クリエイターのための著作権クイズ – 商品ロゴを「サンプリング」するのは合法?
作品をつくっているとき、「あれっ?これって著作権的にOKなんだっけ?」と不安になることってありますよね。クリエイターにとって、著作権に代表される知的財産権は必須の教養。正しくルールを理解していれば、安心して作品を創作できるようになるばかりか、表現の幅を広げることにもつながるはず。
さぁ、クイズ形式で楽しく、知的財産権について学んでいきましょう!
解説/志田陽子(武蔵野美術大学造形学部教授、憲法・芸術関連法研究者)
編集/編集部 佐藤
「コカコーラのロゴ」をイラスト作品に“サンプリング”したい。合法?違法?
【答え】
◎原則、合法(だが注意点あり)
【以下、志田先生の解説】
飲み物のボトルや自動車などの商品は、一般には、絵画のモチーフにしたり写真作品の中に使ったりすることが自由にできます。商品の場合、高度なデザインには意匠権、個性的なロゴには商標権があることが多く、不正競争防止法上の「模倣禁止」ルールもありますが、それらはデザインやロゴを模倣した海賊品を販売したり、販売目的で生産することを禁止するものなので、手描きの絵画や芸術写真のモチーフにすることは問題ありません。「サンプリング」の形で使うことも、法的に問題はありません。
ただ、使い方によっては特定商品や特定企業の広告のように見えてしまい、公共の美術イベントで展示するには不適切とされてしまったり、公募展で選外とされてしまうことはあり得ます。
一方で、その商品の外観が、意匠権や商標権とは別に、とくに著作権で保護されるレベルの創作性を備えているときには、それを絵画に描き込んだり写真の被写体に使ったりすることが、著作権侵害(複製権侵害など)となる場合があります。ディズニーのキャラクターや有名ゲームのキャラクターの画像や、その画像がプリントされた商品(キャラクター・グッズ)などは、この点で注意する必要があります。
ただし、ボカして抽象化した使い方であれば問題になりません。たとえば著作物性のある画像プリントのあるマグカップを写してはいるが、ボカした結果、その著作物特有の魅力は残っておらず、「何かマグカップらしきもの」というレベルに抽象化されている場合です。また、音源や画像をサンプリング使用する場合も、その楽曲や画像のもとの個性(著作物性)が感得できるレベルだと、やはり元の作品(原著作物)の著作権の問題が出てきて、許諾をとる必要が出てきます。が、もとの楽曲や画像の著作物性を感じさせないレベルまで細分化して、モザイク素材として使う、という場合には、著作権の問題はクリアできます。
なお、人物をメインにした写真の背景や小道具として、そうした物が写り込んでいる場合も、著作権法的に問題はありません。これについては著作権法・第30条の2に「写り込み」に関する規定があります。
解説/志田陽子
武蔵野美術大学造形学部教授。憲法・芸術関連法研究者。憲法の分野では、表現の自由、多文化社会、ジェンダーの問題を追求。芸術関連法の分野では、研究者であると同時に教育者としても活動。表現の自由や著作権法に関心のあるアートを学ぶ学生たちのために、法教育の内容や在り方について研究を重ねてきた。著書に『表現者のための憲法入門(武蔵野美術大学出版局,2024年)、『文化戦争と憲法理論--アイデンティティの相剋と模索--』(法律文化社,2006年)など。
※情報は公開時時点のものです。
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