フォトグラファーのためのカラーマネージメント実践〈第2回〉
第1回はこちら
モニターをキャリブレーションする
一旦ざっくりキャリブレーション
まずは一旦ざっくりとキャリブレーションします。照明の色温度と照度を参考に、ターゲットは色温度5000K、輝度は120cd/m²に設定しました。
ColorEdgeでは、ColorNavigatorという純正のソフトでキャリブレーションします。その他のソフトではソフトウェアキャリブレーションになってしまい、せっかくの基板(ハードウェア)を活かせないので注意してください。
この機種には、モニター上部に小さなセンサーが内蔵されていて、キャリブレーションのときに出てきます。このセンサーの下にあらゆる色が表示されて、それを一つずつ測定していきます。
紙白に合わせてさらに追い込む
一旦キャリブレーションしたら、さらに追い込みます。ここが大きなポイントです。
プリントする用紙を準備して、モニターにはPhotoshopでRGB255の白を表示させて見比べます。
そこで見える白の色味と明るさの差が、その時点でのモニター対照明・紙白の差です。それをさらに埋めていきます。
ColorNavigatorの手動調整機能を使って、明るさの差を「輝度」で、白の色の差を「白色点」で近づけていきます。だいたい合ったと思ったら、再度キャリブレーション。慣れるまでは、何度か繰り返して近付けていくことになると思います。しっくりきたら準備完了です。
サンプル撮影
今回は、日本写真芸術専門学校スタッフの黒田渉さんに、一連のフローを体験していただきます。黒田さんはこちらの卒業生でもあり、写真家としても活動されています。
白バックにお花、ストロボ1灯のセットを用意していただき、評価サンプルを撮影します。同時にColorCheckerを入れたカットも撮影しておきます。
MacBookの未調整のモニターでRAW現像してみる
まずは黒田さんに、MacBook Proのモニターを見ながら、現物通りの色味をターゲットにRAW現像してもらいました。オレンジのお花がどうしても現物とは違うトーンになってしまい、苦戦したようです。
こんな感じの仕上がりになりました。
調整済みモニターで見てみると
ではこれを調整済みのColorEdgeでも見てみましょう。どうですか?
黒田さん「うーん、MacBookで見ていたより、メリハリがなくて眠い感じですね。それに黄色っぽい感じがする」
これがまさに、未調整のモニターと調整済みのモニターの違いです。MacBookに限らず、iMacでも同じ傾向になります。一般的なPCモニターの色温度は6500Kで、輝度やコントラストがかなり高くなっています。そこからすれば、5000Kの照明下で紙白に合わせて調整したモニターは、眠くてアンバーな見え方になります。
大事なのは、ここで「MacBookの見え方が正しい」ではなく「ColorEdgeの見え方が正しい」と捉えることです。MacBookの方がパッと見の見栄えが良いので、「MacBookの見え方が正しい」と思ってしまいがちです。
ここでわかったように、写真の仕上げ方はモニターでの見え方に大きく依存します。RAW現像時にヒストグラムやRGB値を見るとしても、具体的な画づくりはモニター頼りです。モニターの表示が正しくなければ、せっかく作り込んだ色も土台から崩れてしまいます。土台を正しく固めた上で画づくりをすることが大切です。
MacBook Proもキャリブレーションすると
モニターの違いがわかったところで、MacBook Proのモニターもキャリブレーションしてみます。こちらはソフトウェアキャリブレーションになります。今回は、colorchecker STUDIOという、モニターだけでなくプリンタープロファイルも作成できるツールを使いました。ColorNavigatorで作成された最終の値を参照して、それをターゲットにします。
外付のセンサーをモニターに掛けて、あらゆる色が測定されていきます。
さてどうでしょう。
黒田さん「あー本当だ。ほぼほぼ同じ見え方になりましたね」
「ColorEdgeの見え方が正しかった」というのがわかると思います。
モニターにもちゃんとお金をかけましょう
モニターは、撮影・編集した画像が、意図した状態になっているかを確認、評価するための機材です。モニター=監視装置なので、「好ましい表示」ではなく「正しい表示」がされることが重要です。画質や色調が悪くても綺麗に表示しようとするディスプレイやテレビとは違い、悪いものは悪く表示してくれないと困るわけです。
正しく表示できるモニターがないということは、見え方の保証がない=何が正解かわからない状態で写真を制作するということですから、モニターもカメラ、レンズと同等の投資対象と考えましょう。
ノートPCやモニター一体型PCを使っていると、別にモニターを買うのはもったいないと感じるかもしれません。ですが、デュアルモニターになることでの生産性向上はかなりのものがあります。筆者は、メインモニターには画像を画面いっぱいに表示させて、サブモニターにツールパレットを並べて使っています。サブモニターにメールソフトの画面や音楽再生ソフトの画面を出しておくのもよいでしょう。
[まとめ]
モニターの色と明るさは、環境光やプリント用紙に合わせて設定します。
一旦キャリブレーションした後に、目視評価で手動調整して追い込みます。
未調整のPCモニターは、Apple製だとしても、写真制作に適切な色と明るさにはなっていません。
モニターにもちゃんとお金をかけましょう。
→「カメラプロファイルをつくる」へ続きます