うきはの“宝”。

九州の地より全4回でお届けしております本連載。

前回は大熊さんの手掛けている事業が遂に全国へと拡大していくお話をしました。

最終回となる今回は、今後の展開についてお伺いしています。

また、この記事を読んでいただいた皆さまにもメッセージをいただいています。

今後全国展開を進められていくと思いますが、大熊さんご自身はどのようなポジションで携わっていこうと考えられていますか。

もう全国展開は始めているのですが、全国に協力してくださる会社があるので、ばあちゃんが活躍できる場を増やしていく。そして、それを表に出していく。

こういったことから言うと、プロデューサーというポジションが的確な表現だと思います。

他地域までを全て我々の資本で管理監督マネージメントしていくと、どうしても物理的な限界がきてしまいます。そこを考えると、全国にしっかりと仕組みを渡して、正しく機能しているのかを見渡していくというところが私に求められている部分だと思います。

あと、全国各地の経営者にも、私と近い考えの方は多くいらっしゃいます。

その人たちと「ばあちゃん同盟」を組んで、社会に問題提起もしていきたいですね。

「ばあちゃんたちが元気であったりすれば、働いた方が良いのではないですか?」って。

正直にいうと、私も「うきはの宝」に出会う前は、75歳以上の方々が働くというイメージが全くなかったんです。

そうですよね。

おそらく日本に住んでいる方の中では、この考え方が一般的なものだと思いますよ。

ただ、こちらで働いているばあちゃんたちを見ると、すごく活き活きと仕事をされているのが印象的でした。皆さんが働くという意義や希望に繋がっていると感じましたし、世代が移り変わっても永続的に続いていく要因なのかなと思いました。

みんな気づいているようで、気づいていないことがあるんですが。今の高齢者の姿って、若者の数十年後の姿なんですよね。

私が嫌いな老害という言葉があるんです。老いたら害になるというものです。

そのイメージでやり続けて行ったら、近い将来に自分たちもその対象になるんですよ。

そういうことにならないように、今からその構造を変えておくんです。

私の事業は高齢者を大切にする仕事だと思われがちですが、それは違うんです。

ばあちゃんたちと共に、若いやつらを盛り立てるために、我々が元気なうちは働くぞという仕事をしているんです。若い子たちの負担増より、負担減の方が良いじゃないかと。

ばあちゃんたちも、何かのために働くということで力が湧いてきているんですよ。

若い子たちがご飯を食べにきて、美味しいと言ってくれるので。それが生きがいになっているんですね。


20代30代が中心となる「うきは農園株式会社」もありますが、将来的には世代間の関わりだったりサービスは考えているのでしょうか。

どんどんやっていきます。

今の社内でもそうですが、多世代型協働というのは裏で抱えているテーマなんです。世代交代をして、若い子たちに渡していかないといけませんからね。

そして、年配者がそれをフォローしていくという形が望ましいんじゃないかなと思うんです。

そこが「宝」に繋がっていくわけですね。

そうです。よくおばあちゃんたちが宝ですよねと言われるんです。

「うきはの宝」の宝ってばあちゃんたちのことですよね、と。

もちろん、ばあちゃんたちも宝なんですが、本当は宝物であるばちゃんっていう存在、知財を、若い人たちに渡していくことだったり、これを受け取る若い人とか子どもこそがやはり宝なんですよ。

こんな田舎でも、やはり世代間のつながりというのが少なくなってきています。あまり他者に干渉しないような社会になってきていると感じています。

私はそれが、もったいないと思っているんです。やはりコミュニティで接点はあった方がいいだろうと思うんですよ。地域という言葉がありますが、誰とも関わらない場所だったら、孤立しているのと一緒だと思います。

「うきはの宝」は会社ではありますが、色んな人が集まってくるコミュニティの場になってもいます。ただ、私はコミュニティを作ろうと思って作ったのではなく、多世代の方が集まった結果としてコミュニティが出来ていたという感じなんです。

 


活動の結果として、目指す方向にどんどん近づいてきていますね。

しっかりと取り組んでいたら、周りが急激に評価をしてくれたという感じです。実は、我々は1度もプレスリリースを出したことがありません。

ただ、取り組みを表に出せるビジネスコンテストでは、絶対に日本一になる必要があると思い取り組んでいます。

これには目的があって、田舎で着実に事業を行うことも大切なんですが、制度や法律を変えるということを本気で考えると、私1人で実証しても変わっていかないんですよ。

このため、国の中枢との関わりも持って、国自体も良くしていこうという大きなムーブメントを起こそうと考えて、そのような場にも出ています。

まさに「ばあちゃんが日本を救う!」ですね。

起業前にそのコンセプトを設定したことで、方向を間違えることなく進んで行けていますね。ばあちゃんたちが日本を救うことの一端となると、ずっと思い続けているので自分の脳もその方向に向かって動いています。これもデザイン的な頭の使い方の一種だと思います。

改めて、今後の事業に関する展開や展望についてお聞かせください。

私の考えとして、過疎地域や農村など1つのまちに1社ぐらいは、ばあちゃんが働く会社があってもいいと思っています。5、6人のばあちゃんに1人の若手社長がいて、直売所やネットを上手く使えば、絶対に成り立つと思うんです。このモデルだったら、若い子も食べていけると思っています。あとは、オンラインですね。ネット通販だけでなく、ばあちゃんによるオンラインサービスも準備中です。

また会社としても2期目で黒字転換していますが、3期目もより利益を出しながら、明確なビジネスモデルを作っていきたいと考えています。その他にも、全国展開に向けての取り組みを多数推進していきたいと考えています。

最後に、今後の社会を担っていくクリエイターや、クリエイティブに興味がある方に向けてメッセージをお願いします。

そうですね。お伝えしたいことが何個かあるんですけれども、シンプルにお伝えしたいこと。それは「Trial & Error」をやって欲しいということです。

頭で考えることも大切ですが、やはり皆さんそこで行動が止まってしまうんです。

失敗を恐れずに1度挑戦してみるべきだと思っています。

さらに言うなれば、失敗することも、予め計画に入れて挑戦をして欲しいです。

これもデザイン的な考え方ではあるんですけれど、目的遂行のためには失敗を取りにいくべきです。失敗の積み重ねとか、小さい成功の積み重ねで目指す方向に進んでいくことができるんです。ぜひ「Trial & Error」をやっていきましょう。

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【プロフィール】

大熊充(Mitsuru Ookuma)

うきはの宝株式会社 代表取締役

うきは農園株式会社 代表取締役

1980年福岡県うきは市生まれのデザイナー。

バイク関連業界に従事していたが、2014年1月に大熊Webデザイン事務所を創業、代表就任。2017年4月に専門学校日本デザイナー学院九州校グラフィックデザイン科に入学。グラフィックデザインとソーシャルデザインを中心に学ぶ。ボーダレスアカデミー第二期九州校を修了し、2019年10月にうきはの宝株式会社を設立、代表取締役に就任。

2020年2月に福岡県主催のビジネスコンテスト「よかとこビジネスプランコンテスト」で大賞受賞。2021年2月に農林水産省主催「INACOME(イナカム)ビジネスコンテスト」で最優秀賞を受賞。

【うきはの宝株式会社】

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