嫌い!うるさい!わからない!快へ導く「不快のデザイン展」
みなさん、
「デザイン」ってどんなイメージを持っていますか??
オシャレ、かっこいい、かわいい、とかポジティブなイメージが強いですかね??
結果、そのような表現になることはありますが、根本的にはそこが本質ではないんです。
デザインは「設計」とも訳されるんですが、
“目的達成のために機能する構造を生み出す”ことが根本なんですね。
そのために実は、ネガティブな要素も上手に組み込まれているんです。
今回は東京丸の内にある「GOOD DESIGN Marunouchi」にて2023年3月24日~4月23日まで開催されていた「世の中を良くする不快のデザイン展」のレポートです。
さぁ、どのような「不快」が
デザインされているのでしょうか。
気になります。
みんなが「ヤバい」と感じる不快な音
「緊急地震速報」のチャイム音は人が「ヤバい」と緊張感を感じる音でデザインがされているそうです。
・注意喚起のトリガーとなる音
・危険を感じ、行動したくなる音
・他のものとは似ていない音
・だれでも聞き取りやすい音
「四度堆積和音」という種類の音だそうで、ドキッとするもののパニックにはならない音を目指し設計された音だそうです。
「クサい!」は、わざと。
ガスコンロなどで使用される「都市ガス」ですが、そもそもの「天然ガス」は無臭って知ってましたか?「ガスが漏れるとクサい」という常識になっているのは、わざと「クサいデザイン」がされていたんです。
約60年まえの1964年に家庭用ガスに臭いをつけることが義務化されたそうです。(もし、この臭いがデザインされていない世界線を考えると怖いですね。)
「にがい!」で本能的に避ける
Nintendo Switchのゲームカードって舐めると「すごく苦い」って知ってました?
小さな子供たちの誤飲を防ぐためにわざと「デナトニウムベンゾエイト」という苦味成分が塗られているんです。(健康面には影響ないものだそうです)
大人になってしまうとこのカードを口に運ぶことはないので気付かないですが、小さな子供たちは興味をもつと口に運んでしまいますよね。
そして「苦味」というのは本能的には「危険な味」と判断され、子供たちは吐き出してくれる。
プレイするユーザーだけでなく、ユーザーの周りの状況まで考えて安全をデザインしているなんて、素敵なデザインです。
「危険な色・音」「邪魔な高さ」で
安全をつくる
電車の踏切ってすごく危険な場所ですよね。ここは様々な「不快」を使ってデザインされています。
「色」
危険をイメージさせる配色である黄色と黒の組み合わせ(または連続)は、“動物が本能的に警戒する警告色”なんです。毒ガエルや毒ヘビの色のイメージに合致すると思います。「僕は毒を持ってるぞー」感を出してますよね(本当は持ってないやつもいたり)
「音」
カンカンカン…のあの音は、世の中に存在する最も汚い音程といわれる「短9度音程」で作られているそうです。いわゆる「不協和音」で不快を警告として使っているんですね。
「高さ」
ちょうど小学校低学年の目線の高さ程度(0.8m)に「遮断かん」がくるように配置されていて、近づきにくい「不快」がデザインに組み込まれています。
人の成長は「濡れたパンツ」から
子供用のオムツですが、「吸収力」「蒸れない」「快適」を謳う商品が多いなかで、オムツ卒業のタイミングに焦点をあてた「トレーニングパンツ」の事例です。
なんと、
おもらしをすると約10倍ぬれた感じ(不快感)のするパンツになっているそうです。
おもらしをするとパンツが心地悪い、トイレでおしっこをすると心地悪くならないし、ほめられる、そんな経験の反復が「オムツ卒業」を促してくれるそうです。
この「快」と「不快」で行動を変化させることを心理学では「オペラント条件付け(wiki)」というそうです。
「食べにくい」でスピード減速
犬や猫といった動物は本来は野生で狩りをして食事をしていたため、食料を別の者に取られないように早く食べる習性が今でも残っています。しかしその早食べのせいで健康を害すことも。
ゆっくりごはんを食べてもらうために
「食べづらさ」という不快を使ってデザインされたペット用食器です。
食器の底に凹凸があって、一度にがっつくことができなくなっていたり、底が丸くなっていてコロコロ転がるデザインで、自然と食事のスピードを減速してくれます。
すこしだけ「わかりにくい」が
記憶に残る
文字は読みやすい方が良い、勉強するためならなおさら。そんな常識をひっくりかえす「読みにくい文字」の方が記憶力がアップするというデザインです。
オーストラリアのRMIT大学のデザイン科と行動科学研究所のBehavioural Business Labによって開発された「Sans Fogetica」は脳が記憶を保存する力を高める「望ましい困難」という認知心理学を応用した読みづらいフォントのデザインです。
実験によると普通のフォントと読みづらいフォントでは、読みづらいフォントの方が7%の記憶量の増加があったとのことです。(たしかに、読みづらいフォントの方が無意識に「理解しよう!」という脳のスイッチが入る気がします)
「嫌な音」で距離をつくる
モスキート音は有名な事例ですね。
人間や動物では聞き取れる音の周波数が違い、人間には聞こえないが動物が不快と感じる周波数の音を発することで生活圏を区分けするデザインです。
「わからない」が生み出す自由
神戸市役所に置かれている使用用途がはっきりしない「家具」のデザインです。
高さは一定だけど、サイズや形がそれぞれ違うその家具はテーブルにも見えるしイスにも見えます。
そんな「わからない家具」は逆に
“自分の都合のいいように解釈して使う”という多様性を作り上げた事例です。
心理現象に「パレイドリア効果(wiki)」という“対象を自分が知っているパターンに置き換えて認識することで、そこにあるはずのないものが見えてくる”効果があるそうです。
点が3つ三角にならんでいたら「顔」に見えてくるとかのような、人間の想像力が空間デザインの可能性を拓いた事例だそうです。
「手間」が「価値」を上げてくれる
ホットケーキをつくるには、ミックス(粉)と卵と牛乳をまぜて、、、、
ホットケーキミックスが登場した初期は、卵の成分はミックスに入っていたため今よりもっと簡単にホットケーキができたそうです。
しかし、ユーザーに卵を加えてもらう1手間をかけてもらうようにしたことで売り上げが上がったそうです。
これは「コントラフリーローディング効果(英wiki)」という「簡単に手に入れたものより、何らかの対価や苦労をして手に入れたものを好む」という人間の心理的バイアスを活用した例です。(たしかに苦労して手に入れたものの方が大切なものになりますよね)
「妙な味、少ない、高い」で
「価値」を上げる
エナジードリンクって”飲むことで得られる効果”を意識して購入しますよね。
一般的なドリンクは「安くて、おいしくて、たくさん飲める」ものが好まれますが、エナジードリンクは「少し高くて、妙な味で、少量」なものの方が効果がありそうに感じ、選ばれる結果につながるそうです。
これもホットケーキミックスの事例と同じ「コントラフリーローディング効果」が使われており、大きな報酬を受け取るには相応の不快を受け入れないといけないという心理バイアスが活用されている事例だそうです。(うーん、これもたしかに。)
ということで、いかがでしたでしょうか。
デザインってポジティブなものの組み合わせでできてそうですが、実際は「不快」を上手に使いながら「快」へ誘導していることが実例でわかるとても勉強になる展示会でした。
みなさんも人の行動を上手に誘導したいと考えるときに、「~してください」「~しないでください」と直接的に表現するだけでなく、誘導したい逆側に「不快」を配置してみたり、人の心理的な構造を使って誘導することを考えてみてはいかがでしょうか。
今 後
も
P i c o N !
を
よ ろ し く
お 願 い
し ま す 。
(読みにくくしてみました。 印象に残りますか?)
PicoN!編集部 横山