イラストレーター天領寺セナさんによる「Online Live Illustration Event」レポート!

2/5(日)に、オンラインカードゲームアプリのイラスト、ライトノベルの表紙や挿絵、マンガも手掛け、多方面で活躍中のイラストレーター天領寺セナさん(日本デザイナー学院卒業)によるイラストイベントを開催。

このイベントは、マレーシアで行っている『Japan moment 日本のアートに触れる瞬間 @Tokyo Town』展示の会場で、現地の方々へ向けたライブ配信でのイベントでした。

下書き→線画→着彩のステップで描いている流れを動画を見ながら、実際にどのように描いているか、テクニックや描くうえでのポイントなど細かくお話しいただきました。(使用ソフト:ペイントツールSAI)

※ライブ配信スクリーンショットより、画像解像度が低く見づらくなっております。ご了承ください。


以下、天領寺さん

まずはラフから。
ラフは大きくシルエットを描いていきます。ラフは10分くらいで仕上げていきます。
私は大体3回くらいラフを描き直すのですが、なぜかというと、下書きからしっかり形を取っていかないと、はじめに思い描いていたイメージと仕上がりの印象に影響が出てしまうからです。

構図はどうすれば思い浮かぶのかというお悩みがあると思います。
描きたい絵のイメージがある人はいいですが、考え浮かばない方は、好きなアニメやマンガからインスピレーションを得て、自分もこういう絵を描いてみようと試してみることがいいと思います。

私はですが、絵に時間をかけてしまうと仕上げまでに時間がかかってしまうことがあります。仕事だと1ヶ月の納品で何枚も描くのでスピードが必要になってきます。なので、私の場合は3日間で1作品仕上げるようにしています。

今回はたくさんレースを使った服装の絵なのですが、ラフの段階では細かくではなく大体で進めていきます。

ラフが仕上がりましたので、服装や人物の色を設定するために仮で1回色を付けていきます。
ちゃんとした色塗りの段階ではないのになぜ1回色を付けるかというと、塗ってる時にここは何色にしようかと悩んでしまうと、まとまりのないイラストになってしまうからです。ここで自分が描きたい理想のイメージを作っていくと、最終的に思い描いたイラストに近づいてくると思います。

デジタルイラストのいいことは、簡単に色を変更して試すことができることです。いろいろ試してみるといいと思います。仮に色を置く工程は9分ほどで行っています。

今回は全体的に青い人物と黄色い花をイメージしたイラストを描きたいと思っていたので、ここでざっくりと花の配置など考えながら色を載せています。
人物と背景の色にメリハリをつけたいなと思って赤色を付けてみたりしましたが、後々描いていくうちに赤が強いなと思って変更を加えていきます。

いきなり油絵のように色から乗せる方もいると思いますが、初めたばかりの人はラフを描いて下絵を描いて色を付けるという工程を踏んだ方が上達すると思います。また、デジタルイラストが苦手だなと思う方には、絵が苦手ではなくソフトの機能を理解していないパターンが多いように思います。
ネットを見ればイラストに描き方がたくさん出てくると思うので、ツールの使い方や機能面も見てみるといいと思います。

仮色が終わったら、線画作業をしていきます。
私は、オリジナルのペンを使ったりアナログっぽいペンなどにこだわらず、ソフトにはじめからついている標準のペンを使用しています。
線画の次のステップには、細かい飾りをつけていく作業をやっていきます。CLIP STUDIOだと素材をブラシとして作れるので、飾りやレースが簡単にサーっと描けます。ただ、動きのあるレースなどの場合は素材にこだわるのではなく、全部手描きでやる方が自然になるかと思います。

実際にレースを手描きで描いて見せていただきました

線画を終えて色を付けていく段階です。
色を塗る時に別の色を付けたいところにはみ出さないために、肌は肌、服は服と可能な限り色ごとにレイヤーを分けた方がいいです。
アニメっぽい、水彩っぽいなどどんな塗り方をしようとここまでの作業は一緒です。ここまでの色分けは1時間半くらいかかっています。

いろいろなブラシで背景を埋めていきます。博物館っぽさを出したかったので、骨なんかも入れていきます。
今の流行でもありますが、密量があればあるほど見栄えが良く好かれやすいイラストかなと思います。

そして、本塗に入っていきます。まずは髪の毛から入ることが多いです。全体のクオリティを決めると言っても過言ではないくらい決め手ですね。

色を塗る時、日本では影を入れていくんですが、海外ではハイライトを入れて調整するのがスタンダードなようです。
拡大ばかりで作業をしていると全体の印象が分からなくなるので、たまに引きで見て全体を確認するようにしてくださいね。

私は「べた塗り→ぼかす」の手法で、鉛筆ツールを使ってアニメのような塗りをしてパキッとさせた後に、色をにじませて全体を塗っていきます。
先に人物の塗りが終わったら、人物全体の色味調整でPhotoshopを使います。

人物の部分だけ、明るさや色味をイメージに合うように調整していきます

戻って背景に進みます。
いろいろやってて背景は実は白の方がいいのでは?となったりしてます。試行錯誤の結果、明るめの色で落ち着きました。
はじめにラフで描いた暗めの配色も好きなのですが、より人物が目立って何が一番いいか考えて色を決定しました。

背景の色に合わせて他の小物なども色味を調整していきます。
全体の塗りで1時間40分ほどかかりました。

最後にエフェクトや装飾をしていきます。(CLIP STUDIO)鳥のブラシをお借りして全体に散らばせてみたり、キラキラを入れたりして背景を埋めていきます。
最終的に全体の明るさや光、光源など再度追加して仕上がりです。

完成とはじめのイメージです。描いているうちに結構変わりましたね。

 

私は、卒業後は毎日イラストを描いて仕事をするようになってここまで描けるようになりました。
上達には得意な分野を毎日描いて、楽しい気持ちでずっと続けていただきたいと思います。

天領寺さんが手掛けている書影

 


 

プロのイラストレーターさんが普段どうやってイラストを描いているのかはもちろん、気を付けていることやコツまで聞くことができました。イラストを描く方には、参考になることが多かったのではないかと思います。
マレーシアで視聴されていた参加者からたくさんの質問も出て、とても有意義なイベントになっていました!

天領寺セナさん、ありがとうございました!

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