
なぜカラオケの背景映像は昔から変わらないのか?
こんにちは、PicoN! 編集部です。
皆さんカラオケはお好きでしょうか?
筆者は学生の頃、某男性アイドルが好きだったので友達とよく通ったり、最近は1人で行ったりもしています。
そんな中でずっと気になっていたことがありました…。
「なぜカラオケの背景映像はずっと変わらないのか!?」
カラオケの背景映像とは歌う際に歌詞の後ろに出てくる映像のことです。
どこか懐かしい雰囲気を感じる方もいるのではないでしょうか?
そんな訳で今回はJOYSOUNDを運営している株式会社エクシングの制作部 金子さんに背景映像が変わらない理由について色々とお話を伺いました。
カラオケが好きな方はもちろん、映像制作について興味がある方にもぜひ読んで欲しい内容となっております!
Q.まず金子さんの主な仕事内容について教えてください

株式会社エクシングの制作部 金子さん
私たち制作部では主にカラオケで使用される音楽のデータと歌う際に流れる映像制作を行っています。
例えばカラオケで流れてくる曲を耳コピしながら、毎月1000曲以上曲を作って配信をしています。全て手作業で行っているんです。
また背景映像においては映像の制作はもちろん、どの曲にどの映像を流すか設定する「割り付け」という作業も手作業で行っています。最近は比喩的な表現が多い歌詞が増えてきたので、AIだとそこの判別がまだ難しい部分もあるんです。なので私の仕事は結構アナログな作業になりますね。
Q.どのように背景映像が出来上がっていくのでしょうか
いわゆるミュージックビデオに近いようなものを作るイメージです。
まずはどんな映像を撮影するか絵コンテを書きます。実際の撮影で役者や演者が必要であればオーディションもしますし、どこで撮影をするのか、特定の場所をあらかじめ決めておいてロケハンも行います。

実際にロケハンをして撮影した映像
ちなみに現在は数千本ほどの映像がカラオケの機器に搭載されています。
新機種が3〜5年ごとに発売されるため、その機器が出るタイミングでそれまでの期間に制作した映像を一気に取り込みます。発売された際に新しく追加出来るように年間で100〜200本ほどの映像を制作している感じですね。
Q.さて本題です。利用する側としてカラオケの機能や機材の進化はとても感じているのですが、背景映像だけ変わらないのはどうしてですか?
そもそも映像を更新するという作業を始めたのはコロナ明けからなんです。
アーティストのM Vは別ですが、一般的な背景映像を更新することは今までしてきませんでした。ですが、更新をするようになったきっかけは今回の取材のように「映像が古く感じる」というユーザーの声をよく聞くようになったからです。
コロナ禍でカラオケの営業が出来なかった時期に色々と映像について分析をしていたのですが、そこで分かったことがありまして、実は映像が古く感じるのは歌うジャンルにもよるということなんです。
実はこの意見20〜30代の女性からいただくことが多くて、この世代の方が多く歌われるのが「男性アイドル」の曲なんですね。このジャンルはMVが使用出来ない場合が多いので、代わりに弊社で制作した背景映像が流れます。最初にお伝えしたように、こんなジャンルの曲にはこの映像を出すというのも私たちの制作部で設定をしていて、その設定の更新をしていないと同じ曲にずっと同じ映像が流れてしまうなんてこともあるんです。ですので、たまたま歌った曲が昔設定された映像だと、やっぱりファッションや髪型などトレンドも変わりますので違和感が出てくるのかなと。ここ3年ほどで映像の更新を行っていますので、少しずつそのイメージが変わってくるかなと思います。

最近はJ-POPを歌うとこのような背景映像が流れるそう
なるほど…! 思えば私も学生の頃から歌う曲のジャンルが変わっていないので、そのジャンルに当て込まれた映像だけを見て、進化に気づいていなかったのかもしれません
そうなんです!なので、J-POPに対して新しい映像を追加していこうと色々やっています。
割り付いている映像の見直しも行なっているので、今までよりは映像にも変化を感じられるかもしれません。
Q. そう考えると、今後何年も使用していく映像を制作する難しさを感じますが、現在はどのように撮影を行っているのでしょうか?
新鮮さが下がらないようにという点では、印象が残らないようヘアスタイルや服装などあえて特徴がないようにしています。
極論、特徴がない人を出演させたりしてるんですよ。特徴がある人だと、どうしても意識がそっちに行っちゃったり、何十年前の携帯電話とかが出てきたら凄く時代も感じますよね。やっぱり主役は歌っている人なのでそれを妨げないようにそういう目線で制作はしています。
今、お話しいただいた点が背景映像のこだわりにも繋がってきそうですね
そうですね。私たちは「セリフのないドラマ」を作っているような感覚です。
普通は何かを言ったり、表現したりというのが映像のコンテンツなんですけど、カラオケの背景映像は何もしちゃいけないんですね。セリフはオリジナルの歌詞がありますし。
要は私たちの制作する映像は舞台装置のようなもので、プロの歌手がステージセットで魅せられるように、カラオケも映像がないとやっぱり歌う側も寂しいですよね。なので、主役を引き立てるようなそんな役割を担っているような気がします。
そういう点で映像が目立ちすぎてしまうと歌う意識を妨げてしまうので、あくまでも映像はお飾りとして、特徴のない演出を大切にしています。
ですので、友達や家族と一緒にカラオケに行った際もぜひ歌っている本人をメインで見ていただきたいですね。
Q.最後に映像制作に興味のある読者へメッセージをお願いします!
カラオケの利用者に市場調査としてアンケートを取っているのですが、その際に良いお声をいただけると利用者が求めている映像を制作出来ているんだなと感じます。こちらが制作しているものと利用者の理想がカチッとはまったような感覚はとてもやりがいを感じますね。今後もカラオケの利用者に良いなと思っていただけるような映像を作っていきたいです。
金子さんありがとうございました!
私が長年抱いていた背景映像の違和感は歌うジャンルに関係していたのですね…。
もっと違うジャンルの歌を歌ってみて、その変化を楽しんでみたくなりました!
また筆者の気になっていた疑問を解決する取材でしたが、カラオケ業界ならではの映像について興味深いお話を聞くことが出来ました。
皆さんもこのような裏側を知ると、よりカラオケに行きたくなったのではないでしょうか?
次カラオケに行った際はまた違った視点でカラオケが楽しめそうですね!
文:PicoN!編集部 河野
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