建築×インテリアデザイン 変わりゆく渋谷の街

生まれ変わる渋谷の街

ウィキペディアによると東京は、「都市圏の人口」として見ると堂々の世界第一位、3850万人が暮らす巨大で歴史上類をみないまさに大都市です。意外かもしれませんが、ニューヨークと比較してもおよそ2倍の規模です。そんな大都市東京の街の中でも若者が最も多く、ファッション、映画や音楽などエンターテインメントの発進場所として世界が注目する街、それが「渋谷」です。

渋谷駅周辺は、現在100年に一度と言われる大規模な再開発が進行中で、2012年から2024年にかけて、渋谷駅の相互乗り入れ、宮下公園、渋谷ヒカリエ、渋谷フクラス、スクランブルスクエア、渋谷ストリーム、桜ヶ丘地区開発など、駅周辺には新しい施設が次々誕生しています。

駅前の開発は公民連携のもと都や区の行政が利便性や安全性を追求しながら、JR東日本、東急電鉄、京王電鉄、三井不動産などの大手不動産開発会社が商業的だけでなく災害に強く、エネルギー効率なども考慮しながらまちの強みと特徴を最大限に生かし、渋谷を「日本一訪れたい街」とすることを目指して進んでいます。

そんな変わりゆく渋谷の街を、建築やインテリアデザインの視点で紹介したいと思います。

宮下パーク

宮下公園は、全長330m幅35m程の細長い土地の形状をしている。およそ70年前の1953年に1階が駐車場の空中公園としてオープンしたが、山手線沿いに原宿方面とつながる街を分断し、1990年にはホームレスが住み着くなど社会問題が発生、私もこの公園を通過するのは避けていた記憶があります。2011年には有料の公園としてフットサルコートなどの施設を民間企業が運営していました。

その後東日本大震災を経て老朽化した公園をPPP(パブリックプライベートパートナーシップ)という官民連携による30年間の定期借地権として公園の建て替えを行うことが決まり、2017年(平成29年)から始まったPark-PFI制度を活用し、公募型プロポーザル(渋谷区が提案を求める)の結果、三井不動産が事業者となりました。

2011年に再整備を終えてリニューアルした公園は、駐車場、飲食店や物販店、ホテル、スポーツ施設などが入る渋谷を象徴する複合型商業施設に生まれ変わりました。

渋谷駅から道路を挟んで入口を見渡すと、一般的なビルのエントランスとは違う、階段、エスカレーター、エレベーターが立体的に見渡せ、奥行き感もありながらスムーズな動線が確保されている。建物の中に入るというよりは、三層の室内でも、屋外でもない中間の場所を通るような感覚だ。この商業施設部分は「RAYARD MIYASHITA PARK(レイヤード ミヤシタパーク)」「重なった」という意味をする名前がつけられている。

この手法は商業施設としてテナントを誘致する際、人目につきやすい場所だけでなく、奥まって人が入りにくい、上に行くほど人が少なくなりがちといったネガティブな面を回避できるだけでなく、利用者が楽しく自由に上下階に移動できる利点もある。

渋谷駅側エントランスの右側一階には「渋谷横丁」という日本全国のソウルフードとエンターテイメントが楽しめる19店の飲食店が並ぶ、フードコートのように分断されていない、ひと続きの飲食街となって賑わっている。ここは人気の「○〇横丁」をあちこちに手がける飲食店プロデューサーによるものだ。

少し話はそれるが、店舗デザインの分野に関わらず、音楽やアートの分野でも「プロデューサー」や「ディレクター」といった仕事が増えている。「プロデューサー」とは、企画と立案を行い、「ディレクター」は製作や指揮をとるといった立場だ。「デザイナー」の上位概念のようにも思えるが、分業化が進んだ現代では、ハリウッド的手法と言われ、漫画家は漫画を描き、脚本家がストーリを書くことは当たり前になっている。デザインを勉強して自分は何が得意なのか、進む道を探してみるのも面白い。

文・角 範昭
専門学校日本デザイナー学院90年卒。97年有限会社空デザイン開業。
小さな街の飲食店から大型フィットネスクラブまで現在までに1300店舗以上を手掛ける。

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