• HOME
  • ブログ
  • アート
  • 【展示レポ】Tristan Hollingsworth(トリスタン・ホリングワース) 世界初個展「COLOR WORKS」@渋谷DIESEL ART GALLERY

【展示レポ】Tristan Hollingsworth(トリスタン・ホリングワース) 世界初個展「COLOR WORKS」@渋谷DIESEL ART GALLERY

いま世界が注目する写真家・Tristan Hollingsworth(トリスタン・ホリングワース)の作品が上陸。渋谷・Dieselギャラリーで2025年1月13日まで開催中の初個展の模様を、美術家で日本写真芸術専門学校講師の遠藤麻衣先生がレポートしました。

文/遠藤麻衣(美術家)

私は、現代美術の現場でアーティストとして作品を発表している。身体を使った表現をするので、映像や写真の撮影をしてくれる人との協働は欠かせない。

彼ら彼女らと仕事をするたびに感じるのは、人間の身体、その運動や風景にどのように向き合っているのか、いつシャッターを切るのか、どのように構図におさめるのかは人によって異なり、たとえ同じ瞬間に立ち会ったとしても出来上がる映像や写真が全く違うということだ。選ぶ機材や撮影手法、編集するときの判断といった仕事全体を通して、その人の美学や倫理感、そして普段からどのような現場でカメラを手にしてきた人なのかが垣間見られる。技術や方法論は、その人自身に独自に身体化されていくものなのだなと感じる。

こういった経験から、展覧会で写真を観るときには、そのアーティストがどのような場所で写真を撮り続けてきたのかという背景へ自ずと関心がむく。それを知ることで、シャッターが切られたときの環境やそこにいたはずのアーティストの身体、そして、シャッターを切るまでの時間やその後の時間など、空間的にも時間的にも広がりをもって鑑賞できると思えるからだ。

そういう視点で、DIESEL ART GALLERYで初個展を開催しているTristan Hollingsworth(トリスタン・ホリングワース)の「COLOR WORKS」を見てみた。

ホリングワースの写真に写っているのは、青々とした山、花々の鮮やかさ、透明感のある水面、そしてヌードの人物。しかしそれらは、写真に近づいて見たとしてもはっきりとしない。写真の表面はノイズがかかっていて荒く、画(え)全体が大きくブレている。多重露光によって異なるイメージが重ね合わされている。

それらを眺めていると、ある記憶が夢で見たものか実際に見たものか区別がつかなくなっていくときのような不安に襲われる。同時に、何かが失われていく感触に心地良さを覚えた。

彼の写真の多くを、Instagramでも見ることができる。まるで、彼の私的なフォトアルバムを覗き見ているようだ。

ロサンゼルスで活動する彼にとって身近な風景、あるいは旅行したときに出会った風景。ときおり大地や植物に身を委ねて戯れているような人々が姿を現す。心やすい雰囲気で、撮影する人との距離感が近く、とても親密そうに見える。

ホリングワースは、日々の暮らしのなかでカメラを手にし、何気ない瞬間の煌めきを捉えてきた人なのだろう。

■Tristan Hollingsworth 公式Instagram
https://www.instagram.com/tristanhollingsworth/

文/遠藤麻衣
1984年兵庫県生まれ。映像、写真、漫画、演劇などのメディアを横断し、おしゃべりや演技など自らの身体を通じたクィア/フェミニスト的な芸術を実践している。近年のグループ展に「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか? 」(国立西洋美術館、2024年)、「フェミニズムズ/FEMINISMS」(金沢21世紀美術館、2021年)など。演劇やパフォーマンス出演に第21回AAF戯曲賞受賞記念公演 「鮭なら死んでるひよこたち」(愛知県芸術劇場ほか、2023)や「Stilllive」(ゲーテ・インスティトゥート東京ほか、2019-)。2023年に「Scraps of Defending Reanimated Marilyn」(oarpress)刊行。2018年に丸山美佳と「Multiple Spirits(マルスピ)」を創刊。

↓PicoN!アプリインストールはこちら

関連記事