インテリアデザイナーが解説! 渋谷にニューオープン「TSUTAYA BOOKSTORE」の魅力とは?

2024年7月25日に「渋谷サクラステージ」の4階に地域最大級となる書店「TSUTAYA BOOKSTORE」がオープンしました。

そのコンセプトは、公式HPに次のように記載されています。

「SHIBUYAの今とこれからを過ごす全ての人々の生き方が広がる場」をコンセプトに掲げ、渋谷を訪れるクリエイティブワーカーと、渋谷周辺にお住まいの方々をメインターゲットに、約16万冊の在庫を展開する渋谷エリア最大級の書店。渋谷に住む・働く・遊びに来る全ての人の知的好奇心を刺激する「本」に囲まれた空間と、「本」を通じて「知」が広がる体験をご提案いたします。
(出典|TSUTAYA BOOKSTORE 公式HP

日本にある書店の数は、全国で見ると1990年頃の2万店をピークに、30年余りで半数以下に。都内においては80%が廃業したとのデータが。これはインターネットとスマートフォンの普及にほぼ比例していることは間違いありませんが、これは書店に限ったことではありません。ネットショピングの普及により、他の物販店も減少してきているのです。

そんな中で大型店を出店する「TSUTAYA BOOKSTORE」は、どのような戦略や工夫をしているのか? 「商業施設としてのインテリアデザイン」の視点で、気になるところをお伝えしてみたいと思います。

文・撮影/角範昭(インテリアデザイナー)

大型店だからこそできる「魅せ方!」

まず、本の陳列方法に工夫がありました。その工夫とは、もっとも情報量が多く目につきやすい「表紙」を見せる「面陳列」のスペースがとにかく多いことです。

一般的には平らな台のスペースを設けて「平積み」にすることが多いのですが、実用書は背の高い6段ある棚の中段の2段を「面陳列」のスペースに使っています。漫画の棚に至っては9段のうち5段を「面陳列」にし、売り出し中の漫画に至っては同じ表紙を横に6冊も並べているところまであります。

勉強や仕事もできるカフェラウンジ

店内には、アプリ会員になると利用できる180席の「シェアラウンジ」と会議室を併設。朝8時から夜23時まで利用でき、ビジネスなどさまざまな利用法が想定されています。

ホテルのラウンジのような雰囲気の空間には、ゆったりとしたソファーや、一人になれるカウンターがあり、アルコール、ドリンク、スナックなどが用意されています。魅力的なことに、購入前の本を3冊まで持ち込んで読むことができます。

ビルの上層階にはたくさんのオフィスがあり、十分な利用が見込めるはず。中小規模のテナントビルにはない、大型複合施設ならではの立地によるメリットですね。

インテリアデザインはとてもシンプルで、コストや環境も意識されている

モノトーンでまとめられた店内は、ニュートラルグレイのセラミックタイルの床、天井はスケルトンでブラックアウトされています。

セラミックタイルは2000年ごろから急速に普及した素材。以前主流だった塩ビタイルなどと比べると初期コストは高めですが、10年以上メンテナンスや張り替えの必要がなく、結果的にライフサイクルコストを下げられるのがメリットです。

天井は、音に気を使う物販スペースやラウンジ以外の部分では、石膏ボードや吸音板は貼らずに構造体のまま塗装しただけですが、照明を天井に当てないことでダクトやエアコンなどが目立たなくなり、省エネ効果も期待できます。気になったのは、壁の石膏ボードがビス丸出しで塗装もないこと。簡素極まりないですが、近くで見なければ気にならないのでしょうか?

陳列の棚は、汎用性の高い既製品の棚を組み合わせたものですが、側面にスタッドと呼ばれる壁の下地材を使ってパネルを作り、簡素ながら素朴でクールな表情を出しています。

時代に合わせ業態が変わっても書店の魅力は健在

本の一番の魅力は、思わぬ情報や他人の経験などと巡り合わせてくれることだと思います。

私は、本の表紙を見てどんなことが書かれているかを最初に想像してから、答え合わせをするように読むことが好きです。そうすると思わぬ発見があったり、何かに気付かされたり、期待値を上回る裏切りに遭ったりして、とてもドラマチックに感じることができますよ(笑)。

皆さんも気分を変えたいときに足を運んでみてくださいね。

文/角範昭
専門学校日本デザイナー学院90年卒。97年有限会社空デザイン開業。
小さな街の飲食店から大型フィットネスクラブまで現在までに1300店舗以上を手掛ける。

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