【サイアノタイプ】写真の「古典技法」は現在進行形。

書店で何気なく本を眺めていたところ、一冊の雑誌に目が留まった。
『Sb SKATEBOARD JOURNAL』。スケートボードカルチャーの専門誌だった。


その表紙は青の色彩で統一されたスケートボードの写真。
一目見てわかるこの特徴的な表現は「サイアノタイプ」と呼ばる古典技法によるものだ。
スケートボード×サイアノタイプという斬新な組み合わせに衝撃を受け、思わず本を手に取った。
この表紙の写真はKevin Metallierというフランスのフォトグラファーによる作品で、中にはグラビアで数ページに渡ってサイアノタイプで制作されたスケートボードの写真が並んでいた。
スケートボードというスポーツが魅せる浮遊感・解放感とサイアノタイプ特有の濃い青の色彩が妙にマッチしていてかっこいい、と素直に思った。
スケートボードとは全く縁がない筆者だが、このサイアノタイプの写真によってその魅力に引き込まれてしまった。
「良い写真とは何か?」といった疑問は尽きることが無いが、こうした出会いや気付きを与えてくれる写真は「良い写真」の一つと言えるのではと思う。

 

サイアノタイプとは?

サイアノタイプは写真の古典技法の一種で、「日光写真」「青写真」とも呼ばれる。
将来のことを考えたり計画を立てたりすることを「青写真を描く」と言うことがあるが、これはサイアノタイプが機械や建築図面の複写に用いられてきたことに由来する。
薬品さえ揃えば暗室不要で制作できるため、気軽に試すことができる古典技法である。

サイアノタイプ制作に用いる薬品。写真用品を扱うお店やインターネットで購入できる。

感光材を塗布した印画紙にネガを重ね、太陽の下で露光することでプリントを制作する。
ネガとして用いるのは現像されたモノクロネガフィルムの他、デジタル写真をOHPシート等の透過素材に印刷した通称「デジタルネガ」でも制作できる。
デジタル技術の成熟により、こうして古典技法の制作が容易になったのは様々な表現に挑戦する機会が増えて喜ばしいことである。

デジタルカメラで撮影した写真を白黒反転させてプリントした「デジタルネガ」。

 

世界のフォトグラファーも日々様々な表現に挑戦している

スケートボードをサイアノタイプで表現するKevin Metallierというフォトグラファーについて、こちらの記事で詳しく知ることができるのでご紹介したい。

またKevin Metallier氏のホームページに行くとスケートボードやサーフィン、ポートレートなど、様々な写真表現に挑戦していることがうかがえる。
写真表現で悩んでいる人は、ぜひこうしたフォトグラファーの作品を参考にしてみてはいかがだろうか。

Kevin Metallier氏のホームページ
https://www.kevinmetallier.com/

 

写真が登場してから現在まで、様々な技術・表現が生まれてきた。
サイアノタイプも「古典」と呼ばれてはいるが、表現技法の一つとして現役で用いられている。
デジタル写真やスケートボードといった現行の文化と、こうした古典技法の組み合わせによる面白い化学変化はまだまだ無数に存在するのではと思う。

いろいろなところに写真の可能性が隠されている、そういった面白さにあらためて気づかされた。

文・写真 : PicoN!編集部 黒田

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