クリエイティブ圏外漢のクリエイティビティを感じる何か…〈vol.10〉

おはようございます。こんにちは。こんばんは。
季節外れに開催しているサッカーW杯で睡眠不足と戦っていたら気づけば師走に突入している…
例年以上に忙しない年末ですが皆様いかがお過ごしでしょうか?

年末になりますと「2022年 年間ベスト○○」のように、様々なジャンルで年間ベスト作品を各種メディアや個人のメディアで発表するのが常となっております。
どんなジャンルのエンタメ好きも、年末に自分の興味があるジャンルで年間ベストが出そろうのはちょっとしたお祭り感覚がございます。

最近では洋楽好きがチェックしている老舗メディアであるPichforkの2022年の年間ベストに、宇多田ヒカルのアルバム「BAD MODE」が31位、「Somewhere Near Marseilles -マルセイユ辺り-」が10位に入るという快挙が話題となりました。

この「クリエイティブ圏外漢のクリエイティビティを感じる何か…」では、過去9回あらゆるジャンルの音楽に関して書かせていただきましたので、冒頭からの流れでいくと、わたくし北米のエボ・テイラーの2022年ベストアルバム/トラックをやるのが順当かと思います。

しかし、今回はせっかく記念すべき10回目の記事ですので、音楽以外で「2022年クリエイティビティを感じた何か」を列挙いたします。
「ベスト10!」みたいなものでもなくルールのない列挙です!

もう極私的な2022年の思い出の振り返りですが、師走だしご容赦頂きたく。
お時間が許す方は続きをご覧頂ければ幸甚です。

2022年クリエイティビティを感じた個展

小畑多丘「B-BOY REVENGE 2022」

世界的なブレイクを果たしているB- BOY彫刻家の小畑多丘が10年振りに開催した馬喰町PARCELで開催した個展。
B-BOYの四大要素の1つブレイクダンスの“一瞬”にこだわった彫刻は、止まっているのだが前後の躍動感と肉体感覚を感じる。

中谷健一「虚歪民藝」

修復リペア職人、内装アーティストの顔を持つ中谷健一が、ギャラリー・マルヒで開催した個展。
信楽焼きの狸や木彫りの熊などの民藝品に建築資材などを駆使して“グリッジ”というデジタルノイズをまとわせ現代性を注入している。
デジタルな表現をアナログ手法で制作する様がたまらない。

どちらの個展もアーティストが文字通り手作業で制作しており、制作時間も膨大になるであろうことが想像出来る。
その時間のかかったことで作品のフィジカルにオーラがまとわれている印象で共通のヤバさを感じました。

2022年クリエイティビティを感じた生物

サンシャイン水族館のウィーディーシードラゴン

「なんだよ!生物って!」って声がガンガン聞こえてきそうですが、フォルムが宇宙人的でもあり、SF映画の乗り物的でもあり興奮しません?
進化論を信仰してても、創造主としての神を信仰してても、何故この形状になったのか…クリエイティビティを感じざるを得ない存在です。

2022年クリエイティビティを感じたドラマ

The Playlist(Netflixドラマ)

Netflix配信のSpotifyの誕生秘話を描いた“フィクション”ドラマ。
実話とフィクションを織り交ぜつつ、スタートアップ企業のSpotifyがいかに巨大プラットフォーマーになったかを描く。
CEO、レコード会社社長、弁護士、プログラマー、歌手など様々な視点からSpotifyの成長という“事実”を浮かびあがらせる。
映画、演劇の手法“第4の壁を破る”演出や現代っぽい絵づくりが見事!

2022年クリエイティビティを感じた食事

Chez InnoのLunchコース

子どもの頃から美味しんぼ、味いちもんめ、ザ・シェフなどのグルメ漫画を愛読していた私は、食いしん坊な一面がありまして、奮発しまくって念願のChez InnoでDinnerと同内容のLunchをしました。
これまた念願の仔羊のパイ包み焼き“マリア・カラス風”は、正統派のフレンチの歴史とクリエイティビティの蓄積に裏打ちされた技巧をもって、圧倒的な素材の生命力を感じました。
舌の上で横綱相撲された感覚でございました。

2022年クリエイティビティを感じた小説

小田嶋隆「東京四次元紀行」

2022年惜しくも帰らぬ人となったコラムニスト小田嶋隆の初の小説。
東京生まれ東京育ちの著者の視点の東京の街とそこに住む(行き来する)人々の喪失感や諦念を抱えた描写が見事で、すれ違い方や別れ方が東京という都市の特性を見事に表している。
小説というアートフォームなのだが、コラム二ストのクリエイティビティを邪魔にならないように盛り込まれた作品でした。
もっと彼の小説を読みたかったな…

2022年クリエイティビティを感じた映画

ポール・トーマス・アンダーソン「Licorice Pizza」

1970年代を舞台に、こまっしゃくれた子役のゲイリーが、10歳年上のカメラスタジオで働くアラナに恋をするボーイミーツガール映画。
監督は「マグノリア」「ゼア・ウィルビー・ブラッド」などのポール・トーマス・アンダーソン(以下PTA)

PTA監督好きとしてはこの作品だけで2000文字くらい書きたいのだが、

歳の差の男女のつかず離れずな話かと思いきや、

ふらふらしてた女の成長ストーリー
(年端の行かない子供とつるんでていいのか私?)

に落ち着くかと思いきや、正統はラブストーリーで落ちる…

というPTA監督の横道を挟みつつ、ストレート勝負(変な挿話多いけど)が最高でした。

個人的にはPTA監督作品の中では1番愛おしい作品になってしまいました。


極私的2022年のクリエイティビティを感じた何かたちを紹介させて頂きました。
皆様も今年心動いた何かを思い出してみては?

文・写真 北米のエボ・テイラー

関連記事