クリエイティブ圏外漢のクリエイティビティを感じる何か…〈vol.9〉

おはようございます。こんにちは。こんばんは。
442年ぶりの皆既月食+天王星の惑星食という、一生に一度の貴重な体験がございましたが皆様いかがお過ごしでしょうか?

唐突ですがクリエイティブな仕事に従事する方、クリエイターを目指している方、クリエイティブに触れている皆様はクリエイター/クリエイターの作品に嫉妬するという経験はないだろうか?

そんな経験をした方は

“自分が嫉妬したクリエイターと同様のクリエイティブを志向(嗜好)しており
実行してたとしたら同じようなことするであろうが、
自分はやれてない、もしくは嫉妬対象がもっと上手くやってる”

場合に嫉妬に燃えるのではないだろうか?

しかも、嫉妬の対象とするクリエイターが、
年上だったらヒーローや憧れの対象になるものの、
自分より若いと「チクショー!やられた!若造め!」
みたいに急に体育会系メンタリティが立ち上がったりする…

*ちなみに『けしからん/RYMESTER』のMummy Dバースが、年下クリエイターへの嫉妬バースが良き。

そんな嫉妬体験が誰にもあると思う(えっ、あるよね(心配)?)

かくいう私も嫉妬の炎を燃やしたことがあって、2008年くらいに躍進しまくりのtofubeatsがその対象だった。
自分は別にトラックメーカーでもなかったのに…

そんなクリエイター/作品に嫉妬するという現象も経年により
あたりまえのように自分の年下が量産されるので、
いいんだか悪いんだが徐々に無くなる(嫉妬でない感情になる)
それは経年変化の一つの利点なのかもしれない。

もうオジサンになり嫉妬の炎も鎮火したはずの私ですが、久々に嫉妬に燃え狂いました。

それが今回紹介する『だんでぃどんfeat.筒井康隆/Dos Monos』です。
Dos Monosは元々好きだったけど、好きな理由が明確になりました。
筒井康隆との共作で!それは私のインサイトにある嫉妬だ!

Dos Monos

Dos Monosは、荘子it、TaiTan、没aka NGSの日本の3人組ラップユニット。
学生時代からの友人のメンバーが2015年に結成。
ユニット名の由来はスペイン語で「2匹の猿」
のちに「猿2.0(進化した猿)」という意味も付け加えられている。

フリージャズ、プログレロック要素が通底しつつ現代性あるビートに、ジャズの揺らぎ感覚、もちろんJ Dillaの揺らぎ感も意識しているであろう3MCの詩的レベルの高いラップが特徴。
全ビートは荘子itが作り、リリックは大枠のテーマを設定し、3人が各々作るスタイル。

2017年はSUMMER SONIC、2018年はフランス、上海のフェスにも出演。
2019年に現代のイギリスを代表するバンドblackmidiの曲を、世界初Remix(のちにコラボレーション曲を作り、ツアーにも同行)
2020年はコロナで中止になったもののSXSWに出演が予定されていた。

また「Civil Rap Song ft. Audrey Tang」で世界中でも有名になった台湾のIT担当大臣Audrey Tangとも異色のコラボ…

もう事実を並べるだけでもセンスの塊、イケイケなグループなのである。

だんでぃどんfeat.筒井康隆/Dos Monos

今回ご紹介するのは、Dos Monosと、「時をかける少女」や「パプリカ」「残像に口紅を」などの作品で知られる文学界の巨匠・筒井康隆との共作アルバム「だんでぃどん feat. 筒井康隆」
*YouTubeは冒頭5分のみ。完全受注生産のCDでは全編を収録。

筒井康隆に関しての説明は壮大かつ膨大なのでWikiに譲りますが、今回の曲は文学界2020年11月号「ジャズ特集」筒井の「ダンシングオールナイト」を読むという偶然により生まれる。

彼の半生とJAZZ個人史を語った内容、
韻を踏んでいないながらラップだと感じる文体、
作中の一節と自身のリリックや言語感覚との類似性を感じた荘子itは筒井にオファーし、本作の制作が実現。

内容は筒井の「ダンシングオールナイト」の朗読をDos Monosのラップが邪魔する感じで入るという構造。

トラックは筒井の朗読に出てくる曲名、小説のワードに関連する曲、
関係ない曲(ドラムンベースが入っているのがイイ驚き!)がサウンドコラージュ的に展開される。

スキット的に筒井の「ダンシング・ヴァニティ」という小説の一節『ねえ。誰かが家の前で喧嘩してるよ』が挿入されると、曲が冒頭のシーンに反復される…

何故嫉妬したのか…

上述したDos Monos自体のイケイケ感、創作のきっかけの偶然性、荘子itが筒井文化圏の末席にいる中で、その筒井と共作を実現させたというのも嫉妬した点なのだが、やはりこの曲スゴイのだ。

「ダンシングオールナイト」というものが、筒井の半生と個人JAZZ史であると上述したが、HIPHOPのラップというのは、自身や所属する環境をストーリーテリングするという側面が強く、それが正統とされている(そうでないものも勿論あるが)

それを題材にしてDos Monosのラップで邪魔をするというアイデアも面白く、リリックに関連させるトラックを載せる、サウンドコラージュで曲を構築するというのもHIPHIOPの王道。
Dos Monosの見た目やパッと聴きだとHIPHOPヘッズからはもしかしたら王道ではないという判断もされそうだが、そんなことなくHIPHOPの本質を捉えている。しかも上述の「ダンシング・ヴァニティ」という小説の一節を挿入することで作るループ構造は、筒井作品的という配慮まで…

センス良くカッコいいことやっているだけでなく、
本質をつきつつ、違う文化圏や世代も超えてフレッシュなものを作っちゃうなんて、、、出来ることなら僕もやりたい…
そして出来ないし、Dos Monosだからこそこんなウェルメイドに出来ちゃう…

もうぐうの音も出ない程の嫉妬しちゃう
しかし、感心しっぱなしの素晴らしい楽曲なので是非ご一聴を!

ただ、全編収録のCDは現在SOLDOUT!(2022年11月現在)

冒頭5分のYouTubeを聴いて全編聴きたい方は、Dos MonosにCDの再販かサブスク解禁をお願いしてみては?

文・写真 北米のエボ・テイラー

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