えかきー出張連載 厚塗り講座③厚塗り?グリザイユ?GtC塗り!

こんにちは!絵描き向けメディア「えかきー」のライター兼イラストレーターのニクスキーと申します。

厚塗り講座第三回目の今回は「GtC塗り」について解説をしていきます!厚塗り講座第一回目では「ベーシックな厚塗り」、第二回目では「グリザイユ画法」に関しての解説をしておりますのでまだ未見の方はこちらもどうぞ!

厚塗り講座第一回目

厚塗り講座第二回目

GtC塗り(じーとぅーしーぬり)ってどんな塗り?

工程自体はグリザイユ画法と同じグレーの陰影にレイヤーブレンドを駆使して着色するという工程がベースとなっていますが、GtC塗りではレイヤーブレンドでの着色の段階でベーシックな厚塗りのような塗り込みを行うという厚塗りとグリザイユ画法を集約したような塗り方となっています。

ベーシックな厚塗り/グリザイユ画法/GtC塗りの仕上がり比較

雰囲気自体はグリザイユに近いですが、グリザイユよりベーシックな厚塗りに近い色の塗り込みがされているのがわかるかと思います。

ちなみに今回解説するGtC塗りはグリザイユ画法を行うためのレイヤーブレンドの理解度と、厚塗りの塗り込みのセンス両方が必要とされるため厚塗りの中でも中級者以上向けとされています。ですが何事もまず真似をしてチャレンジしてみることが大事なので今回の記事をきっかけにぜひチャレンジしてみていただけたら嬉しいです。

GtC塗りのメリットデメリット

「GtC塗り」のメリットとデメリットをご紹介します。

GtC塗りのメリット

・イラスト全体の陰影をまとめて入れてしまうため濃淡のバランスがとりやすい。

・レイヤー数を絞ることで作業時間を時短できる。

・陰影を操作しやすいためダイナミックな絵作りができる。

彩度の高い厚塗りができる。

・立体を意識して塗るようになるため極めるほどに画力が上がる。

色の塗り込みを理解するととても楽しい。

GtC塗りのデメリット

グレーの陰影のバランスとオーバーレイの色選択のセンスが必要

色を塗り込むための筆運びにセンスが必要。

・陰影を表現する必要があるためクオリティを上げるためには知識が必要。

GtC塗りをやってみよう!

それでは早速GtC塗りについて解説していきたいと思います。今回は主に塗り込みの工程がキーポイントになってきますので、その点を重点的に解説したいと思います。

GtC塗りの完成形はこちら。

1.工程を見てみよう!

GtC塗りの工程は以下となります。

1.ベースを塗る

2.ベースの上に陰影をつける

3.レイヤーブレンドで全体に色をつける

4.主線の色を塗りに馴染ませる

5.色を塗り込む

6.主線の一部を描き起こす

7.ハイライトを入れる

2.実践してみよう!

2-1.ベースを塗る

2-1-1.線画を用意する。

線画は今回も第一回目、第二回と同じ線画を使って着色していきます。使用アプリは今回もPC版メディバンペイントですが、他のアプリでも実践できるかと思いますのでご安心ください。

使用ブラシ:鉛筆ブラシ https://medibangpaint.com/material/mb010111/

※皆さんもこの線画をダウンロードして色塗り練習用に使ってみてください!

2-1-2.色のベースをグレーで塗る

線画(主線)の下に新規レイヤーを追加し、キャラクターの部分のみをグレーで塗りつぶします。今回は前回のグリザイユ画法でつけたベース色よりも薄いグレーで塗っておきます。ちなみに今回はこちらのグレーをベースにしています。

画像を保存してスポイトで色を吸ってみてください。

2-2.ベースの上に陰影をつける

先ほど塗ったグレーのベースの上に陰影をつけていきます。

2-2-1.ベースの上に新規レイヤーを作ってクリッピング(※)を設定する
クリッピングとは

下のレイヤーを参照して、そのレイヤーに描かれている部分のみに線を引いたり色を塗ったりすることの出来るレイヤー機能です。ほとんどのペイントソフトにデフォルトで搭載されています。

2-2-2.ベースの薄いグレーと少し濃いめのグレーを軸に陰影をつける

今回は以下の「ベースのグレー」と「濃いめのグレー」の2色を軸に塗っていきます。

使用ブラシ①:アルコールマーカーブラシ ブラシ不透明度:100% ※メディバンペイントアプリ内で無料ダウンロードできます。

使用ブラシ②:水彩(ハードブラシ) ブラシ不透明度:20%〜100%

https://medibangpaint.com/material/mb020113/

今回塗った陰影がこちらです。

※グレーの陰影の塗り方のポイントは前回の記事を参照してみてください。

厚塗り講座第二回目のURL

また、今回はこの段階でホワイトも塗っています。

この段階で塗ることで仕上がりのイメージの解像度が上がり、少しですが時短に繋がっているのではないかなと思います。

2-3.レイヤーブレンドで全体に色をつける

まずは全体にレイヤーブレンド「乗算」で色づけをします。この工程がGtC塗りにおいて「色の下塗り」のような役割を果たします。使う色は第一回目、二回目と同じ色を使っていきます。

レイヤーをシンプルにした状態で作業を進めていきたいため、今回も色のレイヤーはフォルダにまとめて統合してしまいます。

乗算に変更するとこのような感じになります。

全体的に暗い状態で見栄えが悪いですが色の下地的な役割なのでこれでOKです。

2-4.主線の色を塗りに馴染ませる

今回は現時点で主線の色を変更して馴染ませます。色をつける手段は第一回目の「3-3.主線の色を馴染ませる」と同じですのでこちらを参照してみてくださいね。

厚塗り講座第一回目のURL

線画の色変え完了!

ほんのりですが色が変わったことで線画と塗りが馴染みました。

ちなみに主線を馴染ませるために使ったレイヤーは一つ前の工程で全体に色付けするために使用した色のレイヤーを複製したものです。

2-5.色を塗り込む

次にオーバーレイで色を塗り込んでいきます。

2-5-1.色付けしている乗算レイヤーの上に新規レイヤーを作りレイヤーブレンドを「オーバーレイ」に変更してクリッピングする

ちなみに私はグリザイユ画法やGtC塗りをする際、とにかく時短したい派なのでこの一つのレイヤーですべての部位の塗り込みをしてきます。(とにかく生産力を上げたいSNS用のらくがきなんかでは特に時短を意識してます)

2-5-2.オーバーレイのレイヤーに色を乗せていく

GtC塗りのオーバーレイでの塗り込みは各部位毎に同じ色で塗るのではなく

①明るい部分

②暗い部分

色を変更しながら塗っていきます。

ワンポイントアドバイス! - オーバーレイでの塗り込み方法 –

オーバーレイでの塗り込みの例としてキャラクターの髪の毛を塗っていきます。

 1.初めに髪の毛全体を一色で塗る

初めに一色で髪全体を塗ってしまいます。

 使用ブラシ:水彩(ハードブラシ) ブラシ不透明度:100% https://medibangpaint.com/material/mb020113/

使った色はこちら

乗算だけの時と比べて髪が一気に明るくなりました。

※説明を分かりやすくするためにあえて明るめに塗っています。

2.影の部分を塗る

今の状態ですと全体のコントラストが弱すぎて見栄えが悪いので、影となっている部分に少し濃いめの色を乗せます。

使用ブラシ:水彩(ハードブラシ) ブラシ不透明度:100% https://medibangpaint.com/material/mb020113/

影に使った色はこちら

影になっているこの部分を塗ります。

メリハリができた事により絵としてのクオリティが1段階上がりました。

3.影で使った色で明るい部分の中間色を塗る

次に影の部分に使った色を使ってベースの部分に中間の色を作ります。この工程を踏むことで情報量が上がり、厚塗り感を感じる状態になります。

使用ブラシ:水彩(ハードブラシ) ブラシ不透明度:20% https://medibangpaint.com/material/mb020113/

以下の部位を凹凸を意識しながら、固りを作りすぎずにまばらに塗るイメージで塗ります。

厚塗りらしい重厚感が出てきました。

4.ハイライトの部分をより明るくする

グレーで陰影を塗った際に作った髪のハイライトが沈み気味なので明るい色を足してより明るくしていきます。

使用ブラシ:水彩(ハードブラシ) ブラシ不透明度:100% https://medibangpaint.com/material/mb020113/

ハイライトに使った色はこちら

この部分をくっきりさせます。

ハイライトがくっきりしました。

5.影の部分にも中間色を作る

次に全体のバランスをとるために影の暗い部分にもに中間の色を作ります。このようにGtC塗りでは塗り込みをしながらバランスをみて塗りの足し引きをしていきます。

使用ブラシ:水彩(ハードブラシ) ブラシ不透明度:20% https://medibangpaint.com/material/mb020113/

影の中間色に使った色はこちら

凹凸を意識しながら以下の部位に濃い部分を追加します。

より重厚感が出てきました。

6.薄い水色で奥行きをつける

最後に薄い水色で奥行きをつけて立体感を上げていきます。

使用ブラシ:水彩(ハードブラシ) ブラシ不透明度:20% https://medibangpaint.com/material/mb020113/

奥行きに使った色はこちら

後ろ髪の部分に奥行きをつけていきます。

奥行きがついて立体感と空気感が上がりました。

さらにワンポイントアドバイス! -色がくすんだ時は陰影を調整しよう-

オーバーレイで色をのせた際に意図しないくすみが発生してしまう場合は陰影のグレーが濃すぎます。グレーの陰影も適宜薄いグレーに塗り直していきましょう。

 意図しないくすみの例

左側がくすみのない状態で右側がくすんでしまっている状態です。

グレーのじょうたいで見るとこんな感じです。

オーバーレイで重ねる色にもよりますが、このちょっとした濃淡の違いが意図しないくすみを生んでしまう場合があります。

ちなみにPC版メディバンペイントではスポイトツールのサブパネルにある「参照」を「レイヤー」に変更することで選択中のレイヤー内だけをスポイトできるようになります。

これを使うことでオーバーレイのレイヤーを表示したままでグレーの陰影を塗り直すことができます。

以上がGtC塗りの色の塗り込みの方法となります。塗り込む前と比較すると鮮やかな色のコントラストと厚塗りらしい重厚感が出たのが分かります。

そしてこの塗り方でバランス良く全体を塗り込んだものがこちらになります。

パーカーの白地部分にはピンクや水色などの差し色も入れてみました。

グリザイユ画法的な塗り方ながらこういった色の遊びができるのもGtC塗りの魅力です。型に嵌め込みすぎず、自由な発想で色を塗り込んでみましょう!

2-6.主線の一部の描き起こしなど仕上げ

最後にレイヤーの1番上に新規レイヤーを作り、第一回/第二回でも行った主線の一部の描き起こしやハイライトの塗り足しをして仕上げます。

使用ブラシ:鉛筆ブラシ 今回はこの位置を塗り足しました。

主線の描き足しとホワイトが追加された事によりメリハリが強化されました。

背景にグレーの枠を敷いて完成!

ここまで記事を読んでいただきありがとうございました!全三回の厚塗り記事は以上となります。

今回、記事を制作して改めて思いましたがやはり厚塗りって難しい…!しかし何事もまずやってみないことには始まりません。私もそうでした。記事をここまで読んでくださった今だからこそぜひチャレンジしてほしいです。

描いていくうちに自分なりのやり方が必ず見つかります。

ライター:ミートポーク・ニクスキー
新し物好きなので新しい絵の技術やお絵描きグッズを見るとすぐ飛びついてしまう習性がある某企業勤めの副業絵描きライター。繊細さんなためか気圧の変動に弱い。好きな動物は猫。実は肉より魚派。

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