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「人生、ロケハン」フォトグラファー・カクユウシが “旅” と “散歩” を重視する理由とは? – NPI卒業生に会いに行こう!

クリエイティブ業界で活躍するNDS&NPIの卒業生にインタビューしてきました!

第3回目は、
日本写真芸術専門学校(以下、NPI)を卒業され、現在、株式会社アマナにてフォトグラファーとしてご活躍されているカクユウシさんにお話しを伺いました。


株式会社 アマナ

東京都・品川区に本社をおく業界最大手の広告ビジュアル制作会社

 

自己紹介をお願いいたします。

カク:2022年3月にⅠ部(昼間部)2年制写真科を卒業したカクユウシと申します。台湾出身で、母国でグラフィックデザイナーとして働いていたのですが、写真が好きで、2019年に来日しました。

カクさんのポートフォリオはこちら

現在のお仕事の内容を教えてください。

カク:現在、株式会社アマナという広告制作会社でフォトグラファーをしています。クライアントの要望にどのようにアプローチしていくか考えてビジュアル作りをするのが仕事です。撮影した写真は広告に使用され、新聞やWEBサイトなどに掲載されています。撮影は、ロケーション、スタジオどちらもあります。スケジュールの都合上、背景はロケーション撮影をして、モデルさんはスタジオで撮影し、後にレタッチャーに合成してもらって1つのビジュアルを制作する事もあります。アマナにはレタッチの専門部署もあります。

お仕事をする上で、日頃から心がけている事はありますか?

カク:クライアントの意向に沿ったビジュアル制作をするには、常に新しい事をインプットしなければいけないと考えていて、仕事以外にもたくさん写真を撮っています。旅行が好きで、“人生ロケハン”ということで、いろいろな所に出掛けて撮影しています。きれいな光が分からないと、スタジオの中でどう頑張ってもその光は作れないので、そのデータ収集というか、目を鍛えるというか、感動した瞬間を外でたくさん見つける作業をしています。

クライアントから、「こういう写真を撮りたいです。」と言われた時に、インプットした中から、イメージに最適の瞬間を引っ張り出して、それを元に作っていく。「朝の光みたいな光を作りたい。」と言われた時に、朝のきれいな光が見たことない人は撮れないじゃないですか。外ロケに行ったとしても、スタジオの中で作ったとしても、それが分からないと作れない。撮影スケジュールはタイトな事も多く、案件が舞い込んできてからイメージに最適になるものを探す作業をするのは遅い。というか、良いものが出ないんですよね。

1年間かけて毎朝撮影した中で選んだ1番素晴らしい朝と、今から3日間の中で見つけた1番良い朝のクオリティはやっぱり違うんですよ。インプットを兼ねて、旅行したり、こういうお店、物の捉え方が好きだなぁと感じたものを、「なんで好きなのか」具体的に分析して、また、仕事に落とし込んで。仕事で感じたものを、次の作品の中で一つの課題として、また作品に取り組むという循環をしています。

息抜きが“本気の息抜き”というか、リフレッシュにもなるし、刺激になるんですね。

カク:今住んでいる最寄り駅の始発がとんでもなく早いんですよ。4時26分発。ほぼ夜です。その電車に乗って誰かが住んでいる場所を訪れて、散歩して、写真撮って帰って寝るっていうのは、仕事の無い時にやっています。いわゆるメイクじゃなくて、テイクの写真をやりたいという思いで、朝出かけて、知り合い、知り合いの知り合い、知り合いの知り合いの知り合いみたいな人たちを寝起きの状態で撮影するシリーズもまとめています。どこに出すのかもまだ決まっていません。朝は考えられないんですよ。眠くて。考えて写真を撮ることができないんです。なのでおのずと感覚的なものが多くなってきます。仕事での撮影は、構図を作るとか、頭を使う事が多くて、そういうところからも解放されて、ヘアメイクさん、スタイリストさんもいないし、普通に友達なので、それをひたすら撮っているというひとときが俗に言う「写真にしかできないこと」だなと。この朝のワークがとても大事で。この世界ってすごく複雑で綺麗じゃないんですよ。いろんなものが干渉し合って、ノイズが写っているからこそ、写真にリアリティーが生じるというか。でも、普段仕事の物撮りで特にそうなんですけれども、いわゆるノイズをあえて消すCG撮影が多いんですよ。こうゆうのばっかりやっているとリアリティがなくなってくんですよ、写真家として。朝のワークをしているからこそ、写っているロケ地も1発でわかります。

“旅”の他にも、どんなものをインプットしていますか?

カク:音楽が好きなので、レコードを聴いて、音の世界観をビジュアルに落とし込むとどうなるかという実験をしています。視覚になっていない、歌詞や音を表現する。音楽を借りて自分の作品をまとめるみたいなことをやっています。好きなミュージシャンがいて、その世界観をまとめていると、不思議と、自分の写真と一致している瞬間があって。
好きなものを見つけた方がいいと思うんですね。写真以外のものでも。

作品制作のお話をもっと教えてください。

カク:作品を作るためにライトボックスを購入して、家のベッドを全部動かして設置して、光はこんな感じで、これぐらいは影ができるとか、家の中であれこれ観察しながらビジュアルに落とし込む。だから馴染む。見たことないものは作れないので、これを作るには1回見なきゃいけないので、同じような形のものを1個買ってイメージを膨らませます。

在学中に、写真新世紀*を受賞されていましたよね。その時のお話を伺いたいです。

*「写真新世紀」は、写真表現の可能性に挑戦する新人写真家の発掘・育成・支援を目的としたキヤノンの文化支援プロジェクトです。1991年のスタートから2021年の公募終了までの30年間、作品サイズや形式、年齢、国籍などを問わない、公募形式によるコンテストを実施していました。

カク:まだ写真作家になるかどうかも決まっていなくて、ひたすら風景写真を撮影している時期がありました。3~4年間旅行の時に撮影したり、日常生活の中で撮影したものをもう一度セレクトからやり直してまとめて作ったものなので、いつ撮ったのか覚えていない写真が多いです。ずっと撮ってた写真をまとめて1つの作品にしたという感じです。コロナ禍に時間ができて写真を見直そうと思って、何千枚という風景写真を、全部見直して、まとめました。それを2020年に写真新世紀に応募したといういきさつです。台湾で撮影した写真もあれば日本で撮影した写真もありましたね。物理的に立ち止まざるを得ない時期でもあったので、ゆっくり見つめ直す作業ができました。

「写真の中の空白」その何か観測できないものは存在するかって哲学実験みたいなものをテーマにして作った作品です。それをビジュアライズしていく。どこでもドアという捉え方をされてて面白かったです。

来日当初から、広告写真の道に進む事は決められていたんですか?

カク:来日当初は、写真作家になりたいと思って、大学院の試験を受けたんですが、
受かったものの、広告写真の仕事を諦めきれなくて、広告写真を仕事にするなら、大学院に行くよりも、専門学校に入学した方がよいと思いました。たまたま、恵比寿から渋谷まで散歩していた時に、NPIの前を通ったんですよ。写真の専門学校あるなあと思って、それがきっかけでNPIを調べて、コロナ禍の2020年4月入学しました。広告がやりたいという明確な目標があったので、授業を受けながら、授業がない時にはスタジオを借りて作品作りをしていました。

就活はどうでしたか?

カク:2年生になってから就職活動をして、弊社のアシスタントフォトグラファー職と、もう1社の広告制作会社のアシスタントフォトグラファー職の内定を得て、アマナへ入社する事を決めました。「写真新世紀」の受賞もあり、周りからは写真作家志望に勘違いされていた時期があったので、アマナに入社しますと報告したら、NPIの先生方からは結構びっくりされたんですよ。学校の先生に。ええ??広告行くの??みたいな。
アマナに進路を決めた理由は、自分のやりたい写真ができる。と確信したからです。いわゆる自由というか、ゆるいというかクリエイターのワガママを受け入れてくれる会社がアマナだと雰囲気として、広告以外の写真のみならず、ちょっと独自の色を持つことが許される会社だなと思い、アマナに入社を決めました。

2024年10月にフォトグラファーに昇格されましたね。昇格試験の事を教えてください。

カク:昇格試験は学校にいたときとあまり変わらないんです。仕事をしながら、会社のスタジオを使って、自分の作品を作る。昇格試験は5分しかないんですよ。5分間のプレゼンテーション。人生の大事な場面は大体5分しかない。将来的になりたいフォトグラファーとしてのビジョンと、それに向けた作品をプレゼンします。試験をクリアできて、去年の10月からカメラマンに昇格できました。

日本で働くのに必要なスキルはありますか?

カク:日本語が結構大事かもしれないですね。日本語はニュアンスが多くて難しいです。現場で何か一言みたいな正しい日本語が出てこないわけです。日本語学校や専門学校では、学校の先生とか、日本語学校で勉強してる留学生の友達より、いわゆる普通の日本人と日本語をしゃべる練習はたくさんしておくに越した事はないと思います。それこそ場数が必要。写真と一緒です。写真もそうじゃないですか。日本語も使わないと成長しない。

最後に、写真の仕事を目指すみなさんへのメッセージをお願いいたします。

カク:これからも広告の仕事をしながら、自分の作品も制作して発表していきたいと思います!

カクユウシさんありがとうございました!

取材/PicoN!編集部 市村

撮影/秋山夏希

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