流れるようにテーマを変え、表現していく。絵描き・池田幸穂の発想力とは

こんにちは!絵描きとして絵を描きながら、NDSや大人とこどもの絵画教室で講師をしております、池田幸穂です。後編ではこどもの絵画教室、「こどものアトリエ」での活動についてお届けします!

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楽しいことも学ぶこともたくさんある場。絵描き活動における発想力の源となっています。

「こどものアトリエ」について

みなさんはこどものアトリエと聞いてどんなイメージを思い浮かべますか?
むかし習っていたよ!という方もたくさんいると思います。
私の話になりますが、小学校2年生の時に訪れたこどものアトリエで、大人の描いた油絵が壁の上の方にずらりとかかっていて、おじいちゃん先生は赤いベレー帽をかぶっていました。こども心に、大人になったらベレー帽をかぶって、エプロンして、油絵でテーブルの上のリンゴや、遠くの山並みを描くんだろうなぁ!とワクワクしたのを覚えています。毎年、秋になると、おじいちゃん先生が、八ヶ岳のアトリエから持って帰ってきた大量の落ち葉や小枝を使ってコラージュしたり、粘土の時には貝殻を貼り付けたり、自然の素材を使わせてくれたことがとても楽しく印象に残っています。私もその体験が忘れられなくて、落ち葉や貝、石を素材とした立体を企画しています。

こどものアトリエに勤務して7年、今年から独立して、杉並区の地域区民センターで開催しています。こどものアトリエのお仕事のご縁で、他にも、小学生のスケッチ大会でのお仕事や、公民館や小学校でのワークショップ、夏休みのワークショップや、宿題のポスター作りのお仕事など、多岐にわたって広がっていっています。こどものアトリエでは毎週テーマを考えて持っていくのですが、私のアトリエは自由度が高いので、のびのび、自分のやりたいテーマを持ってくる子もいます。1対1での対話ができる人数で取り組むことにしていて、一人一人に向き合って、それぞれに合わせた内容に柔軟に対応していきたいと考えています。

こどもたちが、それぞれの『好き』を表現することで、豊かな発想が生まれたり、テクニックが身についたり、年の違う子から刺激をもらったりすることこそがアトリエの醍醐味だと思っています。そして、何より、興味のあることが次から次へと溢れ出てくるこどもたちから、刺激をもらわない日はありません!

紙でビー玉転がしを作ったときには、工夫して高さを出して、360度、ビー玉が1回転するジェットコースターにした子がいました。糸とストローも使って、滑車を付ける工夫を凝らした子もいました。私のビー玉転がしの見本から、なるほど!こうアイデアが展開されるのか!と驚きました。三角や丸、四角で抽象的な絵を描くテーマだったとき、線を引くために用意した定規のヘリに絵の具をつけて、直線のスタンプにして、リズムを刻むように絵にスタンピングしていった表現にも驚かされました。

前回紹介した絵「すずらんの下で、」に出てきた昆虫のことは、小学生の昆虫少年くんから、公園にいた虫のお話を毎週聞いているうちに、こんな風に楽しむんだ!!って影響されて、だんだん興味が湧いてきて、アイデアが閃きました。私も面白くなってきて「見つけたカナブンの色がピンクだったよ~」と報告したり、図鑑を見ながら蜂について教えてもらったり。こどものアトリエに身を置くことで、自分の中にあったはずの、忘れていた『こどものこころ』を呼び覚ましてくれました!

こどものアトリエでは「楽しい」を一番大切にしています。白でもない黒でもない、広い価値観と多様性を認めあうには、自分自身が楽しんでこどもたち皆と同じ目線で過ごそう!と決めています。
普段の自分の制作でも、興味があることや『好き』を追求していくと、自分らしさにつながっていきます。こどものアトリエと同じで、まずは絵を描くことが「楽しい」という気持ちをもち続けることが、いま、特に、大切だと感じています。こどものアトリエのお仕事も、自分自身の制作も、日常の全ての体験が、相互作用によって、影響しつながって、作品を生み出す契機となっています。

文・池田幸穂
絵描き / Gallery MoMo 所属 / 武蔵野美術大学卒業後、個展多数。ワークショップ等。海外のアートフェアに参加。図書館に作品常設。

 

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