クリエイティブ圏外漢のクリエイティビティを感じる何か…〈vol.6〉

おはようございます。こんにちは。こんばんは。
今年の夏は暑いですね。「夏だーい好きⒸスチャダラパー」な私も極力外に出たくないというような暑い日々が続いておりますが、皆様熱中症などにはお気をつけ下さい。
(ちなみにスチャダラパーのサマージャム2020が95年時に夏を楽しんでた彼らが経年変化で夏の過ごし方の変化をラップしているのでご一聴を!)

この暑さへの感じ方は全世界的な温暖化が原因なのか、自身の加齢が原因なのか…
みたいな他愛のない話を会う人と話をしていますが、
どうやら前者みたいで日本気象協会が近年のヤバい暑さを定義すべく
最高気温40℃以上は「酷暑日」、夜間30℃以上を「超熱帯夜」と命名しています。

今回ご紹介するのは、そんな酷暑日や超熱帯夜でネガティブに感じつつある夏を「理想的な夏」へとポジティブに脳内変換してくれであろう名盤Ned Dohenyの『Hard Candy』をご紹介いたします。

まずジャケット表面を見てください。

きっと高校生だか大学生の仲良しグループで「夏に海に行こう!」みたいになって、着替えを済ませて、先に着替えて友人たちをまっていたら異性/同性の友人、もしくは友達以上、恋人未満の対象から水をかけられてる直前の瞬間…みたいなジャケ。

次に裏面を見てください。

想定外の水量をかけられてますね…

でもイイんです。夏でみんな浮かれているから
きっと、水をかけられた後に「やめろよ~」ってキャッキャし合っている。

どうです、もう「理想的な夏」って感じがしないですか?

高度経済成長していた時期の日本が、古き良きアメリカみたい体現し続けていた歴代のコカ・コーラのCMを集めた「The Coca-Cola TVCF Chronicles」というご機嫌な作品があるんですが、そこに出てきそうな理想的な夏の1コマって感じ!

 

本作のジャケに映し出される「理想的な夏」には

熱中症も湿気もなく、酷暑日や超熱帯夜もなく、

年齢もあらゆる属性やポジションも関係なく、

コロナ動向を気にしながら過ごさなくてもいい…

そんな「理想的な夏」がなかなかママならない現実でこのジャケは脳内で「理想的な夏」を創出させてくれるのです。

そして「理想的な夏」を体現するのに本作の楽曲はどう作用するのか?
皆様はきっとこのジャケットを一瞥した瞬間、

「夏に浮かれた輩の浮かれっぷりを加速するような楽曲でしょ?」

「さわやか好青年が卒なく歌う、何も残らない感じなんでしょ?」

「実はとにかくチャラいんでしょ?」

などなど想像されるかと思います。
少なくとも私はそんな印象を多少は持ちました。

しかし、ジャケの印象に反して楽曲はクールなんです。

例えば1曲目の「Get It Up For Love」は深海で響いているようなシンセにNedのアコギは絶妙なマイナーなリフをカッティング、メロディはNedのアコギと歌で骨子が固まっている状態で他の楽器が絶妙に配置されており、哀愁感じる都会派AORという感じになっている。

*上述の「Get It Up For Love」は東京事変が「恋は幻」というタイトルで カバーしてますので聴き比べてみては!

3曲目は「Each Time To Pray」ジム・ホーン、トム・スコットという豪華なダブルサックスを配置しつつめちゃくちゃファンキーなノリなんだけど
Nedの歌唱でウェストコートらしさがあり、テンションが上がりすぎないように制御されていて涼やか。

8曲目の「Sing to Me」
ラテンフィーリングあるディスコな曲調だが、BPMを上げてもっとテンション上げれたハズなのに、あえてそちらに振らずスティーブ・フォアマンのパーカッションをはじめ各々のパートが淡々とこなしている。

上述した曲以外にも、どこか全編に通底するクールさや清涼感は夏で疲弊している我々を労わる効用があり、

「あまりテンション上げすぎると疲れちゃうから、
たまに涼しいとこで夏を感じながらもけだるくチルしようよ」

みたいな、テンションを上げすぎないことによるいい塩梅の「理想的な夏」なのかなと思います(特に暑さに弱い人には)

ジャケットを見て交感神経優位(テンション上がる)な理想の夏を感じて、楽曲を聴いて副交感神経優位(チル出来る)な理想の夏を感じてみては。

おすすめです。

Ned Dohenyに関しては説明を省きましたが、
EAGLESの名盤「Desperado」にも関わっているウェストコーストロックの重要人物の一人です。
本作はじめ日本ではかなり全作品人気も評価も高いのですが、なぜか本国アメリカでは無視されています。
気になった方は掘ってみましょう!

文・写真 北米のエボ・テイラー

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