Maison & Objetの舞台➀

インテリアのパリコレと称される「Maison & Objet」をご存知だろうか?
1995年にパリで生まれた、世界最高峰のインテリア&デザインの国際展示会である。
そんな「Maison & Objet」が期待の若手デザイナーを表彰する「Rising Talent Awards 2022」に選出され、現地で作品を発表された、岩元 航大先生にお話を伺い、全2回でお伝えしていく。

ー今回の作品はどのようなものでしょうか?
まず、今回パリで展示した作品は、2020年に英デザイン雑誌のwallpaperとアメリカ広葉樹輸出協会(AHEC)によるプロジェクト「Discovered」で製作した作品が元となっております。Discoveredとは、選出された世界の若手20名による木材を使った作品作りのプロジェクトで、コロナウイルス蔓延による外出規制で室内での暮らしを余儀なくされた状況からヒントを得て、各々のデザイナーが作品をデザインし、最終的にロンドンのデザインミュージアムで成果物の展示を行うことが目的でした。
私はそこで、パンデミックによりこれまでの人々の生活様式が一度壊され新たな形へと変化してゆくさまが、まるで古い樹皮を脱ぎ捨てながら木の内側から外にむかって徐々に成長する木の成長プロセスのようだと捉え、そのさまを表現したサイドテーブルのPARI PARIをデザインし昨年末にロンドンで発表しました。


ー今回の参加経緯を教えて下さい。
今回私が参加したパリのメゾン&オブジェのライジングタレントアワードとは、その年にメゾンが選定した国の若手デザイナー数名にライジングタレントアワードの賞を与え、メゾンでの展示機会を与えるものです。今年は日本が受賞対象国として選ばれ幸運にも賞をいただくことができ展示の機会を得ることができました。

ー作品について教えて下さい。
メゾンでは、昨年末に発表したpari pariを新たに発展させたものになります。厚さ1-2mm程度の薄い木の板にそれぞれ着色し、積層合板を作るように木の板を積層・圧着するのですが、板同士が接着するためのボンドが完全に乾燥する前に表面をパリパリと剥がしていくことで内側の色がランダムに表れ、まるで自然に生える木の幹のような表情が生まれます。この独自開発した素材の製法を用い、テーブルや棚の家具コレクションを制作しました。

ー作品を作られるにあたり、大変だったことを教えて下さい。
まず、これまでにない製法を一から作ることは成果物の一定のクオリティが担保できるようになり製法が確立するまでかなりの時間と労力が必要になります。PARI PARIシリーズも例外ではなく、理想的な表現を生むための適度な木の板の厚みや接着剤の種類、塗料や仕上げ材の選定など作品作りにおけるあらゆるフェーズで検証の必要がありました。

ーそんな苦労があったんですね。やりがいについても教えて頂けますか?
これまでに前例のない何か新しいものを作ることは、完成するまでに解決しなければならない課題も多く、とても根気のいる仕事です。加えて、作品を酷評されたり受け入れられない事も往々にして起きます。しかし、自分の感性に従って表現したものが自分の納得のいく純度の高い作品になったときに達成感を感じることがやりがいとなっています。また、国内外での展示会で様々なお客さんから作品を評価していただけることも励みです。

岩元先生、ありがとうございました。

 

◯プロフィール
岩元 航大
鹿児島県生まれ。2009年神戸芸術工科大学プロダクトデザイン学科入学後、デザインプロジェクト「Design Soil」に在籍し、イタリアのミラノ・サローネやフィンランドのハビターレ等、海外の展示会に多数参加。
卒業後、スイスのローザンヌに移り、Ecole cantonale d’art de Lausanne(ECAL)のMaster in Product Designに進学。
卒業後、東京を拠点に国内外の企業と製品活動を進めつつ、精力的に作品制作を行なっている。

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