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『孤独のグルメ』作画漫画家・谷口ジローが描き続けた世界。世田谷文学館にて開催「歩くひと 谷口ジロー展」自筆原画約300点。

日本、そして海外でも多くの読者を持つ漫画家・谷口ジロー。貴重な自筆原画約300点を紹介する大規模個展『描くひと 谷口ジロー展』が世田谷文学館にて開催中です。主人公・井之頭五郎が全国各地の食事処をふらりと食べ歩く、いま話題のテレビ連続ドラマ『孤独のグルメ』の原作漫画の作画も手掛けています。

 

深い読後感。緻密な作画と構成によって描く作品の世界観に、読者を惹きこむ。

『「坊っちゃん」の時代』©PAPIER

『「坊っちゃん」の時代』、『歩くひと』、『事件屋稼業』、『神々の山嶺』、『父の暦』、『ブランカ』のほか、数々の名作品を描き続けた谷口ジロー。緻密な作画、構成によって描き出される作品は、独自の世界観、時空間に読者を惹きこみます。読み終わった後は心がすっと落ち着くような、深い読後感を残すことでも知られています。

 

海外では大人の読者に堪える芸術として高い評価を受け、フランスのルーヴル美術館からもオリジナル作品を委嘱されています。世界で認められる日本の漫画文化の中でも、その成熟を象徴する存在として挙げられる谷口ジロー作品の魅力を、本展示ではたっぷりと堪能することができます。

 

リアリティーと気品、読む者の心を強く揺さぶる普遍的な作品たち。谷口ジローに向けられた著名人によるメッセージ(展示会フライヤ—・場内パネルより)

漫画原作者や編集者、『孤独のグルメ』TVドラマで主人公を演じる俳優・松重豊さんなど著名人からの熱いメッセージも届いています。

『神々の山嶺』©PAPIER

谷口ジローは、産業としてのマンガに付き物のさまざまな制約や約束から少しずつ解き放たれ、日本のマンガと世界のマンガの間を自由に行き来するようになりました。そうした作家は何人かいますが、彼はその中でも主だったひとりです。しかし、何より重要なのは、彼が現代において、最も普遍的で、読む者の心を強く揺さぶる作品を生み出した作者だということです。
ブノワ・ペータース(漫画原作者、小説家、批評家)

 

谷口ジローの温顔と、その下に隠された静かな闘志は終生変わらなかった。自分の才能を磨く努力を怠らず、あらたな挑戦を恐れなかった彼は、マンガ家という天職を生ききった。
関川夏央(作家/『事件屋稼業』『「坊っちゃん」の時代』ほか共作者)

 

だからいったでしょ、谷口ジローはもっともっと評価されなきゃいけないんだって!日本の漫画家としてじゃなくて、世界の大人向け作家としてね。
夏目房之介(漫画批評家)

 

谷口さんの絵はリアリティーの中に気品がそそり立っていて、そこに実写で立ち向かうにはかなりの覚悟が要りました。細部に至るまで手が抜けない作業を自らに課すことになったのは、良い意味で谷口さんの呪縛に他なりません。
松重豊(俳優/テレビドラマ『孤独のグルメ』主演)

 

セリフがない漫画作品。世界に評価される繊細な描画と精巧な表現技術。

90年代、谷口は実に多彩な作品を次々と発表します。「歩くひと」(90〜91年)は、セリフがほとんどなく、主人公の表情や風景で話の流れがつくられ、「犬を飼う」(91年)では、谷口が自らの飼い犬を看取った経験を基に描かれました。死にゆく愛犬から目を背けず、愛情をもって細やかに描写したこの作品は、92年に小学館漫画賞審査委員特別賞を受賞。「歩くという行為」や「愛犬の死」などのそれまで漫画にされにくかった題材に挑み、国内だけでなく海外でも高く評価されました。

 

「JiroTaniguchi」は着実に愛読者を増やしていきました。海外での本格的な評価は2000年代に入ると一気に高まり、フランス、スペイン、イタリア、ドイツ、韓国他各国の漫画祭等で次々と賞を受賞します。平凡な男がひたすら歩くだけ、そしてセリフがほとんどない描写の中でも、穏やかな木漏れ日を感じさせる雲のスクリーントーン技術や、街や路地裏、住宅街などを繊細に表現する洗練された描線に、どこか映像的な精巧さを感じます。

 

ルーブル美術館、そしてルイ・ヴィトンのトラベルブックも制作。

谷口ジローは、1947年8月14日生まれ。高校卒業まで鳥取県鳥取市で過ごし京都で就職しましたが、20歳の時に漫画家を目指して上京します。71年頃、漫画家アシスタントをしている時代に出会ったBD(ベーデー。フランスの漫画)やメビウスをはじめとするヨーロッパの作家の作品から、さまざまな描写を吸収したといわれています。

ルイ・ヴィトンの「トラベルブック」コレクションでは谷口ジローがヴェネツィアを舞台にストーリーとイマジネーションを膨らませ、独自の視点でその風景を描いています。鋭い感性と深い詩情が表現され、ヨーロッパの美しい建造物や、レストランで食べる食事、石畳の遊歩道などが谷口ジロー独自の世界観によって描かれています。

 

世田谷文学館にて開催「歩くひと 谷口ジロー展」自筆原画約300点。

本展示では貴重な自筆原画約300点を、時代の流れに沿ってゆっくりと眺めることができます。「何でも漫画にしてみたい」と語った谷口ジローが最後まで描き続けた漫画の世界を愉しむことができます。

 

「描くひと 谷口ジロー展」は世田谷文学館にて2月27日(日)まで開催中。

描くひと 谷口ジロー展
2021年10月16日(土)~2022年2月27日(日)
10:00~18:00(展覧会入場、ミュージアムショップの営業は17:30まで)
※月曜日休館

世田谷文学館2階展示室

 

世田谷文学館

ご来館の際は、事前にホームページにて最新情報をご確認ください

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