エモい配色レシピ集。

「エモい」というのはなんとも曖昧模糊とした概念で、つまりどういう意味? と聞かれても、明確に答えられる人は少ないでしょう。

「オシャレ」とも違う。「かわいい」とも「切ない」とも「ノスタルジック」とも「情緒的」とも「わびさび」とも違う。でもそれらのすべてを含んでいる気もする。たとえば夏の夕暮れみたいな、真夜中のドライブみたいな、レトロな喫茶店のメロンソーダみたいな、「いい感じの何か」としか言えない何か。

ひょっとして “得も言われない” の略? と思いたくなるほどつかみどころのない「エモい」だからこそ、クリエイティブの中で表現するにはけっこうセンスが問われるのです。

今回は「配色」という観点から、この「エモい」を表現するヒントを紹介。デザイナーの駒崎浩代先生に、4つの「エモい」配色パターンをピックアップしてもらい、そのポイントや使い方を解説していただきました。カラーコードも添えていますので、配色に迷ったときの引き出しとして押さえておきましょう。

解説:駒崎浩代(デザイナー)
編集・画像/編集部 佐藤

【使用カラー】#A5BBC3 #B3CCB1 #D5C78C #E6C0BD #A3C3D8 #DCDBDA #D4CABD

■駒崎先生の解説
最近人気の「くすみカラー」と言われている色ですが、要は濁色系で、ライトグレッシュトーン※、グレッシュトーン、ダルトーン※に値するトーンでまとめた、ドミナントトーン※の配色のひとつです。少しくすませることで、心落ち着かせ、リラックスさせるような、ほんのり穏やかなイメージを与える配色です。

※グレッシュ……ほんのりグレーが混じったような、優しい色合いのこと。グレイッシュとも。
※ダルトーン……Dullは「鈍い」を意味し、明度や彩度がやや低いくすんだ色合いのこと。
※ドミナントトーン……色調(トーン)がそろえた配色パターン。

このように「くすみカラー」が人気を博しているのは、スマホやSNSの浸透で情報過多な時代、少し情報刺激を減らしたいと思う現代人の無意識の現れでもあるのでは? と感じます。 若者を中心に好まれる「チルアウト※」な雰囲気にも合っているのではないでしょうか?

※チルアウト(chill out)……心を落ち着かせるという意味で、「まったりする、リラックスする」という意味で使われる俗語。

5色全て使用せずとも、サブカラーと組み合わせることで、バリエーションを持たせて使用してもよいでしょう。ポイントとしては、グレッシュ系にするためにK(ブラック)を入れずに色をつくることをオススメします。

【使用カラー】#BBAAD2 #A5A3D0 #6C69AE #E9E6F3 #A2CBE5 #BFC0C0 #964C8A

■駒崎先生の解説
「ベリーペリ(Very Peri)」という色を使用した配色です。

ベリーペリは青色をベースに赤みを感じる紫色を融合させた色で、創造性や好奇心を活気づけ、デジタルと生活の融合や、パンデミックが起きたことにより新しい生活様式へ移り変わる変革の時代を象徴した色として、トレンドカラーとして使用され始めています。トーンオントーン系にまとめて使用することで、知的な配色になります。

またサブカラーを使用することで、少しモダンにも変化させられるでしょう。赤紫系のサブカラーは強めですから面積を少なめで使用するとよいですね。

【使用カラー】#ECAFB2 #E098C1 #E78493 #F0C3D7 #F2D7D0 #F8F7F0 #E6E6E6

■駒崎先生の解説
ピンクといえば、以前はヴィヴィットなオペラピンクのような色が好まれていました。しかし近年は、男女問わずピンクを好む人は多くなり、ユニセックスカラーとも言える色になったように思います。少し落ち着かせ、サブカラーを多めに使用すれば、よりユニセックスカラーへと変身させることもできるでしょう。

【使用カラー】#D474AB #D55C73 #E5A856 #4D9D7A #5065A3 #D3CEBD #EFEEDF #4C4948

■駒崎先生の解説
隣国である韓国の文化は、私たちを魅了し続けています。韓国カラーの要素はさまざまな商品などにも盛り込まれ、あちこちで見受けられるようになっています。

最近は、従来の韓国文化カラーの使い方にも変化が出ています。人気の「くすみカラー」の要素を少し入れ、サブカラーをベースに使用すれば、また新たな味わいに。特に、サブカラーにはブラックではなく、濃いめのグレーを使用すれば、強すぎずソフトな明るいイメージをつくることができます。

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それぞれ個性豊かな、4パターンの配色レシピをご紹介しました。そのまま創作に取り入れるもよし、自分好みにアレンジするもよし。「エモい」エッセンスを取り入れたくなったときは、ぜひ活用してみてくださいね。

解説・駒崎浩代
千葉県野田市で生まれる。因習を大切にする材木商の父のもとで自由闊達な少女時代を過ごし、中学から東京で学び美大デザイン科卒業後、食品関係のパッケージ企画・制作会社に勤務しながら和装の仕立てを学び染色も始める。その後大学院で学び修了後、フリーのデザイナーとしてグラフィックをはじめ様々な分野のデザインを手がける。現在は、和」に関するものを得意とし、テキスタイルや商品企画、店舗・旅館のアートワークやディレクションを手がけながら「KOMAHIRO WORD」のオリジナル作品を制作している。
公式HP

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