
世界的写真家 セバスチャン・サルガド氏のご逝去に寄せて vol.2
世界的写真家で本校の名誉顧問も務めていただいたセバスチャン・サルガド氏の訃報を受け、かつて氏の指導を受けた本校の卒業生たちから追悼メッセージが届きました。以下にご紹介させていただきます。
張鈺さん(写真家/2018年卒業)
サルガド先生の訃報を聞いて、とても悲しい気持ちになりました。
私は以前、先生のワークショップに参加したことがあります。そのときの先生の姿、話し方、そして写真に対する情熱は、今でも心に残っています。
サルガド先生の写真は、ただ美しいだけではありません。世界の苦しみや、人々の強さ、自然の力を、静かに、でも力強く伝えてくれます。彼の作品を通して、私は写真が人の心を動かす力を持っていることを学びました。
ワークショップでの時間は、私にとってとても大切な思い出です。先生の言葉や表情、そして一緒に見た写真たちは、今も私の中に生きています。
サルガド先生、本当にありがとうございました。先生が見せてくれた世界は、これからも私の中に生き続けます。どうか安らかにおやすみください。
君島佳弘さん(経営者/2008年卒業)
サルガド先生の授業での姿で第一に思い浮かぶのは、トリミング指導のためのL字型の道具を手にしながら「君がこの写真で伝えたいものは何なのか?」と学生たちに何度も問いかける姿です。
「オープンマインド。もっと対象に対して心を開きなさい」「なぜ写真を撮っているのか明確な言葉にしなさい」。そんな、世界に対して常に真摯に向き合おうとする生き方が、サルガド先生が放っていた強いオーラの根源だったのだと思います。
難民や鉱山労働者の惨状を伝えながら、森や水源を再生するために植林を続けた写真家。「(サルガド先生の)神秘的すぎる作風を批判するやつがいても、サルガド先生がやってきたことを批判できるやつなんて一人もいない」。写真校講師のその言葉が強く心に残っています。沢山の学びを頂き本当にありがとうございました。ご冥福をお祈り致します。
ユーリア・スコーゴレワさん(写真家/2013年卒業)
サルガド先生についてのニュースを聞いてとても悲しかったです。
ワークショップを受けてから14年経ちますが、今でもセバスチャン先生のワークショップを思い出します。当時写真の道を始めたばかりの私にとってとても貴重な経験でした。セバスチャン先生の写真についての話と(夫人の)レリア先生の編集と本の作り方はとても勉強になりました。今も、ポートフォリオを作る時に適用しています。
ワークショップ中に、先生に「You are a true photographer」と言われました。自分のキャリアを疑う時に、その言葉を思い出すと、続ける力になります。
また、二人の夫婦としての共同活動にもとてもインスピレーションを与えられました。
写真についての知識だけではなく、先生の厚情や学生に対しての敬意がとても印象に残りました。
山市直佑さん(本校職員/2007年卒業)
2005年、NPIのワークショップでセバスチャン・サルガド氏に写真を見ていただいたことがありました。氏から出された写真課題に学生として取り組みました。初めて彼と向き合ったその時間は短いものでしたが、静かに写真を見つめ、「詩のようだ」と言ってくださったその一言は、今も心に残っています。
サルガド氏は地球規模の視座から人間や自然を見つめ続け、人類の尊厳や地球の美しさ、そして脆さをどう語るのか、その姿勢を私たちに示してくれた存在でした。
それ以来、私にとって写真とは、記録であると同時に、詩でもあるような、人の感情に静かに触れるものとして、ずっと向き合い続けてきました。
遺されたサルガド氏の作品とまなざしは、これからも私たちの世界を静かに照らし続けていくと思います。
心より哀悼の意を表します。
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サルガド先生の情熱とメッセージは、国内外で活躍するたくさんの卒業生たちの胸の中で確かに生き続けています。
日本写真芸術専門学校
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