ヒグチユウコ展「CIRCUS FINAL END」展示会レポ by トシダナルホ
毒っけがあってお洒落、
緻密な黒い線で描かれた不思議なひとつ目の生き物や蛸足のネコ、憂いのある表情の少女が赤い壁に映え渡っていました。
ものすごい密度で執念の具現化とも思える膨大な量の原画の数々には息を呑めば良いのか、ため息を吐けば良いのか?
まずはそんな感想。
言わずと知れた今最も活躍するイラストレーター、ヒグチユウコさんの展示「CIRCUS FINAL END」はイラスト、デザインを志す方は必ず観るべき展示だと思います。
緻密に描き込まれたイラストの素晴らしさはもちろんのこと、構成のバランス感覚はレイアウトの勉強にもなること間違いなし。
矛盾した表現になるかもしれませんが、スペースをまるで泳ぐように自由にしなやかにモチーフを並べてあるのに、仕上がりはピシッとなにもかもがバランス良く収まってる感じ。
この辺りは意識してしっかり見て欲しいところです。
そして個人的な見どころはというと、紙を上から貼ってあるアナログ原画ならではの修正の跡です。
こんなにも神業のような絵の数々の中に、直した痕跡を見つけてなんとなく安堵しつつ、本当に手で描いているんだなぁという感動を覚えました。
ぜひ注目してみてください♪
この展示を観て思い出した感覚があります。
わたしがこの専門学校(NDS)に通いはじめた頃の思い出です。
同級生の誰かが虫の図鑑を見せてくれたときのこと。虫の機能美と機能とは関係ないところまで繊細な模様や色合いに、ものづくりを意識して改めて見たときの美しさとデザイン性に感動が止まらなくなって、なんだ!どんなに頑張ったってこんなものを作った神様には絶対に敵いっこないんだからどうやってどういう心持ちでこれから絵を描いていったら良いんだろう?!とわたしはすっかり打ちのめされてしまったのでした。
今回ヒグチユウコさんの数々の作品はオリジナリティと繊細さと美しさは神様への挑戦状とも思える魅力で、わたしはまたも打ちのめされる思いになったのでした。
でも、それはオリジナリティで新たな魅力的なものを人が、人間が作りだすことができるんだ!という証拠とも捉えることができて、同時に希望とも思うことができました。
皆さんはこの展示を観たあとにどんな感想を抱くのでしょうね?
あれやこれやと感想を並べてきましたが、
竜宮城は絵にも描けない美しさ♪という浦島太郎の歌は知っていますか?
今回のヒグチユウコ展「CIRCUS FINAL END」は言葉に出来ない美しさ♪とわたしは歌いたい!
とにかく全員行ってみて!
ヒグチユウコ展「CIRCUS FINAL END」
会期/2023.2.3fri – 4.10mon
森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)
<チケット>
一般/大学生・専門学校生/前売券/1,900円 当日券/2,000円
公式HP/https://higuchiyuko-circus.jp
文・トシダナルホ
NDS講師。イラストレーター。日本デザイナー学院Ⅱ部グラフィックデザイン科卒業。在学中からフリーランスとして活動を始め、現在は『an・an』などの女性ファッション誌や情報誌、書籍、広告、Webなど多方面で活躍中。
編集:PicoN!編集部 横山