夏の終わりに“心霊っぽい”写真を撮ってみたら意外と勉強になった。
「夏だし心霊写真が撮りたい。」
と安易な考えではじめた今回の企画。
例えば、あり得ないところに人の顔や手が映り込んでいる写真とか?それとも謎の白いモヤが映った写真…?
色々怖いシチュエーションを考えてはみたものの、そもそも心霊写真のような類は全部合成で出来ていると思っていた私は、なにをどうすればそんなものが撮れるのかさっぱりわからない。
そこでNPI講師の林憲治先生に、
ちょっと無理なお願いをしてみた。
先生、“心霊っぽい”写真って撮れますか?
まずはこんな私の思いつきに最後まで真剣に向きあってくれた先生に感謝をしたい。
それでは早速、
今回撮れた“心霊っぽい”写真をご覧いただこう。
私の体の一部が消えてしまっているではないか…!
最初にタネを明かしてしまうと、
どちらの写真も単純に周りの景色を鏡に反射させて、まるで体が消えてしまったように見せているだけなのだが、これには意外と難しい写真のテクニックが使われていた。
1枚目は
鏡に映った草木が浮いてしまわないように、後ろの木となるべく馴染むように、ミリ単位で何度も何度も鏡を調整した。
2枚目なんかは
カメラレンズの前に鏡を水平に置いて周りの景色を反射させ、あたかも下半身が消えたように見せているのだが、ここの角度だとこう映るとか、先生が一つずつ確認しながら丁寧に撮り進めていった。
プロの撮影風景を目の当たりにして、撮ってもらっている私はとても心が躍ったが、鏡が周りの景色に同化しやすい山の中で撮影していたのでめちゃくちゃ蚊には刺された。
ガラス張りの建物に映っているものがどこからきた光なのか考えることから、まずははじめよう。
編集部:
今回撮影をしてみていかがでしたか?
林先生:
普段こういうことはしないんだけど、実際に体を動かしながら撮影してみると、想像以上に面白いね。
編集部:
鏡を使いましたが、うまく撮るにはどういったところがポイントなのでしょうか?
林先生:
どちらの写真も入射角・反射角が大きく作用しているよね。そもそも写真を撮るときには、どこからか光が入ってきて反射する、その反射を撮影している。
例えば、街中を歩いていて、ガラス張りの建物に映っているものはどこからきた光なのかを考えることで入射角・反射角の確認ができるし、足元に水たまりがあったら必ずそこには何か映ってる。その水たまりに映っているものがどこからきているものなのか確認することでも入射角・反射角への認識がどんどん高くなっていくと思う。
光の性質を理解しておくことで
写真は上達する。
編集部:
先生の普段の撮影と今回の撮影では通ずるものってあるのでしょうか?先生が鏡を色々と動かしているのを見て、プロだなって思いました。
林先生:
今回のこの撮影とやり方は違うとはいえ、
スタジオ撮影でライトの位置を決めるときにも基本的には入射角・反射角を考えるね。
例えば、机の上に写真を1枚置いて、ライトをつけて眩しいと思ったら、ライトの位置を変える、もしくは写真の位置を変えることでそのライトが映り込まなくなる。そうすると写真が見やすくなる。
そんなことも全部同じ理屈で起こっていることなので、そういうことを普段から意識してみてください。
編集部:
なるほど、そこを意識している人とそうでない人では撮影技術においても大きく差がついてしまいそうですね。
林先生:
撮影するときに意識するかしないかはとにかく1番大切で、太陽がそこにあるから今日はこの方向じゃ撮れないとか、この時間じゃ無理とかね。
日常から光をよく見て、この場所冬は撮れないとかさ、あの場所だと朝一番に撮らなきゃだめだとかそういうことを考えているわけだよ。
そのためにも入射角・反射角とか光の性質みたいなものを理解しておくとやりやすいね。
今回みたいに遊びながらちょっと不思議な写真に挑戦すると理解も深まりやすいと思うよ。
今回撮った写真って起こっていることはすごく簡単で、言ってしまえば鏡に周りの景色が反射しているだけなんですけど、入射角・反射角というものが実感できましたし、面白かったです。
写真を撮る方はそこを気にしながら、あとは友達と一緒にやってみると楽しみながら勉強できますね!
心霊写真って撮れるの…?という素朴な私の疑問から暑い中撮影に協力してくれた林先生。
いつも素敵で物腰柔らかい方だが、撮影時のスイッチが入った姿を見るとすごくかっこよかった。
林先生、ありがとうございました!
林憲治
1949年京都生まれ。1972年コマーシャルスタジオ・マコ入社、1975年よりフリーランスとして活動。トヨタ自動車、河合楽器、日本交通公社、ジッポ、週刊プレーボーイ、他。1982年愛知広告協会ポスター賞受賞、2009年APAアワード入選 。1994年より㈳ 日本広告写真家協会にて常務理事を6年間勤める。日本写真芸術専門学校講師就任後、2009年より主任講師を務める。
PicoN!編集部 濱田