映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』森義仁 監督インタビュー~前編~
Facebookの”知り合いかも”に出てきた昔の恋人…。40を過ぎ夢も希望も消え失せて、漫然と生きているだけのボクの心に、輝いていた90年代の思い出がよみがえる。
Netflix映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』で監督を務めた森義仁さんにお話を伺いました。
『ボクたちはみんな大人になれなかった』
出演:森山未來 伊藤沙莉 東出昌大 SUMIRE 篠原篤
監督:森義仁 脚本:高田亮
原作:燃え殻『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮文庫刊)
今回の映画はすごく幅広い層から支持されているように思いましたが、監督ご自身はいかがですか?
エゴサーチもしましたが、年代まで分からなくて、ただ明確に40代にはウケてる感じはしました。特に僕の周りは映像業界のプロデューサーみたいな人が多く主役の森山未來さんが演じた佐藤って役になんとなく近い人が多かったので、普段そんなに映画を見ない人からも感情移入したと言われました。若い人にどのくらい刺さったかは、分かんないですね。すごく分かりやすいという映画ではない感じはするので。でも、制作当時の気分としてはどの世代でも見られるように作ったつもりではいました。エモいとかそういうキーワードを意識したわけではないけど、要素的には刺さる部分があると思うし、40代、30代で見るのと、20代で見るのと感覚が変わってきそうな映画だなとは思っていて、今回色々な人に見てもらえた気はするので、それは単純にありがたいし、それぞれ答えが違うのも面白いなと思います。
今回はじめての長編作品で、原作の小説を映画化していくというのは、やりづらかったこととか、おもしろかったこととかありますか?
この作品は、webから小説になって、ヒットもして、話題になっていた作品で。僕は話を頂いてから読んだんですけど単純に映像化が難しいなって思いましたね。シンプルに言うと、ストーリーラインがあまりないエッセイを繋いだような小説で、良いエピソードはいっぱいあるけど一本の映画という物語として語るのが難しいかなと思いました。絵が浮かびやすいけど、ピースにはめづらい。脚本作りが難しかったですね。小説として魅力あるし、薄い本なんですけど、読むのにすごく時間がかかったし、ページ数の割には内容の密度が濃いなっていう印象だったので何度も読み返したりして。読んでいると途中からなんとなく小説の内容と自分の思い出とがごっちゃになってくるような印象があって。
いわゆる他の小説よりも自分ゴト化みたいな度合いがちょっと強いなと。映画にするときも、その感覚がこの小説の魅力なんじゃないかなと思ったので、自分自身の話に置きかわったり、自分の思い出が蘇りやすい方法として遡り型の構成にしたんですけど、20代の頃何してたんだっけ?30代のときはああだったなって、なんとなく自分自身の話に感じてもらって、最後にそれと共に映画のメッセージを持って帰ってもらうっていうのが目標で。いかにその効果を出せるかってことを悩んで、構成や脚本作りをしました。
じっくり映画館で見てもらえる作品だったら良かったんですけど、Netflixってこともあって、いつでも観るのを止められちゃうし、ちょっと飲み込みづらい作品だったかなと思うのでそのあたりが難しいなと思いました。でもNetflix作品ってどちらかというと分かりやすいものが多いと思うので、こういう少しわかりづらいものがあるのもおもしろいなと、単純にNetflixの一視聴者として思ったので、敢えてそういうチャレンジをしましたね。(笑)原作者の燃え殻さんとも仲良くさせてもらって信頼は得ていたので、細かいディティールというよりは、大枠を説明してあとは森監督の好きなようにというような感じで言ってくれました。
キャスティングについてお話いただけますか?
僕とプロデューサーとで話して、オファーしてっていう感じです。最初は映画にしようと思ったけど、望みの予算が集めれなかったりとかを何度か繰り返してて、最終的にNetflixが良い条件で制作を決めてくれて。Netflixは森山未來さんと伊藤沙莉さんが主役でとか、僕が初監督するとかそういうことも含めて、原作の知名度も含めて乗ってくれたので、細かいことはほぼ言われなかったですね。もう少しいろんな事情でキャスティングとかしないといけないイメージがあったんですけど、すごく自由に、望み通りのキャスティングになったと思います。
森山未來さんが普通にハタチに見えたんですが、、、メイクとかですか?
いわゆる特殊メイクとかCGっていう手が最初は浮かんだんですけど、やり切れるだけの予算がなかったんですよ。(笑)でもやれることはやりたいなっていうのがあって、ご本人ともどうしたら若く見えるんだって話してて。まず美容鍼に通ってもらったり、フェイスマッサージしたりとかやったんですけど、やっぱりちょっと映像に写るほどの差ではなかったんで、でまぁ色々挙句の果てにヒアルロン酸注射を打ったんですよ、顔に。それがすごい効果が高くて!(笑)
結構海外でもCGとかやったりするけど、なんか自分的にはもはやそれよりも上手くいったんじゃないかなと思ってます。技術的なとこでいうと肌のツヤはよくできるんですよ。例えば化粧品のCMとか。でも太らせたりとか肉感の差っていうのは嘘っぽくなるので、だからヒアルロン酸の効果はすごい。森山さん本人も20代に若返って演技するっていうのは難しいというか苦しいって言ってましたけど、クランクアップした時に「ボクサーの役より大変でした」って言っていたくらいなので、彼は徹底した役作りをする人なんですけど、メンタルを昔に持ってくっていうのは、すごく難しかったみたいでした。森山さんの精神の強さとかそのストイックさとか、森山さんじゃないとできなかったんじゃないかなって思いますね。
監督から出演者の方に、演技についてかなり指示はしてたんですか?
指示というか、いろんな人が20数年間を出会ったり別れたりを繰り返したり、また再会したりとかいう話なので、単純に各々の人生とか、こういう人でこういうことで挫折したっていう、脚本にでてこない話を単純にしてたっていう感じですかね。もちろん演技的なところでいうと、そのシーンの狙いとかの話はしましたけど、すごい達者な方ばかりだったので、そんなに細かい演技について言うよりは、今回はその話す方が大事だったのかなと思いますね。結果論ですけど。
森義仁/Yoshihiro Mori
生年月日:1982(S57)年
出身地:三重県
略歴:2007(H19) 映画の助監督として経験を積んだ後、サカナクション「三日月サンセット」でディレクターデビュー。その後フリーランスディレクターとして活動
2013(H25).6 ㈱AOI Pro.入社、社内ユニット「hanare」に参加
2015(H27).4 同社企画演出部に異動
2017(H29).4 同社を退社、CluB_A所属となる
最近の作品:Netflix「ボクたちはみんな大人になれなかった」2021年全世界同時配信
テレビ東京連続ドラマ「恋のツキ」
最近の受賞:日清食品チキンラーメン INSTANT BUZZ 侍ドローン猫アイドル神業ピタゴラ閲覧注意爆速すぎる女子高生
2017 ACC全日本CMフェスティバル フィルム部門(Bカテゴリー)ブロンズ
2017 Spikes Asia 2017 Entertainment 部門 ブロンズ
取材協力:CluB_A https://club-a.aoi-pro.com/
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