のコピー-5.jpg)
後編【対談】世界ポスタートリエンナーレトヤマ2024受賞記念!デザイナー福島治先生×NDS在校生河内瑠未さん
第14回世界ポスタートリエンナーレトヤマ2024でU30+STUDENT部門で銅賞を受賞した専門学校日本デザイナー学院 総合デザイン科グラフィックデザイン専攻3年 河内瑠未さんと、2012年に日本人初のグランプリ受賞をした福島治先生の対談企画です。
今回受賞した河内さんのポスター作品「心について考える」について、制作段階でのエピソードや工夫、世界的に大きなコンペティションで受賞をした率直な気持ち、またデザイナーである福島先生の視点で感じ取った印象などについてお話をお伺いしました。
のコピー-4-120x120.jpg)
後編では福島治先生が2012年に日本人初となるグランプリ受賞の当時を振り返り、当時の作品制作時のエピソードやデザインやモノづくりをするうえで大切にされている事、コンペティションで賞を取るということ、デザイナーとしての生き方などについてお話を伺いました。
日本人史上初グランプリ受賞ポスター作品「オイディプス王」が完成するまで


これは「オイディプス王」という演劇のポスターなんです。どくろと、人間の手。血管まで写ってるリアリティのある手ですので、あえてクールに撮ることで生々しさを抑えて古臭くならないようにというのは決めていました。実際のライティングはカメラマンと十分に打ち合わせをして撮影しましたね。

私もオイディプス王のあらすじをみました。ポスターにあるドクロは、主人公の方がお父さんを殺してしまい、最終的にその方も死んでしまう、という物語からですよね。

そうです。ギリシャ悲劇で描かれている「死」と「生」の対比を感じさせるポスターにしています。ドクロも「死」に至る前にはやっぱり悲劇に苦しんでたっていうことをイメージしています。
苦しみ、悩み、思考が混乱している様子をオリジナルのタイポグラフィ―でも表現しました。

なるほど。タイポグラフィ(文字のデザイン)もオリジナルなんですね。色は紫を使われていますが、候補は他にありましたか?

劇団のスタイルや作品イメージに合わせて黄色と紫の2パターンを制作しました。好きなものを作るだけではなく、そういった視点もプロとして必要だと思います。
デザイナーにとって、コンペで受賞を目指し評価されるということ。

この「手」はどうやって作ったのですか?

これは私自身の手です。コピックという、歯の型を取ったりする素材を使用しました。毛の1本1本まで写し取れるくらい、精巧でリアリティがあるものを作ることができます。これまで足や耳、手…いろいろな型を取りましたね。
以前にとんねるずの宣伝を担当したことがあって。同じ手法で顔の型を取ろうとしましたが、固まるまでの2、3分息が続くようホースを咥えてチャレンジしてみたら、ちょっと間抜けな顔になったりして。(笑)

私もいつかやってみたいです!(笑)コンペで賞を取りたいっていう学生も多いですが、評価されるためには、いいデザインを作るためには、どんなことが大事だと思いますか?

取ると決めたら、取るまでは絶対やめないっていうこと。僕も最初トリエンナーレトヤマに挑戦し始めた時、何年もかかってやっと入選して。
嬉しくて、富山まで行って、展示されている自分の作品を見に行ったんです。ですが、たくさん飾ってある作品の中の自分の作品を見た時に、結構ショックだったんですよ。
やっぱり世界のレベルから見た時に、自分の作品は、オリジナリティやアイディアを含め、入選というかたちでしがみついているレベルなんだな、と。

なるほど…

その時に「いつか絶対賞取りたい」と決意しました。自分に何が足りないのか考え、違う方法でも挑戦してみたり。天才じゃない限り、たった1回で最高レベルまでたどり着くことは難しい。山に例えるならば、山頂に向かって自分はどういう登り方をするのがいいのか考えてみること。一直線に行ける人もいるし、自分なりにコースを開発して、ゆっくりたどり着くって人もいる。


クリエイティブって1つだけじゃないからね。でも、それを登り始めることや、途中で諦めた瞬間に絶対たどり着かなくなるわけです。諦めずに自分で努力する、つまり登り続けるっていうことをやめない。そうすると、1メートルずつでも上がっていけば、死ぬまでにはゴールにたどり着くかもしれないから。

すごく納得します。日々制作をしていますが、作って満足、ではいけないなと実感しています。どんな山の登り方をするか、ですね。
専門学校でデザインを学び、これから未来に思い描くデザイナーとしての道。

河内さんは将来的に目指していること、ありますか?どんな未来を思い描いていますか?

自分で作ったもの、デザインしたものをいろんな人に手に取ってもらって、見てもらいたいです。「どんな人が買ってくれたのかな」「どんなリアクションかな」と、その姿を自分の目で見てみたい。

素晴らしいと思います。デザインって、自分のものではなく「社会」のものなんですよ。仕事になると必ずその 依頼主、スポンサーだったりとか、その商品を作った人がいて、仕事として依頼される。
例えば広告を作ると、その広告をみたお客さんが「美味しそう」とか「これ使ってみたい」とかっていう風に、 たくさんの人がその表現を見た時に「いいね!」って感情を抱いてくれたら、それはもうプロとしていい仕事をしたことになる。

今回のポスター制作、そして受賞をきっかけに、自分の手で作る楽しさがわかりました。突き詰めていきたいな、っていう想いと、今はすこし苦手なイラストを使ったデザイン制作にも前向きにチャレンジしたいな、評価されるまでトライしてみたいなという気持ちが交差しています。苦手なことも克服しながら、自分自身がスキルアップしていきたいです。

河内さんが今後、どんな作品を制作していくのかとてもたのしみです。

先生はこれから新しくやってみたいことがありますか?

これまでずっと広告を作ってましが、今はソーシャルなアクションに100%切り替えて、 デザインというコミュニケーション手段を使って社会の問題を解決していくことに悪戦苦闘しながらも挑戦しています。
ここ数年は 本を出したり、執筆するっていうことも「伝える」ために必要だと思い、活動しています。国語が嫌いでデザイナーになったのに、なんでこんなにいっぱい書いてるのかとふと不思議になりますが。(笑)

(笑)

特に最近、大事にしているのは、可視化する、伝える、ということ。自分が作ったデザインによって、とても喜んでくださったりとか、時には涙して喜んでくださったり、感謝してくださったりっていうことを生み出せるっていうのが、やっぱりデザインという仕事につけて本当に幸せだなっていう風に思ってます。

私もこれから「デザイン」することを楽しみたいです。3年後にはまたトリエンナーレトヤマに挑戦したいなと思っています。
今回の表彰式の時、隣に専門学校日本デザイナー学院の講師である玉置先生が同じく受賞者としていらっしゃって。普段、授業を教えてもらってる尊敬する先生と、同じ舞台で隣の席に座れることができて、とても嬉しくて。

うんうん、それはコンペのすごいとこだよね。年齢も肩書も、超えていく。

はい。だから「次回もここに来たい。」みたいな気持ちが高ぶったので、これからも頑張りたいです。

素晴らしいですね。河内さんの今後が、本当に楽しみです。頑張ってください。
お二人の対談、いかがでしたでしょうか。デザイナーを目指す専門学校生の河内さんと、業界を先駆するトップデザイナー福島先生。これからデザインの分野を学ぶ方やデザイナーを目指している方にとって、等身大の「デザイン学生」がどんなアイディアを持って作品制作に向き合い、努力を重ねている姿が伺えたかと思います。
また世界的なコンペティションで日本人史上初のグランプリ受賞をした福島先生ならではの、トップクリエイターを目指すまでの道のりの大変さや面白さ、そして必要なスキルとアドバイスはとても胸に響きました。
福島先生、河内さん、ありがとうございました!お二人の今後のご活躍に胸が膨らみます。
↓PicoN!アプリインストールはこちら