• HOME
  • ブログ
  • アート
  • クリエイティブ圏外漢のクリエイティビティを感じる何か…〈vol.32〉―『シビル・ウォー アメリカ最後の日』

クリエイティブ圏外漢のクリエイティビティを感じる何か…〈vol.32〉―『シビル・ウォー アメリカ最後の日』

おはようございます。こんにちは。こんばんは。
長ーい残暑も終わり、秋めいてまいりましたが
皆様いかがお過ごしでしょうか?

日本では自民党の総裁選が終わり、
衆議院が解散し、総選挙が27日に実施されます。
11月5日にはアメリカ総選挙と選挙の秋ですね。

ということで本日は選挙の秋にちなんだ
映画とそれにまつわる音楽をご紹介。

まずご紹介するのは『シビル・ウォー アメリカ最後の日』です。

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』

分断の末、内戦が勃発したアメリカ合衆国。
19州が連邦政府から離脱し、
テキサス、カリフォルニア同盟からなる西部勢力と
大統領率いる政府軍の武力衝突が各地で起こる。

そんな最中に戦場カメラマンのリーと記者のジョエルは
14ヶ月も取材を受けていない大統領の取材のために
ワシントンD.C.へ1379kmの旅路を計画する。

取材途中に出会ったベテラン記者サミーと
若手カメラマンのジェシーも同乗し、
前線のシャーロッツビルへ向かう…

というあらすじなのだが
最早フィクションというよりも
現実のアメリカの近未来のリアリティショー
見せられているかのような実際感がある。

もっと言ってしまえば
大統領選を経ての(もしくはホワイトハウス襲撃以降の)
分断が行きつく先の現実の可能性である。

本作中で印象的な場面として
ある兵士が敵の素性は知らないのにも関わらず

「(誰か?何故か?は関係なく)

撃たなければ、撃たれるから」

という理由で戦うという描写は
恐ろしくも優れたあらゆる社会の風刺だった。

また別の場面で
ジョエルがライフルを抱えた男から
「お前はどういうアメリカ人だ?」と
問われるシーンがある。

このシーンは
「アメリカ人にも種類がある」ことを
この男が信じていること(=分断が前提)を感じさせ、
そのことが観客を不快にさせる。

それだけでなくアメリカという国の
“共同幻想の崩壊”をも示唆したような
途轍もないシーンだった。

以前の私の『アメリカン・ユートピア』評

“本作は移民国家であり、
多様な人種が一種の“アメリカ的なる”理想を信じて、
フラットなコミュニケーションをすることで
パワーを得てきたアメリカという国が分断、
ディスコミュニケーションにより
“アメリカ的”理想が失われていることの
警鐘とそれをもう一度信じることを訴えている。”

と、2022年に観た『アメリカン・ユートピア』を
観た感想を述べたが、2024年には警鐘空しく
“アメリカ的”理想の崩壊を感じてしまった。

しかもそれが、全くのフィクションというより
近未来を描いたリアリティショーのような本作によって…

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の音楽

本作の内戦状態下のアメリカの緊迫感を演出する
カメラワークとサウンドデザインは凄まじく
機会があったらIMAXで観てほしい作品である。

そして Ben Salisbury and Geoff Barrowによる
劇伴と挿入歌が入った公式プレイリストも聴いてほしい。

Silver Apple、Suside、De La Soulなどの挿入曲が
映画に適切かつ素晴らしい効果を与えているが、

特にラストにかかるSuside/Dream Baby Dreamの
「永遠に夢を見続けよう」というメッセージが秀逸で
アメリカという共同幻想を信じられるかを問われているようで
曲調と相まって酩酊してるように揺さぶられた。

CIVIL WARにこめられたDream Baby Dreamは
アメリカ大統領選をユートピア的な共同幻想を信じられるか
問うてるようでもあるし、アメリカだけでなく
分断しているあらゆる現代社会にユートピアを
目指す姿勢があるかを問われていると感じました。
ちなみに本作の中身に関する“映画的”考察は
速水健朗のこれがニュースではないがオススメ。

文・写真 北米のエボ・テイラー

↓PicoN!アプリインストールはこちら

関連記事