「うきはの宝」の“いま”、そして全国へ。

九州の地より全4回でお届けしております本連載。

第2回は、「うきはの宝」の事業についてお話をしました。

第3回は、多くの評価を得ているこの事業について伺っています。

大熊さんが手がけた事業が評価をされ、2020年2月には福岡県主催のビジネスコンテスト「よかとこビジネスプランコンテスト」で大賞受賞。2021年2月に農林水産省主催「INACOME(イナカム)ビジネスコンテスト」で最優秀賞を受賞されています。

会社外の人間から見ていると、トントン拍子で事業が進んでいるようなイメージを受けるのですが、当初の想定されていた通りに運んでいるのでしょうか。

すごい苦しんではいるんですよ。

事業自体としては、立ち上がりすぐに新型コロナウイルス感染症が流行しだしてしまったことで、劇的に環境が変わってしまいました。ばあちゃんが調理と接客を行う「ばあちゃん食堂」も、オープン後間もなく緊急事態宣言が発出されたりして。実は我々の事業、何の補助対象にもならないんですよ。今思えば、お酒を出しておけば良かったなとかも思うんですけど。仕方ないです。

もう、こうなると稼がないとどうしようも無いと思います。そこで、それまでの収益モデルに加え、加工品の販売なども始めていったんです。

そのような状況下で、クラウドファンディングでも多くの賛同を得た手作り万能調味料「万能まぶし」が生まれたんですね。

80歳以上のばあちゃんの出勤をコロナ禍の影響で止めているなかで、1人のばあちゃんから「自宅で何か仕事できんかね?」と提案を受けました。

最初は、玉ねぎのふりかけを作りたいと言われていたのですが、結果として材料があまり集まらなかったんです。そのときに、別のばあちゃんが和食屋さんとかで出汁をとった鰹節が廃棄されていると教えてくれたんです。そして、それを使って、ふりかけや佃煮を作って持ってこられたんです。このような感じで、みんなの知恵が合わさって完成したのが「万能まぶし」です。

ばあちゃんから自発的にアイデアが出てくることに驚きました。

ばあちゃんたちは知恵の宝庫です。

ただ、ばあちゃんたちだけだったら上手くいかないんです。

ばあちゃんたちのアイデアに若者のスパイスを加えていくことが大切なんです。

私だったら、マーケティングや経営、販路の確保ができますし、管理栄養士と商品開発ができるメンバーもいます。こうやって、みんなで仕上げていくことで上手く開発が進んでいます。

実は今「ジーバースイーツ」という新しいブランドを作っているんです。じいちゃん、ばあちゃんがスイーツを作るという、読んで字のごとくのブランドです。どら焼きだったり、ジェラートを作っています。酒粕などの味もあり本当に美味しんですよ。

また、今回はじいちゃんも参加されています。大分の山国という場所(中津市)でサツマイモを作ってくれています。

通販で若者に販売したいという気持ちがあるので、バタークリームや生クリームを利用したいのですが、じいちゃん、ばあちゃんにも譲れない部分があるようです。若い世代のスパイスを入れられるよう、じいちゃん、ばあちゃんと日々攻めぎ合いをしているところです。

地方でも自分たちで商品を販売されているおばあちゃんたちもいますが、その地域内だけで収まってしまっているところも多くありますよね。

やはり企画する、販売するという部分でのフォローが足りていない部分はあるのでしょうか。

そこが我々が今後していく事業ですし、今もやり始めていることでもあります。

他地域でも、良いものを作っているんだけど経営が上手く行っていないところは多くあります。そこに我々が、デザインやモデルをお渡しして、もっと豊かにやり続けていけるようなパッケージを提案していく。もしくは、我々の資本に入ってもらうという事業を広げていっています。我々の事業と親和性がすごく高くて、すぐに組むことができるんですよ。

すると、地方活性化に関しても、うきは市に限らず全国展開が出来ていくということですね。

その通りです。

故郷のうきは市で、ばあちゃんが働く元祖の会社を作って、それを安易に横展開をするという計画が当初からありました。ビジネスモデルというのは、安易に横展開してしまうとコケてしまうと思っていたのですが、この事業に限ると安易な横展開ができるんです。

特に過疎地域では、置かれた状況が近いこともあるため、親和性が高くなるんです。

その地域にある技術や知財に、デザインや販路などでスパイスを加えていく。それだけで一気に商品価値が上がり、お客さんの満足度も上がってきます。

お客さんにはモノを消費してもらうだけではなく、そのストーリーも消費をしてもらうんです。

近年はお客さん側もストーリーを消費することを欲しているような気もします。

 現代の食に関しても、やや工業製品化してきているというのもありますね。

やはり、食に温かみを感じたいというお客さんも多数いらっしゃいます。

まだまだお届けできていない地域も多数あるので、まずは九州から取り組みを広げて行っています。

そうして事業が広がっていくと、全国の過疎地でばあちゃんの活躍の場が創出されていきますね。

地方の田舎や過疎地域の農村では特になんですが、ばあちゃんたちが働く場、活躍する場を作った方が、みんなが幸せになれると思うんです。

若者が右肩にじいちゃん、左肩にばあちゃんを抱えて苦しんでいるという構図をよく見かけますが、私はあれをぶっ壊したいんですよね。引退というのは国が決めることではないですし、働くというのは他者にとって良くなるときもあるんです。

我々の考えは、高齢者の方々を保護するのではなく、活躍できる機会を作ろうというものです。機会を作ったうえで、多世代で協働をしていこうというのが長年掲げていることです。

その中で、利益を出し続けることは、持続可能な取り組みになっていくためにも重要になってきます。

ボランティアやNPOだけでなく、利益を出していく。ここに、今後の持続可能な社会を作っていくヒントがあるかもしれないですね。

 私はNPOなどもお手伝いをすることがあるんです。非営利は悪いことではないですし、むしろ良いことだと思っています。だだ、どうしても、収益を生んではいけないという問題を抱えていることは確かだと思います。

収益を生むことが正義だとは思っていませんが、我々としては、やはり収益を生む方が誰にとってもメリットがあるよね、という考えなのです。

要は、持続できるかが重要なんです。事業においても、ひとつの大きな目的は継続であり永続です。

次回、連載最終回。今後の展開についてお伺いしています。

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【プロフィール】

大熊充(Mitsuru Ookuma)

うきはの宝株式会社 代表取締役

うきは農園株式会社 代表取締役

1980年福岡県うきは市生まれのデザイナー。

バイク関連業界に従事していたが、2014年1月に大熊Webデザイン事務所を創業、代表就任。2017年4月に専門学校日本デザイナー学院九州校グラフィックデザイン科に入学。グラフィックデザインとソーシャルデザインを中心に学ぶ。ボーダレスアカデミー第二期九州校を修了し、2019年10月にうきはの宝株式会社を設立、代表取締役に就任。

2020年2月に福岡県主催のビジネスコンテスト「よかとこビジネスプランコンテスト」で大賞受賞。2021年2月に農林水産省主催「INACOME(イナカム)ビジネスコンテスト」で最優秀賞を受賞。

【うきはの宝株式会社】

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