしているかを設定するものです。

大切なのは、この設定は画面全体に適用されるということです。つまり、画面内に複数の色味の光が混ざっていると、どれかにホワイトバランスを合わせるとどれかは合わなくなる=色が被るということです。例えば、電球で照らされた部屋に置いてあるテレビは、写真では真っ青に写ります。肉眼ではそこまでの色の差に見えていないのに、写真だとかなり強調されて見えます。カメラは色の差をそれだけ感じ取っているということ。ミックス光を避けた方がいいのはそういう理由です(逆にその特性を効果的に利用して、ミックス光によるライティングを行う場合もあり得ます)。

なお、ブラシなどで部分的にパラメーターを適用できるソフトであれば、その機能で特定の範囲のみホワイトバランスを変えることはできますが、ミックス光による色被り範囲だけきれいにマスクすることは簡単ではありません。

このホワイトバランスの設定と、忠実色・記憶色の区別には重要な関係があります。忠実色が必要な場合は、被写体の色を複写するのですから、ホワイトバランスは厳密に設定する必要があります。少しでもズレると全体のカラーバランスがズレて、被写体の色と異なってしまいます。一方記憶色を求める場合、ホワイトバランスはある程度「演出」の効果を帯びたものになってきます。アンバー(暖色)方向の写真は暖かみを感じさせ、ブルー(寒色)方向になれば冷たさを感じさせます。カラーバランスは写真の雰囲気を左右するのです。一般的には、温度を感じさせたい人物や料理といったものは暖色に転ぶ方が好ましく見え、冷たさを感じさせたい金属製品や冬景色といったものは寒色に転ぶ方が好ましく見えます。逆に、人間の冷酷さや料理の不味さを演出したいのであれば寒色に転ばせた方がよいでしょう。どんな場合でもスポイトでグレーをクリックすればよいわけではないのです。

例えばこの写真。左はオートホワイトバランスの状態で、そこからホワイトバランスをブルー系に振ったものが右上、アンバー系に振ったものが右下です。ブルー系になると寒そうな雰囲気、アンバー系になると夕方のような雰囲気になっています。

15. 視線の誘導を考える

明るいとか暗いとか、硬調だとか軟調だとか、そういった評価はわりと簡単にできると思いますが、その先が難しいかもしれません。そのときの一つの判断基準として、「視線の誘導」を考えてみましょう。

撮影時に、露出をどう決めるか、ピントをどこに合わせるか、被写界深度はどの程度にするか、またどうフレーミングするかという判断をしているはずです。その判断は何をもとにしているのかといえば、主題ないしメインとなるモチーフを意図したように伝えることを考えたと思います。簡単に言えば、「見せたいものをちゃんと見せる」ことを考えたはずです。ここに視線の誘導の要素があります。

これはRAW現像でも大切なポイントです。主題と関係のないものに気を取られるような状態になっていないか、見せたい順番で視線が移動するようになっているか。そういったコントロールは撮影だけではやりきれないことがあります。一般的に人間は、明るいものや鮮やかなもの、人間や動物、文字や図柄といったものに目を奪われます。そんなことを考えながら、評価と設計をしてみましょう。

逆に言うと、画面内のあらゆるディテールが見えるような画づくりをすると、どこを見ればよいのか迷うような写真になります。それをあえて狙っている作品も存在しますし、意図してそういった仕上げにすることが一つの表現方法にもなり得ます。

例えば、この写真には目を引かせるポイントがいくつかあります。明るいところ、文字、人物と、赤く囲ったところに目がいくと思います。

16. 組み合わせて評価する

一枚一枚を作り上げた後に重要なのは、組み合わせて評価することです。
組写真にしたとき、ブックにしたとき、写真集としてレイアウトしたとき、展示としてレイアウトしたとき、その組み合わせや並び方によって、写真の見え方や感じ方も変わってきます。一枚で見ている状態で良いからといって、組み合わせた状態でも良いとは限りません。組み合わせた状態で、意図しない印象になっていないか、悪目立ちしている写真はないか、調和は取れているかといったところを確認します。

つまり、その組写真1セット、ブックや写真集1冊、展示1単位といったものが作品として成立しているか、という評価を行うのです。これまで説明してきた評価→設計→調整は写真1枚に対してでしたが、ここでは、作品群を1つのまとまりとして評価しながら、各写真の設計→調整を行っていくのです。

17. 一晩寝かせてみる

そしてもう一つお勧めするのは「一晩寝かす」ということです。
硬調な写真や高彩度の写真をずっと見ていると、それに慣れてきて、感覚が麻痺してきます。また、多少の色被りもずっと見ていると慣れてきます。そして、ずっと集中して作業していると、それも深夜帯などになってくると、ちょっとおかしなモードに入っていくことがあります。夜中に書いた手紙を翌朝見て恥ずかしくなるようなものです。そういうことがあるので、RAW現像やプリントをしたら、数時間置いてまた見てみるとか、一眠りしてまた見てみるのです。それでもOKと思えるか、「こんなはずじゃなかった」「これはやりすぎた」などとなるかを確認しましょう。プリントの乾燥時間を十分に取ってから評価するという意味でも有効です。

18. 撮影とRAW現像は一体

RAW現像で感じたことや調整によって修正したことは、撮影へのフィードバック材料になります。ピント位置、被写界深度、解像感、動くものの軌跡の出方など、見てすぐわかるものはもちろん、いつも現像で露出を補正しているようなら撮影時の露出の取り方を見直すとか、照明比がイメージ通りにいかないなら撮影時のライティングを見直すとか、あらゆることが考えられます。

また、どんな調整が大変で、どんな調整なら楽なのかを経験していくことで、クオリティを高めるための動作や操作を、撮影かRAW現像以降かのどちらで受け持つべきかを判断できるようになります。例えばスティルライフの撮影でよくあるのは、多灯で一発撮りにこだわって撮影するか、部分ごとにライティングしたものを後で合成するかという判断です。どちらでも最終的な仕上がりのクオリティは一定になるような場合でも、どこまでを撮影でやり、どこからをRAW現像やレタッチでやるかによって、全体の労力、時間、コストが変わってきます。それ以外にも、作品のコンセプトからその線引きの位置が決まってくることもあるでしょうし、自分のスキル、スタジオの残り時間や撮影後の納期といった条件から決まることもあるでしょう。

つまり、撮影とRAW現像は一体かつ連続したものであり、その組み合わせによって写真は完成するということです。

 

今回はここまでです。第4回につづきます。

文・芳田 賢明
イメージングディレクター/フォトグラファー
株式会社DNPメディア・アート所属、DNPグループ認定マイスター。
写真制作ディレクターとして、写真集やアート分野で活動。フォトグラファーとしては、ポートレートや都市のスナップ、舞台裏のオフショットを中心に撮影。
https://www.instagram.com/takaaki_yoshida_/

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