インテリアデザイン連載「思い描いた建築・インテリアを実現するために 2」
こんにちは、インテリアデザイン科講師の渡辺です。
前回の「観察・情報収集」に続き、設計事務所の仕事の一部をご紹介いたします。
第二回は、戸建住宅設計を例にした「プレゼンテーション・打合せ」
戸建住宅を計画する場合について、少し具体的なお話をさせていただきます。
戸建住宅を計画するためには、まず与えられた敷地と、地域ごとに定められた決まりの中で計画していく必要があります。そしてもちろん、間取りを考えるだけでは無く、住人を雨・風・日射などの外的要因から身を守る箱(家)を作らなければなりません。
この箱を大きく3つの要素に分類します。
まず一つは、”インテリア”と呼ばれる箱の内側のことです。住人の居心地に直結する”目に見える空間”であり、依頼主との打合せでは、最も時間をかけて検討することが多い要素です。
一方で箱の外側は、その地域の街並みや周辺環境を考慮しながらも、外部からその存在を印象付ける要素となり、建物自体の外観のみならず、庭や塀、植栽などの外構も含んで計画します。
そして最後に、内側外側どちらにも属し、そこで人が安全で豊かな生活を営むために必要不可欠な、構造計画、設備計画、断熱計画の検討が必要となります。これらは、言わば骨や血液や皮膚のような役割となり、住宅のみならず、建築には欠かせない要素となります。
設計者は、依頼主の要望やいくつかの制約の中、この3つの要素それぞれに思考を巡らし、住人の居住性を高めていくことが求められます。
設計事務所の仕事は、まず依頼主からの要望をお伺いするところから始まります。要望の中には、同時に叶えることが非常に困難な項目が並ぶことも珍しくない。でもだからといって、どちらかを諦めてもらうことが解決策ではありません。
どうすれば相反する要望を共存させることができるかアイデアを巡らせること、そして本当に必要なものは何かを汲み取る傾聴力や適切な助言力、そうした役割を設計者は担っていると思います。そのために、日頃から様々な知識や理屈を備えておく必要があるんですね。
依頼主の要望の多くは、打合せを重ねることで熟成されていきます。計画が二転三転してしまうこともありますが、ほとんどの方が人生最初で最後の経験のため、納得のいく家づくりをしたい気持ちは皆同じ。
そのため、初期のプレゼンテーションから建物完成までの間、20〜30回程度打合せを重ね、図面・模型・CGパース・建材サンプルやカタログなどを用いて計画を共有していきます。必要に応じて、建材メーカーのショールームを一緒に訪れることもありますね。
ハウスメーカーなどでは、営業・設計・インテリアコーディネート・現場監理と分業されていることが多いですが、少人数で営む設計事務所では、依頼主に寄り添い物件に一貫して関われることが、非常にやりがいを感じる点だと思います。
次回は、「現場監理」についてお話いたします。
前回の記事
文・渡辺一輝
NDSインテリアデザイン科講師。一級建築士。
<略歴>2010年 名古屋市立大学大学院芸術工学研究科修了。鳶・解体などの現場業務、設計事務所にて住宅・店舗・家具設計業務を経て、2015年に建築デザイン事務所 3 ° A R C H I T E C T U R E 設立 2016年より日本デザイナー学院インテリアデザイン科講師