デイヴィッド・ホックニーの大型個展が開催中!

現代を代表する画家、デイヴィッド・ホックニーの大規模個展「デイヴィッド・ホックニー展」が7月15日(土)より東京都現代美術館で開催されている。
86歳である現在も画業に打ち込んでいるホックニーの作品は、親しみやすく目を惹かれるモチーフが多く、あらゆる世代を魅了している。
今回はアート界におけるホックニーの功績とともに、本展覧会の見どころを紹介していく。

<デイヴィッド・ホックニー プロフィール>
1937年イギリス・ブラッドフォード生まれ。ロンドンの王立美術学校在学中に脚光を浴びる。1960年代以降、従来の表現の枠に囚われない多彩な作品を発表し続けている。現在はフランスのノルマンディーを拠点に、精力的に制作に打ち込んでいる。

ホックニー展は、日本では27年ぶりの大規模個展となる。初期の代表作から、00年代以降の作品、近年のiPadで制作された作品など、彼がこれまで制作した120点余の作品を時系列で一挙に楽しむことができる。

キャリア初期は1960年。彼が最初に主題にしたのは、当時違法とされていた同性愛や、自己の内面の告白といったものだった。ひとつのキャンバス上で、複数の作風・テイストを織り交ぜて表現するのも初期の彼の作品の特徴でもある。
以降、独特な構図や新しい表現手法を常に探求していくのだが、初期からその片鱗がしっかりと現れている。

1960年代末からは家族や恋人・友人など、身近なふたりの人物を題材に描いた「ダブル・ポートレート」の制作を始める。
人物の表情や仕草の空気感、また屋内での壁や家具の配置・質感、全体的な構図やバランスにおいて絵画の完成度が高く、ホックニーの画家としての技量が感じられるシリーズだ。

https://twitter.com/hockney2023/status/1702195812569395308

一方で、自然主義的に、目に見えるままに描くとかえって迫真性が失われてしまうということにも気づいた彼は、次第に行き詰まりも感じるようになる。
そこで、新しい技法を取り入れたり、舞台芸術や映像といった総合芸術の領域で仕事に打ち込みながら、別領域で得た発見を絵画表現に取り入れていく。

大きなターニングポイントとなったのが、1980年代の鑑賞者を起点に画面が広がる「逆遠近法」を取り入れた作品を制作したことだ。
京都の龍安寺で写真を100枚以上連続的に貼り合わせたフォト・コラージュなど、鑑賞する上での従来的な視点を脱構築していった。以降、絵画の常識を疑い、新しい作品を提示する、といった革新的な試みにも挑戦していく。
当時の最新技術を取り入れた作品制作にも積極的だったことも、画家として先進的だ。80-90年代はコピー機やファックス、00-10年代はフォトグラメトリによる3DCG制作の活用や、カメラを用いた映像技術の開発など、新たな表現手法を実現してきた。

キャリア後期の代表作が、大判のキャンバスに描かれるイギリスのヨークシャーの風景画だ。戸外制作とデジタル技術を組み合わせて、四季の移り変わりの美しさや、自然風景の力強さ、繊細さの再現を様々な表現で行っている。
既存の視点に囚われない挑戦を続けてきたホックニーが、ヨークシャーの風景画では、複数のキャンバスを組み合わせて制作している。

展示会場の終盤の見どころは、ホックニーがコロナ禍で制作を行った最新作。
iPadを使って描いたノルマンディーの1年の風景220点から、四季が流れるように再構成し、絵巻物のように全長90メートルの横長につなげたものだ。
繊細で雄大な自然に対する情景をiPadで描くことで、大きな作品だが柔らかく大胆なタッチが特徴的だ。これまでのホックニー作品の印象とはまた異なる印象を与え、60年余りの画業で常に「見ること」と「描くこと」を探求してきた彼が、今も私たちに新しい絵画の可能性を提示していることがよくわかる作品だ。

色鮮やかでありながら、品のあるホックニー作品。
本展覧会オリジナルのグッズや図録もスタイリッシュでおすすめなので、会場にぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。詳細は公式サイトより確認してみてほしい。

 

展示概要

デイヴィッド・ホックニー展

会期:2023年7月15日(土)~11月5日(日)
休館日:月曜日(7/17、9/18、10/9は開館)、7/18、9/19、10/10
開館時間:10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
会場:東京都現代美術館 企画展示室 1F/3F
HP:https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/hockney/index.html

※トップ画像:公式HPスクリーンショット

文:ライター中尾

 

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