ばあちゃんが活き活きと働いている場。

九州の地より全4回でお届けしております本連載。

第1回は大熊さんがデザイナーとして活動していくまでのお話をしました。

第2回は、いよいよ「うきはの宝」の事業が動き出します。

ボーダレスアカデミー九州校在籍中にお年寄りの無料送迎サービス「ジーバー」をはじめられたということですか。

「うきはの宝」につながる素案の仕上げとして、ボーダレスアカデミーと専門学校日本デザイナー学院九州校(以下NDS)に通いながらやっていましたね。結局、在学中に「うきはの宝」を立ち上げているので、私の卒業制作自体もこの事業になったんです。※ボーダレスアカデミーとは社会問題を解決する社会起業家をつくるソーシャルビジネススクールです。

NDSの卒業年である3年生の時は、授業ではなく事業のことを講師の方々に相談していました。なかでもデザイナーをされている講師の阿比留潔氏は事業を始める前、1年生の頃からずっと相談に乗ってくれていましたね。

実は「ジーバー」も先生と相談している中から出てきたものだったりします。

この「ジーバー」を行っていく中で、じいちゃん、ばあちゃんにお話を聞きながら、より事業を明確にしていきました。

やはり事業内容を明確化させていくことは重要なことなんですね。

重要ですね。この辺に関してはデザイン的な考え方が活きています。

整理整頓して、テーマを絞って、そこのリソースをまず作っていく。明確に具体化することで一気に事業が進んでいきました。事業計画はデザインのプロセスに近いものを感じます。

地域活性化についても、その地域の中身が明確に見えていないと表面的なもので終わってしまう可能性もありますね。

 地域活性化をやりますよと言って動いていても、何の継続性もなく、持続可能でもないものが行われていることも、世の中には多く見受けられます。地域活性や地方創生といって、予算をとってやっているけれども、やることで終わっているようなものです。

本当の意味での活性というものには、地場の方々が事業を起こしたり、課題解決に動いて成果を上げていくことが重要だと思っています。

ここからは「うきはの宝」ついて色々とお話を聞きたいと思います。
まず、ばあちゃんを「ばあちゃん」と「ばあちゃんJr.」に分けられている理由を教えていただけますでしょうか。

 「うきはの宝」では、75歳以上のばあちゃんを「ばあちゃん」、75歳以下のばあちゃんを「ばあちゃんJr.」と呼んでいます。

今のコアとなっているコンセプトは、75歳以上のおばあちゃんに「働く場」と「活躍の場」を作るというものです。その結果として、ばあちゃんが日本を救うような存在になれば良いと思っています。

「ジーバー」でも調査をしたのですが、75歳以上でも働きたい方は多くいらっしゃるんです。その中でも、ばあちゃんたちの働く意欲が強かったんです。ただ、75歳以上が働ける場がないという問題があったのでそこの課題を解決していこうと動いてきました。

それでは、なぜ75歳以下の方も雇用しているのかと言われることが多くあります。

その答えの鍵となるのは、持続可能性です。

例えば、現在72歳の方は3年後に75歳になりますよね。一過性のもので終わっては意味がないんです。

アイドルグループの事務所と同じですよね。繰り上がっていく準備をしておかないといけないということです。

ばあちゃんたちの賃金はどのようにお渡しされているのでしょうか。

今はきっちりと時給で計算して、その場でお渡ししています。

その場でお渡しすることにこだわりはないのですが、ばあちゃんたちの雇用に対する枠組みが出来ていないんですよ。多様な働き方に対する枠組みが想定されていないんです。これは、厚生労働省にも問題提起しているところです。

もう1つネックになっているのが、雇用保険です。

現在は、1週間に10時間以上働かなければ雇用とは考えられていません。それ以下は委託業務となるんです。もちろん労働者を守るために、このような設定にされたのでしょうが、社会状況も変化してきているわけですがら、もう少し多様な働き方があれば良いと思っています。

実は、これが我々が絶対にやり遂げなければいけないミッションだとも思っています。

高齢者や障がい者の方々の時短労働の制度を変えていきたい。

ばあちゃんたちに、週に20時間以上の労働を求めるなんてエグいですよ。

「働く=稼ぐ」だけではないですからね。

 働くことは、社会や地域との接点でもあります。

ばあちゃんだけでなく、障がい者や引きこもりの方々にとっても重要なことであると思います。社会が接点を持たせる仕組みを作ることを求めていきたいです。

我々のようにハードに働くというのもやり過ぎだとは思いますが、もう少し緩やかな仕組みづくりもあって良いのではないでしょうか。

働きたくても働けない人材がいること自体、社会にとっても不利益だと思いますし、もちろん本人たちも、社会の中に参加できていないということは、すごくしんどいことだと思うんです。私も病室の中で、社会から孤立していた経験がありますが、社会の中で1番の癌となるのは「孤立」ではないでしょうか。

私が働くなかで全部は解決しないでしょうが、何個かの問題は前向きに解決できるように動いていければと考えています。

例えば、昨日もばあちゃんが喜んでいたことがあったんです。

ばあちゃんにモデルの仕事があったんですが、終わってからばあちゃんに話を聞くと、もの凄く楽しかったと言っていたんです。私は、それで良いじゃないかと思っているんです。

ばあちゃんもお給料が貰える、クライアントも喜んでいる、私たちの会社にも利益が出る。

単純作業の内職をクライアントから提案されることもありましたが、全部断ってきています。コンセプトに合致していないですからね。

次回、大熊氏の今取り組んでいる事業についてお話を伺います。

前回の記事

 

大熊充(Mitsuru Ookuma)

うきはの宝株式会社 代表取締役

うきは農園株式会社 代表取締役

1980年福岡県うきは市生まれのデザイナー。

バイク関連業界に従事していたが、2014年1月に大熊Webデザイン事務所を創業、代表就任。2017年4月に専門学校日本デザイナー学院九州校グラフィックデザイン科に入学。グラフィックデザインとソーシャルデザインを中心に学ぶ。ボーダレスアカデミー第二期九州校を修了し、2019年10月にうきはの宝株式会社を設立、代表取締役に就任。

2020年2月に福岡県主催のビジネスコンテスト「よかとこビジネスプランコンテスト」で大賞受賞。2021年2月に農林水産省主催「INACOME(イナカム)ビジネスコンテスト」で最優秀賞を受賞。

【うきはの宝株式会社】

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