【アナログイラスト初心者向け連載】第11回~花の描き方~

頭の上に明るい白色や薄ピンク色の桜が広がり、春の訪れを感じますね。
たくさんの色彩や種類のある春のお花の中で、皆さんの好きなお花はなんでしょうか。
寒い冬も街を見ればクリスマスローズや椿などが咲いていますが、暖かくなると一気に花壇や公園などにカラフルなお花が増えていきます。
前回は動物の毛並みの描き方でした。
動物の毛並みに比べると、花の形は凸凹が少なくてシンプルなのでとても難しく感じました。
形の特徴が分かると描きやすいので、今回は平面的なパンジー、コップのような形のチューリップ、チューリップよりも花びらの枚数の多いバラを描いていきます。
それではメイキングを始めていきます!

パンジー

パンジーは5枚の花弁から成り立っています。(花弁をこれから花びらと言い換えて説明していきます)
平面的なお花ですが、模様の描き方を2種類の技法で描いてみます!
にじみ(第4回水彩基本編)とスクラッチ(第5回水彩応用編)をぜひ比較して見てください。
下書き。5枚の花びらをよく観察する。
模様や影は自分の描きやすいように必要なら線で描く。

花びらを水で塗り、湿らせて色を塗っていく「ぼかし」の技法で一層目を描く。
色の塗りムラが、花びらのひらひらとした薄さを表せるので、ムラを楽しむ。

二層目、色を重ねて濃くしていく。模様も一緒にどんどん描き込む。
中央の模様を細い筆で描く。

左のピンクのパンジーは塗った後、ぬれているうちに筆の後ろの硬いところで「スクラッチ」して模様を出す。ひっかいた溝に顔料が集まって線が濃くなる。

影を柔らかい印象にしたいので「にじみ」と「ぼかし」の技法で紙に水を引いてから影の色を加えたり、ブルーをのせて水で伸ばしていく。爽やかな晴天の下にあるようなブルーの影色を加えていく。

パンジーの周りの背景にも青を入れると平面的な花が浮かび上がってくる。背景にグリーンを加える。

全体のバランスをみて、模様をもう一度上から重ねるように加筆する。花の色を濃くして完成。

チューリップ

続いて、チューリップの描き方です。ワイングラスや深めのコップをイメージすると描きやすいです。シンプルな形だからこそ、ゆったりとした筆さばきで、いつもより太めの筆を使いましょう。パンジーとは反対に、花の彩色に入る前に、先に影から描き始めるグリザイユ技法で描いていきます。

よく観察して鉛筆で形をとる。ここは輪郭だけ取れればOK。


紙全体を水で塗り、湿らせて背景から塗っていく。
チューリップの発色を良くしたいのでチューリップは紙の白を残す。

グリザイユ技法という先に影を入れる技法で描いていく。
晴れた日の外のような爽やかさを出すために、影はブルーにする。

よく乾かしたら影の上に色を重ねていく。一層目を塗ったところ。柔らかい雰囲気にするために、花は「にじみ」の技法でピンク色をのせる。

二層目の花のピンクを重ねる。ここで筆を細い筆に変えて、部分的に重ねると濃淡が浮き出てイキイキとしてくる。細い筆で花びらの際をなぞると、ピリッと引き締まり、花びらの薄さが表出する。

二層目の葉を塗る。太めの筆に持ち替えて、力を抜いて筆を動かす。
全ての葉っぱが同じにならないように意識して、一枚ずつ色を変えると立体感が出る。

葉っぱの色が足りないので3層目にフレッシュなグリーンを上に重ねて完成。

バラ

最後に、バラを描いてみました。
花びらが多く、複雑な形なので、影の色を何色も使用するとボリュームが出ます。口元が大きめのコーヒーカップのような形をイメージしてみてください。
イエローのバラには、ブルーと、ブルーに紫を混ぜた紫、そして濃いイエローの3色の影の色を使用しています。

よく観察して鉛筆で形をとる。花びらは上を向いている面と側面の2つのどちらが見えているか意識してここは輪郭だけ取れればOK。

バラの中に入っている色を背景に使います。
イエローとグリーンなので、これに近い色を滲ませて背景に入れます。先に紙を湿らせて「にじみ」の技法で、花以外の茎や葉にも重ねて塗ります。

発色のいいレモンイエローと、オレンジに近いイエローの2色で花の一層目を塗ります。茎の周り360°広がって葉がつくので、葉は手前を濃いグリーン、奥を薄いグリーンにします。空気遠近法で遠くが薄く見える仕組みをこの葉っぱにも応用します。

最初に述べたように花の影の色を3色使用していきます。まずは明るいブルーでで。

③で塗ったところよりも暗い影に、紫を使用していきます。
このとき同じ空間にあるので、葉の影にも加えます。


オレンジに近いイエローで、暗いところを上から重ねて塗ります。

花の中の影を入れ終えて乾いたところ。

チューリップと同様に、細い筆で花びらの際をなぞると、ピリッと引き締まり、花びらの薄さが表出する。葉っぱのキワや葉脈を描いて完成。

 

いかがでしたでしょうか。

太めの筆を使用して、水もいつもより少し多めにして、肩の力を抜いて乾かしながら描くと、のびのびと生命力に溢れるお花になります。
明るく美しい色彩なので、重ね塗りも最小限にするのがポイントです。

今回、メイキングを作るにあたって、たくさんのパンジーやチューリップ、バラを改めてよく観察する機会となりました。パンジーもチューリップも、バラも、こんなに色の組み合わせや形があるなんて!
品種改良され続けておしゃれに進化を続けるお花たち。
自分がパッと思いつく花びらの形や色ではないお花の姿に出会えるかもしれません。
バラが描ければ、ラナンキュラスや芍薬なども同じように描けると思います。
ぜひ挑戦してみてください。

池田幸穂
絵描き / Gallery MoMo 所属 / 武蔵野美術大学卒業後、個展多数。ワークショップ等。海外のアートフェアに参加。図書館に作品常設。

Instagram @sachiho_ikeda


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