流れるようにテーマを変え、表現していく。絵描き・池田幸穂の発想力とは

初めまして!絵描きとして絵を描きながら、NDSや大人とこどもの絵画教室で講師をしております、池田幸穂と申します。私の今までの作品制作や展示、こどものアトリエでの活動について2回に分けてお話ししていきます。

作家としての生き方、これからイラストを学ぶ人に少しでも参考になればと思います!

前編では絵描きとしての活動を作品を通してご案内していきます。

2021年の夏に描いた絵『スズランの下で、』

この作品はコロナ禍でも変わらない世界を探して、テーマにしたいと思いました。人間は外に出られない日が続いて、不安や不満を感じる生き物ですが、昆虫が暮らしている自然界は、いつも通り光に満ちているのでは、という想像を膨らませました。

空気や水が綺麗になったというニュースを見て、昆虫や魚、はたまたその他の生き物は喜んでいるかもしれない、と思ったのがきっかけです。
縦117cm、横91cmのキャンバスに、少しずつ制作し、完成まで半年かかりました。使用しているアクリルガッシュは何度でも上書きして、塗り重ねることが出来るため、絵は絶えず変化していきます。構想段階でのスケッチでは虫は擬人化して描く予定でしたが、虫たちの世界に人間がいることの違和感を出したかったため、最終的に、擬人化せずにそのままの姿にしました。

『スズランの下で、』

絵描きとしての活動

私は都内にあるギャラリーモモというギャラリーに所属しています。そこでは2009年から2年に一度くらいのペースで個展をしています。その他にグループ展に出品したり、海外のアートフェアに出品したり。展示をキッカケに、別の作品の依頼を頂いて制作したり、お店で販売する商品や販促物の絵を描いたり、展示に来て頂いた方や作家仲間から、ワークショップや絵のお仕事のお誘いを頂くこともあります。

私の作品は身近な動植物をモチーフにしています。テーマは徐々に変化していますが、初期の頃は公園や庭の景色がメインで、そこに集う人々を小さく描いていて…そのうち植物や風や季節をテーマに、人物が少しずつ主体になっていきました。昨年から、花瓶と、観葉植物を、図鑑のように並べた作品もたくさん描いています。
あまり自分の画風やテーマに固執しないで、流れるようにテーマを変えていきたいと考えています。その年、その時に考察したことをできるだけ表現したいんです。
デジタルで絵を描くことがどんどん主流になっていますが、アクリルや水彩、紙にキャンバスと、アナログにこだわっているのは、絵の具の粒子の厚みやきらめき、水の量によって起きる偶発的な表現が大好きだからです。筆で、手で、絵の具を混ぜて描くことに喜びを感じていたり、何層も重ねて描くことで起きる絵の具の厚みも、とても美しいと思っています。

個展活動について

2021年9月にNDSで個展をやった時は、今まで描いた作品の5年分の中から、選んで構成しました。過去作を並べて振り返るのは初めてでしたので、自分の軌跡を客観的に眺める機会となりました。そして、私の授業で伝えているアナログの描画の技法や、水彩とアクリルガッシュを一枚の絵に使う画材の組み合わせも、紹介することが出来ました。

『風になびかれて旅をする』

 

2020年に東京の両国にあるギャラリーモモで個展をした時は、初めて巨大な立体作品と平面作品を合わせることに挑戦しました。粘土やスタイロフォームで立体を作りたくなったのは、講師として教えているこどものアトリエで、こどもたちと一緒に粘土を定期的にやるようになったことが影響しています。それまでは、彫刻作品や立体作品は見るのは好きでしたが、作れないものとして、どこか遠い気がしていましたが、指先で3Dの立体を作ることがどんどん身近になってきて、思い切って自分の背丈ほどの動物を作ってみたいと思うようになりました。すごく大変でしたが、2Dの平面とは違う存在感、触覚が新鮮で!今後も定期的に立体は制作していきたいです。

 

『The Sound of Clear Buds Popping』

 

後編ではこどものアトリエでの活動についてお届けします。

お楽しみに!

文・池田幸穂
絵描き / Gallery MoMo 所属 / 武蔵野美術大学卒業後、個展多数。ワークショップ等。海外のアートフェアに参加。図書館に作品常設。

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