• HOME
  • ブログ
  • 写真
  • 【展示レポ】世界中の写真家たちとともにこの最も小さな接続詞「と」から世界の可能性を問い直す24日間「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO 2026」いよいよ10/3開幕

【展示レポ】世界中の写真家たちとともにこの最も小さな接続詞「と」から世界の可能性を問い直す24日間「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO 2026」いよいよ10/3開幕

八重洲・日本橋・京橋エリアの都市空間を舞台に開催される国際写真祭「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO 2026」が、2026年10月3日より24日間にわたって開催されます。メディア向け内覧会にお邪魔し、その見どころをいち早くご紹介します。

取材協力:株式会社シー・エム・エス

『T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO』レポート〜東京を、写真の都に。〜

2020年より、東京駅・東側エリアにて地域と連携を図りながら実施されてきたT3は、フェスティバル、フェア、人材育成プログラムの3つの柱で構築されています。

「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO」は、世界的なアーティストを東京に迎え、作品の発表と制作の場を提供する写真フェスティバルです。

エリア内にある「TOFROM YAESU TOWER」や「東京ミッドタウン八重洲」などの商業施設の一角や、「東京建物日本橋ビル」などの企業所有のビルのエントランス、屋外の壁面など、ありとあらゆる場所が展示会場になっています。

今年はさらに拡大し、全17会場にてT3の展示を楽しむことができます。地域連携展示会場も、14会場あるので、何日かかけて巡るのがおすすめ。

本フェスティバル・ファウンダーの速水惟広さんの解説を聞きながら、会場を巡っていきます。

T3 ファウンダー 速水惟広

1982年大阪府生まれ。T3ファウンダー。2017年に上野公園にて東京都で初となる屋外型国際写真祭、T3を開催。20年より東京駅東側エリアに舞台を移す。日本大学芸術学部写真学科非常勤講師。

今年のテーマは「と(&)」。撮る者と、写る者の眼差しが交差し、写真となった世界の断片は並べられ繋がり、作品と、見る者が、静かに触れる。

「と」は、日本語でいちばん小さな接続詞です。

けれど、世界のかたちを決めているのはこの小さな一文字かもしれません。

「自分と他者」「男と女」「自然と都市」——私たちはいつの間にか、「と」をどちらかを選ぶための区切りとして使っています。ですが、表裏一体や陰陽という言葉があるようにアジアには二項対立ではない「ものの見方」があるはずです。

写真は、もともと「と」の芸術です。撮る者と、写る者の眼差しが交差し、写真となった世界の断片は並べられ繋がり、作品と、見る者が、静かに触れる。

T3 2026は、世界中の写真家たちとともにこの最も小さな接続詞「と」から世界の可能性を問い直す24日間です。(公式ホームページより抜粋)

 

無料ガイド「artlas」をお供に巡ろう

今年からは、会場での鑑賞をサポートする音声ガイド「ARTLAS」も導入されています。スマートフォンから作品の解説を音声で聞くことができ、展示を自分のペースで楽しめます。

 

 

T3のMAPを手に入れよう。

トフロム八重洲1Fと東京ミッドタウン八重洲1Fにはインフォメーションセンターを設置。T3全体MAPの配布や、デジタルスタンプラリーの景品の受け取りができます。

 

複数の会場を巡る際は、まずインフォメーションセンターに立ち寄って、全体MAPを手に入れておくのがおすすめです。

 

「と(&)」でつながる、写真と街

労働の記憶を王冠へと反転させる

内覧会で最初に訪れたのは、TOFROM YAESU TOWER。1F檜物町スクエアには、ザネレ・ムホリが自身を撮影したシリーズ『Somnyama Ngonyama, Hail the Dark Lioness(漆黒のライオネスよ、讃えよ)』が展示されていました。

この作品では、日常的に使われているさまざまな「もの」が登場します。

例えば、洗濯ばさみや石、トイレットペーパーなど、一見すると写真作品のための特別なものには見えないものを使って、それらを王冠のように身につけてセルフポートレートを制作しています。

ここで考えてほしいのが、「写真を撮る」という行為そのものです。

英語では「take a photograph」と言います。

「take」という言葉には、「取る」という意味があります。

つまり、写真を撮るという行為には、ある意味で「何かを取る」という側面があります。

これまでの写真の歴史の中では、写真を「撮る側」と、写真に「撮られる側」という関係がつくられてきました。

撮影する人と、撮影される人。

「見る側」と「見られる側」。

そうした関係性が、写真の中には存在しています。

特にアフリカを写した写真の歴史を考えると、白人男性の写真家がアフリカの人々や民族を撮影し、その写真が「ナショナルジオグラフィック」などの出版物を通して世界に紹介されてきたという歴史があります。

そこでは、「誰が撮るのか」「誰がどう写されるのか」「その人たちがどのように表象されるのか」という決定権を、欧米の白人男性が持っていました。

ムホリは、そうした「他者を撮る」という行為に対して、自分自身をどう表現するのか、という方法を考えます。

そこで行っているのが、セルフポートレートです。

誰かから何かを「取る」のではなく、自分自身で自分の姿を表現する。

そこには、自分自身の表象を自分で決めるという強い意思があります。

 

師と弟子、それぞれの眼差しで捉えた子ども

続いて訪れたのは、東京建物八重洲ビル。こちらには、世界的に知られる写真家・植田正治と、その教えを受けた写真家・牟禮朱美による二人展が開催しています。

オフィスや屋外での展示があるからこそ、アートの好きな人だけが訪れるのではなく、日常の延長線上でアートに触れることができるのが、T3の特徴。

美術館をなんとなく「敷居が高い」「専門知識がないと楽しめないのでは」と行くのをためらっている人もいるのではないでしょうか。東京エリアを散歩しつつ、国際色豊かな写真・アート作品と触れ合う事のできるきっかけとして訪れてみてほしいです。

 

ここでは、内覧会に参加した学生さんが「撮る」と「撮られる」の関係について感じたことを紹介します。

「撮る」と「撮られる」の間にあるもの

印象に残ったのが、「撮る側」と「撮られる側」の関係についてのお話でした。

植田正治の作品については、「子ども心」をテーマにした演出作品を中心に解説を聞きました。演出するということは、撮影者が一方的に被写体を動かすことではなく、撮る人と撮られる人とのコラボレーションでもあるというお話でした。

また、植田正治は土門拳とも関わりがあり、土門拳が追求したリアリズムとの関係から、演出して撮影することについても考えさせられるというお話がありました。リアリティが強く求められていた時代には、「演出して撮ること」に対する葛藤もあったそうです。

一方で、今は誰かを撮ることそのものが難しくなっています。

だからこそ、演出を「撮影者が被写体をコントロールすること」ではなく、「撮る人と撮られる人が一緒につくること」と捉えることができるのだと思いました。その話を聞いて、「撮る」と「撮られる」を、対極にあるものとしてではなく、その二つが掛け合わさることで、ひとりでは生まれなかった写真が生まれることもあります。

「と」を隔てるものとしてではなく、掛け算のようなものとして捉える。

そこには、写真の新しい可能性があるようにも感じました。

 

一枚の写真の奥に広がる時空を、ともに想像する

Gallery & Bakery Tokyo 8分には、鈴木のぞみと上原沙也加の2人展が開催されています。お2人の東川賞受賞作と、その後制作された近作が展示されています。

「写真の町東川賞(ひがしかわしょう)」は、北海道上川郡東川町が1985年から毎年開催している、日本の自治体が主催するものとして初の国際的な写真賞

写真を見るとき、私たちはつい、「きれい」「かっこいい」「すごい」と感じるものに目を向けます。

でも、写真の中に写っているものが、必ずしも一目で「美しい」と感じられるものとは限りません。

そのときに必要になるのが、想像することです。

写真に写っているものだけではなく、その場所で何が起きていたのか。そこにどんな歴史があったのか。写真には直接写っていないものまで想像することで、見えてくるものがあります。

 

都市の表面に刻まれた痕跡を通じて、時間の重なりを見つめる

東京スクエアガーデンで開催されているのは、世界に向けて活躍できる現代作家やキュレーターを発掘・支援することを目的にスタートした 「T3 NEW TALENT」の企画展「Trace Layers」。

 

キュレーター池田佳穂さんが、都市に堆積した痕跡を異なる視点から捉える2人の作家を紹介します。

展では、児玉浩宜さんと何兆南(South HO)さん、2人の作家が都市に残された「痕跡」を、それぞれ異なる時間の捉え方から見つめています。

児玉さんの「BLOCK CITY」が捉えるのは、社会的な出来事が起きている“その瞬間”の都市です。人が集まったり、何かが起こったりすることで、普段とは違う風景が一時的に生まれる。都市は決して固定されたものではなく、人の行為によって刻々と姿を変えていきます。

一方、何さんの「Work Naming Has Yet to Succeed」が目を向けるのは、出来事が過ぎ去った“あと”。抗議活動や社会運動の名残、補修された跡、消された跡。そうしたものは時間が経つにつれて、少しずつ日常の風景に紛れ込んでいきます。

どちらも、いわば「都市に残ったもの」を見ている作品です。

ただ、その「残ったもの」が生まれる瞬間を見るのか、時間が経ったあとに残された痕跡を見るのか。その違いによって、同じ都市でもまったく違った姿が見えてきます。

普段歩いている街にも、もしかしたら、自分が気づいていないだけで、誰かの行為や出来事の記憶が積み重なっている。

そう考えると、いつもの街並みも少し違って見えてきます。

都市は、ただ建物や道路が並んでいる「場所」ではなく、無数の出来事や記憶が重なり、そのたびに書き換えられていくもの。

「Trace Layers」というタイトルの通り、目の前にある風景を一枚の写真として見るのではなく、その奥に積み重なった時間まで想像してみる。

そんな見方を教えてくれる展示でした。

(東京スクエアガーデンのアートギャラリー内に展示されている作品は、平日10:00〜19:00にご覧いただけます)

絶え間なく繋がり合うひとつの連続した世界の一部

東京ミッドタウン八重洲で展示されているのは、アメリカ出身のルーカス・フォグリアの『コンスタント・ブルーム』

作品に登場するのは、アフリカから中東、地中海を越えてヨーロッパへと渡るペインテッド・レディ(ヒメアカタテハ)です。フォグリアはその旅路を辿り、蝶と、道中で出会う人々や風景を撮影しました。

蝶を追っているはずなのに、見えてくるのは蝶だけではありません。そこには人間の暮らしがあり、国境があり、自然と社会がある。

「蝶と人間」「自然と社会」「生態系と政治的境界線」。一見すると別々に見えるものが、この作品の中ではひとつの長い旅の中につながっています。

「AとB」と並べてみることで、初めて見えてくるものがある。

『Constant Bloom』を見ながら、そんな「と」の可能性について考えていました。

 

内覧会はこちらで終了とのことでしたが、まだまだ見られていない会場がたくさんあるので、また改めてゆっくりと作品と向き合いたいと思います!

作品を読み解くヒントが目白押し

本日のオープニングイベントを皮切りに、毎週末、関連イベントがたくさん開催される予定です。

NPIの卒業生や、講師が登壇されるトークイベントもたくさんあり、撮影に来てくれたSHATOの学生さんと盛り上がりました。

 

TPR(TOKYO PHOTOGRAPHIC RESEARCH)座談会:都市と写真

卒業生:築山礁太

 

ポートフォリオレビューカフェ 

卒業生:村越としや

 

未来の「写真」を育てるインキュベーションの場

昨年10月に開催された、写真を学べる17の美大・専門学校生による選抜ポートフォリオ展「T3 STUDENT PROJECT 2025」でグランプリを受賞した閻 玥琳(エン・ゲツリン)による作品展は、富士フォトギャラリーで開催中。

■ご本人のインタビュー記事はこちら

 

 

 

『T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO』は10月26日(月)まで

《展覧会情報》
『T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO 2026』
会期:2026 年 10月3日(土)~26日(月)
開催エリア:東京・八重洲、日本橋、京橋、銀座エリアの屋内、屋外会場
入場:無料
HP:https://t3photo.tokyo/

取材/PicoN!編集部 市村

撮影/日本写真芸術専門学校学生サークルSHATO 三留・山田

 

↓PicoN!アプリインストールはこちら

関連記事