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『Music of Many Colours』― クリエイティブ圏外漢のクリエイティビティを感じる何か…〈vol.38〉

おはようございます。こんにちは。こんばんは。

大阪万博が無事開催いたしましたが
読者の方で参加された方はいらっしゃるのでしょうか?
色々問題が指摘されていますが、
人生で一度も経験したことがないので
様々な国の文化や技術を一同に見れる万博に
参加してみたいところでございます。

今回は色んな国の文化が絡む万博と絡めて
アフロビートの創始者フェラ・クティと、
ヴィブラフォン奏者でありながらソウル〜ジャズ〜ファンクを
横断する音楽性で知られるロイ・エアーズという
異なる音楽的背景を持つ二人の巨星が交差し、
奇跡的な化学反応を起こした1980年のコラボレーション・アルバム
『Music of Many Colours』をご紹介します。

フェラ・クティとは何者か

ナイジェリア出身のフェラ・クティ(Fela Anikulapo Kuti)は、
音楽家であると同時に、社会運動家であり、反体制の旗手であり、
そして何より「アフロビート」という唯一無二の音楽スタイルの
創始者として20世紀の音楽史における特異点のような存在です。

彼のサウンドは、
ジェームス・ブラウンに代表されるファンク、
伝統的なヨルバ音楽、そしてジャズの即興性と構造性を融合させたもので、
政治的なメッセージと切っても切れない関係にある。
フェラの音楽は、単なる娯楽や芸術表現にとどまらず、
軍事政権下の腐敗、抑圧、警察暴力といった社会の闇を暴き出す、
鋭い批評性を帯びた武器でもありました。

フェラの人生を語るとき、音楽と政治は切り離せず
1970年代から80年代にかけて彼の政治的活動は盛んで
彼はしばしば軍政によって逮捕され、
彼の自宅兼スタジオであり軍人1000人の共同生活体
「カラクタ・リパブリック」は度重なる襲撃を受けた。

だが彼は屈することなく、
サックスと歌声で体制への怒りをぶちまけ、
ステージ上で数十人編成のバンドを率いながら、
観客とともに抵抗を続ける
今でいう活動するレベル・ミュージッシャンでした。

惜しくも1997年にエイズで死去するが
彼のアフロビートは後世にも引き継がれている。

彼の代表曲であり、Theo Parrishなど
信頼できるDJも翌プレイするZombie

https://youtu.be/Qj5x6pbJMyU?si=x7apAVlV2_6NbLKd

ロイ・エアーズという存在

一方ロイ・エアーズ(Roy Ayers)は、1940年アメリカ生まれ。
ジャズ・ヴィブラフォン奏者として
キャリアをスタートさせた彼は、
やがてジャズの枠に収まりきらない感性で、
ソウル、ファンク、ディスコ、カリビアンなどの
リズムまでをも取り込みながら、独自の音楽世界を築き上げていった。

代表作『Everybody Loves the Sunshine』(1976)は、
彼を知らなくても表題曲は聴いたことは多数いるであろう。
今なお多くのミュージシャンにサンプリングされるクラシックだが、
その多幸感と内省の入り混じるサウンドは、
彼が単なる技巧派ではない、深い精神性を持った
表現者であることを物語っている。

1970年代後半、彼は黒人意識の高揚や
スピリチュアルな探求にも関心を寄せ、
より深くアフリカの音楽や思想へと傾倒していく。

そんな時期にフェラ・クティとの出会いがあったことは、
偶然ではない。彼にとってフェラは、
アフリカ系アメリカ人としてルーツと向き合う上での、
いわば生きたアイコンだったのだ。

『Music of Many Colours』という旅。
本作は1980年のナイジェリアでのツアー中に
意気投合した二人がその勢いのまま録音された。

「フェラ・クティとロイ・エアーズ」という名義で
発表されたアルバムは両者がそれぞれ
作曲・編曲を担った2曲が収録されている。

A面”2000 Blacks Got to Be Free”(ロイ・エアーズ作)は、
ファンクを基盤としながらも、フェラのバンド
「アフリカ70」の分厚いリズム・セクションと、
ロイ・エアーズのソウルフルなボーカルと
ヴィブラフォンが交錯する、
スピリチュアルかつダンサブルな楽曲。

B面”Africa – Centre of the World”(フェラ・クティ作)は、
17分超におよぶアフロビートの大作であり、
ロイのヴィブラフォンがさりげなく差し込まれる中、
フェラの咆哮とともにアフリカの中心性が高らかに謳われる。

この2曲は、それぞれの作家性の明確な色がありながら、
不思議とひとつの流れとしてまとまりを持っている。
それは単なるコラボレーションというよりも、

異なる「色」が混ざり合い、新たな光を放った「融合」の記録だ。
まさにタイトル通りである。

また本作は英語圏ブラック・ディアスポラとアフリカ大陸との
精神的な回路を再接続しようとする試みにも感じる。

奴隷貿易によって引き裂かれた歴史の痛みを背負いつつ、
音楽を通じて「未来のための再会」が図られている。

フェラのアフロビートが「地に足のついた怒り」だとすれば、
エアーズのファンクは「空を見上げる希望」に感じる。
二つが重なったとき、
そこに現れるのは闘争と祝祭が渾然一体となった、
人間の根源的なエネルギーの噴出である。

『Music of Many Colours』の遺したもの。

本作は決して商業的な成功を収めた作品ではない。
だが、その後のブラック・ミュージック、
ワールド・ミュージックの文脈において、
確かな影響を及ぼし続けてきた。

80年代パラダイスガラージ、
LOFTでDJがヘビープレイしたり、
90年代以降のヒップホップやネオソウル、
あるいは現代のジャズ・リバイバルの潮流のなかで、
このアルバムに通底する
「スピリチュアルなルーツ回帰」の精神が
再発見されつづけるのは、決して偶然ではないだろう。

惜しくも2025年3月にロイ・エアーズも亡くなってしまいました。
彼らそれぞれの作品や奇跡の融合作を是非聴いてみてください。

文・写真 北米のエボ・テイラー

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