生の現場を覗いてみた!インテリアデザイナーのアトリエ訪問記 その3

インテリアデザイナーのアトリエ訪問記

ショップデザイナー、住空間デザイナー、ファニチャーデザイナー、ディスプレイデザイナーなどプロのインテリアデザイナーが働いている現場を取材していきます!普段見れない裏側、制作現場を余すことなくお届けします。

3話目となるインテリアデザイナーは真摯でしなやかな空間デザイナーの「吉里秀則先生です。デザイナーを目指したきっかけから、アトリエ、これまで手掛けたお仕事を見ていきましょう。

空間デザイナーを志したきっかけ

吉里先生は、サッカー王国静岡県磐田市で、真剣にプロを目指すサッカー少年だった。高校2年生で、プロの道をあきらめ進路に迷ったとき、思い出したのが小学2年の時の自宅の新築工事のことだった。毎晩のように設計担当者が来て、図面や模型を見ながら、新しい家、新しい生活について両親と熱心に話していた。新築工事が始まり職人さんにお茶を出す母について現場に行った時に知った「木のにおい」で、何とも言えない幸せな気分になった。模型で見ていた家が寸分たがわず立ち上がっていくのに感心した。そんな体験を思い出し、建築インテリア系の大学を目指した。2浪して入学した多摩美術大学環境デザイン学科だったが、1、2年生の頃は、ほとんど授業には出席せず、独自に作品を作りコンペに応募する日々だった。3年生になり家具デザイナーの小泉誠先生を師事したのが転機になり、本当の意味でデザインの楽しさや素晴らしさに目覚めた。東京デザイナーズウィークに出品したり、学生ながらリビングデザインセンターOZON主催の企画展の会場構成を頼まれるまでになった。小泉先生を始め、学生時代に出会った先生方への感謝の気持ちが、今、吉里先生が忙しい時間の中でも、学生に向き合う原動力になっている。

デザインポリシーの詰まったアトリエ

ヨシザトデザインの事務所は、シンプルで気持ちよく整理整頓されている中に、吉里先生のルーツを感じさせるアンティーク小物が効果的に配置されている温かいスペースだった。

Office YDA 板橋区 広々としたタタキが印象的なエントランスと打ち合わせスペース

打合せスペースの飾り棚には、おばあさまの家を整理した際に見つけた鉄の鏡や工具類

浪人時代からのベストパートナーである、絵里さんがヨシザトデザインを力強く支えている

ここで生み出されるデザインは、住宅はもちろんオフィス、飲食店、物販店など幅広い分野にわたっている。それぞれのクライアントの意思を受け取りながら、「ごく自然に、使い手と共に美しく年を重ねるものづくり。」と言う、吉里先生のデザインポリシーが作品に表れているように思う。

棚一面の書籍に、吉里先生の豊富なキャリアが詰まっている

広々とした作業スペース。学生がお邪魔してデザインの現場を体感することも

暮らしに寄り添うデザイン

大学卒業後、辻村久信氏ムーンバランスで、主に店舗デザインを手がけた。入社して1年ほどは、模型作りしかできなかった。模型作りは誰にも負けなかった。デザイン事務所に入った新人にとって、何か一つ役に立つことができることは武器になる。大変だったけれど、この時、一から学んだことが今の自分の基礎を作っている。ここで担当した和菓子店本店改装の仕事では、伝統工芸士の技を調べ、各地の職人さんと直接打合せしその手仕事を内装の各所に取り入れた。伝統を受け継ぎ次の世代に伝える大切さを実感するとともに達成感を持てる仕事だった。

そんな中、住宅デザインを勉強したいと考え、関本竜太氏リオタデザインに移り、戸建て木造住宅を手掛けるようになった。施主と打ち合わせを重ね設計してゆく作業は、新しい生活を提案し、暮らしながら成長してゆく空間を作り出す充実した時間だった。

だんだんの家 和光市

独立してから手掛けた「だんだんの家」では、「随所に家族の居場所を作り、程よい距離感で互いの気配が伝わるようなワンルーム空間」を設計した。中2階の手摺が座った時は背もたれの役目も果たすよう家具の要素も持たせた。「空間を設計すると家具デザインもついてくる」と、学生にも話している。

わたや平沢店/新潟県小千谷市

創業100周年を迎える小千谷市の老舗へぎそば屋「わたや」のリニューアルでは、新設したベンチ席の背面壁に、わたやさんの紋である「光琳蔦」を施した特注の「江戸からかみ」をしつらえ、格子パーテーションには織物の町である小千谷で制作された麻織生地をガラスに挟み込んで使用した。先人への敬意と次の100年へつなぐ橋渡しになると思っています。
(ヨシザトデザインHPより引用)

ヨシザトデザイン 一級建築士事務所

吉里 秀則
NDSインテリアデザイン科講師。インテリアデザイナー・一級建築士/多摩美術大学卒業後、デザイン事務所を経て2016年にヨシザトデザイン一級建築士事務所を設立。住宅設計や店舗デザインを中心としてジャンルにとらわれない幅広いデザイン活動を行っている

文:池谷光江
NDSインテリアデザイン科講師。商品装飾展示技能検定1級、日本VMD協会理事マネキンディスプレイ会社のデザイン室を経て、フリーランスのディスプレイデザイナーとして、百貨店、専門店、メーカーのVMD企画デザイン、社員教育に携わる。現在、ディスプレイの国家試験「商品装飾展示技能検定」中央検定委員として問題作成に携わっている。

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