映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』森義仁 監督インタビュー~後編~
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周りも時代風にしてましたよね?
そうですね。今っぽくないロケ場所でなるべく撮影をして、東京の話なので、結構どうしようもないところもあったりはしたんですけど、まぁ予算とか時間でいくらでもあればもっとできるんだとは思うんですけど、登場人物の見ている風景だけは頑張ってやるとかそういう意識ですね。逆に言うと「再現度すごいね」ってよく言われるので、イメージ戦略じゃないけど大事なものを丁寧にやることが大事ってことですね。ディティールというか、本当にこだわった再現度でも60%くらいだと思います。
出会うシーンも、最初の脚本では渋谷駅とかかいてあったんですよ。ツタヤができる前。でもなんかCGとかも大変になるし、みたいなのはあったんですけど、なんか結果二人の生息しそうな場所に絞っちゃったのが逆に上手くいきましたね。
音楽で言うと、結構カルチャー音楽っていうのがそもそも表立ってて、小沢健二さんをはじめ、時代の音楽だったりというのがあるので、だからあまり音楽音楽しない方がバランスが良いんじゃないかっていうのと、単純に僕の趣味で、割とちょっとアンビエントめなものを多くして、音楽だけじゃなくて映像も含めなんですけど、時代が遡る毎に綺麗な印象にしていきました。音楽の音色だったり、映像の粒子感だったり、一般的には古い時代を描くときは映像も音も荒らすんですが逆のことをしようと思って。この映画の感情の流れ、構成にあった細かい演出を考えました。
これまでCM、プロモーションビデオ、ドラマ等をやってきてると思いますが、今回長編映画をやってみて違うところは何かありましたか?
現場については、全然違うと言えば違うし、別に映像を撮るって意味では一緒だから、機材も一緒だし、スタッフも一緒の人が多いし、だからそんなに監督としての仕事は違わなかったです。監督っていうか映像を撮るって意味では違わなかったですけど、やっぱりCMはCMのコツがあったり、PVはPVの推しポイントがあったりっていうのは全然違うなと思ったり、大きいのは単純に撮影が長いんで、好かれないと上手くはいかないなって、なんていうか他に比べて人間力が必要な仕事かなとは思いましたね。わがままでいたい気持ちもあるけど、人間関係がね。CMって1日だけじゃないですか。1日2日の話なんで、そのキャストの人とかもある種の良いところをお互いに探し合ってやれば良い。だから今回は本当に森山未來さん中心にキャストと話してる時間が1番印象的で、キャストとの接点がおもしろみでもあるし、ある種色々な意見がぶつかり合う場でもあるんで一番思い出深いですね。今となっては楽しかった。撮影現場のときはずっと下痢だったので胃が痛かったですけど(笑)
映画監督になりたい、CMを作りたい、という学生が結構いるんですが、どうすれば監督になれますか?
人それぞれですよね。僕の場合専門学校卒です。映画の助監督をやってて、友達のPVを撮ったらたまたま友達のバンドが売れて、それでなんとなくPVの監督やり始めて、ちょっとずつCMに流れて。今はCM監督が中心なんですけど。だから入口はどうとでもなると思うんですけど、今は一番多い方法だと、自主映画撮るって形だと思います。
前向きなことを言うと、意外と学歴じゃなくいけるとこはあると思います。僕は自分で言うのもなんですけど運が良かったタイプなんですよ。良い人に出会えるかとかそういうことなのかなと思います。発表の場も結構あると思います。今の感じって、20代のカメラマンとか監督とか僕らのころよりもどんどん早く撮らそうとか、YouTuberの延長上だったりインスタグラマーのっていう流れもあるので、手を挙げたもん勝ちな感じというか、活動したもん勝ちみたいな。綺麗なレールに乗ろうと思っている人はあんまりなれない気がしますね、なんとなくですけど。なんとなくですけどね。(笑)
映画業界はこれからどうなると思いますか?
映画監督だけで言うと、ここはっきり言っておこうと思うんですけど、食えないと思うんですよ。超有名どころにならないと映画だけでは全然食えない。だから映画だけに絞らない方が良いんじゃないっていう、色々なことをやった方が良いと思います。でも映画自体は楽しいし、僕も映画監督を名乗ってるときもありますけど、まぁちょっとだけCMがあるから映画が撮れたなって思いますね。
映画監督が食えるようになる映画界になったら良いなって思いますね。例えば世界、日本公開だけじゃないとか。色々な意味で興行自体が広いものになれば、広い視野を持ったキャスティングとか演出も含めて今とは違う方向で、自分的には良い方向に向かうんじゃないかなと思いますけどね。ヒットするためにという言い訳で、なんていうか安全牌をとる日本人の作り手が多すぎて、その結果すごい狭くてつまらなくなってる感じがするので。そういう発想を変えたいし、このままだと食えないまんまなんだと思いますね。
今後の活動について教えてください。
ジャンルにこだわらずやりたいし、映画は今のところ僕としてはビジネスとして成り立ってないんで、成り立ってないが故に自分が納得いくものをしっかり作っていきたいなって思うし、映像をつくるって意味ではCMでもPVでも変わらないんで、いろんなジャンルで技術で生き残りたいなと思いますね。映像的な演出技術があるからこの人に頼みたいって思われるようになって、おじさんになっても作っていけたらいいなと思いますね。
森義仁監督のCM作品をご紹介
『あの恋をもう一度』 – Music by Eve 『言の葉』
『卒業生100万人の答辞』 – Music by Eve『心海(合唱ver.)』
ご協力
撮影協力:アンセーニュダングル 原宿店
取材協力:CluB_A https://club-a.aoi-pro.com/
森義仁/Yoshihiro Mori
生年月日:1982(S57)年
出身地:三重県
略歴:2007(H19) 映画の助監督として経験を積んだ後、サカナクション「三日月サンセット」でディレクターデビュー。その後フリーランスディレクターとして活動
2013(H25).6 ㈱AOI Pro.入社、社内ユニット「hanare」に参加
2015(H27).4 同社企画演出部に異動
2017(H29).4 同社を退社、CluB_A所属となる
最近の作品:Netflix「ボクたちはみんな大人になれなかった」2021年全世界同時配信
テレビ東京連続ドラマ「恋のツキ」
最近の受賞:日清食品チキンラーメン INSTANT BUZZ 侍ドローン猫アイドル神業ピタゴラ閲覧注意爆速すぎる女子高生
2017 ACC全日本CMフェスティバル フィルム部門(Bカテゴリー)ブロンズ
2017 Spikes Asia 2017 Entertainment 部門 ブロンズ