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ちゃんみな vs NENEのBEEF考 ― クリエイティブ圏外漢のクリエイティビティを感じる何か…〈vol.41〉

おはようございます。こんにちは。こんばんは。

この記事がアップされている頃には参議院選挙の投票結果も出ている頃かと思いますが、皆様は投票に行かれたでしょうか?

この記事を書いている時点では投票結果はわからないですが、選挙戦が近年のアテンションエコノミー※を象徴するような、各候補者と支持者(ファンダム)が「喧嘩」のようなコミュニケーションをオン/オフラインで展開しており、選挙の位相の変化を感じました。

※編注)アテンションエコノミー……昨今の情報化社会において、人々の注意(アテンション)を惹きつけることをベースとする経済活動のこと。たとえば話題性の高いコンテンツによってYoutubeの再生回数を稼ぐことなど。

政治だけでなく社会全体が、そのアテンションエコノミーによる位相の変化を奇々怪々『なぜ喧嘩ばかりが流行るのか』では見事にTaiTan氏が見事に表現していたかと思います。

そんな「喧嘩」が流行る社会ですが音楽で「喧嘩」と言って思い浮かべるのはヒップホップにおけるBEEF※。

※編注)BEEF……ヒップホップ用語で、ラッパー同士が楽曲等を通じて互いを批判・攻撃・挑発し合うカルチャーのこと。Beefという言葉は、ウェンディーズ社のCMが他社のハンバーガーの肉の小ささを「肉はどこ?(Where’s the beef?)」と揶揄したことに由来する。

そして記事公開時には収束しているかもしれないが日本で直近に起こったNENEのちゃんみなに対するBEEFとそれにまつわる楽曲に関してご紹介します。

そもそも「NENE」「ちゃんみな」とは?

ことの発端となったちゃんみなとNENEについて、簡単なプロフィールは下記の通り。

ちゃんみな
トリリンガル・ラッパー/シンガー。
デビュー後、過激なリリックとポップセンスでヒットを連発。ドラマ主題歌や大型フェス出演も多く、若年層を熱狂させる Z 世代アイコン。近年SKY-HIが代表を務めるBMSG主催のガールズグループオーディションのプロデューサーとなりHANAを生み出した。

NENE
ゆるふわギャングのメンバーでありソロでも活躍する女性ラッパー。
アンダーグラウンドシーンで支持を集め、ヒップホップ以外にもレイヴカルチャーにも接続しケミカルブラザーズの客演でも注目。社会風刺メッセージとファッションセンスが光り、自主レーベルで創作を完結するDIY精神。今回のBEEFはNENEが突如「OWARI」から始まった……

今回のBEEFの概要

25年6月20日 NENE がディストラック「OWARI」を公開。ちゃんみな・SKY-HI・HANA・BMSGを名指しで痛烈批判。

発端は自身のアイデアやスタイルを無断利用されたとの憤りと、HIPHOP VS POPSの価値観衝突にあるとされる。

NENEは楽曲とMVで「電話しろよちゃんみな」など挑発的リリックを放ち、“音で返す” 勝負を要求。

一方、ちゃんみなはInstagramライブで「関係ないと思う」と述べ応戦を回避。ちゃみなが応戦に答えない中でSKY-HIが即興ラップで穏当なアンサーを示した。

NENEは「お前じゃないんだよな」とXで投稿。その後に2曲目のディス曲「HAJIMARI」をリリース。

論争が拡散する中、歌代ニーナが6月26日に「Mood Board」を公開し「コンセプトを盗まれた」とNENEを批判、さらに7月2日に「mood:bored」で追撃し第三勢力として介入 。

時系列としては下記(7/13現在)

日付 (2025) 主な出来事 発信者
6 月 20 日 ディストラック 「OWARI」を公開し BEEF 勃発 NENE
6 月 23 日 アンサー 「0623 FreeStyle」 を公開 SKY-HI
6 月 23 日 ちゃんみなが Instagram Live で「関係ないと思う」とコメント ちゃんみな
6 月 26 日 歌代ニーナ が告発曲「Mood Board」 を投稿し参戦 歌代ニーナ
6 月 29 日 NENE がディス第2弾 「HAJIMARI」 を公開 NENE
7 月 2 日 歌代ニーナが追撃曲 「mood:bored」 を発表 歌代ニーナ
7 月 3 日 GUESS JAPAN イベントでNENE が「OWARI」初ライブ披露 NENE
7 月 8 日 NENE が block.fm『INSIDE OUT #689』にゲスト出演しBEEFの真意を語る NENE

今回のBEEFのディス/アンサー曲について

それぞれの楽曲について立場や好みで様々な意見が語られている。わたしはどちらにも肩入れしていないながら、音楽が好きでヒップホップも数十年聴いている立場としては、SKY-HIというプレイングマネージャーのプレイヤーとしての側面を見れたこと、そして歌代ニーナという才能を発見できたことが、今回のビーフでの収穫です。

OWARI/NENE

ちゃんみな、HANA、SKY-HI、BMSGへのディス曲。冒頭の「自分でリリック書いてないのに~」の部分がHIPHOP外へもバズってミーム化。

 

0623FreeStyle/SKY-HI

郷ひろみ、一網打尽、混ざりもん、ゆるふわな平和ボケ……詰将棋的に精緻な回答とHIPHOPへのリスペクトを表現したリリックで構成されるアンサーは流石の一言。

Mood Board/歌代ニーナ

NENEのOWARIがそもそも自分のこの曲やコンセプトをパクっているという告発曲。この曲で彼女の存在を知った人も多数いるのでは?

HAJIMARI/NENE

ちゃんみなに対してのディス曲から始まった今回のBEEFだったが、SKY-HIやBSMGの会社の姿勢やメジャーな音楽業界の搾取構造について論点の重心ずれる。

 

mood:bored/歌代ニーナ

冒頭「お前じゃないんだよなぁ」からのNENEが過去SNSで挙げていた写真に映っていたバッグを手放し、NENEという名前つくったビートで始まり前半は日本語でラップして、後半は英語でラップし、曲調も前後半でビートも転調。

MVも含めて今回の騒動で一番クリエイティビティの高い楽曲なのでは?と思える。しっかり「パクりネタでパクりディスはだめよ」とBEEFの最中のストレートな攻撃力も持っている。

 

しかし今回BEEFではNENEとちゃんみな周辺の対立だけでなく、BEEF話者のファクトチェックに話が及んだり、HANAとXGのファンダムの代理戦争にも使われるという多層構造が非常に現代的でした。

何はともあれ、BEEFで生まれた楽曲はそのラリーを踏まえるとセットで楽しめるので、登場するアーティストの過去曲含めてDigってみてください。

 

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