えかきー出張連載 厚塗り講座② 陰影に着色!グリザイユ画法
こんにちは!絵描き向けメディア「えかきー」のライター兼イラストレーターのニクスキーと申します。
厚塗り講座第二回目の今回は「グリザイユ画法」について解説をしていきます!
厚塗り講座第一回目ではベーシックな厚塗りに関しての解説をしておりますのでまだ未見の方はこちらもどうぞ!
前回の記事はこちら
グリザイユ画法ってどんな塗り?
グリザイユ画法(グリザイユがほう)とは、手描きの絵画/イラストレーションの技法の一つで、単色または限られた色調を使用して、灰色や茶色などのモノクロームまたはニュアンスのあるトーンで描かれた作品にさらに、水彩などの半透明の絵の具で色を乗せる技法となります。
デジタルでのグリザイユ画法は、モノクロームだけで陰影だけを塗るという工程は上記の手法と同じですが、絵の具の代わりに乗算やオーバーレイなどのレイヤーブレンドを使い色を乗せていくという技法となります。
色そのものを塗り重ねていく第一回目のベーシックな厚塗りとは違い、レイヤーブレンドを駆使して色を乗せていくため知識と技術が必要な分、難易度が高めの塗り方でもあります。
▼ベーシックな厚塗りとグリザイユ画法の工程の違い
▼ベーシックな厚塗りとグリザイユ画法の仕上がりの違い
ベーシックな厚塗りに比べてパキッとコントラストがはっきりした印象のグリザイユ画法塗り。
グリザイユ画法のメリットデメリット
工程の始めに陰影をつけるという独特な技法の「グリザイユ画法」のメリットとデメリットをご紹介します。
グリザイユ画法のメリット
・最初にグレーで影をつけるので影色に悩まなくて良い。
・イラスト全体の陰影をまとめて入れてしまうため濃淡のバランスがとりやすい。
・工程自体がシンプルなので真似してチャレンジしやすい。
・レイヤー数を絞ることで作業時間を時短できる。
・陰影を操作しやすいためダイナミックな絵作りができる。
・立体を意識して塗るようになるため極めるほどに画力が上がる。
グリザイユ画法のデメリット
・色のベースにグレーの陰影があるため色がくすみやすい。
・オーバーレイの使いすぎで色飛びしやすい。
・陰影を表現する必要があるためクオリティを上げるためには知識が必要。
グリザイユ画法をやってみよう!
それでは次に私がいつもやっているグリザイユ画法での塗り方を解説していきます。グリザイユ画法も絵描きの数だけ塗り方が存在する技法となりますので、この記事の情報を元に自分なりの手段を模索してみていただけたら嬉しいです。
▼グリザイユ画法を用いて塗ったイラストの完成形はこちら。
1.工程を見てみよう!
グリザイユ画法の工程は以下となります。
1.ベースを塗る
2.ベースの上に陰影をつける 3.レイヤーブレンドで全体に色をつける 4.濃淡を再調整する 5.主線の色を塗りに馴染ませる 6.主線の一部を描き起こす 7.奥行きを入れる 8.ハイライトを入れる |
2.実践してみよう!
1.ベースを塗る
2-1-1.線画を用意する。
線画は今回も第一回目と同じ線画を使って着色していきます。(どのくらい塗りの差があるか確認してみてくださいね) 使用アプリは今回もPC版メディバンペイントですが、他のアプリでも実践できるかと思いますのでご安心ください。
使用ブラシ:鉛筆ブラシ https://medibangpaint.com/material/mb010111/
※皆さんもこの線画をダウンロードして色塗り練習用に使ってみてください!
2-1-2.色のベースをグレーで塗る
線画(主線)の下に新規レイヤーを追加し、キャラクターの部分のみをグレーで塗りつぶします。
2.ベースの上に陰影をつける
次に先ほど塗ったグレーのベースの上に陰影をつけていきます。
2-2-1.ベースの上に新規レイヤーを作ってクリッピング(※)を設定する
クリッピングとは
下のレイヤーを参照して、そのレイヤーに描かれている部分のみに線を引いたり色を塗ったりすることの出来るレイヤー機能です。ほとんどのペイントソフトにデフォルトで搭載されています。
|
2-2-2.ベースのグレーと濃いグレーを軸に陰影をつける
今回は以下の「ベースのグレー」と「濃いめのグレー」の2色を軸に塗っていきます。
画像を保存してスポイトで色を吸ってみてください。
使用ブラシ:アルコールマーカーブラシ ブラシ不透明度:100% ※メディバンペイントアプリ内で無料ダウンロードできます。
今回塗った陰影がこちらです。
今回は左上から光が当たっている事を意識した陰影を入れています。初心者の方は光と影の入れ方なんて分からない…!!!と悩まれる方も多いと思いますのでまずは上記のグレーを真似するところから初めていただけたらと思います。
ワンポイントアドバイス! - 陰影の塗り方 –
陰影を塗る際、厚塗りだしとついベタッと厚く塗ってしまう方が割といるという認識なのですが、見栄えの良い厚塗りに仕上げるためにはなるべく筆跡が残るように塗ってみましょう!
▼簡単な筆跡の残し方
1.濃いグレーを塗る
まず濃いグレーを範囲広めに塗ります。この段階では何度も筆を重ねるのではなく、ワンストロークで塗るよう意識しましょう。
2.さらに濃いグレーを塗る
更にそのまま上から塗りを重ねてまばらに濃いグレーの部分を作ります。(色を変える必要はありません。)
3.薄いグレーを塗る
グレーのベース部分をスポイトでとり、濃いグレーの上にまばらに薄いグレーをのせます。
これで単調だったグレーの中に軽く筆跡のついたニュアンスが生まれました。この後に重ねるレイヤーブレンドの色や濃さによっては消えてしまうニュアンスですが、この些細なニュアンスが仕上がりの”厚塗りらしさ”に影響してくると個人的には思っています。
3.レイヤーブレンドで全体に色をつける
次にレイヤーブレンドを使って全体に色を塗っていきます。ちなみに今回全体の色付けに使うレイヤーブレンドは「乗算」と「オーバーレイ」です。先ほどのメリットデメリットでも挙げたように、グリザイユ画法は色がくすんだり、逆に彩度が高くなりすぎたりと慣れないうちは操作が難しい塗りとなっています。
なのではじめは
①彩度低めにほんのり色ををつける
②オーバーレイで部分的に彩度の高い部分を作ると
という手法がおすすめです。
今回のキャラクターの色は第一回目で作った色をそのまま使っていきます。
2-3-1.色のレイヤーをフォルダにまとめて統合
まずいきなりですが、色のレイヤーをすべてフォルダにまとめてフォルダ統合してしまいます。
第一回では、パーツ毎にレイヤーを分けてパーツ毎に影を付けたり色の調整を行いましたが、グリザイユ画法では時短での作業を重視したいのでパーツ毎の調整ではなく、全体を見ながらレイヤーブレンドを重ねてバランスを調整する手法をとっています。(もちろんレイヤー分けの指定があるイラスト案件のような場合は例外です。)
2-3-2.統合したレイヤーのブレンドと不透明度を調整
統合したレイヤーをレイヤーブレンドを「乗算」レイヤー不透明度を「85%」にします。
これだけでもうっすら色がつきましたがまだまだ薄暗くて味気が無い…!
2-3-3.レイヤー複製をしてレイヤーブレンドを変更
次に「塗り1」レイヤーを複製して上に移動し、レイヤーブレンドをオーバーレイに変更します。
色が鮮やかにはなったのですが、全体が明るすぎてバランスが悪い状態になってしまいました。
2-3-4.レイヤー不透明度の変更
という事で明るさを落ち着かせるためにレイヤー不透明度を「100%」から「57%」に変更します。
これで乗算だけの時より明るく、先ほどよりも落ち着いた色になりました!ですが、まだ顔色がくすんでいるせいで見栄えが悪い…
2-3-5.顔の色調整
という事でさらに新規レイヤーを上に作り、顔の部分だけを暗めのピンク色で塗り、レイヤーブレンドをオーバーレイにします。
▼使用した色はこちら 顔の明るい部分と暗い部分で使うピンクの色を変えています。
使用ブラシ:鉛筆ブラシ
これで顔の部分も調和の取れた明るさになりました!
顔の部分が際立った明るさになったおかげでキャラクターの表情が目立つようになりました。
このようにグリザイユはどのレイヤーブレンドをどこにどのように重ねていくかが大事な塗り方と思っています。少しずつ明るい色を重ねていく事でくすみすぎや彩度が高すぎる現象を回避できますので、慣れないうちは焦らずに重ねることを意識してみてください。
4.陰影を再調整する
全体に色をつけてみて、少し陰影のバランスが悪いと感じたためここからははじめに塗ったグレーの陰影に塗り足しをしてイラスト全体のバランスを調整していきます。
2-4-1.色のレイヤーを非表示にする
まず一度色のレイヤーをすべて非表示にします。
2-4-2.グレーの陰影を調整
グレーの陰影部分を以下のように整えました。ぱっと見は同じように見えますが、首周りや後ろ髪の濃淡、顔の影の濃淡に注目していただくことで変化が確認できると思います。
※グレーの陰影の調整をする時は時折色のレイヤーを表示して完成のバランスを見ながら塗りましょう!
陰影の調整により先ほどより印象がくっきりとしました。
以上の様に、今回のグリザイユ画法での絵作りは
①グレーでの陰影
②レイヤーブレンドでの色の調整
③グレーの陰影の調整
の3つで構成されています。
5.主線の色を馴染ませる
ここからはイラスト自体のクオリティを更に上げるための応用テクニックです。
第一回の講座と同様に主線に色をつけて主線を馴染ませます。色をつける手段は第一回目の「3-3.主線の色を馴染ませる」と同じですのでこちらを参照してみてくださいね。
厚塗り講座第一回目のURL
線画の色変え完了!
ちなみに線画への色付けは「2-3-2.統合したレイヤーのブレンドと不透明度を調整」の工程でキャラクターに色付けをしているレイヤーを複製したものを使っています。
6.主線の一部を描き起こす
第一回目と同様に、レイヤーの1番上に新規レイヤーを作り、主線の一部を濃い色で描き起こしていきます。
使用ブラシ:鉛筆ブラシ
今回はこの位置を描き起こしてみました。
主線の一部が描き起こされたことによりキャラクターに立体感を出すことができました。 i2_031.jpg
7.奥行きを入れる
次にイラストにより奥行きを持たせるために、キャラクターの奥側に明るい水色を入れて抜け感を表現したいと思います。全体が濃くなりがちな厚塗りでは特に有効な手法なのでぜひ取り入れてみてくださいね。
▼使用した色はこちら
使用ブラシ:アルコールマーカーブラシ
2-7-1.新規レイヤーを作って奥行きの色を塗る
線画レイヤーの一つ下に新規レイヤー(レイヤーブレンド:通常)を作って髪の襟足、フードの奥、袖などを塗ります。
2-7-2.レイヤーブレンドと不透明度の変更
水色に塗ったレイヤーのレイヤーをブレンドを「スクリーン」にし、レイヤー不透明度を「24%」に下げて奥行き完成!
先ほどよりも抜け感のあるイラストになりました。
8.ハイライトを入れる
最後にレイヤーの1番上に新規レイヤーを作り、キャラクターにハイライトを入れます。
今回はこの位置にの状態で入れてみました。 使用ブラシ:鉛筆ブラシ レイヤーブレンド:通常
※どこに入れたかをわかりやすくするために赤色にしています。
ハイライトを入れたことにより、キャラクターが引き締まりより立体感が出ました。
ハイライトを入れ終わったら背景にグレーの枠を敷いて完成!
以上が私なりの「グリザイユ画法」の解説となります。グリザイユ画法はとにかく数をこなす事でコツが掴める塗り方だと思っています。
最初は陰影の付け方が分からない/思い描いた色と違うなど迷うことも多いかと思いますが、焦らずひとつひとつ試しながら模索していってほしいです!
次回は最強の時短厚塗り「GtC塗り」での厚塗りの解説です!
お楽しみに!
ライター:ミートポーク・ニクスキー
新し物好きなので新しい絵の技術やお絵描きグッズを見るとすぐ飛びついてしまう習性がある某企業勤めの副業絵描きライター。繊細さんなためか気圧の変動に弱い。好きな動物は猫。実は肉より魚派。
絵描き向けメディアサイト『えかきー』 「お絵描きに役立つアイテムレビュー」「すべての絵描きが共感できるあるある記事」「注目のお絵描き情報」etc… お絵描きに関する色々な情報を発信していきます。https://ekakey.com/ |
↓PicoN!アプリインストールはこちら