ハウル城から巨大牛まで。 “つくる” を究めた模型屋「スタジオ・ギヤ」特集
空間デザイナー・張富凱先生が、埼玉県所沢にある模型制作会社「スタジオ・ギヤ」を取材。「ハウル城の模型」「巨大牛のオブジェ」など、同社が手掛けた驚きのプロダクトを紹介します。
埼玉県の所沢にある模型製作会社、スタジオ・ギヤ(漢字では「技屋」と書きます)。「技を売るお店」にしたいというコンセプトのもと、2005年に立ち上げられました。
スタジオ・ギヤではプレゼンテーション用模型、展示模型、建築模型、ジオラマ、大型造形物駆動模型、展示什器など、幅広い業界からさまざまな製作物の依頼が来ます。医療用の柔らかい人体器官のパーツをつくったり、車修理工場で使う特殊な照明器具をつくったり、イベントで配布するノベルティをつくるのにトミカのトラックを100台改造したりと、凄まじい対応力です(どこまでが「模型屋」の仕事に含まれるのか? なかなか定義は曖昧ですが)。
スタジオ・ギヤの作品1. 『ハウルの動く城』施設の検証模型
そんなスタジオ・ギヤが手がけた案件のなかで、まずご紹介したいのはジブリ作品『ハウルの動く城』展示施設用の検証模型。
検証模型とは、展示施設を実際に施工する前に、作者の監修を受ける目的でつくる模型のこと。『ハウルの動く城』は元々映像作品なので、もちろん参考資料は平面の絵しかなく、さらには作品に登場しないけれど、現実の展示施設としてはないとおかしい部屋の一角なども、作者の意図と周りの雰囲気を汲み取って具現化する作業が必要になります。この検証模型を作者に見せて承認をいただいたのち、施工業者が人間のサイズに等倍拡大して製作していくことになります。
検証模型は、展示施設の施工においてとても重要な役割を担っているものなのです。
スタジオ・ギヤの作品2. アンテナショップの「巨大牛」
もうひとつ大変だったという案件は、自由が丘にある北海道酪農のアンテナショップ「MILKLAND HOKKAIDO → TOKYO」。全長6メートルの乳牛(!)が店の中にいるというデザインです!
1階の天井を突き破って、2階から「MilkToday?」としゃべっている牛は当初、なかなか短納期で作ってくれる業者が見つからず、スタジオ・ギヤに依頼が来ました。
パーツを削りだして連結、下地を整え、工場で仕上げ塗装。いよいよ現地に搬入しようというとき、このサイズの牛が乗るトラックが自由が丘の細い道には入れませんでした。まだ太陽が登る前の時間帯に、大きな牛が乗っている台車を押している……という、異様な光景が未だに忘れられないそうです。笑
流浪の日々を経て、デザインの世界に還帰
スタジオ・ギヤ代表の成澤一広さんは、専門学校日本デザイナー学院・グラフィックデザイン科の卒業生。当時はまだパソコンが普及されておらず、手描きの時代でした。
卒業後は1年間グラフィックデザイナーとして就職しましたが、デスクワークの毎日に耐えられず辞めたのだそう。そのあとはCMの特撮屋、大工、道路工事業者など転々としていましたが、ある日学生時代の親友から一本の電話が。「クリエイティブ集団の一員に加わってくれ!」との一言を受け、やはりデザインは楽しそうという思いが徐々に強くなり、クリエイティブの世界に戻ってきたそうです。
設立18年の今は造形屋、プログラマー、メカ業者、デザイナーなど強大なネットワークをもち、「作る・造る・創る」毎日を楽しんでいます。
ちなみに成澤さんの趣味は、サーフィン・釣り・オートバイとアクティブ。最近はみかんの木を育てるのにもハマっているとのこと。毎日会社の前に植えてあるみかんのお世話が癒やしになっていて、今年またいっぱい実ってくれたらいいなと楽しみにしているそうです。
株式会社 スタジオ・ギヤ
物を「作る」「造る」「創る」、全てを手がける製作会社。プレゼンテーション用模型、展示模型、建築模型、ジオラマ、大型造形物駆動模型、展示什器など、様々なプロダクトを企画・設計・製作。
HP
取材・文/張富凱
空間デザイン事務所爆団に所属。これまでの主な仕事に「TOKYOゲームショー2022 YGG JAPANブース」、「VR体験アミューズメント施設 V-World AREA in E-ZO福岡」、「ONE PIECE 麦わらストア」や「TOKYO MOTOR SHOW 本田技研工業ブース」などに携わる。いつかは世界で通用するデザイナーになり、自分のデザインが世に知られるようになる日を夢見て日々勉強中。
有限会社爆団
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