まさに巨石。隈研吾建築<角川武蔵野ミュージアム>想像を広げる本棚空間

外観も、中身も、世界にたったひとつしかない
角川武蔵野ミュージアム>をレポートさせていただきます。

角川武蔵野ミュージアムは2020年11月に埼玉県所沢市にグランドオープンした複合型文化施設です。

角川武蔵野ミュージアムHR
■住所
埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3
■アクセス
公共交通機関/JR武蔵野線「東所沢」駅から徒歩約10分
車/関越自動車道「所沢」ICから約8分です。
■開館時間
日~木曜/10:00~18:00
金・土曜/10:00~21:00
■休館日
毎月第1・第3・第5火曜日
(祝日の場合は開館・翌日閉館)
■館長 松岡正剛

図書館美術館博物館の3つが融合した
世界にたったひとつの複合文化施設

まるで巨大な岩石のような建築は、日本を代表する建築家<隈研吾>氏によるデザイン監修。

もともとこの場所は所沢浄化センターという下水を浄化するための施設の跡地でした。
所沢市がこの跡地の有効活用を公募したところ、株式会社KADOKAWAが手を挙げ、この地に図書館、美術館、博物館をまぜた世界でひとつの文化施設の計画がスタートしました。

隈研吾氏による設計
〈地殻建築(ちかくけんちく)〉

まったく新しいコンセプトを持った複合文化施設、そのなかで展示されるものも多種多様。
まるで地球上のさまざまな現象が集まってくるミュージアムのイメージから隈研吾さんが発想したのが、武蔵野台地の地殻が地表に突き出してきたような建物地殻建築>でした。

大地から突き出した地殻のイメージを表わすために外壁は自然素材の石で組み上げられ、外側からは各フロアの階数も見ることのできない、まさに巨大な岩のような建築です。

古代に信仰されていた聖なる岩<磐座(いわくら)>への信仰を再現し、人々の心に響く新しい聖地としての意味もこの建築に込めたそうです。

外壁に使用されたのは地底のマグマが固まってできた花崗岩(かこうがん)。
中国の山東省の山から切り出されたもので、石の表面は叩き割ったような凸凹の強い「割肌(われはだ)仕上げ」という加工が施されています。

それぞれ個性のある岩は一度床に並べられ、色合いや凹凸が揃いすぎないようにひとつずつ確認して配置されています。使われた花崗岩の総重量は1,200㌧。

外壁は様々な三角形が組み合わさり、61の面で構成されています。

隈研吾さんは、
木の建築の頂点は国立競技場、石の建築の頂点は角川武蔵野ミュージアム」とも話されています。

イマジネーションを広げる
新しい”本棚空間”

角川武蔵野ミュージアムには様々な独創的な空間があるのですが、今回の記事でご紹介したいのは今までに見たことのない本棚が並ぶ空間です。

Edit Town(エディットタウン)

直訳すると「編集の街
ここにはあらゆる本たちが活き活きと並べられています。

街のなかでは本たちは9つの区に分けられています。

ET1/記憶の森へ
ET2/世界歴史文化集
ET3/むつかしい本たち
ET4/脳と心とメディア
ET5/日本の正体
ET6/男と女のあいだ
ET7/イメージがいっぱい
ET8/仕事も暮らしも
ET9/個性で勝負する

普通の図書館であれば隣に並ばないような本たちが、新しい区分けによって連想ゲームのようにつながり想像が広がるように構成されています。

それを象徴するように本棚の形状も違い棚になっていたり、本も重ねて置いてあるもの、様々なオブジェクトもあいまって想像が広がります。

 

 

ET9の「個性で勝負する」の区の中を
少し詳しく見てみます。

グレートスモーカー

ひとりっ子

天折の異才

殺意の純情/辛口毒舌/冒険と探検

図書館では見ることのない分類で本が配置されています。松岡正剛氏による本の区分けからブックディレクターの方のセレクトによって配置された独創的な本棚を体感できます。

 

本棚劇場

約8mにも及ぶ巨大な本棚に囲まれた図書空間。

KADOKAWAの出版物や、角川源義(かどかわげんよし/角川書店の創立者)、山本健吉(やまもとけんきち/文芸評論家)、竹内理三(たけうちりぞう/歴史学者)、外間守善(ほかましゅぜん/言語学者)から寄贈された蔵書など約3万冊が並びます。

また「劇場」と言うだけあって、ここはただの本棚ではありません。
巨大な本棚をスクリーンに見立て、プロジェクションマッピングが映し出され、本にまつわるストーリーを映像と音で体感することができます。

この本棚劇場は2020年の紅白歌合戦でアーティストの〈YOASOBI〉が大ヒット曲の「夜に駆ける」を歌った場所としても有名になりました。

 

アティックステップ

本棚劇場の裏に位置する階段と本棚が続く空間。
ここには荒俣宏さんの蔵書から約3,000冊の厳選された本が並びます。

ここにはさらにマニアックでもあり大変貴重な本が実際に手に取って読むことができるように並べられています。

「このフランスSFが明治19年に翻訳された驚き!明治はSFだった!」

「進化論のダーウィンにこの祖父あり、多彩な研究家だったエラズマス・ダーウィンの主要作。動物の哲学が読める。」

 

ほかにも語りつくせないほど
沢山の魅力の詰まった空間が

1階/マンガ・ラノベ図書館

KADOKAWAだけでなく様々な出版社のライトノベルが揃うほか、KADOKAWAのコミックや児童書など、合わせて約3万5,000冊集まる図書空間。

 

4階/荒俣ワンダー秘宝館

荒俣宏氏監修の「想像力」や「マニア」の見せ方にこだわった驚異の部屋。
はたして本当のものなのか怪しさ満点の展示品や、アカデミックな展示品まで興味関心をシゲキする様々な展示品が集結している。

 

武蔵野坐令和神社

ミュージアムのそばに建立されている武蔵野坐令和神社(むさしのにますうるわしきやまとのみしろ)。
建築は隈研吾氏がデザイン監修、神社の天井画にはファイナルファンタジーのキャラクターデザインで有名な天野喜孝(あまのよしたか)氏によるKADOKAWAのシンボルである〈鳳凰〉が描かれています。

角川武蔵野ミュージアムに詰まった
多くの人々のドラマ「Musashino50」

ぜひ見ていただきたい映像アーカイブがあります。

Musashino50」という、ミュージアムを作り上げるために関わった50人のインタビュー動画です。

隈研吾氏や館長の松岡正剛氏はもちろん、設計のスタッフや施工した鹿島建設の方神社の宮司さん、ブックディレクターの方など本当に様々な方面の方がこの角川武蔵野ミュージアムに込めた想いを語ってくれています。

この映像を見てからミュージアムを体感すると、また見えてくるものが違うと思います。

特にデザインやクリエイティブ、物を作り人の心を震わせたいと思っている人には見ていただきたい映像ライブラリーです。

「Musashino50」ページリンク

 

角川武蔵野ミュージアムではさまざまな企画展やイベントが開催されています。

活き活きと本が並ぶ空間で想像力を広げる、奇想天外な歴史的な展示品から最先端デジタル技術の体験まで、幅広いシゲキを与えてくれるミュージアムです。

ぜひ体感してみてください。

 

文:PicoN!編集部 横山

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