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きいろとあおはまざるとみどりになる⑤
前回のお話↓
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レオ・レオーニについて
レオ・レオーニはオランダ生まれ。父の転勤によりベルギーにいたこともアメリカにいたこともイタリアにいたこともある。スイスの大学で経済学を学んでいたが、映画の仕事をする夢をもってイタリアにもどる。イタリアの製菓会社の広報として職を得て、やがて独立してデザイナーとして活躍するが、ファシズムの台頭によりユダヤ系の血筋をひくレオーニはアメリカに渡ることを余儀なくされる。フィラデルフィア、ニューヨークでグラフィックデザイナー、アートディレクターとして活躍するがふたたびイタリアにもどり、こんどは絵本作家として世界中のひとたちがかれの創作物からインスピレーションを得ることになる。
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レオ・レオーニ展ポストカード
レオーニは、建築家、アートディレクター、芸術哲学者、芸術家、著者、展覧会受賞者、評論家、漫画家、デザイナー、エコノミスト、編集者、イラストレーター、講師、言語学者、映画評論家、画家、親、先生、旅人と彼独特のユーモアをまじえた多様な肩書きをもつ。
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2007年にブリュッセルに旅行に行って、万博跡地にいまだにたつアトミウムのなかを見学したときに購入した本、ポストカード、切手。レオ・レオーニのアメリカ館でのトラブルはまったく知らなかった。この本には、「Unfinished Business」パビリオンは掲載されていない。
『WORLDS BETWEEN The Autobiography of Leo Lionni』の「WORLDS BETWEEN]というのは、アメリカでのグラフィックデザイン、アートディレクションの仕事とその後のイタリアでの絵本や絵画、彫刻などの創作物、アメリカ的な考え方とイタリア的な考え方、そんな2つのことを指すのかな。
青がアメリカでのデザイナー生活、黄色がイタリアでの創作活動だとすれば、それが混じると緑になる。
もっと言えば、かれは人種や肩書きにとらわれず、多様な色を混ぜ、何色にもなる。
至光社からでている『あおくんときいろちゃん』は現在、第52刷。レオ・レオーニの魂は時代も場所も越えて100年続いていく。
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エリック・カールの『I SEE A SONG』と、レオ・レオーニの『Little Blue and Little Yellow』。こうやって表紙を見比べると、エリック・カールの絵本も月(あお)と太陽(きいろ)が混ざって(みどり)になっている。レオーニが幼少期に母方の叔父の家に飾ってあるシャガールのヴァイオリン弾きの絵だったという記述を見つけた。
文:守先正
装丁家。1962年兵庫県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科卒業。
花王、鈴木成一デザイン室を経て、‘96 年モリサキデザイン設立。
大学の先輩でもある鈴木成一氏にならい小説から実用書まで幅広くデザインする。
エリック・カール『ありえない!』偕成社、斉藤隆介、滝平二郎、アーサー・ビナード『he Booyoo Tree モチモチの木』などの絵本のデザインも手掛ける。