渋谷・最新の観光スポット!「サクラステージ」をインテリアデザイナーが解説
2024年7月25日に全面開業した商業施設「渋谷サクラステージ」。100年に一度と言われる再開発で、街はどう変わったのでしょうか?
渋谷駅から国道246号線を跨いでわずか数百メートル足らずに位置しながら、かつては小規模な古くからの店舗が立ち並び、昭和の面影を残していたこのエリア。2008年から準備が進められ10年間の調整期間を経て着工、東急グループが主体となり開発が続けられていた一連の渋谷駅再開発(※)において、サクラステージは最後の大型複合施設として完成しました。
サクラステージは、渋谷駅寄りの「SHIBUYAサイド(A街区)」、街区道路を挟んだ「SAKURAサイド(B街区)」、SAKURAサイドに隣接した「C街区」という3つの区画で構成されています。
「SHIBUYA SIDE」に位置する最も大きな39階建ての「SHIBUYAタワー」。地下2階~地上5階に入る商業施設、7階に入る多言語対応の国際医療施設、7階~8階には大学、全体の多くを占める上層階のオフィスフロアにはIT系・クリエイティブコンテンツ系の企業などが誘致されています。
「SAKURA SIDE」の「SAKURAタワー」は、低層階に商業施設、子育て支援施設、中層階には長期滞在が可能な高級ホテル、上層階には155戸の太陽光発電を活用した環境先進型マンションが入っています。
施設全体の構成を見てわかるのは、急成長しているIT企業を誘致することで活気のある街づくりを目指していること。海外からの観光客を見込んだ高級ホテルとして利便性を高めていること。住居が少なく夜間の空洞化が問題となっているため、商業施設としての価値が高いこのような場所にも住宅が設けられていることなど、これからの時代を担う施設に生まれ変わったということです。
また、災害に強い安全な街づくりの一環として、帰宅困難者のための一時滞在が可能な2900人分の空間や、2~3日分の食料が備蓄されています。
今回の再開発で拡張された「渋谷駅西口遊歩道デッキ」は、渋谷駅の山手線、井の頭線、銀座線のプラットホームから地上に降りることなく移動できるようになり、渋谷ストリームにつながる「北自由通路」ともつながったおかげで、分断されていた駅周辺の回遊性が高まり、桜ヶ丘地区の入り口としての役目を果たし利用者に大きなメリットをもたらしました。
「サクラステージ」の名前の由来である地名の桜ヶ丘地区は、名前の通り桜の名所、4月のはじめには、入り口前のデッキから「サクラ坂」をバックに写真を撮る外国人の姿も見られました。
この「サクラステージ」は、一連の渋谷駅再開発ビル群の中で(※)、「アートの発信」という位置づけを担っていて、壁面の四箇所に「スクエア型映像ユニット」を用いてデジタルアートを発信する「壁面を飾るメディアファサード」が設置されていて、様々なアーティストによるダイナミックな映像表現が常に楽しめます。
またビルの数ヵ所に設けられた「サクラテラス」や「はぐくみステージ」といった広場では常に様々なイベントが行われています。
最後に少し個人的な意見になりますが、ここ数年の東京都の再開発は、富裕層向けやインバウンドを意識したものが多いと感じています。今回、サクラステージの開発をもってひと段落しましたが、街区が綺麗に整理された反面、今までそこで暮らしていた生活者の日常を大きく変えることにもなりました。周辺では、再開発の影響で小さな店舗が少なくなり、コンビニ難民やランチ難民などが発生しています。
リセットボタンを押すような再開発ばかりではなく、時代が折り重なった複雑で多様な街の姿や、古き良き横丁文化など、様々な選択肢を生活者に残してほしかったとも思っています。
※渋谷ヒカリエ – セルリアンタワー – 渋谷スクランブルスクエア – 渋谷ストリーム – 渋谷フクラス – 渋谷ソラスタ – 青山パークタワー – 渋谷マークシティ – 渋谷クロスタワー
文/角範昭
専門学校日本デザイナー学院90年卒。97年有限会社空デザイン開業。
小さな街の飲食店から大型フィットネスクラブまで現在までに1300店舗以上を手掛ける。
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